細川俊夫&サシャ・ヴァルツ「松風」@新国立劇場
塩田千春が美術を担当したオペラ「松風」を観てきました。
2011年の初演以来各国で上演の後にいよいよ初来日です。
ちなみに僕のオペラ経験はビル・ヴィオラが美術を担当した「トリスタンとイゾルデ」とピーター・ブルックの「魔笛」のみです。
前者は今でもトラウマ。。。後者はまだいい思い出。
今回は最安Z席のチケットが手に入ったので行くことにしました。S席なら辞めてた。
案の定4階の最後尾でしたがそこまでストレスはなく観られましたね。
さて、内容はオペラといえども元は能の演目。
旅の僧が須磨の浦を訪ねると、松に詩が吊るされているのを見る。
これは以前そこに住んでいた松風と村雨の姉妹に当てて在原行平が詠んだ詩。
行平を想いながらあの世に旅立った姉妹が僧の夢に出てきて魂の浄化を乞うというもの。
正直ビル・ヴィオラの時のようにちんぷんかんぷんになるのではないかとかなり案じていたのだけど、サシャ・ヴァルツの演出が素晴らしくて1時間半飽きることなく観られました。
オペラはオペラなんだけど、かなりダンス要素の強い作品で、ピナとか好きなら楽しめます。
彼女のことは知りませんでしたが、同じドイツ出身でポスト・ピナとも言われてるみたいですね。
以前映画館ですが、ウェイン・マクレガー演出のローヤル・バレエ「WOOLF WORKS」を観ましたが、それと似た感覚。ともに伝統の技を用いながらも全く新しい演出。(マクレガー演出・オラファー美術の「TREE OF CODES」日本でやらないかな。。。)
そこに塩田千春とピア・マイヤ=シリーヴァーの美術が加わります。
最初から舞台上は塩田さんの糸で張り巡らされてるの思いきや幕が開くと何もないのでびっくりしました。
え、どうやってあの蜘蛛の巣が登場するのかと思いきや、途中で一人の演者が大きな空間を紐を引っ張って持ってきます。
言葉ではうまく表現できないんだけど、めちゃくちゃ巨大な躯体に糸が巻きついたやつが登場したわけです。
彼女の彫刻知ってたらわかると思うんだけど、それが巨大化したみたいな。
それが見事に空間になってて、空間をモバイルしてる感じが新鮮でした。
にしても演者さん、糸にもたれたりよじ登ったり伸びないんだろうか?
いつもの毛糸ではないのかな?
以前一度お手伝いしただけに、普通の毛糸だとあんな重かけちゃうと巣が崩れちゃうと思います。
なんしかものすごくダークで幻想的。
その後その空間が上に消えて、今度は躯体だけのセットが降りてくる。(シリーヴァーの美術)
最後は松の枝を表す木の細い棒が落ちてくる様は圧巻。
どうかなと思ったけど観れてよかったです。
あと能をバックにしてるけど、変に日本的な演出がなかったのもよかった。
むしろたまに入る雅楽っぽい音もすごく自然でオーケストラに馴染んでたし、風鈴や水の音もよかった。
なかなか楽しい体験となりました。
サシャ・ヴァルツ演出の作品が来日したらまた観に行きたいです。
ところで近くのケンジタキギャラリーでは塩田さんの個展がやってます。
毛のない櫛というモチーフは面白かった。
京都でやってた白い糸のベッドの作品はイマイチだっただけに。。。
個展は3月10日まで。

