MUM&GYPSY『あっこのはなし』『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと──────』@AI・HALL

マームとジプシーの十周年ツアーを観劇して来ました。
彼らのことは以前から知人に噂は聞いてて、機会があればと思てったら巡って来ました。
それにしても代表の藤田さん若いですね。僕より年下。それで十周年とはすごい。
これまでの彼らの活動に関しては10周年記念サイトのインタビューや記念書籍に詳しいですが、とりあえず前知識なく伊丹のAIホールへ。
(公演後に読みましたが前半はやはり相当苦労していて読むのも辛いですね。。。)
今回のツアーは全国6都市を回るツアーで、この伊丹が最終地点です。
全部で4つの過去の演目をやるんだけど、伊丹では2演目のみ。とりあえずどっちも観ました。
感想としては、4つ全部みたかった!はい、おもしろかったです。
まずは「あっこのはなし」。
これは5年くらい前にやった演目みたいなんだけど、その時はメンバーも20代で、その30代バージョンが去年改めて再演されて、今回はさらに再再演。
前のやつ見てないからわからないんだけど、自分も30代で、中で出てくる会話がいちいちわかりすぎた。
30代のガールズトークとかもめちゃくちゃ楽しいし、未来への不安とか葛藤とかわかるわかる。
実際演者の本名がそのまま役名になってたり、台詞も彼らの実際の体験だったりでとてもリアル。
でもこの「わかる」ってのが案外ネックで、この演目を純粋に観るのにノイズになっちゃってたかも。
舞台としては、時系列がバラバラだったり、同じシーンが繰り返されたり、色々面白い演出がたくさんあったんだけど、なんせその30代の共感覚が強すぎちゃって、客観的に舞台を観るのを邪魔しちゃってた。
その点もう一作の「ΛΛΛ」は、逆に共感できないことが多くて、舞台自体を楽しめたと思う。
何が共感できないって、この作品の根幹の「郷愁」とか「故郷」とかの感覚。あと「海」。
正直都会で生まれ育った僕には全くわからない。
生まれ育った家なんてただのマンションだし、そっから何回も引っ越してるし、なくなっててもへっちゃら。
今もまあ故郷で住んじゃってるし、海も馴染みがない。
このわからないづくしって、いつも見てる地点にも言えることでだから地点が好きなんだな、と再認識。
この作品も、演出が本当に楽しい。
演者が全員で、裏方までやっちゃってるというか、舞台転換から小道具を渡すのも全部演者。
そして、この作品から藤田さんの映像的なフェティッシュが伺えるのも楽しい。
例えば映画とかって、ワンシーンを何ショットかに分けて撮ったりするけど、まさに舞台上でそれをやっちゃってる。
同じシーンを繰り返し演者の配置を変えて言わせるとか、舞台自体を動かしちゃうとか。
まるで観客が固定カメラで、舞台や演者そのものが動くことで映像のように映る。もちろん不自然極まりないんだけど。
時系列がバラバラなのも、映画の撮影時は実際の時系列で撮らない感覚。
観客が能動的に編集作業を経ることで作品として完成するというか。
そういうのがもう楽しくて楽しくてすっかりハマってしまいました。
今後他の作品もぜひ色々追いかけていきたいです。
来年また2回目のツアーがあるみたいなのでチケット取ります!
MUM & GYPSY Official Website: http://mum-gypsy.com
あと、最近ようやくべゲットの「ゴドーを待ちながら」を観ました。
近代演劇を語る上でどうしても外せない一作。
京都造形大学内の春秋座で行われたアイルランドのマウス・オン・ファイアによる舞台。
もうべゲットもこの世にいないし、完全な「オリジナル」は見れないものの、限りなく忠実だそう。
正直、中身も演出も特に面白くもなかったんだけど、まあ、一度もは観られてよかったな程度。
なぜか後ろで大爆笑してる人が前半いたんだけど何がそこまで彼を抱腹絶倒に追い込んだのかが謎。後半いなくて演出だったんじゃないか説を友達としてました。。。
「世界の涙の総量はあらかじめ決められている」みたいな台詞は残りました。
ちなみに今回の企画はReal Kyotoの小崎さんも噛んでて、舞台前にべゲットに影響受けた現代美術作家たちの画集とかも置いてました。
べゲットと現代アートとの関係はこちらに詳しいです。
舞台関係、最近特によく観てますが、やはり歴史を知らないといけないなぁと最近よく思います。
アートもそうですが、やはり文化は一朝一夕で楽しめるほど甘くない。だから面白い。
アルトーやブレヒトなんかの舞台も機会があれば観てみたいなぁ。
さて、今日でブログ開始からなんと12年。私も12年歳をとりました。。。
13年目を迎えるにあたり、改めてタイトル変えました。前のに近くなった。
今後ともダラダラと更新していきますのでゆるりとよろしくお願いします。
アジア回廊 現代美術展 @二条城・京都芸術センター

正直特記することもないんだけど、せっかく行ったので書きます。
それにしても京都ってこういう現代美術展が全く根付きませんね。
数年前のパラソフィアもあれ一回きりなんでしょうか?
今回のこれもこれっきりだと思います。
そもそも京都は観光資源に恵まれすぎてて、あえて現代美術で打ち出す必要がないんですよね。
わざわざ二条城とか使っちゃってますけど、その辺の必然性が得られない。
その辺の街中とか原っぱとかでやった方がよっぽど面白いですよ。
そしてもう一つ。
これはまあ自分の確認不足もあったんですが、謎の盆栽展のために草間彌生と宮永愛子の展示が見られなかった!
会期中に他の展覧会とぶつかって、展覧会期間中にもかかわらず一部なくなっちゃうとか辛すぎ。
ぶつかっちゃうぐらいならそこにそもそも展示するなよと言いたい。お金返して欲しい。
そう、入城料と展覧会で1200円もするんですよ。
とまあ、文句ばかり言っちゃってますが、いい作品もありました、もちろん。
花岡さんと久門さんです。特に久門さんは毎度ほぼハズレなしですね。
花岡さんの作品はいつものぶっ飛んだ感じが場所柄もあってか静謐な感じになってて僕は好みでした。
久門さんのは空間贅沢に使わせてもらってて素晴らしかった。





そしてもう一会場は京都芸術センター。
こちらはもう楊福東狙い。これ見るだけでも大いなる価値。そしてこっちは無料。
映像48分もありますが、映像が美しすぎて何ループでも見てたいです。
一コマ一コマが一幅の絵画。
場所も畳の間でとても美しい調和。完璧。

後は茶室の今村源さんはさすがというかやっぱりすごい。
写真は撮れませんでしたが、茶室と作品の境目が見事に融合してました。
芸術センターはこの二作見るだけでも本当に価値があると思います。無料だし。
二条城の方は、個人的に二条城自体が好きなので、まあ二条城ついでくらいのノリならありです。
10月15日まで。こちら。
「パターソン」 by ジム・ジャームッシュ
近年稀に見る更新頻度ですが、またまたいい出会い。
なんとなく観に行ったジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」。
今年観た映画で間違いなくベストフィルム。
とはいえ涙は出ません。泣かせる映画=いい映画ではないんです。
以下ネタバレ含む、かも?
S-House Museum


丸亀途中に岡山寄るので前から気になりすぎてたS-House Museumへ。
岡山駅からバスと徒歩で約30分。想像以上に遠かった。。。
本当にこんなところに?という場所に本当にありました。
元々個人住宅だったこの建物。なんと設計は妹島和世!
奈義現代美術館の元学芸員である花房香さんが昨年開館させた個人美術館。
困難なアクセスの上に土日のみの開館というハードルの高さ。
しかしそのハードルを越えてでも行く価値がありました。
恐る恐るチャイムを鳴らすと館長自らお出迎え&ご説明。
まずはChim↑Pomの間。
有名なSUPER RATや震災の被災地で撮った気合の映像がお出迎え。


建物内部は箱の中に箱があるような構造で、周囲をぐるっと廊下が囲む。


引き戸を開けていくとそれぞれ部屋があって、それぞれ作品が展示されてます。
目「Distribution Works #2017」

伊東宣明「生きている/生きていない」

高田冬彦「Cambrian Explosion」

下道基行「漂う/泊まる」




毛利悠子「子供部屋のための嬉遊曲」


2階へ。

加藤泉「Untitled」


伊東宣明「預言者」

などなど。
現代美術好きならご覧いただいてわかるように、作家のラインナップが旬な作家ばかり押さえてます。
以前に観たことある作品もありますが、ここで展示されるとまた一味違います。
毎年少しずつ展示も変わってるそうです。
最後は奥様からお菓子とドリンクのサービス。至れり尽くせりです。
現代美術ファンなら一度は訪れてみるべき場所だと思います。難易度高めですが。。。こちら。
最後は記帳と投げ銭お忘れなく。
志賀理江子「ブラインドデート」@丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

やっぱり気になって最終日ギリギリに行っちゃいました、丸亀。
はい、青春18きっぷです。いつになったらやめられるんだろうか。。。
志賀さんの個展は10年以上前にグラフでやってた「リリー」の展示以来。
以前から不気味な写真やなぁと思ってましたが、「螺旋海岸」で極地を極められたんじゃないかと。
写真集買いましたが本当にホラー。恐すぎてあまり見てません。。。
せんだいメディアテークの展示は行けませんでしたが、行った友達が
「鑑賞者とやたら目が合う」
って言ってて、どういうことなんだろうとずっと気になり続けてました。
そしてその視線の問題がいよいよ作品に現前化したのが今回の新作「ブラインドデート」。
タイでバイクタクシーに乗っていたら、バイクに乗ってるカップルと視線がやたら合うことをきっかけに100組以上のカップルを撮影した作品。
作品の詳しい説明はartscapeやPENの記事に詳しく書かれています。
で、展示なんですが、以下会場図面。

なんのこっちゃって感じですが、なんと21台ものスライドプロジェクターを使っています。
入ると会場は暗くて、スライドが回るカシャッって音が鳴り響いてます。
しかもこのスライドがついたり消えたりしてて、正直「見せる気あるのか?」とすら思えたり。。。
ブラインドって言葉を展示に活かしてるんだろうけど、ちょっとどうなの?って感じでした。
不気味感が凄すぎて作品に集中できない。させる気もないんだろうけど。
対照的に奥の空間(写真だと上の部分)では、今回のタイトルにもなってる「ブラインドデート」のプリントが一点一点小さな照明に照らされて展示されてて、これがものすごく良かった。
光が絞られていることによって、さらに写真の中の視線が強調されてて、写真から眼差されているのをひしひしと感じて、一瞬動けなくなります。
それだけ眼差しっていうのは強いんだなぁと実感。
静止した写真というメディア性と彼女たちの無表情がさらに何も読み取れないもどかしさを誘発しています。
「目は言葉以上に語る」と言いますが、写真になるとこれだけ語らなくなるのは面白い発見。
今までの志賀さんの作品って、抽象的な恐さがあったんだけど、今回の作品では眼差しという具体的な対象があって、さらにその視線がこっちを向いているという恐さがとても新鮮でした。
とてもとても強い作品。素晴らしかったです。
それだけにプロジェクターの展示が残念。
もうこの「ブラインドデート」だけに絞って展示しちゃっても良かったと思います。
なんにせよそれだけ力のある作品でした。
最後の通路には志賀さんの手記や、弔いをテーマにしたアンケートなどが壁にびっしり書かれていましたが、ちょっと死や生のテーマに縛られすぎてる感じがしました。まあ、それが彼女の制作を突き動かすモチベーションなのかもしれませんが。
写真集欲しかったけど8640円は高い。。。
来年に発売されるというカタログだけ予約して帰りました。にしても遅いな。。。