fc2ブログ

アピチャッポン・ウィーラセタクン「亡霊たち」@ 東京都写真美術館

IMG_2177.jpg

写美(TOP MUSEUMとは言いたくない)と、イメージフォーラムでやってるアピチャッポン特集に行ってきました。
後者の「トロピカル・マラディ」がメインでしたが、まずは写美へ。

美術館でのアピチャッポンの展示はグループ展でも@kcuaの個展でも観てるけど、正直ピンときたことはなくて、それはきっと彼の映像はある程度長い時間観ないと沁みてこないからだと思うのです。
展覧会だとどうしても散漫になるし、映像を一個一個丁寧に観られる環境じゃない。
その点映画館は、映像を観るのに特化した場所だから彼の作品は生きてくる。
なので、今回の展覧会もさほど期待はしていなかったのだけど、驚くほどによかったです。

まずタイトルがいい。
英題の"Ghosts in the Darkness"は彼が以前に書いた論考のタイトルらしい。
この「Ghosts」というワードは、彼の作品を表すのにとても適した単語だと思います。
彼の映像にはしばしばこの世のものとあの世のものが曖昧に描かれます。
「プンミおじさんの森」なんかは顕著ですが、新作の「光りの墓」なんかもまさにです。
近年特にあの世とこの世が地続きになってる感覚があります。
さらに以下この展覧会の冒頭で書かれていたテキスト

Ghostには二つの意味が潜んでいます。ひとつは写真や映像などのメディアを媒介することで作用する映像自体が持つ特性です。もうひとつは、現実社会で作用する目に見えない力、すなわち政治屋歴史の中に潜むモンスターのような見えざる力のことです。

ひとつ目の映像の持つGhostというのはすごくわかります。
よく昔の映画なんかを観てると、そこに出てる俳優も監督もこの世にはいないんだよなぁとしみじみ思うことがあります。
しかし作品だけはしっかりとそこに生き続けている。
以前TEDで河瀬直美監督も仰ってましたが、映像にすることで過ぎた時間を立ち返らすことができます。
The value of movies: Naomi Kawase at TEDxTokyo

この展覧会では、アピチャッポンの日常の愛おしさが伝わってくる映像がたくさん出ています。
家族との時間。恋人との時間。ペットとの時間。俳優たちとの時間。
これらの時間たちが、そのまま会場に持ち込まれていました。
特に「灰」という作品には、彼を取り巻く環境が散りばめられていて、20分を越す映像ですが、最後まで目が離せませんでした。

また「花火」という映像では、ガラスにプロジェクションされていて、暗闇の中で光る閃光がとても印象的。
映像的な美しさとともに、そこに孕む第二のGhost、見えざる力の存在もうかがわせます。
爆音と暗闇は、とても不穏な空気を纏っていて、これもまた目が離せない光景でした。

そして、この後アピチャッポン特集に行ったのは正解で、彼の映画制作の元となる映像もいくつか展覧会に出ていて、映画を見ながら場面と展示を行き来できたのはよかったです。

アピチャッポン特集では「ブリスフリー・ユアーズ」と「トロピカル・マラディ」を観ました。
「ブリスフリー・ユアーズ」は、彼がカンヌで「ある視点」賞をとり、彼の名を世界に知らしめた最初の作品です。(名前長すぎですが・・・)
何と言っても開始1時間ほどしてからオープニングが流れるという構造が印象的で、前半と後半で話がガラッと変わります。
特に後半の森をさまよう男女の様は美しかったのですが、最後が個人的にいただけなかった。
僕が思ういい映画って、「あ、終わる」ってとこでカチッと終わる映画なんです。
その点で、この映画は、最後がダラダラとしてしまって、あーあってなった。
観客の忍耐を試すかのような映像で、正直イラっとしてしまって後味悪かった。
その点「トロピカル・マラディ」がほとんど完璧と言っていい映画でした。
以前から観てみたいなと思っていた作品ですが、日本だと東京以外の上映がなくて、なかなか観られず念願叶っての映画鑑賞。
そして期待を遥かに超える作品で、もっといろんなところで上映してほしいしDVDも出してほしい。
この映画も前半と後半でガラッと印象が変化します。
「ブリスフリー・ユアーズ」よりも激変するので、本当に同じ話なのかと疑うほどでした。
何と言っても後半の森の中で虎を追う場面は、息を飲むし、目は冴えっぱなしになりました。
ほとんど暗闇の薄明かりの中で撮影された映像で、観客の想像力がフルに回転します。
最近の彼の作品は、とても直接的な表現が多いので、こういう気配を描いた作品をまた撮ってほしいですね。
「トロピカル・マラディ」は僕の中で彼の最高傑作となりました。

展覧会は来年1月29日まで(こちら)。アピチャッポン特集は1月13日まで(こちら)。
できれば両方セットで行くのがオススメ。
イメフォの特集は上映作品が毎日変わるのでご注意を。
2月のアピチャッポンの舞台「FEVER ROOM」も行こうかすんごく悩んでます・・・。
ちょっと落ち着いてたのにほぼ毎月東京行っちゃってる病再発の気配。


それではよいお年を。
カレンダー
11 | 2016/12 | 01
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
プロフィール

もりかわみのる

森川穣
現代美術作家。
森川穣 website
A'holicオーナー
A'holic website

twitter
Instagram
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理者用
カウンター
To See List
・2022.07.12-10.30
鈴木大拙展 Life=Zen=Art @ ワタリウム美術館

・2022.07.16-09.04
とある美術館の夏休み @千葉市美術館

・2022.07.16-10.16
「ジャン・プルーヴェ」展 @ 東京都現代美術館

・2022.08.10-11.07
李禹煥展 @ 国立新美術館

・2022.07.30-10.10
国際芸術祭「あいち 2022」

・2022.08.27-12.18
第八次椿会 ツバキカイ 8 このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST” @ SHISEIDO GALLERY

・2022.08.18-26
劇団チョコレートケーキ「追憶のアリラン」@ シアターウエスト

・2022.08.29-09.04
劇団チョコレートケーキ「ガマ」@ シアターイースト

・2022.09.02-04
MUM&GYPSY「cocoon」@ 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

・2022.09.01-11.23
柳宗悦と朝鮮の工芸 陶磁器の美に導かれて @ 日本民藝館

・2022.09.03-10.30
装いの力―異性装の日本史 @ 松濤美術館

・2022.09.30-11.27
岡山芸術交流2022

・2022.10.01-2023.03.05
時を超えるイヴ・クラインの想像力 ―不確かさと非物質的なるもの @ 金沢21世紀美術館

・2022.10.07-11.13
Scape on Wonder 内海聖史 @ Artstay maison FUWARI

・2022.10.07-11.13
はじめての牛腸茂雄。 @ ほぼ日曜日

・2022.10.07-2023.01.22
野口里佳(仮称) @ 東京都写真美術館

・2022.10.08-12.18
川内倫子展 @ 東京オペラシティ アートギャラリー

・2022.10.15-2023.01.29
ゲルハルト・リヒター展 @ 豊田市美術館

・2022.10.22-2023.01.09
すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合 @ 国立国際美術館・大阪中之島美術館

・2022.10.22-2023.01.22
内藤 礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022 @ 神奈川県立近代美術館葉山館

・2022.12.01-2023.03.26
六本木クロッシング2022展 @ 森美術館

・2022.12.17-2023.03.05
交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー @ 東京都庭園美術館

・2022.12-2023.06
クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ @ 東京都現代美術館

・2023.01.13-04.02
生誕100年 柚木沙弥郎展 @ 日本民藝館

・2023.01.18-03.26
泉太郎展 @ 東京オペラシティ アートギャラリー

・2023.01.26-04.09
エゴン・シーレ展(仮称) @ 東京都美術館

・2023.02.25-05.14
戸谷成雄展 @ 埼玉県立近代美術館

・2023.03.20-06.04
ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築 @ 森美術館

・2023.04.27-08.20
マティス展 Henri Matisse: The Path to Color @ 東京都美術館

・2023.12.09-2024.03.10
横浜トリエンナーレ2023 @ 横浜美術館、プロット48

・2021.09.15-12.13
「マティス 自由なフォルム」@ 国立新美術館

・2022.05
ピナ・バウシュ 「春の祭典」@ Bunkamuraオーチャードホール

QRコード
QR