Roger Hiorns @ CentrePasquArt

来週末に控えたグループ展の搬入に向けて、今週はバリバリ働く予定だったのに、頼んでいた素材がまさかの超ロークオリティで上がってきて全部返品という事態に。スイスクオリティ信じてただけにめっちゃショック。道具も先日壊れ再注文してるところで、結局今週はやることなくなってしまったので、気晴らし(現実逃避)に遠出。
Roger Hiornsの展覧会がスイスでやってると先日知り、Bielという町まで。
Roger Hiornsといえば、2009年に見たSEIZUREが鮮明。
Roger Hiorns 'SEIZURE' @ 151-189 Harper Road
家の内部をすべて結晶化させるという荒技をやってのけ、その年のターナー賞にもノミネートされましたが、惜しくもRIchard Wrightに持っていかれました。まあ、あれは仕方ない。Wright良すぎた。
で、今回どんなことやってるんだろうと思いつつ行ってきました。
Bielという町は、某旅行雑誌にも数行しか載ってない感じですが、思ったより都会でびっくりした。
駅から10分ほど行ったところにその会場はあって、そのアートセンターがめちゃくちゃよかった。
アートセンターといってももう美術館規模。
新館と旧館とにわかれてて、旧館は元病院。
いじり具合が絶妙で、昔の面影も残しつつちゃんとギャラリーになってる。
以前は塩田千春展なんかもやってたみたいで、中堅作家を扱うような感じ。
キュレーションもしっかりしていて、行った時は二つの写真展(Sebastian Stadler、Simon Rimaz)とRannva Kunoyというこれまた70年代生まれの中堅ペインターをしっかり見せてた。
どれもクオリティが高くてかなり見応えがあった。
特にRannvaは作品数が多くてすごかった。
で、最上階がHironsだったんですが、旧館の方は正直よくわからなかった。
最近彼は、若い裸の青年を使ったパフォーマンスと彫刻(ファウンドオブジェクト)を組み合わせたような作品をやってて、テキスト読むと、どうやら政治的な問題にも言及してるんだけど、パフォーマンスやってない時に行ってもパッとしない。
彫刻の上で何かを燃やした跡があって、それがひたすら各部屋に並んでる。
うーん、と思いつつ新館へ。僕の求めるHiornsはこっちでした。


車の部品を200個組み合わせて天井から吊るしてて、幾つかからは泡が出てる。
壮観なインスタレーションでした。
ちなみにパフォーマンスは、3月の8、22、29にやるみたい。展覧会は4月5日まで。
こんなとこまで来るアジア人が珍しいのか受付で色々聞かれた笑
スイスの中でも相当質の高いアートセンターでした。CentrePasquArt
さて、この日は、スイス交通1日乗り放題みたいなチケットを買ったのでついでにバーゼルまで。
バーゼル美術館現代美術館では、「One Million Years -System and Symptom」という企画展がやってて、タイトル通り、昨年亡くなった河原温のOne Million Yearsが出ていて、作家もVito AcconciやJosef Albers, Christian Boltanski, Thomas Demand, Sol Lewitt, Bruce Nauman, Simon Starling等超豪華。
システムと記号というテーマを持ちつつ、河原温のひとつの作品を中心に回っていくものと思って、これは自分好みのキュレーションだろうとかなり期待していったら正直がっかりでした。
展示も普通に作品が並んでるって感じで連関が感じられなかったし、河原さんのOne Million Yearsも出品作のひとつって感じで、じゃあなんでタイトルにつけたんだと言いたくなるような感じ。こういうのは普通冒頭にデデンと置くべきでしょ。
でもまあ、この美術館のすごいのは、全部無料ってところ。
しかもひとつひとつの作品を解説したしっかりした冊子ももらえてびっくり。
さらに上の階では「セザンヌからリヒターまで」という超豪華なコレクション展と、ボイスのインスタレーションで埋め尽くしたフロアまであって、こんなのが無料で見られるなんてという衝撃。
コレクション展では、先日マルティニーのピエール・ジアナダ財団美術館で見て惚れたホドラーの作品があって、これまたよかった。
ボイスもかなり見応えがあるインスタレーションでした。
ちなみにOne Million Yearsの次は、2011年のターナー賞受賞者Martin Boyceの個展が4月25日からスタート。コレクション展とボイスの展示は来年まで。
本館の方は来年Christ & Gantenbeinによる新館が来年の竣工に向けて工事中。
http://www.kunstmuseumbasel.ch/en/home/
ウェブサイトの展覧会のページにはキュレーターの名前がちゃんと載っててこれはいいなと思う。
ターナー賞といえば、2008年の受賞者のMark Leckeyの個展もKunsthalle Baselで3月6日から始まるみたい。こちら。なぜかアートバーゼルには被らず5月31日までなので、5月にBoyceと合わせて観にこれたらいいな。
アートバーゼルに向けてバーゼルでは、現在テートモダンで開催中のMarlene Dumas展がバイエラー財団美術館に回ってきたり、ティンゲリー美術館ではHaroon Mirza展が開催だそうです。ティンゲリー美術館は今匂いに関する企画展がやってるみたいで、H3Kでやってた池田亮司展なんか行かずそっち行けばよかったと思った。
あと、現代美術じゃないですが、Museum der Kulturenでやってる袈裟展がいいと知人に勧められて観に行きました。
スイスに来てまで袈裟ですか、、、と思いつつ行ったんだけど、めちゃくちゃよかった。
何がよかったって、キュレーションが素晴らしすぎた。
キュレーターの袈裟に対する熱い思いがまず会場で配られてる紙に表れてて、なんと20ページ文字でびっしり!!単なる説明というよりエッセイですね、これは。
そして、もうディスプレイがかっこよすぎた。
Herzog & de Meuronによる使いにくそうな屋根の形状もなんのその、袈裟を鉄板の上に一枚一枚丁寧に並べるという。鉄と布のコントラストが本当に美しくて泣きそうになった。
パッチワークという観点から現代ヨーロッパ作家のテキスタイル作品も合わせて置かれてて、展覧会の幅も広げられてるし、お見事と言うほかない展示でした。
これは、先のバーゼル美術館にも学んでほしいですね。
この施設は、いわゆる民族博物館みたいな感じですが、常設の展示方法とかもめっちゃおしゃれで洗練されてて、日本のみんぱくも見習うべきと思った。
次回は、改修中のバーゼル美術館所有のホルベインやクラナッハの展示があるみたいなので、来た時はまた寄ろうと思います。こちら。



おまけ。ノヴァルティスのゲーリー館。滞在時間2分。

Olafur Eliasson 'Your Rainbow Panorama' @ ARoS










コペンハーゲンに次ぐデンマーク第二の都市オーフスへ。
第二といっても、かなり地方都市感が強く、コペンハーゲンからも電車で3時間。
以前ルイジアナに行った時に行こうと思ったけれど、3時間もかかるので断念しました。
しかし今回企画展もなかなか良さそうだったので、行ってみました。
結果として行って大正解。
この美術館自体が本当に素晴らしくて、日本でいう金沢21世紀美術館。
平日にもかかわらず凄まじい客の数で、どこもかしこも人人人。
ほぼ現代美術だけの美術館。しかもこんな地方都市でこれだけの集客はすごい。
この美術館の目玉はいくつかありますが、なんといっても屋上のオラファーの「Your Rainbow Panorama」という、虹色の回廊でしょう。
虹色に移りゆくオーフスの町並みを一望するのはとても素晴らしい体験でした。
そして企画展もいくつか。
そのうち「Out of the Darkness」という展覧会でもオラファーの素晴らしい作品が。
金沢でも見た「Your atmospheric colour atlas」です。
もう子供達大はしゃぎで、虹の霧の中を迷子になりまくってました。
さすがデンマークの作家だけあって格別の扱いですね。





もう一つの目玉はロン・ミュエックがヴェニスで昔発表した「BOY」。ここにあったとは!



それから、企画展で、カーディフとミラーがやってました。
むしろこの展覧会がやってたからこそ来たようなものだったんですが、正直期待外れ。
彼らの過去作から6つのインスタレーションを展示していて、その中には越後妻有で発表して、今は豊島に常設されてる「STORM ROOM」もありました。
が、彼らの場合、サイトスペシフィックな傾向が強いので、ただただ再現しただけでは、所詮オリジナルの劣化版という感じしかしなくて残念。
カナダの片田舎で発表した「OPERA FOR A SMALL ROOM」という、部屋のインスタレーションも再現されてましたが、オリジナル見てなくても、うーんって感じでしたね。
彼らを有名にした、スピーカーに囲まれて賛美歌を聞くあの「THE FORTY PART MONET」も、ホワイトキューブで聞くのでは、なんの感動もなく。。。
オリジナルでは教会の中でしたが、僕が見たのはかつてのサントリーミュージアム。
あの海の風景を借景にして聞いたあの賛美歌は本当に感動的でした。
すべてが安っぽく見えてしまって彼らの魅力が相当半減してしまって残念でした。

また、地下ではタレルやネシャッド、ピピロッティなど錚々たるメンバーの常設インスタレーション9部屋という贅沢仕様。
1時間半ぐらいしかいられなかったのですが、もっとゆっくり見てみたかったです。
デンマーク来る機会があれば、遠いけどルイジアナと合わせてぜひ寄ってみるべき美術館です。
ARoS: http://en.aros.dk
ちなみに只今ホテルのロビーにある、ヤコブセンのエッグチェアに座りながら書いてます。
デンマーク、満喫!
明日は数時間でスウェーデンを回ってスイスに帰ります。。。

<関連記事>
Olafur Eliasson 'Contact' @ Foundation Louis Vuitton
Olafur Eliasson 'Riverbed' @ Louisiana Museum of Modern Art
Olafur Eliasson 'Colour activity house' @ 金沢21世紀美術館
オラファー・エリアソン「あなたが出会うとき」@金沢21世紀美術館
Olafur Eliasson 'SUNSPACE FOR SHIBUKAWA' @ HARA MUSEUM ARC
Steilneset Minnested by Peter Zumthor

いきなりブレブレの画像ですいません。。。
バーゼルから北欧の旅へ。
北極圏に浮かぶ、ノルウェイ最北東の島ヴァルドーへ向かいました。
キルケナスという街からプロペラ機で移動するはずが、強風によりあっさりキャンセル。
代わりにバスを出してくれたものの、飛行機なら15分で着くところを4時間もかけて移動。
冬の北極圏は午後3時にはほぼ日が沈むので、着いた頃にはほぼ真っ暗。。。
それでも負けじと向かった先は、ズントーによるスティールネセト・メモリアル。
真っ暗の中三脚もなく撮ったのでほとんどブレてます。日が沈む前に見たかった。。。
これは、17世紀に巻き起こった魔女狩りによる犠牲者を追悼するために建てられた建物。
建物というより、見た目は、長いサーフボードが、木組みの中に浮いている様。
中に入ると窓がたくさんあって、その窓ひとつひとつに電球がぶら下がっている。
その傍らに、魔女狩りで犠牲になった91人分の名前などの情報が載っている。
昨年訪れたひめゆりの塔を思い出した。
ひたすら長い廊下を歩みながら、犠牲者の御霊の間を通り抜けるような体験でした。




そばにはルイージュ・ブルジョワによる作品も展示されていて、真ん中に置かれた椅子から火が吹いていて、巨大な鏡がその椅子を取り囲んでいるインスタレーション。


この施設の詳しい情報はこちらがわかりやすいです。
ちなみにここには誰もいなくて、常に開いてる状態なのかも。
それにしても雪で道無き道を行くのは大変でした。。。
バスの中で、こんな島にくる日本人がいるのかという感じで、遠い親戚が魔女狩りにあったのか?とか、魔女狩りの研究をしているのか?などの質問が。
帰りに寄ったカフェでも、珍しがられて魔女狩りの資料などをたくさん見せてもらいました。
今考えれば本当に馬鹿げたことですが、裁判資料が事細かに残っていて驚きでした。
帰りの飛行機は遅れて到着したものの無事飛んでくれてよかった。15分でキルケナスへ。
ちなみにこのキルケナスでは、その前夜オーロラツアーに参加しました。
アイスランドで見れなかったので、リベンジでしたが、空いっぱいに降ってきそうなほどの光のカーテンが見事に見られました!!
しかも満天の星空で、本当に素晴らしかった。一生の思い出です。
半信半疑でKitcameraというアプリをDLしといて、iPhone用の三脚も用意して撮ったら見事に写りました!

さて、明日からデンマークへ。ルイジアナ以来また来ることがあるとは。
<関連記事>
Peter Zumthor
KOLUMBA by Peter Zumthor
Bruder-Klaus-Feldkapple by Peter Zumthor
Kunsthaus Bregenz by Peter Zumthor
Shelter for Roman Ruins by Peter Zumthor
Kapelle Sogn Benedetg by Peter Zumthor
Therme Vals by Peter Zumthor
Atelier Zumthor by Peter Zumthor
Vitra Haus by Herzog & de Meuron





2007年以来約8年ぶりにバーゼル近郊にあるヴィトラの工場に行ってきました。
vitra.
あれからまたヘルツォーグ&ド・ムーロンによるショールームが増えてました。
家の形を何個も積み重ねたような。どう見ても藤本壮介にしか見えない。。。
色はすぐ近くにある白いゲーリーのミュージアムと対となるようなダークカラー。
中は案外機能的に使われてました。階段がゲーリーっぽかった。
そしてさらに今年の10月には同じく彼らによって新たなミュージアムがオープンするそうです。
場所はザハのファイヤーステーションの真横。すごい。。。
これに合わせて新たなゲートが作られててこのゲートはシザが設計。どんだけ。

そして、同じく2007年以降に建ったものといえばSANAAによる工場。
こちらは12時からのツアーに参加しないと見れません。
ドローイングがすごい笑 いびつに歪んだ円形。上から見てみたい。
ファサードにはカーテンのようなアクリルが掛かっていてエレガントです。
グリムショーによる工場とつなぐ通路もSANAAらしい曲線。
中は写真の許可は許されませんでしたが、パイプも何もかも真っ白で美術館のよう。
この日は雪の曇天だったけど、自然光だけでそれでも明るかった。






最後に昨年この工場地帯ができて25周年を記念して、カールステン・フラーによるスライダーができたようです。建築家だけでなく野外彫刻も増えていったら楽しそうだなと思いました。

改めて回ってみて、ザハのファイヤーステーションは名作だなと思いました。
今のオーガニックな曲線より、パースペクティブが異常にかかったようなデザインは今でも秀逸。
処女作ということもあって、ディテールが凝りに凝ってて素晴らしかったです。
ちなみにバーゼルではもうひとつ、2007年以降ノヴァルティスキャンパスに新たに建てられたゲーリーの建物を見に行こうかとも思ってましたが、寒すぎ&しんど過ぎで断念。年取りました。
昔のノヴァルティスの記事はこちら。
「マルメロの陽光」by ビクトル・エリセ
午前は読書、午後は制作、夜は映画鑑賞という老後のような生活をしています。
映画は、探せば色々落ちてて、デヴィッド・リンチやアッバス・キアロスタミの作品を観ました。
中でもキアロスタミの「クローズアップ」は衝撃。
実際に起きた事件を改めて映画というフィクションに収め直して、現実と映画の境を曖昧にしてしまうという手法でかなり面白かった。
で、今回紹介する「マルメロの陽光」の場合は、方法論としてはその逆というか、現実を映画のように撮ってしまうことで、映画と現実の境をぼかすという手法です。
この映画は、一昨年東京でも展覧会が開催されたアントニオ・ロペスを追ったドキュメンタリー映画なんですが、この撮り方が本当にすごい。
あまりの映画っぽさに最初ドキュメンタリーって気づかなくて、ロペスも誰かが演じてるのだと思い込んでたんですが、途中から、それにしても絵うますぎやろ!ってなって気づきました笑
この映画っぽいって一体何なんだろうと。
単純に映像が美しいってのはやはりあります。
ドキュメンタリー映画って独特のラフさがあるんだけれど、この映画はとことん固定カメラで撮られているし、画面の中でのものの収まり方が完璧なんですよね。
ロペスの制作と彼のアトリエの入ってるビルの改装工事が同時に撮られていて、その構成もあまりに出来すぎてるし、なんといっても人々のカメラの意識のしなささがすごい。ここまでカメラを無視して毎日の営みを続行できるもんなのかというぐらい自然。
エリセがどこまで演出してるのかがすごく気になります。
内容も非常に興味深くて、緻密画で知られるロペスがどんな風に作品を制作しているかが丸裸にされていて、水平線と垂直線を現実のモチーフにも描いてるのはやはりこの画家ならでは。
マルメロが成長すると木がたわんで、たわむ度に線を描きなおす。
見えない時間と重力が画家によって可視化されていきます。
最後は結局描き終えられませんが、彼のモチーフに対する執念は見事。
彼のひとつひとつの所作がすごく美しいです。
そして、マルメロに落ちる光を描き出そうとする画家の姿がとても印象的。
今自分の作っている作品のテーマが「画家が見ていた光」なので、個人的にこの映画はとても大きな示唆を与えてもらえました。
特に野外で何かを集中していると、風の動きや光の移動にとても敏感になります。
あの感覚って写真では写し取れないし、彫刻では彫れない。
やはり画家が時間をかけて描くことで見いだせる感覚だと思います。
その感覚がこの映画に溢れていてとても新鮮でした。
エリセは本当に寡作な作家で、この作品を最後に長編は制作していません。
というか、長編といったら、デビュー作の「ミツバチのささやき」(1973)と「エル・スーレ」(1982)とこの「マルメロの陽光」(1992)の3作だけ。どれも10年スパンです。
「ミツバチのささやき」は、本当に素晴らしい映画で、「フランケンシュタイン」という別の映画に、さらにかぶせるようにして撮ってる構成がすごい。
そして何と言ってもこちらは闇の描写が素晴らしい。
闇すぎて、昔テレビで見た時、画面に部屋が反射しすぎて全然集中して見れなかった記憶があります。
いつか映画館で観てみたい作品の一つです。
またエリセの作品で、「Lifeline」という短編があって、こちらは白黒で撮られているので、彼の撮る光の美しさがよりわかります。
長編でまた新たな作品観てみたいです。
というか、これらの監督の映画が日本のDVDで生産中止になってるのはいかがなものかと。
「マルメロの陽光」なんて今amazonで見たら25000円って。。。
Blue-rayも出てないし、なんとかしてほしいです。。。