Manifesta 10 @ The State Hermitage Museum

昨年モスクワを訪れた際、予定が組めずに行けずじまいにいたサンクトペテルブルク。
かつてのロシアの首都であり、なんといっても三大美術館のうちの1つエルミタージュのある街。
今年そのエルミタージュで、ヨーロッパ内を移動しながら開催されるビエンナーレ、マニフェスタが開催されると聞き、これは絶好のチャンスと旅程を組みました。
サンクトペテルブルクはヘルシンキから電車で3時間ちょっとで行けるという情報を得て、それなら前回行ったモスクワからより行ったことのないフィンランドも行けるし一石二鳥ということで、ヘルシンキーサンクトペテルブルクセットにしたのです。ということでぶっちゃけヘルシンキはおまけでメインはこっち。
1泊2日とは言え日本人にとってロシアはたとえ数時間の滞在でもビザのいる国。
また豊中まで出向いてビザ取ってきました。めんどい。。。
電車で入ると国境越えたあたりで検査官が何人も入ってきてビザを詳しくチェック。ものものしい。
無事検査も通過してサンクトペテルブルク到着です。
一路エルミタージュへ!

マニフェスタは前述の通り、ヨーロッパ内を移動していく珍しいビエンナーレ。
今年で10回目迎えるこのビエンナーレは1996年にオランダのロッテルダムから始まり、これまで第2回ルクセンブルク、第3回リュブリャナ(スロベニア)、第4回フランクフルト(ドイツ)、第5回ドノスティア=セバスティアン(スペイン)、第7回トレンティノ=アルト・アディジェ/南ティロル自治州(イタリア)、第8回ムルシア(スペイン)、第9回リンブルフ(ベルギー)と回ってきました。(第6回のニコシア/キプロスは中止)
ちなみに次回2016年に開催予定の第11回はチューリッヒに決定しています。
このように、各地を回ることで、その土地が抱える歴史や地政学を取り込みながら作家とキュレーターがそれらの要素をどう組み込んで行くかが問われます。そしてあまり聞いたことのないような土地を回ってるのもおもしろいですね。回を重ねて行くことでヨーロッパの輪郭を改めて問い直すようなビエンナーレです。
今年選ばれたサンクトペテルブルクは、ヨーロッパとアジアの玄関口とも言えるような土地で、さらに歴史を持つエルミタージュを会場とすることで、時間と空間がどう織りなされるのか。
チーフ・キュレーターを務めるのはミュンスター・プロジェクトのディレクターでもあるカスパー・ケーニヒ。
実際全体を観て、ほとんどの作家は新作を発表していて、しかもそれらはロシアやエルミタージュに関連したもの。過去作をピックアップしてきてキュレーターの都合のいいように並べられた展覧会より遥かに見応えがあるのは当然。現存作家を取り扱うようなビエンナーレトリエンナーレはやはりこうあるべきだと思います。テーマに合わせて有名作家の過去作を並べて、しかも美術館でやるようなものならただの企画展でいいわけで。2年や3年に1度定期的になされるんだから、なによりその蓄積が大事だと思います。なぜ定期的に繰り返されるのか。こうしたビエンナーレを観ると改めて「正常」な感じがします。
ひとつひとつ観て行くと、まず大きく2会場に分かれています。
エルミタージュ美術館のメイン会場、所謂冬宮と、その前に湾曲して建つ旧参謀本部(The General Staff Building)。冬宮は広すぎるので別日にしてまずは旧参謀本部から。
この建物の中は驚く程新しくて綺麗。普段は何に使われてるんだろうか。企画展とかかな。
まずは最上階から。
そしていきなりマティスです。やられた。
普段は冬宮に架けられているマティスのコレクションが一同に会しています。
ロシアといえばマティスコレクションで有名。
エルミタージュにはたくさんのマティスコレクションがあって、中でも「ダンス」と「音楽」は秀逸。
この2作を観れただけでも来た甲斐がありました。。。
マティスだけで5部屋あります。すごい。
負けず劣らず大きな部屋を専有しているのはティルマンス。
彼の写真がたゆたうように大小様々、形も様々にインスタレーションされてます。
(今書きながらこのフロアの展示半分観てないことに気づいた。。。orz)
気を取り直して3階へ。ここで特筆すべきなのはフランシス・アリスでしょうか。後で触れます。
ナウマンのアトリエを映した有名なインスタレーションもあったけど、イマイチ文脈が理解できない。
2階は吹き抜けになってて、大型の作品が次々と登場。
中でも度肝を抜くのがヒルシュホンの作品。なんじゃこりゃ。。。
段ボールなどのチープな素材でできた廃墟。
ちょっとガザを彷彿とさせますが、家はロシアの昔ながらのアパートを模してる。
部屋の中にはマレーヴィッチなどのロシアアヴァンギャルドの絵が架けられている。
ウクライナとのことにも抵触しそうでちょっとハラハラする。

個人的に好きだったのはErick Van Lieshoutの半年エルミタージュのネコたちと暮らすプロジェクト。
ネコたちの寝床を作ったり様々な方法でネコと絡む。
エルミタージュはネズミ捕り用に地下室にネコを飼ってるんですよね。
そこに作家が暮らしたドキュメンタリーはすごい。

あと、Elena Kovylinaのエルミタージュ前の広場でたくさんの人たちが椅子の上に立ってるパフォーマンスもよかった。これは皆が同じ背の高さになるように一人一人特注で椅子が作られていて、観ていて気持ちいいです。モスクワビエンナーレでも観ましたが、今回のマニフェスタ用に再制作されたようです。

他にもカヴァコフ夫妻やフォルステルの作品もありましたが割愛。
マニフェスタの2/3の作品はこの旧参謀本部で展示されてます。
続いていよいよ冬宮です。
8月なのに15度とか寒過ぎ。凍えながら開館を待つ。
30分ほど待ってようやく入場。
中はルーブルよりも豪華絢爛。広過ぎ。
全部回り終わった頃にはくたくたでした。
まずはヘルシンキでも観た西野達の作品。
最初なんのことかわからなかったんですが、ここでは彫刻ではなくエルミタージュにあるシャンデリアに併せて家が造られてました。


冬宮は場所が強過ぎて、やはりほとんどの作家が苦戦してる感じでした。
大御所リヒターやボイスやブルジョワもありましたがとってつけた感。うーん。


中でも一番成功していたのはLara Favarettoの作品かも。
クラシックな空間と彫刻の間に無造作に置かれるコンクリ−トの塊。
これだって彫刻なんだぜと言わんばかりのドヤ顔で置いてあるのがおもしろかったです。
なのに空間と不思議に調和してるんですよね。よかった。

あとはところどころに森村さんの作品もあったけど、これだけ引用できそうな作品が詰まった冬宮でまさかの引用はなし。エルミタージュで模写する画家の写真でした。うーん。
最後に中庭に展示(?)されてたフランシス・アリス。
なんでも子供の頃からお兄ちゃんと一緒にロシアカーに乗って「鉄のカーテン」の向こう側を観たかったらしく、今回の展示ではその夢を叶えるべくベルギーからこの車にのって最後はエルミタージュの中庭の木にクラッシュしてゴールみたいな物語。旧参謀本部ではそのドキュメンタリーのような映像も展示されてました。いいですね。

こんな感じで鑑賞終了。冬宮は本当に広くて疲れた。
マニフェスタ観ながらカラヴァッチョやルーベンスなんかも観られるのはおもしろかった。
これで三大美術館制覇!生き急いでます。
マニフェスタは10月31日まで。その頃には多分めっちゃ寒いです。
Mnifesta10 website: http://manifesta10.org/
おまけ。エルミタージュのネコ。入場待ってたら突如登場。ロシア人同様ツンデレ。
