Taipei Biennale 2014

台湾最後の記事。
ニコラ・ブリオーのキュレーションする台北ビエンナーレに行ってきました。
ニコラ・ブリオーといえば、パレ・ド・トーキョーのディレクターとしても有名ですが、なんといっても90年代を席巻したアートセオリー「関係性の美学」の著者。そんな彼がこの台北でどんなキュレーションをするのか非常に楽しみにしていました。
それにしても、日本はいつまで国内人だけでビエンナーレトリエンナーレをまわしていくつもりなんでしょうか。お隣の韓国も台湾もとっくの前から各国のキュレーターを呼んできて革新的な展覧会を開催しているというのに。。。正直ヨコトリはもう行く気にすらなりませんよ。
あと、この「関係性の美学」もいつになったら邦訳が出るのやら。名前だけが先行している。
韓国や中国では続々と重要書籍が訳されて出版されてます。やばいなぁ。
それはそうと台北ビエンナーレです。
会場は台北市美術館のみ。といっても1階から3階まで結構なボリュームでした。
なぜかこの日は無料。ラッキー。
タイトルは「THE GREAT ACCELATION (大加速時代)」。
副題(?)に'A TRIBUTE TO THE COACTIVITY AMONGST HUMANS AND ANIMALS, PLANTS AND OBJECTS'とついてて、展覧会のタイトルとは思えない不思議な雰囲気。
どうやらブリオーは人間中心と批判されてきた自身の「関係性の美学」を大きく刷新しようとしている模様。
実際「関係性」を感じさせるのは冒頭のブラジルグループOPAVIVATA!の作品や、Surasi Kusolwong の毛糸の山から、金のネックレスを捜すインスタレーションぐらい。


大加速時代を物語るのに「労働」というキーワードがあって、それを示唆するのが台湾の作家Po-Chin Huangの服をひたすら清算してる作品と、同じく台湾のHung Chin Pengの3Dプリンターで船を造ってる作品。




人間の営為の空しさを感じたのはイギリスのRoger Hironsの飛行機のエンジンを粉々に砕いて床に敷き詰めた作品と、シマブクの亀師匠(笑)、それからMika Rottenbergの謎の行為をひたすら繰り返す映像。これは麻薬感があってずっと見ちゃう。




あと不思議な進化を遂げた生き物の骨を展示したChun Teng Chuや、猿の惑星のような猿人がひたすら何か喋ってるNathaniel Mellorsのインタビュー映像なんかも今回のテーマに合ってたと思う。


全体的に、美術館の空間を大幅に変更するような規模の大きい作品が多かったのも特徴的。特にJonah Freeman & Justin Loweの作品は、地図からもはみ出る程美術館の内部を侵略しててすごかった。



まあ、こんなとこでしょうか。
正直展覧会としてそこまでおもしろいものではなかったけれど、キュレーションを読み解いていく楽しさはやっぱりありましたね。
現在韓国で開催中の光州ビエンナーレも気になるところですが、これはさすがに行けない。
最近世界的にビエンナーレトリエンナーレが改めて活気づいてる気がする。
それはやはりスターキュレーターの台頭が大きいですよね。
来年のヴェニスやインスタンブールなんかも気になります。
日本も早くこの世界的な潮流に乗っかってほしいところですがどうなんでしょう。
台北ビエンナーレは来年の1月4日まで。http://www.taipeibiennial2014.org
ブリオーのインタビューはこちら。
台湾大学社会科学部棟 by 伊東豊雄
台中メトロポリタンオペラハウス by 伊東豊雄

お陰様で私無事31歳、このブログ9歳(!)を迎えました。
記念すべき日の投稿は伊東豊雄氏による台中メトロポリタンオペラハウスです。
ってことでピーチで台湾は高雄へ乗り込みまずは前の投稿の高雄国家体育場を観てきました。
龍がトグロを巻いたような独特のスタジアム。あそこまで透明なスタジアムは初めて見ました。
当日は中学の陸上大会がやってて普通に入れちゃいました。ラッキー。
その後長距離バスで台中へ。
お目当てのオペラハウスはまばゆかったです。。。
なんせ、僕が建築に目覚めたのが2006年に観た伊東さんのサーペンタインパヴィリオンで、その後のオペラシティの展覧会でメインに据えられてたのがこの建物。あれから8年。。。感慨深いです。
竣工までもう少しありますが外観はほぼ出来上がってましたね。
中は一体どんなことに。。。
竣工したらまた駆けつけます!














Manifesta 10 @ The State Hermitage Museum

昨年モスクワを訪れた際、予定が組めずに行けずじまいにいたサンクトペテルブルク。
かつてのロシアの首都であり、なんといっても三大美術館のうちの1つエルミタージュのある街。
今年そのエルミタージュで、ヨーロッパ内を移動しながら開催されるビエンナーレ、マニフェスタが開催されると聞き、これは絶好のチャンスと旅程を組みました。
サンクトペテルブルクはヘルシンキから電車で3時間ちょっとで行けるという情報を得て、それなら前回行ったモスクワからより行ったことのないフィンランドも行けるし一石二鳥ということで、ヘルシンキーサンクトペテルブルクセットにしたのです。ということでぶっちゃけヘルシンキはおまけでメインはこっち。
1泊2日とは言え日本人にとってロシアはたとえ数時間の滞在でもビザのいる国。
また豊中まで出向いてビザ取ってきました。めんどい。。。
電車で入ると国境越えたあたりで検査官が何人も入ってきてビザを詳しくチェック。ものものしい。
無事検査も通過してサンクトペテルブルク到着です。
一路エルミタージュへ!

マニフェスタは前述の通り、ヨーロッパ内を移動していく珍しいビエンナーレ。
今年で10回目迎えるこのビエンナーレは1996年にオランダのロッテルダムから始まり、これまで第2回ルクセンブルク、第3回リュブリャナ(スロベニア)、第4回フランクフルト(ドイツ)、第5回ドノスティア=セバスティアン(スペイン)、第7回トレンティノ=アルト・アディジェ/南ティロル自治州(イタリア)、第8回ムルシア(スペイン)、第9回リンブルフ(ベルギー)と回ってきました。(第6回のニコシア/キプロスは中止)
ちなみに次回2016年に開催予定の第11回はチューリッヒに決定しています。
このように、各地を回ることで、その土地が抱える歴史や地政学を取り込みながら作家とキュレーターがそれらの要素をどう組み込んで行くかが問われます。そしてあまり聞いたことのないような土地を回ってるのもおもしろいですね。回を重ねて行くことでヨーロッパの輪郭を改めて問い直すようなビエンナーレです。
今年選ばれたサンクトペテルブルクは、ヨーロッパとアジアの玄関口とも言えるような土地で、さらに歴史を持つエルミタージュを会場とすることで、時間と空間がどう織りなされるのか。
チーフ・キュレーターを務めるのはミュンスター・プロジェクトのディレクターでもあるカスパー・ケーニヒ。
実際全体を観て、ほとんどの作家は新作を発表していて、しかもそれらはロシアやエルミタージュに関連したもの。過去作をピックアップしてきてキュレーターの都合のいいように並べられた展覧会より遥かに見応えがあるのは当然。現存作家を取り扱うようなビエンナーレトリエンナーレはやはりこうあるべきだと思います。テーマに合わせて有名作家の過去作を並べて、しかも美術館でやるようなものならただの企画展でいいわけで。2年や3年に1度定期的になされるんだから、なによりその蓄積が大事だと思います。なぜ定期的に繰り返されるのか。こうしたビエンナーレを観ると改めて「正常」な感じがします。
ひとつひとつ観て行くと、まず大きく2会場に分かれています。
エルミタージュ美術館のメイン会場、所謂冬宮と、その前に湾曲して建つ旧参謀本部(The General Staff Building)。冬宮は広すぎるので別日にしてまずは旧参謀本部から。
この建物の中は驚く程新しくて綺麗。普段は何に使われてるんだろうか。企画展とかかな。
まずは最上階から。
そしていきなりマティスです。やられた。
普段は冬宮に架けられているマティスのコレクションが一同に会しています。
ロシアといえばマティスコレクションで有名。
エルミタージュにはたくさんのマティスコレクションがあって、中でも「ダンス」と「音楽」は秀逸。
この2作を観れただけでも来た甲斐がありました。。。
マティスだけで5部屋あります。すごい。
負けず劣らず大きな部屋を専有しているのはティルマンス。
彼の写真がたゆたうように大小様々、形も様々にインスタレーションされてます。
(今書きながらこのフロアの展示半分観てないことに気づいた。。。orz)
気を取り直して3階へ。ここで特筆すべきなのはフランシス・アリスでしょうか。後で触れます。
ナウマンのアトリエを映した有名なインスタレーションもあったけど、イマイチ文脈が理解できない。
2階は吹き抜けになってて、大型の作品が次々と登場。
中でも度肝を抜くのがヒルシュホンの作品。なんじゃこりゃ。。。
段ボールなどのチープな素材でできた廃墟。
ちょっとガザを彷彿とさせますが、家はロシアの昔ながらのアパートを模してる。
部屋の中にはマレーヴィッチなどのロシアアヴァンギャルドの絵が架けられている。
ウクライナとのことにも抵触しそうでちょっとハラハラする。

個人的に好きだったのはErick Van Lieshoutの半年エルミタージュのネコたちと暮らすプロジェクト。
ネコたちの寝床を作ったり様々な方法でネコと絡む。
エルミタージュはネズミ捕り用に地下室にネコを飼ってるんですよね。
そこに作家が暮らしたドキュメンタリーはすごい。

あと、Elena Kovylinaのエルミタージュ前の広場でたくさんの人たちが椅子の上に立ってるパフォーマンスもよかった。これは皆が同じ背の高さになるように一人一人特注で椅子が作られていて、観ていて気持ちいいです。モスクワビエンナーレでも観ましたが、今回のマニフェスタ用に再制作されたようです。

他にもカヴァコフ夫妻やフォルステルの作品もありましたが割愛。
マニフェスタの2/3の作品はこの旧参謀本部で展示されてます。
続いていよいよ冬宮です。
8月なのに15度とか寒過ぎ。凍えながら開館を待つ。
30分ほど待ってようやく入場。
中はルーブルよりも豪華絢爛。広過ぎ。
全部回り終わった頃にはくたくたでした。
まずはヘルシンキでも観た西野達の作品。
最初なんのことかわからなかったんですが、ここでは彫刻ではなくエルミタージュにあるシャンデリアに併せて家が造られてました。


冬宮は場所が強過ぎて、やはりほとんどの作家が苦戦してる感じでした。
大御所リヒターやボイスやブルジョワもありましたがとってつけた感。うーん。


中でも一番成功していたのはLara Favarettoの作品かも。
クラシックな空間と彫刻の間に無造作に置かれるコンクリ−トの塊。
これだって彫刻なんだぜと言わんばかりのドヤ顔で置いてあるのがおもしろかったです。
なのに空間と不思議に調和してるんですよね。よかった。

あとはところどころに森村さんの作品もあったけど、これだけ引用できそうな作品が詰まった冬宮でまさかの引用はなし。エルミタージュで模写する画家の写真でした。うーん。
最後に中庭に展示(?)されてたフランシス・アリス。
なんでも子供の頃からお兄ちゃんと一緒にロシアカーに乗って「鉄のカーテン」の向こう側を観たかったらしく、今回の展示ではその夢を叶えるべくベルギーからこの車にのって最後はエルミタージュの中庭の木にクラッシュしてゴールみたいな物語。旧参謀本部ではそのドキュメンタリーのような映像も展示されてました。いいですね。

こんな感じで鑑賞終了。冬宮は本当に広くて疲れた。
マニフェスタ観ながらカラヴァッチョやルーベンスなんかも観られるのはおもしろかった。
これで三大美術館制覇!生き急いでます。
マニフェスタは10月31日まで。その頃には多分めっちゃ寒いです。
Mnifesta10 website: http://manifesta10.org/
おまけ。エルミタージュのネコ。入場待ってたら突如登場。ロシア人同様ツンデレ。
