「ひろしま 石内都・遺されたものたち」
写真家石内都さんを追ったドキュメンタリーを観てきました。
彼女は2007年から広島平和記念館に寄贈された被爆者の方々の遺品を撮影し続けています。その遺品は毎年増え続けていて、その度に彼女は広島に赴き撮影しています。
2008年の最初の広島市現代美術館で開催された展覧会は僕も行って感銘を受けました。
石内都「ひろしま Strings of Time」@広島市現代美術館
その展覧会が新作も含めてバンクーバーに巡回した際のドキュメンタリーです。
もういいかな、と思いつつ、昨日の広島の平和記念式典を見てたらやはり観たくなって観てきました。
毎年のことですが、8月6日の8時15分は前の晩どんなに夜更かししても起きて黙祷を捧げます。
8月9日の11時2分も同様です。
そして式典の広島市長の挨拶は毎年胸を打ちます。
今年は特に自民党政権に戻ってからの式典。
どうしてあの場に阿部さんがいるのかもはや違和感しかなかったですね。
総理大臣という役目でしかないただの抜け殻。
あの式典を通して、国の不作法を世界に訴える広島市長。もうカオスです。
式典中継冒頭から、日本がこの4月に開かれたNPT(核不拡散条約)準備会議で日本政府が「核の非人道性」を非難する共同声明(80ヵ国が賛同)に署名しなかったことを伝えていてました。
もうこの国はどうなっちゃうんでしょうか。
今年これだけ暑いのに節電要請がありませんね。実際電力は余っているようです。ここでリアルタイム電力需給量がわかりますが笑けます。今日大阪37度もあったらしいのに!(回ってる途中死にかけました。。。)
今現在(2013年8月7日)稼働しているのは大飯原発3号炉、4号炉の2基のみ。これも9月には停止し再び稼働する原発は0に戻ります。それでも10月から電力会社は値上げ断行。矛盾を通り越して言葉も出ません。どこに原発を必要とする根拠があるのですか?
さらに、東電の汚染水漏れのニュース。。。こんなお粗末な技術を輸出する日本。
広島の記念碑に書いてありますね。「安らかに眠ってください 過ちは繰返しませぬから」
僕たちは本当にこの誓いを続けられるのでしょうか。
死んでいった人たちに顔向けできるのでしょうか。
僕は戦争を知りません。でも祖母や祖父が決して語りたがらなかったあの空気を通して僕は戦争を知っています。祖母も祖父も進んで語ろうとはしてくれなかったけれど、それでも僕には伝わっています。言葉ではなく背中で伝えられることもあります。知るレベルに層はあれど、たとえ薄皮一枚でも知っておきたい。それは目の当たりに知っている人からでないと伝えられないもの。その人たちの数は確実に減っています。
先日友人の子供に会いました。平成23年生まれと聞いて頭が回らなかったけど、この子達に自分は何を伝えられるんでしょうか。阪神大震災のこと。地下鉄サリン事件のこと。9.11のこと。3.11のこと。いっぱいいっぱい伝えたいことがありますが、言葉ではうまく伝えられません。あの時の空気は言葉を遥かに超えています。68年後、僕は97歳になっています。死んでいるかもしれません。それでも薄皮一枚彼らに手渡せたらいいな、と思います。
その手渡す作業を作品を通じてやってるのが石内さんですね。
この映画でも、国を超えて様々な人々の心を揺さぶっていました。
これまでのヒロシマという過去から、ひろしまという現在へつなぐ営み。
(ここでカタカナでなくひらがなを採用しているのは大きいですね。フクシマもそうですが、カタカナになった途端に突き放される印象があります。まあ外国では通じないですが)
映画の中で、広島の被爆者の女性と結婚したカナダ人の方のお話は胸を打ちました。
彼は散々アジア人は野蛮で劣った民族だと教育されてきて、実際日本に行ってみて美しい町並みと礼儀正しい人々に出会い、そこで人生の伴侶まで見つけてしまいます。
こういうのを聞くと自分の日本人としての誇りが蘇ります。
また、韓国人の観客の声を聞けたのもよかった。日本人は被害者だけでなく加害者であったことも忘れてはいけません。
とまあ、石内さんの作品に対しては色々思うことがありましたが、この映画自体はドキュメンタリーとして評価はできません。スローモーションの多用、切れ切れのコメント、音楽の入れ方。そのどれもが観ていてノイズにしか感じられませんでした。
なので映画自体はお勧めできませんが、改めて石内さんの作品を考えるきっかけにはなりました。
あと、今日は久々にノマルに行ってきました。
今村君がベルリンから帰ってきて以降初の発表です。
今回出品されてたのは、雨のアニメーションとその版画、それと立体です。
立体は、ソレノイドがオブジェ(塗料缶、すのこ、ブタの蚊遣り器、バケツ、アクリルボックス)を打つもの。これを使ったインスタレーションはここ最近展開していましたが、単体の立体として発表したのは初めてみました。オブジェンになっても、インスタレーションの感覚を損なうことなく存在してたのはさすがでしたね。ひとつ欲しかったですが、残念ながらすでにすべてソールドアウト!
他に、安慶田渉さんと舟田潤子さんの作品も展示されています。9月7日まで。
それと、もういっかと思いつつも堂島リバービエンナーレへ。
始まった時点ですぐ終わるかと思いきや意外に続いていてすでに3回目。
3回目の今回はなんとルディ・ツェンという台湾のキュレーターで、何気に日本のビエンナーレトリエンナーレで外国人ディレクターは初かも。
でもまあ、彼はインディペンデント・キュレーターではあるもののフルタイムのアートコレクター(フルタイムって!w) 展覧会自体、水をテーマに、キュレーションというよりは、集めてきましたって感じのセレクトでしたね。まあ、テーマを一貫させてたのはいいと思いますが、展覧会としてはやはり陳列って感じでした。一個一個のつながりが希薄。これ過去3回ともそんな感じですね。クオリティ落ちも上がりもしない。。。個人的に観たことある作品が多かったのも残念でした。参加作家は毎回やたらに豪華なんですがね。
そんな中でアラヤー・ラートチャムルーンスック(覚えられへん)の「クラス」という作品は衝撃。死体に向かって「死」についての授業をする映像。。。あれホンマに死体やったんかな?B級映画よろしく最後は皆立ち上がって終わるんかと思ったらホンマに寝たままやったし。。。うーん。
堂島リバービエンナーレは8月18日までです。
