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Koki Tanaka 'abstract speaking -sharing uncertainty and collective acts' @ The Japan Pavilion at Venezia

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もう遠い昔のようですが、ヴェニスビエンナーレに行ってきました。
ヴェニスは2005年、2007年と今回で3回目。
確かにアート好きにはたまらなく楽しいイベントではありますが、2回も行けば辟易してきて、わざわざ行くのはもういいやって正直思ってたんですが、今回の総合ディレクターがMassimiliano Gioniと聞いて、これは行かずにはいられまいと思いました。なんせ2010年の光州ビエンナーレを逃してますからね。。。
そしてさらに、日本館代表が田中功起さんと聞いてますます期待は高まりました。
去年のドクメンタ、どんなに評判がよくても我慢してこの行脚の為にお金を貯めていたのです。
ということで、まずはジャルディーニにある日本館から。

日本館は毎年、決して悪くはないものの、良く言えば安定した展示。悪くいえば無難過ぎておもしろみに欠ける展示でした。というかぶっちゃけ完全に後者。おもしろくない。
ヴェニスに行っても、とりあえず寄るだけって感じのテンション。
2005年は石内都、2007年は岡部昌生、2009年はやなぎみわ、2011年は束芋。。。
しかし今年は何かが違いました。
田中功起x蔵屋美香のコンビが選ばれた時はついに日本館も攻めに出たかと驚きました。
田中さんは僕が近年最も注目しているアーティスト。このブログでも何度も取り上げてます。
蔵屋さんは東京近美で「ぬぐ絵画」などラディカルな展示を企画している敏腕キュレーター。
そんな2人がタッグを組んで、どんな展示が展開されるのか非常に楽しみでした。
これはもしかしたら、、、と思っていたらやっぱり特別表彰を受賞。日本館初の快挙!
これまで賞レースなんてひっかかりもしなかったし、こっちも期待してなかったけれど、今回は期待通り!
ますます行く前から楽しみでした。

掲げられたテーマは「abstract speaking -sharing uncertainty and collective acts」。
邦題は「抽象的に話すこと - 不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」
僕にとって意外、と言えば意外だったのが、震災をひとつのテーマにしていたことでした。
確かに近年田中さんの作品は、野外で作品を展開し、他人と積極的に関わっていくことで作品に社会性を付与させてきました。
しかし、それはあくまで「抽象的」な社会性であって、震災という具体的なテーマでもって作品を制作されたことはなかったと思います。
こういう自国の災害とかを持ち出しちゃうと、ドメスティックになりすぎて、客観的に見て痛いだけの展示になりかねないところがあります。前回行った2007年のヴェニスビエンナーレがまさにそれで、アメリカの9.11テロが前面に押し出されて、もう同情どころか苛立ちすら覚えました。
なので、少し不安があったのですが、展示を見ると気持ちのいいぐらい腑に落ちる展示で不安は払拭。

今回の会場構成の肝となってるのは、昨年の建築ビエンナーレ日本館の展示をリサイクルしてるところです。(昨年の日本館は伊東豊雄氏をディレクターとして、「ここに、建築は、可能か」をテーマに震災を直接的に扱った展示で金獅子賞を授与されました)
建築展も同じく震災がテーマですが、あちらはかなり「具体的」な提案でもって震災を切り取っていました。
しかし今回はタイトルにもあるように「抽象的」に震災を持ち込むことによって、日本だけでない問題にまで昇華させていたのが本当に感動的でした。
震災の話をするとどうしても出て来るのは「当事者」という言葉です。
以前自分もこのことで震災に触れるのを相当躊躇していた経験があります。
つまり、自分は当事者である/ないの話になると、そこで壁やヒエラルキーが生まれてしまいます。
当事者でもない奴に自分達の気持ちがわかってたまるか、とか、自分は当事者じゃないから、彼らに会って接する資格がないとかそういうことです。
この壁は想像以上に堅牢で、その話になると中々うまくいきません。
僕もそうでしたが、以前その話を比較宗教学者の濱田陽さんという方にしたら、「あの時すべての人間が傷ついたんです」という話をされて、「いや、でもあの時関西にいてなんの揺れも感じなかった僕は傷ついていません。それがうしろめたさみたいなものにつながって中々踏み込めずにいるんです」と返し、そこで濱田さんは、「森川さん、あなたは立派に傷ついてるじゃないですか」と言われ、はっとしたことがありました。
実はそんな壁なんてなかったんだ、と気づけたことで、僕は被災地まで行くことができました。
どこまでが当事者だなんて、本当はいえない問題なんです。
言えるとしたらあの時亡くなられた方々のことを言うのでしょう。
長くなってしまいましたが、その当事者という意識の壁を抽象化する作業として、今回の展示は本当にすばらしいものでした。
田中さんは当時アメリカにいて、彼は日本にすらいませんでした。
関西にいた僕ですら、そんなうしろめたさを感じていたのだから、田中さんのように海外にいた日本人はどういう気持ちだったでしょうか。
そこでできることとして行き着いたのが今回の展示だったそうです。

この展示の凄いところは、だからといって全く無理をしていないというところです。
実際今回いくつか作品が出ていますが、そのすべてが2011年3月11日以降というわけではありません。
これまで田中さんがやってきたことが自然と生きてるのが素晴らしかったんです。
近年やってる、「恊働」というテーマが、美しい程この展示にフィットしている。
それは滑稽にも見えるけれど、どんなに時代が進んでも、人は一人で生きて行けないし、実は人間の営みはこれぐらいかっこわるくて、泥臭いものなのかもしれない。だから美しい。
本来一人でする作業(ヘアカット、ピアノ演奏、作詩、陶芸等)も何人かで一度にやると、そこに衝突や葛藤が生まれて、できあがったものは成功とは言えないものかもしれないけれど、その結果がすべてではないというのが今回の展示で今まで同じ作品を見てきた時以上に伝わってきました。
だから普通に田中さんの個展として見ても、いいんですよね、普通に。
僕が初めて田中さんの作品を見たのは「原因が結果」というタイトルの個展だったのですが、なんかその言葉がすごく効いてきてるな、という印象を受けました。

日本館はこの展示で今回半世紀以上参加し続けて館としては初めて賞を授かりました。(特別表彰)
田中さんはTwitterでこれは僕がもらった賞ではなく、これまで日本館が築き上げてきたものだという言い方をされていたけれど、僕はまぎれもなくこの賞はこの展示に与えられたものだと思います。
海外から多くの観客を呼び寄せるこのビエンナーレで、この展示が実現したことは、日本にとっても大きな功績だと思います。
本当におめでとうございました。
先日京都でも田中さんと蔵屋さんによる報告会があったそうですが、ギリギリ帰国に間に合わず聞きに行けず残念でした。。。って実際観に行けただけで充分ですよね。はい。


ついでなので他の国別の展示も。多過ぎてアルセナーレとジャルディーニ周辺しか回れてませんが。。。(金獅子賞のアンゴラは行けず)
個人的に印象的だったのは、イスラエル、ブラジル、ロシアかな。写真撮ってないけどギリシャも。

Gilad Ratman 'The Workshop' (Israel)
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Ferbenza/Mlászho/Clark/Bill/Munari 'Inside/Outside' (Brazil)
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Vadin Zakharov 'Danae' (Russia)
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国家間コラボ企画としては、リトアニアとキプロス(特別表彰)とドイツフランスのパビリオン交換(どこまで意味あるのかは展示ではよくわからなかった)

'Oo' / 'oO' (Cyprus/Lithuania)
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Ai Weiwei, Romuald Karmakar, Santu Mofkeng, Dayanita Singh (Germany)
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他。サラ・ジー調整中で中見れずショック!韓国館はひどかった。。。

Sarah Sze 'Triple Point' (USA)
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Kimsooja 'To Breathe:Bottari' (Republic of Korea)
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Lara Almarcegui (Spain)
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Berlinde De Bruyckere 'Kreupelhout-Cripplewood' (Belgium)
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Mark Manders 'Room with Broken Sentence' (Netherlands)
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Jeremy Deller 'English Magic' (Great Britain)
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Konrad Smoleński 'Everything Was Forever, Until It Was No More' (Poland)
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Alexandra Pirici/Manuel Pelmus 'An Immaterial Retrospective of the Venice Biennale' (Romania)
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Lee Kit 'You(you).' (Hong Kong)
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Alfredo Jaar 'Venezia, Venezia' (Chile)
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あとアルセナーレの奥が各国の展示になってたけどどれがどの国なのかよくわからないまま見てた。。。バハマ館がなぜか北極の作品展示してたり、木がぶらさがってたり、ヨーン・ボックの作品もあったり、何か色々ありました(テキトー)。

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次回はメイン展覧会について。

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