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フランシス・アリス展 メキシコ編@東京都現代美術館

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今年初上京物語です。
まずは都現美へ。
とりあえず前回のMOTアニュアル2012のカタログがどうしても欲しかったので、入館してショップに直行してなんとかゲットしました。これでこの上京の目的半分は達成。
平日ってこともあってかがら空きで、客自分しかいませんでしたw
で、現在都現美ではフランシス・アリス展がやってます。
しかも「メキシコ編」と「ジブラルタル海峡編」という2期に分けての開催ってことでかなり力入ってます。広島現美にも巡回するみたいやけど、あっちは一気に1回でやっちゃうみたいやから全作品出るとは思えないのでこっちで。ただ6月末から始まるジブラルタル海峡篇行けるか微妙なんですが。。。
とにかく今回はメキシコ編。
彼はベルギー人でメキシコに在住。しかも建築出身という中々歪んだ経歴。
それを端的に表してるのが、最初の壁の大きな写真、「Turista(1994)」。
地元(メキシコ)の配管工とかに混じって、「Turista(観光客)」という看板を掲げて立ってます。
最初アリスの顔とか知らなかったので一瞬どの人かわからず焦りましたが、最後の最後、会場を一巡したところでまたここに辿り着くので、その頃にはアリスの顔が自分の頭の中で馴染んでて、改めて味わうことができました笑
全部挙げていくとキリがないんで、いくつか好きな作品を。
アリスは実際ペインティングとアニメーションの作品しか見たことがなくて、イマイチ自分の中で作家像がわからないまま見て回って思ったのが、凄く美的感覚の鋭い人なんだな、と思いました。
結構政治的な背景がフィーチャーされがちなんだけれど、それ以前にどの作品も詩的で、行為として美しくてとても好感が持てました。
特に氷を溶けきるまで街中引いて回る「Sometimes Doing Something Leads to Nothing (1997)」や、広場の塔の周りを羊を引き連れて歩く「Patriotic Tales (1997)」や、今回の目玉でもある、ドンキホーテよろしく竜巻に突っ込んでいく「Tornado (2000-2010)」なんかは、見ていてうっとりしました。
また出品作ではないけれど、会場で流されてたドキュメンタリー内の800人の人々と砂漠の砂を掃きながら巨大な砂山を超えていく「When Faith Moves Mountains (2002)」なんかはヴィジュアルとしても行為としても本当に美しいですよね。
この「行為として美しい」というのが彼の真骨頂かもしれませんね。
彼はドキュメンタリーの中でこう言ってました。
「時に詩的なことをすれば政治的になり、政治的なことをすれば詩的になる」
ジブラルタル海峡編も楽しみです。メキシコ編は6月9日まで。こちら


都現美では現在同時開催で桂ゆき展もやってます。
結構好きなペインティングなんですが、キャラっぽいのが出てくる辺りは萎えます。
アメリカに渡って抽象絵画になっていく辺りが一番好きですね。ロスコっぽいのもあった。
晩年はオブジェ思考が強いのか、こっちもあまり好きじゃなかったです。
また、コレクション展は相変わらずのクオリティ。本当コレクション見るだけで価値がある。
今回は「イメージ」を焦点に当てて、1923年の関東大震災から、2013年の現在を結ぶ100年の物語。
最近戦前から万博ぐらいまでの日本美術系の本を読み漁ってるので、前半はかなり勉強になりました。
最後の最後に去年都現美で個展を開催したトーマス・デマンドの東日本大震災直後の福島第一原子力発電所内部を再現した写真で終わってるのにはゾクッと来ました。一室あの作品だけってのもいい。
なので、ピピロッティ・リストをいつまで置き続けるんだっていう思いもありましたw
せっかくデマンドでビシッと終わってるのに、おまけみたいにリストがある。。。悪い作品じゃないけどこれだけはずっと置いてますよね。なんでやろ。片付けるの面倒なのか(ぉ
2階は杉本博司から始まり、「指差し作業員」こと竹内公太の作品があったのにはびっくりしました。所蔵してたんですね。あとジョルジュ・ルースも所蔵してたのは知らなかった。
これだけで立派すぎる企画展ですよね。都現美はいつもお腹いっぱいになります。御馳走様です。

「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」@原美術館
写真
アリスのドキュメンタリーの中で「この国(メキシコ)で現代アートをやるということは搾取になるのかもしれない」といったようなことを言ってましたが、今回のソフィ・カルの作品にはその「搾取」をすごく感じました。
まずのっけからテーマが海ということで、杉本博司の「海景」があってビビった。豪華。
そして大きな部屋では、海をバックにカメラを見つめる老人の映像と、カメラに背を向け、海を見つめている(ように見える)人々の映像群。
二階では、盲者の人々の写真と、彼らがその視力を失った時のエピソード、そして最後に見たものの写真。
彼らを見世物とすることで、この展示は成立している。
彼らの人生を彼女の作品にすることによって、搾取しているとも言えるのかもしれない。
ただ、ソフィ・カルの見せ方があまりに美しく、そういった搾取も美の前には良しとせんばかりの気概があって、やはり彼女はすごい作家だなと思い知らされた展示でもありました。6月30日まで。

武蔵美優秀展@武蔵野美術大学
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武蔵美の優秀展そのものというより、僕のTwitterで話題だった、百瀬文さんの「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」を見に行きました。
この作品は、聾者である木下知威という方とのインタビュー映像みたいなもので、彼は手話を使わず、百瀬さんの唇の動きを見て会話するんですが、その会話は意図的に歪められ、次第に百瀬さんは方言を交えたり、でたらめな音を当てはめたり、最後には無音で口だけ動かして木下さんと「会話」している。
木下さんは唇の動きしか見ていないので、そんなことおかまいなしにその「会話」は成立している。
最初百瀬さんが話し言葉を歪め始めた時に、なんだかすごく背徳感情のようなものが湧いて気分が悪くなりました。ここにもカル同様の搾取を感じる。
以前木下さんにお会いしたことがあって、筆談等を通して会話させてもらって、最も印象的だったのが、僕が今はTwitterとかがあって、文字だけでやり取りできるので便利ですね、と言ったら、確かに日本語の出来る聾者にとっては便利だけどね、という言葉が返ってきて唖然とした。自分は、目が見えるんだから文字を読み書きできるのは当たり前と決め込んでいて、実は多くの聾者の人は読めても書けない人が多いそうです。なぜなら手話には助詞がないので、助詞の使い分けが本当に難しいんだそう。やはり言葉は耳で覚えて行く要素が大きいので限界があって、それをある一定の年齢までに習得しないと一生できないままらしい。
その人の立場に実際に立ってみないとわからないことってたくさんあって、多分百瀬さんの作品見ながら、自分達はわかりあえない中、綱渡りみたいな状態でなんとかコミュニケーションをとっているといったことを思いました。
ところで、五美大展の時はヘッドフォンで展示されてたそうだけど、個人的にはその方がよかったんじゃないかな、と思いました。その状態でなら音無しバージョンでも見れて、より木下さんと近い立場でその「会話」を聞くことも出来たんじゃないかと。映像には字幕もついてるので、音無しで見たらやはり普通に喋ってるようにしか見えませんし。
あと優秀展一応ぐるっと回ったけど、特に印象に残ったのはなかったな。。。
博士課程の発表展も同時にやってて、以前アートコートフロンティアで拝見した野村在さんの展示がやってた。
以前は破裂する液体や砂などが展示台の上に無形の彫刻のような写真作品を制作されてたけれど、今回は具体的な物が風景の中で重力を失い浮遊しているような写真作品だった。
また、真ん中の機械が段々光りはじめるんだけれどあれは何だったかよくわからなかった。。。

Chim↑Pom「PAVILION」@岡本太郎記念館
「背徳感」といえばこの人たちの真骨頂かもしれません。
ただ、今回は岡本太郎との共演ということもあり、すごく優等生な感じの展示でした。
でも僕はこっちの方が好きです。太郎への敬意をすごく感じました。
というか、今回の展示はなるべくしてなった必然性を感じる展覧会で、納まりがすごく良かったです。
目玉は多分「岡本太郎の骨」でしょうね。
月の石よろしく恭しく展示されております。
行ったらエリィ女史がアイドル写真のようにして記念撮影してたw

他には
田中功起 「Beholding Performer, Performing Beholder」@ CNAC LAB
Simon Fujiwara「Aphrodisiac Foundations」@ TARO NASU
楽園創造(パラダイス)―芸術と日常の新地平― vol.1 平川ヒロ @ gallery αM
「椿会展2013 -初心―」@ SHISEIDO GALLERY
なんかも見ました。
田中さんのやってたCNAC LABって会場が中々見つからず、なぜかゲストルームみたいなところに出てしまって完全迷子になりつつ辿り着きました。
今回はマリンバ奏者2人がお互い演奏者と観者になり、観者は演奏者を鏡で映し出す。
そのそれぞれの映像を左右の壁にマルチプロジェクション。
会場内にもいくつか鏡が吊るされて、映像がそこにも映る。
どうしても両方一度に見ることはできないけれど、鏡の角度によっては見ることが出来る。
そんな中、いつの間にか両方とも同一人物になってたりしてドキッとしました。
サイモンの展示は、父と母が初めて出会った帝国ホテルを舞台に繰り広げられる物語を地図と文章で表してて、ここまで個人史を利用して作品を作れるサイモンはやはりすごいです。
最後は帝国ホテルのバーを再現したものまで登場しました。
αMでやってた展示はよくわかりませんでした。リアルジャパネスクみたい(悪い意味で)
椿会も毎回ですが、イマイチ統一性もなくよくわからない展示ですね。
そして相変わらず内藤さんの作品はやっぱりすごい。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

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