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「佐川晃司展ー絵画意識ー」@ galerie16

大学の恩師佐川さんの個展に行ってきました。
なんだかんだでここ数年毎年のように勢力的に発表されてて、見る度に圧倒される作品群に驚かされます。
今回も階段上がってガラス越しに見える菱形のドローイングにやられました。
不定形な、木々の枝のようなものもありましたが、やはり僕は菱形の作品が好きです。
形がはっきりしているからこそ、よりわけわからなくなる感じが迫ってくるんですよね。
それはメインの油絵の色彩が加わるとより顕著になります。
しかも今回はオレンジの暖色が非常に強く出ていてびっくりしました。
これまでは、ほとんど緑色の色調だったので。
この展覧会タイトルが示しているとおり、佐川さんは意識的に絵画に取り組んでる作家です。
絵画じゃないとできないこと、絵画にしかできないこと。それが徹底して画面に顕われてる。
26日には、愛知県美のポロック展を担当された大島さんとの対談もありました。
実際行くことはできなかったのですが、音源だけ手に入れて聞きました。
ここでも絵画について徹底的に話されていてとてもおもしろかったですね。
また、先日東京のαMで行われた、田中功起さんの「絵画TV」もありましたし、こうして今改めて「絵画とは」と問い直すことは非常に意義のあることだと感じました。
メディアにとらわれるのはナンセンスだという意見もあるでしょうが、絵画ってやっぱり独特なメディアだと思います。物質的でありながらイマジナリーである、現実とイメージの往還がしょっちゅう行き交ってるんですよね。そこにつきあえるかつきあえないかの問題はすごく大きいと思います。僕はそこが耐えられなくて画家にはなれなかったんですが、今でも絵画の問題を考えるのはホームグランドのような気がしてストイキツァの本とか意識的に読んでます。
「絵画TV」の会田さんや岡崎さんのような真逆なアプローチだけど、絵画愛をもった人たちの話を聞くのは本当に楽しいです。
佐川さんの展覧会は今週末2月2日まで。

あと母校でやってた「溶ける魚−つづきの現実」展にも行きました。
「溶ける魚」と言えば、シュルレアリズムの団長的存在アンドレ・ブルトンのあまりに有名な作品のタイトルですが、その「シュール」という言葉自体が現在あまりに浸透しすぎていて、ともすれば芸術作品すべてが「シュール」と言えなくもない。2013年の今、この展覧会が捉える「シュール」という言葉はどこに帰着するのか。そのことが展示を通してほとんど宙づりにされていたのは残念でしたね。例えばブルトンの自動記述の文章持ち出してきて作品と一緒に展示したりとか色々やり方はあったと思うんだけど。
あえてこの展覧会のポイントを挙げるなら「つづきの現実」という言葉こそが、この展覧会の本質な気がします。花岡さんの突拍子もないものとものとが接ぎ木されたような彫刻群や、荒木さんや林さんによる日常品を組み合わせたインスタレーション、或は絵の具そのものを描いた松山さんなど、「シュール」という言葉に付随する「浮世離れ」といったイメージとはまた違った性質が見えてくるのはおもしろかったかな。これらの作家の作品は、現実から跳躍せず、あくまで地に足着いたまま知覚をズラし、そこから見えてくる風景を提示していた気がします。このことが今現在のシュルレアリズムとして打ち出せる手段になりうるのかも。ブルトンは『シュルレアリズム宣言』の末尾をこう閉めています。「生はべつのところにある」。この「べつのところ」をこれらの作品を通してもう少し明確に打ち出して欲しかったなーと思いました。

また、京都伝統会館でやってた「胎内巡りと画賊たち」も、民芸的な展覧会ってのはわかったんですが、演出がちょっと凝りすぎててついていけなかった感が。。。
こっちにも「溶ける魚」にも出してる木村さんは、やたらと絵がうまい!
安喜さんとのコラボはコラボの域を超えててすごかったです。
絵の上に絵を被せるとかこの2人ならでは。。。
全然違う2人なのにここまでの合わせっぷりは双子みたいです。
この2人はさらにHRD FINE ARTでも展示していました。
こっちはブルトンのテキストの引用である「鳥達は色を失ってから形を失う」というタイトルがついてて、展示もずばりで小規模ながらおもしろかったです。

最近作家主導の展覧会が多いですが、どうも仲間を寄せ集めました的なのが多い印象。
かくいう自分も昨年やったばかりなので、自戒も込めて観ちゃいました。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

studio90閉鎖のお知らせ

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studio90は2013年1月23日を持ちまして終了しました。
2008年の開設以来5年間の活動を通して、皆様にはご支援ご愛顧を賜り誠にありがとうございました。
メンバーは今後も各々活動を継続していきますので、引き続きご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。
尚、今後の連絡先につきましては以下までご変更お願いします。

泉洋平:yohey-bambi@live.jp 〒601-8022 京都府京都市南区東九条北松ノ木町39-21
田中真吾:gigasin@hotmail.com 〒601-8022 京都府京都市南区東九条北松ノ木町39-21
森川穣:tubame25@hotmail.com 〒533-0031 大阪府大阪市東淀川区西淡路5-2-15 2-C

studio90 website: http://www.studio90.info/


制作の場である以上に色々なことができた5年間でした。
この経験を生かして今後も活動を続けたいと思っています。
改めてよろしくお願いします。


森川穣

APMoA Project, ARCH vol.4 奥村雄樹「善兵衛の目玉(宇宙編)」@愛知県美術館

名古屋に行ってきました。
主な目的はうつせみ展のカタログをアートラボあいちの皆さんにお届けすること。
皆さん元気そうでなにより。新年の挨拶もできてよかった。
ラボでは販売もしていただけることになったので、気になる方はラボにて直接お声かけください。サンプルも見せてもらえると思います。
http://www.artlabaichi.net/

そのラボでやってた日韓交流展が中々見応えがありました。
展示がすごくかっこよかった。
中でも笹岡敬さんの作品がよかったです。
カメラに照明を直接当てるとあんなことになるとは。

それと話題の「であ・しゅとぅるむ」展にも行ってきました。
インディペンデント・キュレーターの筒井宏樹氏による企画。
様々な作家がごった煮で展示されてて圧巻です。
敢えてちゃんと見れないようになってるんでしょうか。気散じ。
泉太郎さんが出展されてて、もしかしたらまだ作業してるかもと思って行ったら本当に作業中やった笑
作品は一応見られる状態になってて、どこが完成してないんですか?って聞いたらわからないって言われた!「でもほら、なんかしっくりいってないでしょ?」って笑
がんばってください!
あと、その下では「のこりもの」という様々な分野の学者が集まって作った展示があって、興味深かったけどもう少し大きな規模で見たかったと思いましたね。

今回観た中で一番印象深いのは愛知県美でやってる奥村雄樹展
奥村さんの作品は前から気になってて、ちゃんと観る機会が中々なくて、実際初めて観たのがこないだのMOTアニュアル。あれもでも変化球な感じやしね。
今回のは以前にも発表されてる「善兵衛の目玉(宇宙編)」。
日本昔ばなしに出てきた話を元に落語家の笑福亭里光とコラボして作った創作話。
話自体は、善兵衛という人物がある日物見の集団の中で目玉を取り出して持ってた傘につけて高いところからものを見てたらカラスに持ってかれて宇宙まで行って、やがてカラスがたまたま善兵衛の家の庭に落っことして、またはめたら今度は逆にはめてしまい、体の中をのぞくことになる。で、善兵衛はその技を使って医者になる決心をして、、、っていうお話。
この辺は奥村さんの「くうそうかいぼうがく」につながるテーマですね。
あとイームスの有名な映像作品も思い起こしました。(この映像改めて見るとめっちゃGoogleマップですね。。。)




その落語の様子を映像にしたもの。
わざわざ「映像にしたもの」と書いたのは、この「映像化する」という行為そのものが意識的に作品に取り入れられてるのを強く感じたからです。
この落語自体は、貝塚市にある岩崎善兵衛ランドというところで上演されました。
この岩崎善兵衛という人物は日本に望遠鏡を普及させた人物で、その当時の望遠鏡も今回の展示室の前に展示されてます。
元の日本昔ばなしの「善兵衛」と岩崎善兵衛は特に同一人物というわけでもないんですが、目玉の話と望遠鏡とが合致して、この善兵衛ランドに企画を持ち込んだそうです。
大阪でやってるんだったら観に行きたかったな、と思う反面、この作品は映像になってから見ないとやっぱり奥村さんの作品にならないと思いました。落語自体はあくまで里光さんの作品。
最初は純粋にその落語を楽しんでたんですが、最期の最期、落語が終わってからお客さんがはけていく中で、撮ってたカメラも映り込むんですが、その瞬間やられた!と思いました。
というのは、この「目玉」の話を通して、映像を見ることのレイヤーをすごく意識させられたからです。
まず落語を見るお客さんの目があり、その次にカメラという目があり、さらにその映像を見ている自分の目があるという3段階のレイヤー構造です。
また、この話自体が、デカルト以降の近代的視野、つまり一点透視図法のような固定された目玉から完全に自由なのも面白いですよね。宇宙まで行ったり体内に入ったり。
22分の映像でしたがすごく楽しめました。2月11日まで。
クリムト展のお客さんがすごい勢いで通り過ぎて行くのも楽しかったですw

名古屋滞在たった2時間半でしたが、ここまで観れるとは我ながらすごい。
本当はこの後京都も回る予定でしたが体調不良により持ち越し。。。


追記
ちょうどこの記事に出てくる泉さんと奥村さんの作品について言及してる作家の水野亮さんのツイート群がおもしろいのでリンク貼っておきます。>http://twilog.org/drawinghell/date-120318

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本福寺水御堂 by 安藤忠雄

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明けましておめでとうございます。
今年も相変わらず観てきたものを粛々とアップしていこうと思っております。
新年一発目から安藤忠雄とは自分でも思いもよりませんでしたが笑

なんか、母がいきなり、おばあちゃんの慰安旅行がしたいと言い出し、そやなぁと言ってる間に行き先は淡路島になり、その次の日の朝には明石海峡大橋を越えていたという。大阪からバスで1時間で行けるんですね。
で、急遽決まった旅行なので計画なんてなく、とりあえず淡路島と言えば安藤の夢舞台があったなーってことで行ったんですが巨大過ぎてよくわからず結局一枚も写真撮らずのんびりしました。
そこで、淡路島にもう一個安藤建築があると知って、やることないので行ってきたら結構よかったっていう。それが今回の本福寺水御堂です。
存在は前から知っててなんとなく行けるなら蓮の咲く季節に、と思ってたんですが、それが淡路島にあるってのは知らなくて、中々来る機会もないので行けてよかったです。
安藤は巨大建築よりも、こういう小規模な建築はすごくいいですね。

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下が本堂になってて、上には蓮の池があります。
本堂には地上からの光が入ってきてて、ドラマティックな建築。
年代的には光の教会を建てた後の1991年とか。脂がのってる時期ですね。
この3月の瀬戸内芸術祭に合わせて直島にANDO MUSEUMができるとのことですがどうなんでしょうか。

<関連記事>
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安藤忠雄建築研究所 by 安藤忠雄
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