『IPP♯0「風景の逆照射」』終了しました。

気がついたら新年が明けてブログ放ったらかしでした。。。
というわけで、遅ればせながら明けましておめでとうございます。
1月6日から開催された『IPP♯0「風景の逆照射」』が無事終了しました。
街の中心から2度は低いと言われる精華大学の気候の中、たくさんのご来場ありがとうございました。
おかげさまで昨日搬出も終え、めでたく打ち上げとなりました。
自分にとってこの展覧会は2010年の暮れから始まり、毎週のようにミーティングを繰り返しながら、事務局メンバーの一員として、微力ではありましたが、安喜さん、林さんと共に作り上げて来たとても思い入れのある展覧会でした。
この展覧会で得たものは相当大きかったように思えます。
他分野に渡ることもあり、最初はどうなることかと思いましたが、搬入を終えて見えた会場の「風景」はとても清々しいものがありました。
グループ展の度に、他の出品者の方々の作品から多くを学びます。
特に今回は林さん、安喜さん、柏原さんという先輩と恩師から本当にたくさんの示唆を得ました。
彼らと同じ展覧会に出させていただくのは本当に刺激になりました。
そして、母校ということもあり、改めて初心に返り、背筋の伸びる思いでいっぱいでした。
後輩とも色々話せたし、改めていい学校やなぁと思いました。
また、木下長宏さんとの出会いも本当に大きなものでした。
彼の著作を読ませていただき、さらにお話させていただくことで、自分の中の何かが大きく変わっていくのがわかりました。
この展覧会を通して、自分のこれからをもっと考えられるようになった気がします。
今回僕は「天地(限りあるものと限りないもの)」という作品を出品しました。
これは、比較宗教学の濱田陽さんとのコラボレーションでした。
濱田さんは、現在帝京大学で助教授として教鞭をとられており、以前自分が精華大学で学生だったころ、宗教学の授業でお世話になった方です。
今回の展覧会にあたり、この機会に、昔からとても興味深いお話をいただいていた、濱田さんと何か作り上げたいと思い、コンタクトを取ったら、快く協力していただきました。
そしていただいた「限りあるものと限りないもの」という文章。
これからの文明を考えていく上で、とても重要なテキストだったと思います。
それを僕が壁紙に鉛筆でトレースし、壁画のように観客に読んでいただきました。
本を読む時とは違う、身体で読むという読書体験を促しました。
そして、その壁の向こう側では、僕の「天地」というシリーズの作品が展開します。
その壁の天地に1cmのスリットを開け、濱田さんの文章が書かれている部屋の気配が感じられます。
窓から入ってくる冬の冷たい空気や光、観客の足下や、暗闇で照らすライト。
見えないけれど、確実に感じられる何かを作品としました。
自分の作品は、常にそのものが作品となるのではなく、触媒でありたいと考えています。
作品というよりむしろ状況を作っていると言った方が近いかもしれません。
中々些細なことなので、気づかれない人も多いと思いますが、それもやむなしといった感じです。
ただ、やはり作品としての「強さ」は今後の課題だと思うので、その辺のバランスをとっていきたいな、と思ってます。
尚、この展覧会に付せられた「IPP」とはInverse Perspective Projectの略で、♯0と書かれてるのでお気づきかもしれませんが、今後どこか国内外で続けていければと思ってます。
公式サイトもありますので、引き続き気に留めておいてもらえるとうれしいです。
IPP official website: http://www.ipp2011.org/
また、展覧会に直接関係はありませんでしたが、最終日である21日には精華大学で中原佑介さんを偲ぶ、シンポジウムが開かれ、僕も参加しました。
4時間半にも渡り、中原佑介という一人の批評家の業績や読解が行われましたが、パネラーに直接中原さんを知る人がいなかったのが残念でした。
もっと切り込めたのでは?という内容だったのですが、それでも中々おもしろかったです。
中原さんは、元精華大学の学長も務められて、今回の展覧会にも出品していた柏原えつとむさんを作家として高く評価していて、よく中原さんのお話は柏原さんから聞かされてました。
彼の著書を読むにつれ、今の時代が、彼の描いた美術像から遠く離れてるのを痛感します。
そして、僕ら精華の学生は、多かれ少なかれ、中原さんの描いた美術像に直接的ではないものの、影響されているのを、自分も含め、周りを見ていて思います。
シンポジウムの中で、中原佑介の知名度があまりに低いとの声もありましたが、必ず将来的に中原佑介をもっと参照すべき時代が来ると思います。
今後現代企画社さんから出される批評選は注目です。
僕は伝説的展覧会「人間と物質」に関する「中原佑介美術批評選集第五巻」だけ持ってます。
あの時代にあの展覧会を実現したのは改めてすごい。
ここから日本でも「国際展」「キュレーション」という言葉が普及するわけです。
当時ジュゼッペ・ペノーネなんてまだ23歳ですからね。中原さんの審美眼すごすぎ。
彼の言葉もすごく響きます。
特にこの本に収録されてる「芸術の環境化と環境の芸術化」という論文はおもしろい。
これはまさに「人間と物質」展につながる一貫したテーマですね。
中原さんのように、作家と「共犯者」となってくれるような、批評家やキュレーターに今の日本の美術界に存在するんでしょうか。。。
さらに精華大学は、21日に続き、22日には「芸術の有用性」と題したシンポジウムを漫画ミュージアムで、さらに昨日23日には畠山直哉さんのレクチャーもあり、ハードコアな3日間でした。
ポピュラーカルチャー学部を創設する学校と同じ大学とは思えない重さ笑
畠山さん、搬出の都合で質疑応答しか聞けなかったけど、おもしろそうでした。
精華大学は、ハードコアであってほしいな、と卒業生の一人として思います。