小谷元彦「幽体の知覚」@森美術館

本年初上京してきました。わざわざ大雪の日に…。
大雪といえば、5年前にScaiの名和さんの展示観に行った日も大雪でした。
あの時は谷中がすごい景色になってたなぁ。
今回は雪質が水っぽかったのでほとんど積もってませんでした。
むしろ大阪とかの方がやばかった。
そんな雪にも負けず色々行ってきましたのでご報告。
まずは森美の小谷元彦展。
オペラシティの曽根さんと迷いましたが、曽根さんエルメスで見たんで割愛。
ちなみにエルメスは「雪」展。まさにこの日にうってつけ。
でっかいクリスタルで雪の結晶を彫った彫刻と大理石でゲレンデを彫ったやつ。あと絵画とドローイング。
クリスタルの雪は、レンゾ・ピアノの建築とマッチしてました。
が、やっぱ好きになれない。オペラシティに足が向かなかったのもこのため。
エルメスが今月28日までで、オペラシティは3月27日まで。
というわけで小谷さん。
すごい作品量でした。完全に元は取れます笑
これがまだ30代の一人の作家の仕事量なのか、という。
小谷さんの個展は2004年のKPOで一回見てます。
なので、最初の少女の写真や、鹿の剥製に矯正器具はめたやつとか、ヴェネツィアに出してた女の子がハエ食っちゃう映像とか、あと滝のやつとかはもう既に見てたのでほぼスルー。(滝は並びすぎってのもある)
それ以降の仕事は、おもしろいことに、より「彫刻」的になってました。
つまり、純粋に造形ということ。
こういう仕事って、「東京芸大の彫刻!」って感じだやなーと感じます。
京芸の彫刻は、ある一定のルールを課して、造るというより生成するって印象。
名和さんなんか、まさに京芸の彫刻って感じがする。
昨年小谷さんと名和さんの対談がありましたが、名和さんの直後のツイートがそれを物語ってます。
「小谷さんとのトークは彫刻について。方向性の違いが浮き彫りに。そもそも畑が違うのかも知れない。」
名和さんと小谷さんのトークについてはこちら>> 1 2 3 4(未)
前に爆笑問題のNHKの番組で、東京芸大の特集がありましたが、彫刻科の工房で、昇龍を彫ってる人がいて、僕の中では衝撃的でした。こんな人おんねや!!って。
東京芸大は、やはり芸術における技術を重んじてる大学だと思います。
それは、受験の時点からスタートしていて、あのデッサンは端から見ていて異常です。
故に技術命な日本画なんかにはとても向いてると思う。
村上隆を初め、松井冬子、千住博なんかもそうですね。
逆に、現代彫刻、或いは油画における技術は、そこまで重んじられていない気がします。
だから、日本のアートシーンにおける現代彫刻は京芸が強い印象。
現代造形において、技術は磨けば磨くほど工芸っぽくなっちゃうというきらいがあります。
そういや曽根さんも芸大なんですね。納得。
曽根さんと小谷さんは、2003年のヴェネツィア・ビエンナーレの日本館で二人展やってます。
小谷さんは去年エルメスで個展やってるし、色々共通点が。
こういう教育における作品の方向性ってないようで実際ある気がする。
僕なんて、まさしく精華って感じがします。抽象命!マーケットなんて糞喰らえ!的な笑
他の大学はわかりませんが、こういう傾向っておもしろいなぁ。
で、展覧会ですが、ひとつひとつが「俺を観よ!」と投げかけてくる強い作品ばかり。
中々楽しめましたが、やはり僕の見たいものではないなぁ、って感覚。
鑑賞者に委ねる部分があまりにすくない気がします。
もちろん、こういうのって、作品を見慣れてない人にはとてもいいと思います。
「現代美術ってわからない」とよく言うけれど、「わからない」良さが現代美術にはあるんだと思う。
「あれは何やったんやろう?」と考えることが、現代美術の入り口につながるんですよね。
その点で、やっぱり小谷さんの作品は僕の中でちょっと違う気がします。
そんで、相変わらずエルメスの作品がビス丸見え…。萎えます。なんで?
最後のドキュメント映像で、スタイリッシュな小谷さんが、回転するドクロにロウソク垂らして、「あっつ!あっつ!」と泥臭いことやってるのは面白かった笑
まあほんと、見ごたえという点では文句なしの展覧会。今月27日まで。
このあと静岡県立美術館、高松市美術館、熊本市現代美術館に巡回します。
それにしても、森美って見せ方がワンパターンでおもしろくないですね。
こういう量で見せる方法しかできないのかな?もっと別のやり方はないのかな?
例えば、3部屋ぐらい使って1つのインスタレーションを見せるとか。
次のマルセル・デュシャン賞展も見に行こうと思ってますがどうかなー。
高嶺格「とおくてよくみえない」@横浜美術館

前評判悪過ぎの高嶺さんの展覧会へ笑
もうかなり覚悟して行ったので、逆に結構楽しめました。
高嶺さんのこの展示に関して、やはり特筆すべきは「感情の揺さぶり」ではないでしょうか。
前半のゆるい作品(タオル、物々交換)から、いきなりアメリカ批判やパレスチナ問題、在日など。
そして最後のタイトルにもなってる「とおくてよくみえない」。
前半は本当に笑いました。
あのタオル(毛布)の展覧会は一体!?
物々交換の映像のとなりの外人は一体!?
謎過ぎます。
後半は、既に見てる作品が多かったので、ちらっと見るぐらい。
「ベイビー・インサドン」はこの一年で3回も見てる…。
最後のは本当に謎でしたね。高嶺さんらしいといえばそうですが。
壁に書かれたメッセージも意味深。
本当に遠近のとれない人。まさに「とおくてよくみえない」です。
これまでの高嶺さんの仕事がほとんど見れます。さすがに「木村さん」の展示は写真だけでしたが。
高嶺さんって、アート関係者(特にキュレーター)のファンが多い。
わからないわからないと思いつつも、やっぱり気になってしまう存在なんでしょうね。
これだけ個人の魅力で作品が成立してる人って珍しいと思う。不思議な人。
この展覧会は3月20日まで。この後なんとイギリス・バーミンガムまで巡回だそうです!!
ちなみにこの高嶺展と小谷展、曽根展は、それぞれのチケット持っていくと割引が効きます。
あとiPhoneのミューぽんっていうアプリを1月31日まで600円やったから買ったんやけど、元取れるんかな…。とりあえずこの高嶺展で200円分割引。
関連記事>>高嶺格「Melody?Cup」@伊丹アイホール 高嶺格
ライアン・ガンダー「Ftt, Ft, Ftt, Ftt, Ffttt, Ftt, or somewhere between a modern representation of how a contemporary gesture came into being, an illustration of the physicality of an argument between Theo and Piet regarding the dynamic aspect of the diagonal line and attempting to produce a chroma-key set for a hundred cinematic scenes」@TARO NASU

「謎な人」という点ではこの人も負けてません笑
なんだこの長いタイトルはーーー!!
昨年の「レゾナンス」展以来気になってます。年末のグッゲンハイムでやったのも気になる。
なので、最終日無理矢理滑り込みです。
実はこのTARO NASUは何気に初訪問。
馬喰町は何度も来てるし、おとなりのαMも何度か来てるのに、いつもタイミングが合わずに閉まってたり、おもしろい展覧会やってなかったりで行けてませんでした。
青木さんのリノベーションってのも気になってたんですが。
地下に降りると、会場に矢が刺さりまくってる!!!圧巻です。
わざわざこの為に床作ったりして、このギャラリーは本物だと思いました。
また、奥には木の板に着色したような色とりどりの作品群が。
これ、よくみるとすべて同じ形。どうなんてるんや?
とギャラリーのスタッフさんに聞いてみると、ものすごく丁寧に答えてくださりました。
いやはや、こういうところでギャラリーの質ってわかりますね。素晴らしいです。
ちなみにこの作品は、「選択されえた未来」を表しているそうで、つまり、作家は作品の色を選ばなければならないが、逆にこの作品は選ばないことを作品にしている。何パターンもの同じ作品を造ることで、不自由な未来からの解放を目指しているとか。本当に異様な展示でした。
奥には、壁の角に2つのスライドが上映されてて、その部分以外の壁は真っ黒にぬられてる。
スライドの意味がまたよくわかりませんでしたが、これはなんだかレゾナンスの作品に近い気がする。
意味はよくわかりませんが、空間の操作の仕方とかとても好きな作家。
あー、太宰府天満宮と沖縄の展示観に行きたい…絶対無理やけど。
ちなみに隣のαMものぞきました。今期の「複合回路」最後の作家、石井友人さんの絵画展。
視覚信号としての絵画。おもしろい作品とそうでない作品の差がすごかった…。
来年は「成層圏」がテーマ。注目は川北さんと宮永くん。どっちかは観に行きたいです。
テオ・ヤンセン展~生命の創造~@日本科学未来館

年末に友人に教えられて、調べたらちょうど日本でやってたトム・ヤンセン展。
ゆりかもめとか久々に乗ったー。
これを美術というかわかりませんが、ユートピアン的な仕事がとても気になります。
ビーチアニマルと言う、風で動く機械仕掛けの生きものたち。
電気ではなく動力が風という自然なのがおもしろいし、作りも非常にアナログ。
プラスティックと、ペットボトルやら。
会場は凄まじい人でごった返してました…。
でも、さすがにフジテレビの企画だけあって、エンターテイメント性が強すぎて萎える。
やっぱビーチで動いてるところが観たかったなぁ。
でも展示してあるアニマルたちが、風と闘った傷跡が生々しくて、とてもロマンティック。
まるでドンキ・ホーテのよう。
そんなとこ注目してる人だれもおらんねやろうけど。
もう会場を砂浜(砂漠)にして、アニマルたちの墓場みたいなインスタレーションで見せて欲しかった。
やっぱ無理よね。現代美術に毒されてます。14日で終了。
大人の科学マガジンで、このミニ・ビーチアニマルが付いてくるらしい!!
吹雪の横浜。
