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「2001年宇宙の旅」 by スタンリー・キューブリック

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TOHOさんが開催している「午前十時の映画祭」
映画史に残る名作中の名作たちを再び上映するという企画。
選ばれた映画は50本で、全国を各フィルムが巡回する。
映画好きの方に聞いて、チェックしてみたらどうしても観たい映画が一本。
それがキューブリック監督の代表作「2001年宇宙の旅」。
大学1年の時に初めて観た時の衝撃を今でも忘れられない。
この映画を映画館で観ることができるなんて!
もう関西にこのフィルムがやってくるのを心待ちにしておりました。
そしていよいよTOHOシネマズなんばにやってきた!!
本当はツイッターで感想などつぶやく予定でしたが、140文字では絶対無理!!!
てか改めて映画館で観てみて、もうこれは芸術作品としか言いようがないと確信しました。
マシュー・バーニーの「クレマスター」なんて目じゃないっす。
ということで、このブログに掲載決定です。

観終わった感想は、もう「すごい」の一言。
ストーリーとは関係なく、その映像の素晴らしさに何度か涙が出ました。
この1本に映画20本分ぐらいの内容がつまっている。
公開から42年経った今でも一切色褪せないこの衝撃。
普通以前にすごいと思ったものっていつの間にか記憶の中で脚色されてて、改めて観たときに「あ、こんなもんやっけ?」となったりするんやけど、これに関しては「え、こんなに凄かったっけ!?」の連続。
今回はやっぱり映画館で観たってのは大きいと思う。
あの大画面で、あの音響。
冒頭のあの音楽(リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」)がDOLBYサウンドで流れた時にはもう全身鳥肌が立ちました。。。
月面シーンでモノリスから発せられる音も凄まじかった。。。
この映画で重要なのはやはり音。
主にクラシック音楽が各場面に散りばめられているけれど、どの音楽も効果的。さらに宇宙での静寂や、飛行士たちの息遣いの音。
これらの音を聞くだけでも映画館で観る価値があります。
できればオペラの劇場なんかで、オーケストラピットなどを使って実際の演奏でこの映画を観てみたい。そんな贅沢な機会があればいくら払ってでも観に行きたい。

映像の素晴らしさは言うまでもありません。
冒頭の猿のシーンはやはり衝撃的。
今見てもどんな風に撮ってるのかわからないほどリアルな描写。
人間と猿が分かつ瞬間。
さらに時は400万年後の宇宙へ。
とにかく宇宙船のディテールが細かくて、43年前にこんな映像どうやって撮ったのか謎すぎる。
すべては科学的根拠に基づいていて、そのディテールが鮮明なのも、宇宙では空気がないため光の屈折が起きにくく、すべてにピントを合わせて撮っているとのこと。
先日読んだ村上龍の「歌うクジラ」で、宇宙船はドーナツ型で、遠心力によって船内の重力を生み出していたけれど、この映画でも宇宙船はドーナツ型だった!
無重力で動きまわる人々の動きも全く不自然さがなくて爽快。
そしてこの無重力が映画の映像的快楽を味合わせてくれる。
上下も関係なく円を一周ランニングするシーンや、ドアが色んな位置についてて体を反転させて入室していくシーンなどなど。
また、ロビーにあった椅子のデザインもすごくいい。
昔の人が描く近未来像ってちょっと恥ずかしいのが多いけど、ここに出てくるすべてのディテールが今見ても新鮮でかっこいい。
この感覚はもう驚異としか言いようがない。
さらに、HAL9000の暴走。あの恐怖感の演出はすごい。
赤いライトのアップだけでものすごく怖い。
そんでもって極めつけがラスト。
主人公がモノリスに出遭った瞬間に起こる爆発的な映像。
色の氾濫。これは大画面で見ると圧巻でした・・・。
2時間半、たっぷり酔いしれ最後の音楽が終わるまで一切立てなかった・・・。

2001年を10年近く過ぎた今、残念ながら月面旅行は未だ実現していない。
しかし、実現していない今だからこそ、この映画の醍醐味を味わうことができる。
宇宙という人類の果てしない夢がこの映画にたくさん詰まっている。
はやぶさが戻ってきて一握りの砂を持ち帰っただけで私たちは歓喜に湧いた。
この歓びは、実現していないからこそ味わえる歓び。
夢は叶ってしまうと夢じゃなくなる。
今この時代に再びこの映画に出遭い、夢を共有出来てることを幸せという他ない。
さらにこの映画が公開された1968年というのはアポロ計画が実行され、人類が初めて月面に足跡を残した歴史的な年。その熱狂的な年にこの映画が公開されたというのはすごいとしか言いようがない。
そして2001年を迎える前に訪れたキューブリックの死は、偶然とはいえこの映画の永遠性を表しているような気がしてならない。
映画館でこの映画を見られるという稀有な機会を与えてくれたTOHOさんに本当に感謝。
今週いっぱいなんばで公開され、後に兵庫、岡山、広島、愛媛へ巡回します。
あああーーー、もう一回観たい!!!
次の西宮あたり行こうかな・・・。
奇しくも友人がこの映画の原作者であるアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」を貸してくれてるので、これ読みながらもう少し余韻に浸りたいと思います。
来年あたり邦画50選とかやってくれないかな。
黒澤明の「乱」を映画館で観たいです。
やっぱ映画は映画館で観ないと!

ところで今週は映画三昧の一週間。とりあえず昨日今日だけで3本観た。明日も1本。
それらの感想は随時ツイッターで。
観たい映画がたくさんあって、困る。


おまけ
TOHOシネマズなんば近くにある新歌舞伎座。
昨年惜しまれつつ閉館。どうにか解体しないでほしい。
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テーマ : 映像・アニメーション
ジャンル : 学問・文化・芸術

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