泉太郎「こねる」@神奈川県民ホール

今年6度目の上京。ここに来てペースが上がり過ぎ。最悪今月もう一回。
今回は特にアートとか関係なしに行くはずが、その前の用事が思ったより早く済んだので、招待状を戴いていた神奈川県民ホールの展示に行ってみた。
この県民ホールの現代美術展は2007年の塩田千春展から始まり、毎年この時期に開催される。
2008年の国立国際美術館の塩田千春展の展示ボランティアをさせて頂いた縁で、毎年レセプションパーティーの招待状を送って頂いてるのだけれど、中々行く機会に恵まれず、去年一昨年と行けずじまいに終わってしまった。さらにその時に知り合った塩田さんのアシスタントの方のお名前を失念してしまい、ご挨拶のしようがないまま今に至っている。もし万が一このブログを御覧になっていたらご一報いただけると幸いです。
さて、2日から始まったばかりの泉太郎展。
正直ここのスペースは決して現代美術に合った展示室とは言いがたいスペース。
今回、五十嵐太郎さんもtwitterで仰ってたけど、場の使い方が非常にうまい。
展示されてない雑然としたスペースもなんだか許容できるようなあっけらかんとした展示。
決して密度が薄いとかではなく、むしろ濃い。
展示目録がなかったので正確ではないが、展示作品数は全部で8点。
そのどれもが、泉さんの考えた「遊び」。
子供の頃、公園で自分たちのオリジナルの遊びを考えて遊んだことを思い出す。
そこにはちゃんとルールがあり秩序があるが、決して具体的な目的はない。
遊び楽しむこと自体が目的であり、それ以上もそれ以下もない。
そのJOYが散りばめられた、思わずにやっとしてしまう展示のラインナップ。
僕が最も好きだったのは、吹き抜け空間を使った映像作品で、赤いスポットを上から床に照らし出し、そのスポットに触れないように皆が逃げまわってる映像笑
もう笑いをこらえるので必死。ってか多分顔は完全ににやけてたと思う。
あと、スプーンとお椀で作った簡易発射機から発射されたものを、三人の女性が椅子やら机やらを組み合わせた中に拾いに行き戻ってきておわんに入れる。そしてまた発射され拾いに行くという行為を繰り返した作品。
あとは家をゴロゴロ転がす作品や、幾何学に開けられた壁の穴に粘土を押しこむ作品など。
吹き抜けの作品は正直よくわからなかった。やっぱ目録や説明が欲しかったです。
にしても特筆すべき点は、ほとんどが現場で作られた新作という点。
テレビモニターの前に水の入った容器を置いた作品以外は全部新作だったんじゃないかな。
記録としての映像と痕跡としてのインスタレーション。
この両者が同時に出来上がっているというのはとても興味深かった。
その結果が作品として立ち現れていて、展示室がまさにその現場という臨場感は大きい。
そこに人がいて、何かをしたという気配がありありと感じられてとても生々しかった。
泉さんの作品をここまでまとめて観るのは初めてだったけど、いつもこういう方法論で制作してるのだろうか。
例えばこれらの作品をどこかの美術館が所蔵するとなった場合はどのように所蔵されうべきなんだろう。
行為の痕跡というのは、やはり実際にそれが行われなければ意味が無い。
それを寸分違わずトレースしたとしても、そこには決定的な臨場感がかけてしまう。
インスタレーションではないが、ロンドンにあったベーコンのアトリエを寸分違わず再現した部屋がアイルランドのダブリンにある。壁についた絵の具のシミや汚れ等、すべて計測して徹底して再現しているのだけれど、やはり何かが違う。その部屋をそのまま移築したなら多分その臨場感は損なわれなかっただろう。
今回の泉さんの展示も、今ここで見てるからいろんなものを汲み取れるけれど、場所を変えて全く同じものを見せても難しいと思う。
痕跡としてのインスタレーションの難しさを考えた展示でした。11月27日まで。
http://taroizumi-koneru.com/