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「panorama すべてを見ながら、見えていない私たちへ」@京都芸術センター

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今京都芸術センターでは久々に見ごたえのある展示が開催中です。
「panorama すべてを見ながら、見えていない私たちへ」
公募の際担当してくれた清澤さんのキュレーション。
なんといっても出品作家がいい。
内海聖史、押江千衣子、木藤純子、水野勝規
どれも僕好みの作家さんで嬉しい。
内海さんのブログで何度か京都に下見に来られてる様子が書かれていて、どこでやりはんねやろ?と思ってたら京都芸術センターだったとは!
ってか芸術センターはこうしたいい企画たくさんやってるのに広報が下手。
情報をもう少し早く出したほうがいいと思う。
でもまあ、水野さんの話では依頼が来たのが7月とか言ってらしたから、普通の美術館とかと違って、企画の上がりが急なんだろうなぁ。よく言えばフレキシブルということで。
とまあ、前置きはこんなところで内容。

今回は出品作家とゲストの対談が毎週のように行われています。
そのうちなんと3つに参加してきました!
あんま普段トークとか参加しないんだけど、今回はどれも気になりすぎた。
まずは9月19日の内海さんのトーク。
内海さんの展示室はギャラリー北。
入ったら、いきなり色の洪水。そして黒い大きな絵画。
内海さんの魅力がこれでもかと発揮された一室となっています。
静岡やレントゲンで観た「十方視野」ですが、今回の展示が一番よかった!
すべて大きさも太さも違っていて、絵画という平面性から開放された気持よさ。
まさに今回の「panorama」というテーマにぴったりですね。360度絵画に囲まれる幸せ。
展示計画書みたいなのを見せていただいて、相当システマティックに展示されてる様子。
汚かった壁や床も作家自ら磨きまくったそうな笑
その辺の細かい操作等をトークでは色々明かしてくださいました。
対談相手は甲府大学文学部教授の川田都樹子さん。どういうつながり?
内海さんの追求している「絵の具の美しさ」の概念を改めて認識しました。
よく「色の美しさ」とごっちゃにされますが、あくまで「絵の具の美しさ」です。
色の美しさだけなら、新印象派のように点で絵の具を置いていけばいい。
けれど内海さんは平気で混色もするし、画面上で絵の具をこすったりもする。
そういうストロークの美しさもすべて含めて「絵の具の美しさ」に行き着きます。
トークの中で光の話が出てきて、内海さんは決して光を描いているわけではないと仰ってました。
川田さんも絵の具では光を表現できないということを科学的に説明してくれました笑
つまり、光というのは色の三原色を混ぜると白になる。
しかし絵の具で三原色を混ぜると黒になる。
光と絵の具の絶対的な違いは、言うまでもなく物質性です。
絵画というのは、いうなれば絵の具という物質を貼りつけてる作業なんですよね。
そういう根源的な部分を内海さんはキャンバス上で表現しているわけです。
ブログを読んでいてもものすごく絵画について考えてらっしゃいますが、この対談を聞いて、改めて絵画に対する情熱に触れられたように思います。
また、内海さんの特徴は、絵画のインスタレーション性にあるということで、そのことについてもお話してくださいました。
「絵画の評価は2秒で決まる」
この話が滅茶苦茶おもしろかったです。
内海さんはどんなに忙しくても必ず画廊や美術館を回りまくってるアートウォッチャーでもあるのですが、絵画の展覧会とかにいくと、展示室に入って目に飛び込んできた印象でそこから出るか居続けるかが決まると。それが2秒笑
これは同じアートウォッチャーとしてすごくわかります。
もう画家がどれだけ「この角度から見ると素晴らしいんだ」と思っていても、その角度にまで連れてこれなければそこで勝負はおしまい。
だから、展示室に入った時点で勝負は始まっているのだと。
その「誘い」をいかに作るかを操作できるならできるところまでやりたいと。
そのためには作家自ら壁をきれいにするのも床を磨くのも当たり前ということ。
絵画の質を1%上げるのは至難の業だけど、展示の質を1%上げるのは容易。
うーん、勉強になります。おもしろいトークでした。
<関連記事>
内海聖史「ボイジャー」@eN arts
内海聖史「十方視野」@ ラディウム-レントゲンヴェルケ
風景ルルル@静岡県立美術館

続いて水野勝規さん。
この展覧会の導入として、パノラマサイズの映像を玄関で展示しています。
また、談話室や廊下など様々な場所でも展示。
僕は水野さんのお名前は知っていたのですが、作品を観るのは多分初めて。
そのどれもが素晴らしくて、思わずファンになりました。
水野さんの作品の特徴は「絵画的」ということでしょうね。
画面の切り取り方が確実に画家視線。
それもそのはずで、元々大学では洋画専攻。
9月26日に行われた横浜美術館学芸員の松永真太郎さんとのトークの中でもモネを挙げていたり、やはり意識的なよう。
特に以前西山美なコさんが描かれたピンクの壁画の上に投影された「shine」は白眉。
水面をただただ写しただけのスクエアの映像なんだけど、見ているうちに抽象化されていく。
木炭で描かれたアニメーションのようにも見えてきて不思議。
こういう長回しというのも彼の作品の特徴でしょう。
ひたすら長い時間「待つ」というのが、とても印象的。
何をとかじゃなくて、ただただ待つ。
その意識がこちらにも伝わってきて、目を離せなくなってしまう。
特別すごい大事件が起きてるわけでもないのに。
廊下の床にプロジェクションされていた花火の映像も素晴らしかった。
映像って、どうしても暗い場所で見せる必要性ってのが付きまとって、なんか「わざわざ」感が少し抵抗あるんだけど、水野さんのは敢えて明るい場所でも展示していて、時間の移り変わりによって、見え方が違ってくるとかすごくおもしろい映像のあり方をしている。
押し付けがましくないのがとても好印象でした。

そして今回最も異色なのが木藤純子さん。
他の作家さんが「見せる」ことに意識的なのに対して、この人は「見せない」ことに意識的。
一見矛盾しているようなんだけど、すごく綱渡り的な緊張感があってすごく好きな作家さん。
だから、彼女の作品を観る時はいつもドキドキする。
今回も相当動悸が激しくなりました笑
だってどこに作品があるのかわからんねんもん!
最初に行った時点で、あ、絶対これトーク行かなあかんわ、と思いました笑
そして案の定作品を見落としまくってるのが発覚。
なんてアグレッシブな作家だ・・・。
木藤さん自身は初めてお見かけしたのだけど、ここまで作品とシンクロしてる人を初めて見た。
結構作家と作品ってつながらないことが多くて、こういうミニマルな作家に限ってよく喋る人が多かったりするのだけど、この人は言葉を慎重に選んで話すような印象で作品の印象とまるで同じ。
対談はなぜかトラフで、彼女が指名したらしい。そこが意外。
普段デザインの会社に働いてるとかで、トラフは前から気になる存在だったんだとか。
対談は、正直あまりうまくいってないような印象でしたが・・・。
こういうお互いクリエイティブな仕事してる人同士の対談って、どうしてもその人達の作品の紹介を挟まないと話が進められないし、その紹介の程度もどこまでしたらいいか微妙。
今回もトラフの紹介が結構長くなってしまったりして、中々難しかったです。
もう少しつっこんだ話を聞きたかったなー。作家と観客の距離感の測り方とか。
今回の作品は、作家の個人的な芸術センターとのつながりを作品化したような作品なので、どうしても説明がないと、中々難しいように思います。
「ご自由にご鑑賞ください」と言われても、、、ってなると思う。
具体的には、この展覧会に招待された時の会議室の印象を作品化してます。
ここの会議室は、僕も初めて通された時は衝撃で、なんと壁紙がウィリアム・モリス!
しかしここは関係者しか知らない「秘密の部屋」。
日々ここを訪れる人々にとっては関係の無い部屋で、その人達にはこの世に存在していない部屋。
ものが「ある」とか「ない」とかいうのは、その人がそれを認識しているか否かで決まる。
そういうことを作品にしています。
他の作品も「ある」と「ない」の際どい境界線に立った作品ばかり。
その綱渡りを楽しめるかどうかで、木藤さんの評価は大きく変わると思う。
あー、水野さんとの二人展が岐阜県のギャラリーキャプションで開催されるらしい。観たい!
<関連記事>
木藤純子「白と黒」@ART SPACE NIJI

ギャラリー南では押江千衣子さんの展示。
展示は相当贅沢な感じがした。
野山の風景を描いたやさしい絵画。
「panorama」と聞くとやはり山からの風景ですよね。
そういう意味では今回のテーマに最もストレートな作家なのかも。
トークは10月3日(日)の14時から。対談相手は大原美術館学芸課長の柳沢秀行さん。
このトークだけ参加不可です。残念。

他に茶室でも4人の展示があります。こちらも必見。
10月1日(金)17:00~20:00と10月24日(日)10:00~13:00は閲覧不可なので注意。


「panorama - すべてを見ながら、見えていない私たちへ -」
会期:2010年9月18日(土)-10月24日(日)
10:00-20:00 会期中無休・入場無料
会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」、談話室ほか館内各所

テーマ : アート
ジャンル : 学問・文化・芸術

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