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越後妻有トリエンナーレ2009 3日目(十日町・川西エリア)


最終日!!
川西エリアの[77]関口恒男作品に行ったらなんと豚汁と握り飯とキュウリの浅漬けと穫れたてトマトのサービスが!!地元の人たちがたくさん作ってくださって僕らに無料で振る舞ってくれました。いやー、嬉しい。
こういう地元の人々の温かさに触れるのもこの祭の醍醐味です。

朝旅館の人に別れを告げ、最後の戦場へ。
この日はまず我が母校の[13]京都精華大学「枯木又プロジェクト」へ。
これが遠いのなんのって・・・。
母校ってよしみがなかったらこねーよ、なんてことはなく、単純に僕の好きな森太三さんが出てたのでどっちにしろ行かねばならず。



森さんは紙粘土を使ったお馴染みの「Sky Mountains」をこの旧小学校の2階に。
ひんやりとした足から伝わる触感が気持ちいい。
あとは、先生や学生がなにやらしてて、完全に地元民になってた笑
旧枯木又小学校を後にして今度は[9]旧東下組小学校へ。
今回のトリエンナーレの特徴は、こうした使われなくなった民家や小学校を使ったプロジェクトがかなり多いということ。

特に書くこともないので、そのままお次は[7]うぶすなの家。
ここは様々な陶の作品が展示されてて食事もできます。
一通り見て近くの[8]古郡弘「胞衣 みしゃぐち」へ。
これが半端なくよかった。。。すごいです。





前回2006年に作られたようなのですが、まるで古代遺跡。
植物達が自生して、凄まじいオーラを放ってました。
「神聖」という言葉がしっくりくるようなサンクチュアリー。
すごく居心地がよくて、いつまでも浸っていたかったです。
このトリエンナーレの中でもかなり上位に来る作品。必見。必体験。
続いて[3]ドミニク・ペロー。
鏡面の屋根が動くっぽいんやけどどのタイミングで動くのか謎。

続いて川西エリア!
冒頭の関口恒男の作品で虹を鑑賞し、食事を頬張り、奥の[76]柴山昌也の家の象りを見たりしながら、やはり目指すはナカゴグリーンパークの「光の館」!











行ったらちょうど屋根が動く瞬間!!急げ!!
部屋に着くと写真3枚目のような有様・・・。
皆寝転がってその瞬間を見守る。宗教だね。
寝転がって空を鑑賞。畳の上で見上げる空の青さ。ええなぁ。
内部も色々鑑賞。
あああああ、泊まりたい!!!
ここは宿泊も出来るんです。
宿泊者のみ体験できる光る風呂体験や朝焼け鑑賞大会。
トリエンナーレ期間中は予約でいっぱい。
絶対リベンジします。
タレルの空間に泊まれるなんて世界でここだけではないでしょうか。
冬の雪に埋もれた「光の家」も綺麗やったなー。

そして再び十日町へ。
最後の作品は[50]R&Sie建築事務所の「アスファルト・スポット」。
駐車場が隆起しまくってます。





2003年の作品ということですが、僕はその翌年2004年に新潟を襲ったあの地震を思い出してしまいました。すごく暗示的な作品。最初それ以降に「地震の記憶」として作られたものだと思ったので、制作年を見て驚きました。
炊き出しの地元民の方々も話してくださいましたが、あれ以来新潟の人々は地震にとても敏感になってらっしゃって、車のガソリンは常に満タンにしておくなど、備えを常にしてらっしゃるそうです。奇しくも僕らが訪れた数日前に静岡を震源とする地震があって、ちょうどその話にもなって、新潟も微弱ながら揺れたそうなのですが、もう敏感過ぎて震源がどのあたりかまでわかるんだとか。そんな話も相まってこの作品は制作時とはまた違ったコンテキストを背負った作品なのかも知れないと思うと不思議な感じがしました。
でも全然ネガティブな感じがしなくて、むしろ風景に新たな豊かさを付け加えてるようで、すごく好感の持てる作品でした。最後の最後が良作でよかった。
3日間走らせっ放しの車ともお別れ。ホントにありがとさん。

駅についたら、また地元の方々がお茶とお菓子を出してくれた。
本当に温かい。また絶対来ます!



まとめ

越後妻有トリエンナーレ。
行ってみて改めてこれは世界に誇れる日本のアートシーンだと確信しました。
行くまでは少し疑いの目もあったんです。
やはりこの規模の大きさはどうなんかな?という。
だって、総面積760k�(東京都以上!)に370の作品郡ですよ。
同じようなイベントにドイツのミュンスターで10年に1度行われる彫刻プロジェクトがありますが、こちらは自転車で回れる規模なんですね。
ここまでの規模のものって世界でも中々例がありません。
ましてや都市部ではなく敢えて地方の田舎での開催。
やはりこの地方でやるということがこのイベントの最大の魅力で、アートとの出会いも去ることながら地元民との交流がものすごくうれしいんですね。
やっぱりアートと人々の生活って密接につながってるものだと思うんです。
なんかアートって神格化されすぎちゃって、一般には近寄り難いもの、現実離れしたものっていうイメージがあるけど、そういうものでは決してなくって、日常に溢れてるものだと思うんです。まあ「日常こそアートだ」とまでは言いませんが。
アートを神格化させる1つの要因に美術館という施設がありますが、日本はこの美術館が他国に比べてダントツで多い。そこまで日本人ってアート好きやったっけ?ってくらいの勢いなんですが、これはただのステレオタイプ的な考えで、とりあえず手に負えないものは箱に入れておけみたいな考えがあるんじゃないでしょうか。
今回のトリエンナーレには美術館というものがありません。
代わりに使われなくなった民家や小学校を利用したり、はたまたほとんどの作品が野外にあったりします。そしてそれらが見事に魅力を放っている。
20世紀に登場したホワイトキューブの終焉を見た気がしました。
やはり、均質より個性を皆求めているんだな、と。
その点でもこのトリエンナーレは個性的だし、広がりつつあるグローバリゼーションの波に平気で拮抗するローカリゼーションの底力が凄まじかったです。
日本のトリエンナーレといえば、もう1つ横浜トリエンナーレがあります。
はっきり言うと、もう横浜はやめた方がいいと思います。
全然個性がないし、世界に向けて日本もとりあえずなんかやらなきゃ的な雰囲気がありありと感じられちゃうんですよ。
世界と同じようなことをやっても、誰がわざわざこんな極東の島国までやってくるんだ?ってことをもっとよく考えないといけません。それならヴェニスや他のビエンナーレに行くのが常識でしょう。
でも越後妻有は世界でここでしか見れないんです。
実際、こんな地方でやってるにも関わらず都市部で行われてる横浜より動員人数が多いという話もありまして、しかも妻有の場合、皆ほとんど最低1泊はしてるんですよ。それでこの人数はすごい。
実際行った時も車の数の多さにびっくりしました。
少し暴力的な面も否めないし、すべての地元民が賛成してるとは決して思えないけど、でも地方の活性化に役立ってることは間違いないです。
そしてリピーターが多いのもこのトリエンナーレの特徴で、そこまで毎年作品の入れ替えがあるわけでもないのに行こうと思えるのは、純粋に皆こうした体験を求めている証拠なんだと思います。
発起人の北川フラムさんが、都市部の若者を中心に結成したボランティア集団こへび隊の活動を見て、田舎が都市の人間を必要としてる以上に、都市が田舎を必要としてることがわかって驚いたといったようなことを仰ってましたが、それは真実なんだと思います。
このトリエンナーレは明らかに時代と逆行した考えに基づくお祭りです。今の流行はショッピングモールやシネマコンプレックスというように、そこに行けば何でも揃うというのが主流で、こんなおもちゃ箱をひっくり返したような広い範囲に散らばった作品をわざわざ新潟まで観に行くという、途方もない行為は時代の流れからするとあまり好まれないもののはずなんですが、それでも皆えらい思いをしてまでやってくるのは、便利さだけでは済まされない人間の生理みたいなものすら感じられて、なんだか希望が持てちゃいます。
このトリエンナーレがずっとずっと続くことを僕は心から願ってます。
でもやはり最大の弱点はあまりに北川さんの負担が大き過ぎるということ。
2000年に始まったこのイベントですが、ずーっと北川さんが引っ張り続けています。
作品の選定もほぼ一人でやっちゃってるし、そろそろ次にバトンを渡す準備を始めないと、北川さんも決して若くないのだから、と勝手な心配をしています。
ミュンスターもこの40年間1人のディレクターがやっていて、そろそろ世代交代の声が叫ばれている所で、今後お互いどうなるのか不安と期待が入り交じります。
そして気になったのは、やはり北川フラムという人間がやってる以上、彼が関わる他のプロジェクトも似通り始めているということ。
今回もアートカレードスコープと同じ作家が何人かいましたが(むしろカレードスコープは妻有の作家を何人か招待したもの)、来年から始まる瀬戸内海国際芸術祭にもボルタンスキーを始め、同じような作家がエントリーされています。
この妻有での成功は、他の地方でも注目されていて、実際新潟市の方からもオファーがあり実際北川さんが手がけて現在開催中ですが、これらがあまりに普及すると、お互いの個性が相殺し合わないかと危惧しています。
個性から始まったはずなのに、いつの間にか均質になってしまう。
これほど悲しいことはありません。
こうした地方のアートイベントが増えるのは大変喜ばしいことですが、お互いがいい方向に共存できるように、何か手だてを考える必要があると思います。
ところで、artscapeにこのトリエンナーレに関する記事が出ています。コチラ
少し偏った記事ですが、村上隆と北川フラムの対比などおもしろい部分もあるので、興味のある方は読んでみてもいいと思います。



最後にこれから行く人にいくつかアドバイス!
今回のトリエンナーレは9月13日まで開催してます。
10月3日から11月23日までの期間で秋の芸術祭も開催するようですが、概要はまだ発表されてないようなので詳細はわかりません。
なので、行けるなら今やってる期間中に行くのがいいかと。
まず最初のポイントは拠点をどこに置くか、です。
僕らは十日町を拠点に動き回りました。
十日町は駅周辺にも旅館が多いし、レンタカーも借りれます。
なので十日町がおすすめ。
駅ではパスを販売してるので、そこで予め買っておきましょう。
そして服装はなるだけ身軽に。靴はサンダルがベスト!
交通手段は、バスやら自転車やらありますが、なんといっても車が便利。
僕らは駅前にある地元の美雪レンタカーで借りました。1日¥5250。ナビつき。トヨタもありますが、調べたらこっちの方が安かったので。
ただし、ナビはあまり役に立たないというか、目的地設定をどうしたらいいのか悩みます。なんせそこら中に作品が散らばってるわけですから・・・。
駅で作品マップが100円で売られてるので買っておくとよいでしょう。
あと、美術手帖別冊のガイドブックはマストバイです。
買ってしばらくその広さに呆然として5日ほど放置しましたが笑
だって、東京都以上の面積ですよ?作品数370ですよ?
明らかに僕のスケールを上回ってました・・・。
でも気を取り直して研究を進めると、ある真理に行き着きます。
それは、「如何に見るか」ではなく、「如何に見ないか」です。
ここ重要。線引いときます。
370すべての作品を見ようと思ってはいけません。
全部見ようとするならそれこそ最低一週間は必要でしょう。
ルーブル美術館の見方とおんなじ。
モナリザ、ニケ、ミロのヴィーナス以外はつけたしでオッケーなのです。
ということで、まず必ず見たい作品をピックアップしておきましょう。
そして、その道沿いにないものは、よっぽどでない限り容赦なく切り捨て御免。
段々切り捨てるのが快感になっていきます(ぉ
そして導きだしたのがこの黄金比ッ!

これを作品のバイパス手術と呼んでました。
この手術の結果、かなりの数の作品は削られましたが、まあ仕方ないってことで、旅の内容は2泊3日で決定。結果的には1日目と2日目入れ替わってますが。
そしてこれがまたびっくりするぐらい計画的に回ることができまして、予定してた作品はすべてコンプリートできました。車とか運転できないんで、作品を見てきた経験からくる勘で練り上げた計画でしたが、見事でした。我ながらすごい。野外にある作品はいつでも見れるけど、屋内のは10時~17時半までの間しか見れないのですが、ちゃんと毎回17時半ぎりぎりに終えられてましたし。
天気にも恵まれました。予報ではほとんど雨やったんですが、ちょっと降ったぐらいで、基本的に晴れてて、そんなに暑くもなくちょうどよかったです。やはり僕の晴れ男神話は続いているようです・・・。
皆さんもこれらの方法でうまく回ってください。
ちなみに十日町市内の作品はほとんど見てません。見ないでいいと判断したわけですが、キナーレの温泉は行ってみてもいいと思います。
最後の最後に僕が見た中でマストな作品をピックアップ。参考になれば。
[8]古郡弘「胞衣 みしゃぐち」(十日町)
[23]アントニー・ゴームリー「もうひとつの特異点」(十日町)
[24]石塚沙矢子「うかのめ」(十日町)
[28]J.カーディフ&G.ビュレス・ミラー「ストーム・ルーム」(十日町)
[31]行武治美「再構築」(十日町)
[38]福武ハウス2009(十日町)
[50]R&Sie建築事務所「アスファルト・スポット」(十日町)
[63]ジェームス・タレル「光の館」(川西)
[90]瀧澤潔「津南のためのインスタレーション つながり」(津南)
[147]まつだい雪国農耕文化村センター(松代)
[214]鞍掛純一・日本大学芸術学部彫刻コース有志「脱皮する家」(松代)
[215]同「コロッケの家」(松代)
[223]越後松之山「森の学校」キョロロ(松之山)
[232]塩田千春「家の記憶」(松之山)
[234]C.ボルタンスキー+J.カルマン「最後の教室」(松之山)
[240]マリーナ・アブラモヴィッチ「夢の家」(松之山)
僕もまだまだ見てない作品があるので今度来たらまた補完したいです。
今週23日のNHK日曜美術館で特集があるのでそちらもチェックです!

さて、旅はまだもう少し続きます・・・。
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