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名和晃平講演会「名和晃平の"アート"」@京都精華大学


金曜日に母校で行われた名和さんの講演会に行って参りました。
当日は市内で祇園祭があって、途中その辺を通らなければならなかったので、かなり憂鬱やったんですが、この日のメインは昼に終わってたので、向かう頃には人ごみも大分マシになっててよかったです。祭嫌い。

さて、今回の講演会。ホントに行ってよかったです。
名和さんのこれまで、今現在、そしてこれからのことを名和さん本人が語る3時間強の濃ゆい内容。18時半に始まって、終わったの10時過ぎですよ。おかげで晩飯食いそびれるわ、終バス逃すわで、中々大変でしたが、それでも最後まで聞けてよかったです。

名和さんとは2004年に僕らが学生の頃に講演会のゲストとして呼んで以来のおつきあい。
今回同じ教室で行われてたのであの頃を思い出しました。
初めて作品を見たのは2002年。僕が大学1年生で、名和さんもまだ院生か博士課程の学生時代だったと思います。
当時は現代美術の「ゲ」の字も知らなかった僕でしたが、その時見た作品は記憶の片隅に残り続けてました。
その時の展覧会は京都のマロニエというギャラリーで今でいう「リキッド」の作品を発表されてました。
講演会中にもお話がありましたが、当時のリキッドは今使ってるシリコンオイルではなく、普通に洗剤だったそうです。
洗剤だと泡が均質に出ない上に水面で泡立ってしまうので、もっと均質に泡の出る素材はないかと探しぬいた果てにシリコンオイルに辿りついたそう。
そもそもシリコンオイルというのは消泡剤といって、泡を消す役割を果たす素材だそうです。
それを泡立たせるとどうなるのか。その探究心から実験を重ねてできあがったのが今のリキッドの作品。
学生時代にシリコンオイルを手がける会社に出向いて行って援助の交渉をしに行った時のことなどが講演会中に語られました。
それが結実したのが2004年に今はなきKPOで行われた「Hi-energy field」展。
この展示は僕が当時見てない名和晃平の展示の数少ない例です涙
今銀座のエルメスでもこのリキッド作品は展示されてますね。
このリキッドはメンテナンス等かなり大変だそうなので、展示する機会が中々ないそうです。今までも展覧会で展示されたのは3度ぐらいだそう。貴重な機会です。
新丸の内ビルにもこのリキッドのシリーズが設置されてるそう。観に行かねば。

僕の中で「現代美術っておもしろい!」と初めて思わさせられたのが2003年のStudioJとノマルで同時に行われた展示です。前者では名和さんのアイコン的存在ビーズ、ノマルではプリズムの作品が初めて発表された時でした。
特にプリズムを見た時の衝撃は忘れられません。
ある種僕の人生を大きく変えてくれた展示でした。
それ以降名和晃平という名前を聞く度に確実に展覧会に行くようになって、名和晃平という作家の黎明期にほとんど立ち会ってるといっても過言ではないでしょう。
そんな名和さんと2004年の講演会で直接関わらせていただくようになり、当時は実家にあったアトリエで作品制作のお手伝いをさせていただいたりして、僕の人生において、本当に大きな影響を与えてくださった方です。

ロンドンに行ってから疎遠になって、名和さんの作品をもっと冷静に分析できるようになって、一時期ちょっと距離を置いてたことも正直ありました。
特に最近の企業とのコラボレーションに関して疑問に感じていました。
昨年末のBEAMSのショッピングバッグは、初めて電車の中でそれを持ってる人を見かけて、ショックでした。名和さんの作品が消費されてるのが見ていて辛かったんです。
ユニクロのTシャツもよくわからないというか、どうしてそこまで消費されることにむしろ積極的になってるのか、とずっと追いかけてきた作家だけに納得がいかなかったんです。
(余談ですが、会場にそのユニクロのTシャツを着てる集団がいて、何かと思ったら今名和さんが教えてる京都造形の学生達でした。なんか宗教みたいで恐かった・・・。)
その問いにも今回答えてくださって、そこで出た答えってのが、「アートを世に広めるのもアーティストの大きな役割であって、それに抵抗するのは20世紀的な考えで、今やインターネットで作品の画像なんかも簡単に見られる時代なのだから、そこは割り切りたい」といった答えでした。
前者のアートを広めるという考えには大きく賛同しつつ、後者はちょっと首を縦に振りづらい感じがしました。やっぱ情報として消費されるのと、ものになって消費されるってのは、質が違う気がするんですよね。でもまあ一般に広めるにはそういうやり方しかないのかな。難しい問題です。

それでも今回の講演会を聴き、やっぱ名和さんかっこいいなーと改めて思いました。
今回僕が一番聞きたかった、新たなアトリエ「SANDWICH」に関しても後半たっぷり聞かせてくださいましたが、これはすごいです。
京都の宇治にある元サンドイッチ工場を建築家とコラボしながら作り上げて行くプロジェクトなのですが、最終的にはただのアトリエだけではなく、ここでセミナーを行ったり、アーティストや建築家のレジデンスも行ったりと、ただのスタジオの枠を超えた存在になるそう。
ここまで大きな視野で活動されてるのはちょっと意外でした。
やはり、海外で活動されたりする中で、日本のアートシーンの遅れに名和さんなりに考えるところがあったようで、近年台頭してきた北京の存在なんかも影響してるそうです。このままでは日本が周回遅れどころではなくなってしまう、と。
そこで、日本の特に若手を少しでも支援したり育てて行くことができたら、と考えだしたのがこのプロジェクトで、全て自費でまかなってるそう。
奇しくもこの講演会の日は株式会社SANDWICHが登録された日だそう。
(7月17日で、1が7にサンドされてるってんでこの日を選んだらしい笑)
このアートバブルで名和さんもその恩恵を与えられ、それを守りに入るのではなく、攻めに使うという姿勢は本当に凄いことだと思います。この浮き沈みの激しいアートシーンの中で、5年後10年後のことまでわからない中でのこの決断。もう頭が上がりません。
自分でも無謀だと仰ってましたが、それでも日本のアートシーンに賭けたいのだという名和さんの情熱が伝わってきて感動してしまいました。
一時は拠点を海外に移すことも考えたそうですが、それではいつまでたっても日本は変わらないといことで、3年程前に京都を拠点にアトリエを構え、このSANDWICHに至る経緯が聞いてて胸が熱くなりました。
これほどまでにアクティヴィストだったとは。
熱い人だとは知ってましたが、今回の講演会ではさらに更新された感じです。

最後に、「アートはなぜまわりくどいのか」と聞かれた学生が言葉に詰まった経験を名和さんに語った場面で、名和さんは「まわりくどいとは思わない。自分も自分が見せたいもの、やりたいことを最短距離で表現してるつもり。言葉では余計まわりくどくなるからアートにしている」というようなことを仰ってたのがとても印象的でした。

今回その前の土日に学生とワークショップを通じて制作された作品が、録音用の防音の部屋に展示されてて、これもおもしろかったです。
発泡スチロールを抽象的な形にして、その上から蝋を塗って独特のマチエルに仕上げた彫刻群。SCUMシリーズに近い作品ですね。制作過程はコチラ
今回名和さんも初めてのことづくしで楽しかったと仰ってましたが、防音室という緊張感で満たされた室内での展示は、何か独特の雰囲気が漂っていてちょっと恐かったです。室内で見るより、部屋の外からガラス越しに見た時の印象が強い。何か実験室で培養してる生物を見てるような感覚。
この作品が今後どう展開していくのか楽しみ。
講演会内でも、新しいステップとなるような作品とかスライドで見られてよかったです。それらの作品はこの9月にノマルで行われる展覧会で見られそう。
どんどん前に前に進んで行く名和晃平というアクティヴィスト。
これからどんな展開をしていくのか、目が離せません。
エルメスの展示も早く見たい!9月には観に行きます。
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