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杉本博司「歴史の歴史」@国立国際美術館


金沢から大阪へやってきた、「歴史の歴史」を目撃してきました。
この日は、人類学者の中沢新一氏との対談があり、ちょうど中沢さんの著書「アースダイバー」に感銘を受けたとこだったので是非見てみたい対談でした。
ってことで整理券の配布30分前に到着しました
が、
すでに行列で、最後尾に並ぼうと思ったら、それは既にモニター観覧の列。
会場130人分は既に埋まってしまったとのこと。。。
がーん。
いやはやなめてました。
まあ、配布の10分前ぐらいに行けばええか、と思ってたんですが。。。
ってかモニターですら既に100人以上は並んでんですけど・・・。
やっぱ凄い人気ですね。
最前列の人たちは開館と同時に並んでたんでしょうか?
堂島ロール以上の人気や(ぉ
どうしますか?と聞かれ、ずばり断念しました。
思うんですが、講演会モニターで聞くってどうなんですか?
僕は絶対にいやで、そんなの立ってまで見る気分になりません。
しかもこの日は雨。
テンションだだ下がり。。。
なんかもう展覧会も見ずに帰ったろか、とも思いましたがそこは踏み留まりました。

行列が入ってくる前に急がなきゃと会場へ。
まずはB2階の展示。
会場案内の裏には建築シリーズの作品が展示。
コルビュジエのロンシャン教会とライトのNYグッゲンハイム、そして安藤の光の教会というラインナップでしたがこの選択に何か意味はあるのだろうか。
続いて広間に戻ると「概念の形」の展示と化石の展示。
なんか色々ありましたが、何がどうなってここまで鮮明に残るんだろう?
まあ、これもまた杉本コレクションってのが凄い話ですが。
で、特設壁の向こうの展示質へ。
入ると薄暗い中に海景がずらーーーっと並べられてる。
これはちょっと鳥肌が立つ。
ドイツでも見ましたが、この弧を描いた壁は海景シリーズおなじみですね。
真中に置かれた椅子に10分くらい座って見入っちゃいました。
ホントにすごい展示。
さらにその裏には中世の掛け軸やら彫刻やらが展示。
おもしろいのが、中には杉本さんがアレンジを加えてるのがあること。
こういうのにアレンジしちゃうって凄いセンスやなぁ、と思う。
例えば13世紀の宝塔にアクリル球を埋め込んだりね。
それがあまりに違和感がないので、あれ?13世紀にアクリル?なんて思って焦ってキャプション見てなるほどと。
その奥には新作「反重力構造」の展示。
天平時代の建築古材と杉本氏が撮った当麻寺のディテールが縦並びに。
天井の高い展示ってことでここしか展示するとこないしね。
ここは、外からの光も微妙に入ってくるんですが、照明じゃなくて、この自然光だけで見たかったなぁ、と思いました。
とはいってもすばらしい美しさですね。
あの彫刻作品(?)が気になって仕方がない・・・。
そしてその側には十一面観音立像。
もうホントに完璧なフォルムですよね。

さて、B3に移動して、まずはTIME誌など、太平洋戦争に関するコレクションの展示。TIMEが展示されてるボードがちょっとちゃちくて気になった。細くてすんません。
そして、宇宙食や隕石の展示。なんなんだこのコレクションは・・・。
月の掛け軸とかありました。
その次の展示室ではマリア像やらレンブラントのエッチングなどがこれまた掛け軸に。もう何が何やらわかりません笑
そしてお次は解体新書などの解剖学のコレクション。
ここでは、普段は開けられない通路にベーコンの版画が展示されてて、これがまたかっこいい展示。普通にドアにかけられてるんですが、すごい合ってた。
そんで、その奥に進むと「放電場」の展示。
これがもう、反則ってぐらいすごかった・・・。
壁が黒いベールで覆われていて、縦に壁がいくつか立っててそこに、光を放つ「放電場」の写真たち。さらに奥は鏡が張られていて、その壁が倍増されている。
その鏡の1枚に大きくヒビが入れられていて、空間の虚構を暴いているのと同時に、「放電場」の写真のフラクタルな形状とも呼応している。
しかもこの鏡のヒビはそれだけではなく、この展示室の奥に展示されてるデュシャンの肖像ともかかってるんですね。そうです、デュシャンの有名な作品「大ガラス」へのオマージュ。
「大ガラス」というのは通称で、正式なタイトルは「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」という謎めいたタイトルで、通称の「大ガラス」というのは、まんま、大きなガラスを使った作品だから。そこにこれまた謎めいた図像が描かれてるんですが、これを展示する時になんとおもっきし割れちゃったわけです。最初は失望したデュシャンですが、もうこのまま展示しちゃおうということで、今やその割れた「大ガラス」は伝説となってるのです。
実際杉本さんは、デュシャンの信奉者で、今回の展示のラストを飾るのもリチャード・ハミルトンの「『大ガラス』の地図」。大ガラスの図像を解説?してる作品。
一緒に銅矛やら勾玉などが展示されてるこれまた謎な展示室でしたが。
最後に杉本氏のインタビュー映像があり、見てたら、なんでも最初は鏡がズレてて、外してやり直そうかとなった時に、何かの衝撃でズレたという設定にしようという杉本さんの案に、鏡を1枚割ってみようということになったらしい。そしたら、「放電場」の図像ともデュシャンとも偶然つながったというんだからすごい話・・・。
なんか何かに引っ張られてなるべくしてなったという神懸かり的展示ですね。

そんなこんなで、本当にすごい展示たちでした。
すごい展示ってのは往々にして、従来の展示室のことを忘れさせる力があると思うんですが、今回の展示ってのがまさにそうで、いつもの国立国際の展示室がどんなだったか忘れさせられました。途中、「あれ、ここどこやっけ?」ってなってましたから。
金沢の展示室ってのはある種完璧な感があるのに対し、国立国際ってのは、正直展示室がどうしようもない。でも、この展覧会の場合意外にもこっちの展示の方がしっくり来た感があります。というのも、金沢の場合、展示室同士が廊下でひとつひとつ分断されてるんですが、国立国際の場合どでかい展示室がどどんってあるので、杉本さんの作品とコレクションたちが溶け合う様がうまく作用してた感じ。
金沢と大阪どっちがよかった?って聞かれたら僕はこっちになると思います。

ってことで、来た道を戻って2度目の巡回をしていたらな、な、なんと

杉本教授の総回診

に金沢に続き遭遇してしまった・・・。
や、総回診っていうか、中沢さんと2人で普通に見て回ってらっしゃったんですが、もう何なんでしょうね、これは一体。
TIMEの展示見て出ようとしたら入ってきたんです笑
しばらくストーキングしました(死)
講演会聞けなかったけど元がとれたー。雨でも来た甲斐がありました。

ってことで、これは歴史的展示です。
今年ロスコに次ぐヒット。マストですよ!
多分僕ももう一回観に行きます。

杉本博司「歴史の歴史」
国立国際美術館 http://www.nmao.go.jp/
2009年4月14日(火)-6月7日(日) 月曜休館(祝日の場合は翌火曜休館)
10:00-17:00(金曜は19時まで)


<関連記事>
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