伊庭靖子展「まばゆさの在処」@神奈川県立近代美術館

伊庭さんの展示を観に鎌倉へ。
この日はメチャクチャ晴れててすごい人やった。
っていうか、物心ついてから鎌倉来たの初めてやったかも。
しかし目指すのは美術館のみ。仏像も江ノ島も見てませーん。
さてさて、伊庭さんといえば昨年eNartsでの個展が印象的でしたが、今回は美術館ってこともあって、過去昨も合わせて40作ほどが1度に見られるという豪華なもの。しかも年代順に展示されてたので、伊庭さんがどういう径路を辿っているのかがわかる。
まずは果実等のクローズアップを描いていた90年代後半のもの。
この頃は色彩も豊かで、果実の瑞々しさがほとばしってます。
これが油絵だなんて、本当に驚異的。
しかし2000年に入ると色彩は一気に減って、シーツや枕といった、白に移行。
この白の中の明度差のあまりない中での色彩がすごくて、改めて伊庭さんの底力を感じる。
そのシーツのシリーズも後半になるにつれて柄ものが登場。
その柄ものがまた陶器のシリーズにつながっていくわけだけれど、絵を描いた事がある人ならわかると思うけど、柄のあるものって本当に難しい。
絵の中でもののパターンがちゃんとその対象物にくっつかないというか、ただのパターンとして画面に張り付いちゃうんですよね。
そこに果敢に挑戦する伊庭さんの凄まじさは感動もの。
近年の陶器の作品なんて、ちゃんとはじいたらキーンと冷たい音がなりそうな質感が画面上で伝わってくる。圧巻。
伊庭さんの場合、ただのフォトペインティングとは違って、その対象物の質感というところに重きを置いているんだと思う。ただ写真になったものを写し取るんじゃなくて、フラットな写真というメディアに質感という新たな息吹を与える為にはやはり自らの手を動かす絵画という方法しかないと、彼女自身実感してるように思う。
伊庭さんのこれまでの活動を振り返り、これからの予感を感じさせるいい展示でした。
ちなみにここ初めて来たけど、年末には内藤礼展やって。また来なあかん。。。
やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
今年のヴェニス日本館代表も決まったやなぎさんの展覧会。
このシリーズは2004年の丸亀での展示から始まって今に至ってる長期もの。
内容はというと、色んな女性に50年後の自分を語ってもらい、それを写真として具現化してゆくというもの。ある人は占い師になってたり、ある人は看取り屋、ある人はアメリカで彼氏とバイクでドライブなんて、色んなおばあちゃんが登場します。
ポイントはこれが「グランド・ファザーズ」じゃないってこと。
以前、インタビューか何かで、なぜこの作品が女性だけなのか?って聞くと、男性に50年後の自分を想像してもらうと暗いことが多かったんだとか笑
その点女性の方がぶっとんだ回答が多くて女性に絞ったと。
なんかこういう男女の思考の違いっておもしろいですね。
で、今回の展示なんですが、正直引っ張り過ぎな感が否めなかったですね。
実際ほとんど2004年の丸亀で見たものばっかでしたし。
このシリーズの欠点ってこれ以上発展しようがないというところ。
その丸亀の時にやってた「寓話」シリーズは、なんか色々できそうでしたが。
なんにせよ、固い展示が続いたヴェニス日本館だけに、今回この作品群がどう受け止められるのか、楽しみですね。でも前々回も石内さんの「mother's」だっただけに、ごっちゃにならんかといらん心配してたりしてなかったり。
写真はすっごく綺麗です。まだの人は楽しめると思うので是非。5月10日まで。
第12回岡本太郎現代芸術賞展@ 川崎市岡本太郎美術館
知人の笹倉さんが入選されてチケットをいただいたので行ってきました。
てっきり青山にある岡本太郎記念館だと思ってたら全然違う場所にあってびっくり。
いやー、なんかホント変な場所にありますね。静かでいい場所ですが。
さて、岡本太郎賞ですが、その名の通り岡本太郎のような若手の爆発的芸術を募る公募展に対する賞。存在は有名ですが、実際観に行ったのは初めて。
さすがに岡本太郎という名を冠してるだけあって、激しいのが多い。
特に大賞の奴は恐すぎ・・・。
後頭部剃った作者が何か喋ってました。恐すぎてほとんど触れられなかった。
こんな中だったんで、笹倉さんの作品はちょっと損してた感がありましたね。すごく雑多に展示されてるし。パンタロンで見た時のような迫力は無かったです。
受賞作で気になったのはタムラサトルさんの火花の散る作品。
入選作では飯田竜太さんの、小説を色んな形に切った根気のいる作業の積み重ね作品。
全体としてはバラバラすぎて何が何だかわかりませんでした。
まあ、もうここまで観に来ることはないかなって感じ。
そもそも僕あまり岡本太郎得意じゃないんで。。。
VOCA展@上野の森美術館
こちらは若手平面作家を対象とした公募展。
VOCAの正式名称は'THE VISION OF CONTEMPORARY ART'。
だったらなんで平面だけに限定するのかさっぱり謎。
もっといいネーミングなかったんかいな。
と、早速愚痴ってますが、あんまりいい印象のない公募展です。
今回は名和さんが入選してたのと、無料券があったので初めて見てきました。
ずっと現代美術の展覧会ばかり見てると、全ての作品が壁にかかってるってのが逆に新鮮に見えて面白かったです。しかしまあ、賞をとってる作品はあんまりでしたが・・・。
府中市美術鑑賞をとってた高木こずえさんは、実際何を撮ってるのか気になったくらい。
そんな中で名和さんはやっぱすごかった。
遠くから見てもかっこいいし、近くで見てもグルーのマチエルが楽しい。
やはり純粋に平面やってる人とは別の魅力がありますね。
かなーり近くまで寄って見てる人が多かったけど最終日まで大丈夫だろうか笑
あと、船井美佐さんの作品をすごく久々に見たけど、明らかに良くなってた!
刈谷さんもものすごくいいですね。近々StudioJの展覧会も観に行きます。
あとは特に。ってさっきから関西の人の作品にしか触れてません。
岡本太郎賞もVOCA賞もどっちも関西人がとってますからね。すげーすげー。
田中功起アーティスト・トーク@群馬県立近代美術館
「僕がアメリカに行くまえに整理したこと、話したいこと」というタイトルで、近々アメリカに3年間滞在制作する予定の田中功起さんが講演会を開きました。
前回展覧会自体を見て益々気になる作家になってしまったので、今回の講演会はその気になる田中功起の生の話を聞けるってことで、SUMIKA終了後車飛ばして群馬近美へ。
ちょっと遅れましたが、なんとか7割ほどは聞くことが出来ました。
内容はこれまでの作品で、あまり取り上げられなかったり不評だった作品を田中さん自身がそれらの映像見せながら解説していくというもの。それらの作品のことを、総称して「夜の芸術」と仰ってました。
なんか敢えてそういうところに触れていく時点で素直な人やなぁと思ってしまったんですが、話を聞いてるとますますその素直さにハマってしまいました。
田中さんの作品のすごいところって、単純に言ってしまえば「嘘が無い」という点に尽きる気がする。この展覧会のタイトルといい講演会のタイトルといい、そしてその内容といい。
かつてドビュッシーは「芸術とは、最も美しい嘘のことである」という言葉を残しましたが、田中さんの作品にはその美しさすらも度外視してドストレートな表現なんですよね。今回の講演聞いてて改めて実感できました。
アメリカに行ってまたどんな作品ができあがるのか楽しみでなりません。
今週末にはまた東京現美で講演会があるそうな。時間のある方は行ってみては?