インシデンタル・アフェアーズ@サントリーミュージアム
年末、「2009年注目展覧会 暫定版」を更新するのに、おもしろそうな展覧会ないかなー、と思って美術館のサイトを回ってて、久々にサントリーミュージアムのサイト見たら気になるタイトルを見つけて、その後も注目してたのだけど、間もなく出品作家が発表されてこの目を疑いました。
フランシス・アリス、トーマス・デマンド、東恩納裕一、アニッシュ・カプーア、木村友紀、ウドムサック・クリサナミス、宮島達男、トニー・アウスラー、エリザベス・ペイトン、ミシェル・ロブナー、佐伯洋江、榊原澄人、さわひらき、田中功起、ウォルフガング・ティルマンス、横井七菜、横溝静
なんなんだ、この豪華すぎるメンバーはぁあああ!!
衝撃的な内容です。
これまでサントリーミュージアムは、ここまで本腰入れて現代美術を扱うことはなかったんです。どっちかというと、アール・ヌーボーやらエッシャーやらあの辺の展覧会ばかり。
今まで現代美術を扱ったものといえば、「THEドラえもん展」、「夢みるタカラヅカ展」、「GUNDAM展」ぐらい。
実際僕も2003年の「タカラヅカ展」以来行ってませんでした。
そんなこんなでかなり楽しみにしてて、ついに行ってまいりました。
「偶発的な関係性」と題されたこの展覧会。
副題に「うつろいゆく日常性の美学」とつけられてます。
着いたらちょうど展覧会解説がやってたので聞いてみると、どうやらこの展覧会はサントリーミュージアム15周年を期に現代美術にも本腰入れて焦点当てていこうという意欲的なもので、この展覧会はその記念すべき第一回ということで、素人の人にも楽しんでもらえる為の、いわばベストヒッツ入門編といったところ。
作品解説の後に、「現代美術を楽しむ為の心得」的なものも伝授してた。
「考えるな、感じろ」的な笑
ってことで、早速潜入。以降ネタバレになるのでご注意を。
まずはティルマンスの有名な作品「Freischswimmer」からスタート。
「自由に泳ぐ者」という意味のこの作品は、制作方法などは明かされてないのですが、水の中をたゆたうインク?を撮影したのか感光させたのか、とにかく凄まじい美しさを讃えた大判写真。ティルマンスの代表作といっても過言ではないでしょう。
早速豪華な作品でスタートして、続いては佐伯洋江のシャープペンシルで描かれた細かなドローイングとエリザベス・ペイトンの小さな絵画。そして日本初公開となる2003年のヴェニス・ビエンナーレで話題となったミシェル・ロブナーの群衆の映像。
そして、続いてはカプーアのアクリルの彫刻。アクリルの中に空気を入れて、無の空間を生み出した視覚的にもかっこいい作品。最初カプーアが出るってんでどんな作品が出るのかと思ってたんですが、いいですねー。
その前には榊原澄人のアニメーション。これは横浜のZAIMでやってたECHO展にも出てて印象的だった作品。ずっとループで1つの町の様子が俯瞰で描かれてるのだけど、すべてがつながっていて、目が離せない。おばあさんによって川に投げ込まれた赤ん坊が成長して少女になりやがて結婚してそのおばあさんになりそしてまた赤ん坊を川に落としてみたいなのが不思議につながっていく。これは普段現代美術を見てないとおぼしきおばさん2人が興奮して見てました笑
横井奈々のペインティング、フランシス・アリスの羊が広場で輪になっていく映像を抜けると一気に明るくなって、大阪港を臨む部屋へ。
そこには田中功起の「everything is everything」という映像インスタレーションが。
これが素晴らしすぎた!!
これまでもこの手のインスタレーションを手がけてきた田中さんですが、今回最もよかったんじゃないでしょうか。なんせ海を「借景」として、色とりどりの日常道具たちが並ぶ様が本当に美しくてその場にいつまでも佇んでいたかったくらい。
映像も相変わらず世界のありようをそのまま映したような。
日常品はその映像で使われてるものたちです。
続いて下の階へ。
宮島達男の「MEGA DEATH」。
これは1999年のヴェニスでも話題になった作品で、僕も2005年に熊本で見ました。
1800もの青いカウンターが部屋を埋め尽くし、それぞれのスピードでカウントを続けていて、ある地点を観客が通るとセンサーが感知して電源が落ちて、一気に暗転。真っ暗な闇がしばらく続いた後少しずつ回復していくカウンター達。その再生していく様がとてつもなく美しいのです。
でも熊本の広い空間で見た時の衝撃が忘れられないので、今回少し小さくて物足りなさも感じた。なんにせよこれは宮島さんの代表作といっていいでしょう。
その暗闇を抜けると今度は東恩納裕一の蛍光灯の作品とウドサック・クリサナミスのコラージュペインティングが。
その先には横溝静とトーマス・デマンドの写真。
横溝さんの「Stranger」と題された作品は、「あなたの写真を撮りたいので◯月○日の◯時に部屋を明るくして窓際に立っていてください」という手紙を見ず知らずの人の家の郵便受けに入れて、その指定した日時に作家が再びその家へ赴き、カーテンが閉まっていたら帰って、開いていれば撮影するという作品。その撮影後もその人々との交流を一切することなく、「他人」という関係を続けていくことになる。この映された人々の複雑な表情がとても印象的で異様な雰囲気が漂う。人間の関係性を深く考えさせてくれる良作。
その後木村友紀、トニー・アウスラーと続き、最後はさわひらき。
最後がさわひらきってのがいいですねー。
「Going Places Sitting Down」と題されたこの作品は、メランコリックな音楽と共に、部屋の中で木馬達が洗面台の湖を渡り、絨毯の草原を駆け、部屋の中に壮大な旅を演出する、さわさん独自の世界観が見ていてたまらなくいい心地にさせてくれます。
今回の「日常性の美学」という点で最も適した作品だったのではないでしょうか。
最後にこの作品ってのはとても有意義であったと思います。
今回の展覧会は、新作が出品されてないという点では少しもの足りなさを感じるものの、各作家の代表作が惜しみなく出品されてて、まさに現代美術のベストヒッツといった展覧会で、現代美術入門としてぴったりの展覧会だったと思います。
最初のうちこそこういうホンモノを見ておく必要があると思うんですよね。
僕も現代美術を見始めた時に、名和さんの作品に出逢ってなかったらここまでハマってなかったんじゃないかと思うと、やっぱ最初って肝心やと思います。
興味あるけどどれ見たらええかわからん、って人にうってつけです。是非
にしてもイギリスで活躍する外国人作家が多数展示されてるのが気になる。最初のティルマンス、デマンド(ドイツ人)、カプーア(インド人)、榊原澄人、横溝静、さわひらき(日本人)など。
キュレーターの趣味?
今回のキュレーションは配置がよかったですね。
特にアリスの暗闇から明るい田中功起の展示室に移動する時の光はすばらしい。
最後がさわひらきってのも粋です。
「インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常の美学」
2009年3月7日ー5月10日
10時30分~19時30分(最終入場は19時まで)
月曜休館(3/30、4/6、4/27、5/4は開館)
サントリーミュージアム 詳細
苅谷昌江「Screen」@studioJ
で初見した苅谷さんの個展。
その時に感じた異様な雰囲気に少しハマってしまったので行ってきました。
会場には、無人の劇場にジャングルが広がるシュールな絵画を中心に、その席でスクリーンを虚ろに見つめる動物達の絵が何点か展示されてて、真中には芸術センターでも見せてた鳥の形に切り取ったキャンバスと電灯のインスタレーション。
相変わらず謎めいた世界観で見れば見るほど不思議。
この不穏な世界観は一体何なんでしょうか。
これからも見ていきたい作家さんですね。
この展覧会は4月25日まで。
苅谷昌江HP>>http://yellowvalleys.net/
フランシス・アリス、トーマス・デマンド、東恩納裕一、アニッシュ・カプーア、木村友紀、ウドムサック・クリサナミス、宮島達男、トニー・アウスラー、エリザベス・ペイトン、ミシェル・ロブナー、佐伯洋江、榊原澄人、さわひらき、田中功起、ウォルフガング・ティルマンス、横井七菜、横溝静
なんなんだ、この豪華すぎるメンバーはぁあああ!!
衝撃的な内容です。
これまでサントリーミュージアムは、ここまで本腰入れて現代美術を扱うことはなかったんです。どっちかというと、アール・ヌーボーやらエッシャーやらあの辺の展覧会ばかり。
今まで現代美術を扱ったものといえば、「THEドラえもん展」、「夢みるタカラヅカ展」、「GUNDAM展」ぐらい。
実際僕も2003年の「タカラヅカ展」以来行ってませんでした。
そんなこんなでかなり楽しみにしてて、ついに行ってまいりました。
「偶発的な関係性」と題されたこの展覧会。
副題に「うつろいゆく日常性の美学」とつけられてます。
着いたらちょうど展覧会解説がやってたので聞いてみると、どうやらこの展覧会はサントリーミュージアム15周年を期に現代美術にも本腰入れて焦点当てていこうという意欲的なもので、この展覧会はその記念すべき第一回ということで、素人の人にも楽しんでもらえる為の、いわばベストヒッツ入門編といったところ。
作品解説の後に、「現代美術を楽しむ為の心得」的なものも伝授してた。
「考えるな、感じろ」的な笑
ってことで、早速潜入。以降ネタバレになるのでご注意を。
まずはティルマンスの有名な作品「Freischswimmer」からスタート。
「自由に泳ぐ者」という意味のこの作品は、制作方法などは明かされてないのですが、水の中をたゆたうインク?を撮影したのか感光させたのか、とにかく凄まじい美しさを讃えた大判写真。ティルマンスの代表作といっても過言ではないでしょう。
早速豪華な作品でスタートして、続いては佐伯洋江のシャープペンシルで描かれた細かなドローイングとエリザベス・ペイトンの小さな絵画。そして日本初公開となる2003年のヴェニス・ビエンナーレで話題となったミシェル・ロブナーの群衆の映像。
そして、続いてはカプーアのアクリルの彫刻。アクリルの中に空気を入れて、無の空間を生み出した視覚的にもかっこいい作品。最初カプーアが出るってんでどんな作品が出るのかと思ってたんですが、いいですねー。
その前には榊原澄人のアニメーション。これは横浜のZAIMでやってたECHO展にも出てて印象的だった作品。ずっとループで1つの町の様子が俯瞰で描かれてるのだけど、すべてがつながっていて、目が離せない。おばあさんによって川に投げ込まれた赤ん坊が成長して少女になりやがて結婚してそのおばあさんになりそしてまた赤ん坊を川に落としてみたいなのが不思議につながっていく。これは普段現代美術を見てないとおぼしきおばさん2人が興奮して見てました笑
横井奈々のペインティング、フランシス・アリスの羊が広場で輪になっていく映像を抜けると一気に明るくなって、大阪港を臨む部屋へ。
そこには田中功起の「everything is everything」という映像インスタレーションが。
これが素晴らしすぎた!!
これまでもこの手のインスタレーションを手がけてきた田中さんですが、今回最もよかったんじゃないでしょうか。なんせ海を「借景」として、色とりどりの日常道具たちが並ぶ様が本当に美しくてその場にいつまでも佇んでいたかったくらい。
映像も相変わらず世界のありようをそのまま映したような。
日常品はその映像で使われてるものたちです。
続いて下の階へ。
宮島達男の「MEGA DEATH」。
これは1999年のヴェニスでも話題になった作品で、僕も2005年に熊本で見ました。
1800もの青いカウンターが部屋を埋め尽くし、それぞれのスピードでカウントを続けていて、ある地点を観客が通るとセンサーが感知して電源が落ちて、一気に暗転。真っ暗な闇がしばらく続いた後少しずつ回復していくカウンター達。その再生していく様がとてつもなく美しいのです。
でも熊本の広い空間で見た時の衝撃が忘れられないので、今回少し小さくて物足りなさも感じた。なんにせよこれは宮島さんの代表作といっていいでしょう。
その暗闇を抜けると今度は東恩納裕一の蛍光灯の作品とウドサック・クリサナミスのコラージュペインティングが。
その先には横溝静とトーマス・デマンドの写真。
横溝さんの「Stranger」と題された作品は、「あなたの写真を撮りたいので◯月○日の◯時に部屋を明るくして窓際に立っていてください」という手紙を見ず知らずの人の家の郵便受けに入れて、その指定した日時に作家が再びその家へ赴き、カーテンが閉まっていたら帰って、開いていれば撮影するという作品。その撮影後もその人々との交流を一切することなく、「他人」という関係を続けていくことになる。この映された人々の複雑な表情がとても印象的で異様な雰囲気が漂う。人間の関係性を深く考えさせてくれる良作。
その後木村友紀、トニー・アウスラーと続き、最後はさわひらき。
最後がさわひらきってのがいいですねー。
「Going Places Sitting Down」と題されたこの作品は、メランコリックな音楽と共に、部屋の中で木馬達が洗面台の湖を渡り、絨毯の草原を駆け、部屋の中に壮大な旅を演出する、さわさん独自の世界観が見ていてたまらなくいい心地にさせてくれます。
今回の「日常性の美学」という点で最も適した作品だったのではないでしょうか。
最後にこの作品ってのはとても有意義であったと思います。
今回の展覧会は、新作が出品されてないという点では少しもの足りなさを感じるものの、各作家の代表作が惜しみなく出品されてて、まさに現代美術のベストヒッツといった展覧会で、現代美術入門としてぴったりの展覧会だったと思います。
最初のうちこそこういうホンモノを見ておく必要があると思うんですよね。
僕も現代美術を見始めた時に、名和さんの作品に出逢ってなかったらここまでハマってなかったんじゃないかと思うと、やっぱ最初って肝心やと思います。
興味あるけどどれ見たらええかわからん、って人にうってつけです。是非
にしてもイギリスで活躍する外国人作家が多数展示されてるのが気になる。最初のティルマンス、デマンド(ドイツ人)、カプーア(インド人)、榊原澄人、横溝静、さわひらき(日本人)など。
キュレーターの趣味?
今回のキュレーションは配置がよかったですね。
特にアリスの暗闇から明るい田中功起の展示室に移動する時の光はすばらしい。
最後がさわひらきってのも粋です。
「インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常の美学」
2009年3月7日ー5月10日
10時30分~19時30分(最終入場は19時まで)
月曜休館(3/30、4/6、4/27、5/4は開館)
サントリーミュージアム 詳細
苅谷昌江「Screen」@studioJ
で初見した苅谷さんの個展。
その時に感じた異様な雰囲気に少しハマってしまったので行ってきました。
会場には、無人の劇場にジャングルが広がるシュールな絵画を中心に、その席でスクリーンを虚ろに見つめる動物達の絵が何点か展示されてて、真中には芸術センターでも見せてた鳥の形に切り取ったキャンバスと電灯のインスタレーション。
相変わらず謎めいた世界観で見れば見るほど不思議。
この不穏な世界観は一体何なんでしょうか。
これからも見ていきたい作家さんですね。
この展覧会は4月25日まで。
苅谷昌江HP>>http://yellowvalleys.net/
伊庭靖子展「まばゆさの在処」@神奈川県立近代美術館

伊庭さんの展示を観に鎌倉へ。
この日はメチャクチャ晴れててすごい人やった。
っていうか、物心ついてから鎌倉来たの初めてやったかも。
しかし目指すのは美術館のみ。仏像も江ノ島も見てませーん。
さてさて、伊庭さんといえば昨年eNartsでの個展が印象的でしたが、今回は美術館ってこともあって、過去昨も合わせて40作ほどが1度に見られるという豪華なもの。しかも年代順に展示されてたので、伊庭さんがどういう径路を辿っているのかがわかる。
まずは果実等のクローズアップを描いていた90年代後半のもの。
この頃は色彩も豊かで、果実の瑞々しさがほとばしってます。
これが油絵だなんて、本当に驚異的。
しかし2000年に入ると色彩は一気に減って、シーツや枕といった、白に移行。
この白の中の明度差のあまりない中での色彩がすごくて、改めて伊庭さんの底力を感じる。
そのシーツのシリーズも後半になるにつれて柄ものが登場。
その柄ものがまた陶器のシリーズにつながっていくわけだけれど、絵を描いた事がある人ならわかると思うけど、柄のあるものって本当に難しい。
絵の中でもののパターンがちゃんとその対象物にくっつかないというか、ただのパターンとして画面に張り付いちゃうんですよね。
そこに果敢に挑戦する伊庭さんの凄まじさは感動もの。
近年の陶器の作品なんて、ちゃんとはじいたらキーンと冷たい音がなりそうな質感が画面上で伝わってくる。圧巻。
伊庭さんの場合、ただのフォトペインティングとは違って、その対象物の質感というところに重きを置いているんだと思う。ただ写真になったものを写し取るんじゃなくて、フラットな写真というメディアに質感という新たな息吹を与える為にはやはり自らの手を動かす絵画という方法しかないと、彼女自身実感してるように思う。
伊庭さんのこれまでの活動を振り返り、これからの予感を感じさせるいい展示でした。
ちなみにここ初めて来たけど、年末には内藤礼展やって。また来なあかん。。。
やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
今年のヴェニス日本館代表も決まったやなぎさんの展覧会。
このシリーズは2004年の丸亀での展示から始まって今に至ってる長期もの。
内容はというと、色んな女性に50年後の自分を語ってもらい、それを写真として具現化してゆくというもの。ある人は占い師になってたり、ある人は看取り屋、ある人はアメリカで彼氏とバイクでドライブなんて、色んなおばあちゃんが登場します。
ポイントはこれが「グランド・ファザーズ」じゃないってこと。
以前、インタビューか何かで、なぜこの作品が女性だけなのか?って聞くと、男性に50年後の自分を想像してもらうと暗いことが多かったんだとか笑
その点女性の方がぶっとんだ回答が多くて女性に絞ったと。
なんかこういう男女の思考の違いっておもしろいですね。
で、今回の展示なんですが、正直引っ張り過ぎな感が否めなかったですね。
実際ほとんど2004年の丸亀で見たものばっかでしたし。
このシリーズの欠点ってこれ以上発展しようがないというところ。
その丸亀の時にやってた「寓話」シリーズは、なんか色々できそうでしたが。
なんにせよ、固い展示が続いたヴェニス日本館だけに、今回この作品群がどう受け止められるのか、楽しみですね。でも前々回も石内さんの「mother's」だっただけに、ごっちゃにならんかといらん心配してたりしてなかったり。
写真はすっごく綺麗です。まだの人は楽しめると思うので是非。5月10日まで。
第12回岡本太郎現代芸術賞展@ 川崎市岡本太郎美術館
知人の笹倉さんが入選されてチケットをいただいたので行ってきました。
てっきり青山にある岡本太郎記念館だと思ってたら全然違う場所にあってびっくり。
いやー、なんかホント変な場所にありますね。静かでいい場所ですが。
さて、岡本太郎賞ですが、その名の通り岡本太郎のような若手の爆発的芸術を募る公募展に対する賞。存在は有名ですが、実際観に行ったのは初めて。
さすがに岡本太郎という名を冠してるだけあって、激しいのが多い。
特に大賞の奴は恐すぎ・・・。
後頭部剃った作者が何か喋ってました。恐すぎてほとんど触れられなかった。
こんな中だったんで、笹倉さんの作品はちょっと損してた感がありましたね。すごく雑多に展示されてるし。パンタロンで見た時のような迫力は無かったです。
受賞作で気になったのはタムラサトルさんの火花の散る作品。
入選作では飯田竜太さんの、小説を色んな形に切った根気のいる作業の積み重ね作品。
全体としてはバラバラすぎて何が何だかわかりませんでした。
まあ、もうここまで観に来ることはないかなって感じ。
そもそも僕あまり岡本太郎得意じゃないんで。。。
VOCA展@上野の森美術館
こちらは若手平面作家を対象とした公募展。
VOCAの正式名称は'THE VISION OF CONTEMPORARY ART'。
だったらなんで平面だけに限定するのかさっぱり謎。
もっといいネーミングなかったんかいな。
と、早速愚痴ってますが、あんまりいい印象のない公募展です。
今回は名和さんが入選してたのと、無料券があったので初めて見てきました。
ずっと現代美術の展覧会ばかり見てると、全ての作品が壁にかかってるってのが逆に新鮮に見えて面白かったです。しかしまあ、賞をとってる作品はあんまりでしたが・・・。
府中市美術鑑賞をとってた高木こずえさんは、実際何を撮ってるのか気になったくらい。
そんな中で名和さんはやっぱすごかった。
遠くから見てもかっこいいし、近くで見てもグルーのマチエルが楽しい。
やはり純粋に平面やってる人とは別の魅力がありますね。
かなーり近くまで寄って見てる人が多かったけど最終日まで大丈夫だろうか笑
あと、船井美佐さんの作品をすごく久々に見たけど、明らかに良くなってた!
刈谷さんもものすごくいいですね。近々StudioJの展覧会も観に行きます。
あとは特に。ってさっきから関西の人の作品にしか触れてません。
岡本太郎賞もVOCA賞もどっちも関西人がとってますからね。すげーすげー。
田中功起アーティスト・トーク@群馬県立近代美術館
「僕がアメリカに行くまえに整理したこと、話したいこと」というタイトルで、近々アメリカに3年間滞在制作する予定の田中功起さんが講演会を開きました。
前回展覧会自体を見て益々気になる作家になってしまったので、今回の講演会はその気になる田中功起の生の話を聞けるってことで、SUMIKA終了後車飛ばして群馬近美へ。
ちょっと遅れましたが、なんとか7割ほどは聞くことが出来ました。
内容はこれまでの作品で、あまり取り上げられなかったり不評だった作品を田中さん自身がそれらの映像見せながら解説していくというもの。それらの作品のことを、総称して「夜の芸術」と仰ってました。
なんか敢えてそういうところに触れていく時点で素直な人やなぁと思ってしまったんですが、話を聞いてるとますますその素直さにハマってしまいました。
田中さんの作品のすごいところって、単純に言ってしまえば「嘘が無い」という点に尽きる気がする。この展覧会のタイトルといい講演会のタイトルといい、そしてその内容といい。
かつてドビュッシーは「芸術とは、最も美しい嘘のことである」という言葉を残しましたが、田中さんの作品にはその美しさすらも度外視してドストレートな表現なんですよね。今回の講演聞いてて改めて実感できました。
アメリカに行ってまたどんな作品ができあがるのか楽しみでなりません。
今週末にはまた東京現美で講演会があるそうな。時間のある方は行ってみては?
鬼石多目的ホール by 妹島和世




















前回群馬近美の田中功起展見た時に近かったので見に行こうと思いつつ、時間の都合で見れなかった妹島さんによる鬼石多目的ホール。
今回友人が車出してくれてたのと、SUMIKAの後また田中さんの講演聞きに群馬近美に来たってことで行ってきました。いやー、やっぱ車って便利。ヨコミゾさんの富弘美術館かどっちにしようか、って言ってたんですが、時間を考えると確実に富弘は無理ってことで鬼石に。富弘は車じゃないと中々難しかったんで行っときたかったんですがねー。
今回鬼石も日の入りが危うかったんですが間に合いました。
冬だったらアウトやったなー。
SUMIKAの時(午前中)に降ってた雨も午後にはやんで、この時はとても美しい夕日を眺めながらこの美しい建築を拝めることになりました。
さて、鬼石。こう書いて「おにし」と読みます。
昨夏ロンドンから帰ってきた友人が行って最高だったと語ってたので結構期待してましたが、またしても期待を遥かに凌駕する素晴らしさ。
彼が「SANAAの建築は風景をより美しく見せる」と言ってましたが本当にそうで、周りの山々などがこのガラスに映り込む様は本当に美しい。
そしてなんといってもこのホールはガラスの曲面が入り組んでて、ガラスがガラスに反射して虹みたいな色が映ったりして、なんとも複雑な様相。
さらにその午前中の雨によって出来た水たまりに虹が映りこんだりして大変なことになってました。
ノヴァルティスの時もそうやけど、妹島さん(或はSANAA)の建築って、写真で何枚撮っても撮り飽きないというか、すごい風景が撮れちゃうので結局凄い枚数撮っちゃってることになる。今回も然りで、すごい枚数載せてますが、これもほんの一部です。
なによりよかったのが、市民の人たちが楽しそうにこの施設を利用してるのが見れた事。正面の芝生では少年達が野球やってたり、体育館ではご夫人方がダンスの練習してたり、この町にすっかり溶け込んでるのがよかった。
こういう現代建築ってどうしてもこんな田舎に置くと浮いちゃうことってあるんですが、この建築はすっかり風景になってましたね。
ただ、野球ボールがガラスに当たって大破しないか心配でしたが。
見に行けてよかったです。
SUMIKA project ♯2
SUMIKAパヴィリオン by 伊東豊雄






伊東さんによる今回のメインパヴィリオン。
東京ガスの敷地内にあって、ガスキッチンで料理も出来るそうです。
まるで木の下にいるような感覚になれる温かな空間です。
今回も独特のアルゴリズムにより生成された幾何学がポイント。
その幾何学構造が木でできてるのが今回の大きな特徴ですね。
ただ、いつものようにファサードの面一がイマイチ効いてなかったりして、伊東さんの建築としては完成度的にどうなんかな、と。
それにサーペンタインの焼き直しみたいな感じやし、その上あの建築を超えてないし全体的に残念な感じでした・・・。
さて、その伊東さんですが、なんと4月7日の「プロフェッショナル 仕事の流儀」で特集されます!個人的に、プリツカー賞に合わせてきてるんじゃないかなんて深読みしてるんですがどうでしょう。あーもうすぐ発表やー。
コールハウス by 藤森照信







ファサードには焼杉が貼られていたり、壁は東京ガス社員によって塗られていたり、手作り感溢れる藤森さんらしい建築です。
中は洞窟を意識して、床と壁の境が45度の傾斜がついてます。
なんといっても真中に立ってる独特の柱と、暖炉がポイントですね。
全体的に部屋が狭いので中々写真に収められませんでした。撮っても必ず人が写ってたりで、ここに載せられるものは残念ながらリビングメインで。
子供部屋に続く、ほぼ垂直の梯子とか、茶室とかもあったんですが。
今回改めて藤森建築の空間の不思議さを感じました。なんといっても元々が建築史家であり、建築教育を正当に受けてないので、模型も設計図もなし!とりあえず空間を大まかに決めるという独特の建て方が不思議な空間感覚を生んでるんでしょうね。
東京ガスの敷地内にそれぞれの模型を展示してる場所があるんですが、藤森さんのだけ様子がおかしいですから笑 あれは建築模型じゃないです、完全に。
そんなこんなのSUMIKA体験でした。
雨だったのが残念でしたが、それぞれの住まい方の提案がフィジカルに体験できたのがやっぱよかった。今後これらの建築はどうなってくんだろう。






伊東さんによる今回のメインパヴィリオン。
東京ガスの敷地内にあって、ガスキッチンで料理も出来るそうです。
まるで木の下にいるような感覚になれる温かな空間です。
今回も独特のアルゴリズムにより生成された幾何学がポイント。
その幾何学構造が木でできてるのが今回の大きな特徴ですね。
ただ、いつものようにファサードの面一がイマイチ効いてなかったりして、伊東さんの建築としては完成度的にどうなんかな、と。
それにサーペンタインの焼き直しみたいな感じやし、その上あの建築を超えてないし全体的に残念な感じでした・・・。
さて、その伊東さんですが、なんと4月7日の「プロフェッショナル 仕事の流儀」で特集されます!個人的に、プリツカー賞に合わせてきてるんじゃないかなんて深読みしてるんですがどうでしょう。あーもうすぐ発表やー。
コールハウス by 藤森照信







ファサードには焼杉が貼られていたり、壁は東京ガス社員によって塗られていたり、手作り感溢れる藤森さんらしい建築です。
中は洞窟を意識して、床と壁の境が45度の傾斜がついてます。
なんといっても真中に立ってる独特の柱と、暖炉がポイントですね。
全体的に部屋が狭いので中々写真に収められませんでした。撮っても必ず人が写ってたりで、ここに載せられるものは残念ながらリビングメインで。
子供部屋に続く、ほぼ垂直の梯子とか、茶室とかもあったんですが。
今回改めて藤森建築の空間の不思議さを感じました。なんといっても元々が建築史家であり、建築教育を正当に受けてないので、模型も設計図もなし!とりあえず空間を大まかに決めるという独特の建て方が不思議な空間感覚を生んでるんでしょうね。
東京ガスの敷地内にそれぞれの模型を展示してる場所があるんですが、藤森さんのだけ様子がおかしいですから笑 あれは建築模型じゃないです、完全に。
そんなこんなのSUMIKA体験でした。
雨だったのが残念でしたが、それぞれの住まい方の提案がフィジカルに体験できたのがやっぱよかった。今後これらの建築はどうなってくんだろう。
SUMIKA project ♯1
今回の最大の目的、SUMIKA project。
東京ガス主催で、伊東さんが総指揮を務め、「プリミティブな暮らし」をテーマに掲げ、伊東さんを含め4人の建築家による、新たなる住まいの形を提案するというもの。メンバーは藤森照信、西沢大良、藤本壮介という熱過ぎるメンツ。
しかしなぜか一般には2日間しか公開されないというので、必死になって予約をして観に行ってきました、宇都宮まで。
まずは前半戦、西沢さんと藤本さんの建築からご紹介。
宇都宮のハウス by 西沢大良






SANAAの西沢立衛のお兄ちゃん大良さんの建築。
なんといってもこの圧倒的な存在感の屋根がポイント。
この屋根は、家の中に光を取り入れるためのもの。
光が朝はベッドに、昼はキッチンへと移っていく為、時計などなくても、太陽の光によって生活リズムを掴めるというシステム。まさにプリミティブです。
壁はドアで開閉できるようになってて、春とか気持ち良さそう。
中にはなぜか芝生が。。。これぞ中庭。
正直今回のプロジェクトの中では最も住みやすそうな家。
ただし、建築としてはいくつか疑問が残ります。
まずなんといってもこの屋根。
この存在感はおもしろいとは思うのですが、トリックのわかる手品を見せられてるような感じがして、ちょっと冷める。ここまで屋根が強調する必要ってあるのか?
あと形。実はちょっと凹んだりして歪な形をしているのだけど、中にいてもそれほどわからないし、この形が家のシステムにどの程度影響を与えてるのかが謎。
家の内部の明るさが気持ちいいだけに所々惜しい所があります。
House before House by 藤本壮介











実は今回最も楽しみにしていた建築。
大良さんの真横に建てられていて、ドアを開けるとすぐです。
積み木のように、箱を上下に無造作に積み上げていったような建築。
まるでアスレチックです。
当日は生憎の雨だったので中々大変でしたが楽しかった!
ドアを開けたらいきなり外とか、外かと思ったら中とか。
靴脱いだり履いたりが面倒くさかったけど・・・。
建築でここまで梯子を多用してるのも珍しい笑
お風呂が埋まっててちょっと入りたい。
一見住みにくそうやけど、慣れたら案外オチャノコサイサイかも。
インターフォンどこにつけんねんとか色んな問題もありそうやけど。
ただ、白ってのがやっぱ気になる。
立衛さんの森山邸ともかぶっちゃうしね。
それでもやっぱ藤本さんは今一番気になる建築家です。
INAX出版から出た本でハマったのだけど、キレキレです。
大分の住宅も見てみたいし、武蔵美の図書館も出来たら即行かなくちゃ。
あー、おもしろい人がたくさんいるのは本当嬉しい。
東京ガス主催で、伊東さんが総指揮を務め、「プリミティブな暮らし」をテーマに掲げ、伊東さんを含め4人の建築家による、新たなる住まいの形を提案するというもの。メンバーは藤森照信、西沢大良、藤本壮介という熱過ぎるメンツ。
しかしなぜか一般には2日間しか公開されないというので、必死になって予約をして観に行ってきました、宇都宮まで。
まずは前半戦、西沢さんと藤本さんの建築からご紹介。
宇都宮のハウス by 西沢大良






SANAAの西沢立衛のお兄ちゃん大良さんの建築。
なんといってもこの圧倒的な存在感の屋根がポイント。
この屋根は、家の中に光を取り入れるためのもの。
光が朝はベッドに、昼はキッチンへと移っていく為、時計などなくても、太陽の光によって生活リズムを掴めるというシステム。まさにプリミティブです。
壁はドアで開閉できるようになってて、春とか気持ち良さそう。
中にはなぜか芝生が。。。これぞ中庭。
正直今回のプロジェクトの中では最も住みやすそうな家。
ただし、建築としてはいくつか疑問が残ります。
まずなんといってもこの屋根。
この存在感はおもしろいとは思うのですが、トリックのわかる手品を見せられてるような感じがして、ちょっと冷める。ここまで屋根が強調する必要ってあるのか?
あと形。実はちょっと凹んだりして歪な形をしているのだけど、中にいてもそれほどわからないし、この形が家のシステムにどの程度影響を与えてるのかが謎。
家の内部の明るさが気持ちいいだけに所々惜しい所があります。
House before House by 藤本壮介











実は今回最も楽しみにしていた建築。
大良さんの真横に建てられていて、ドアを開けるとすぐです。
積み木のように、箱を上下に無造作に積み上げていったような建築。
まるでアスレチックです。
当日は生憎の雨だったので中々大変でしたが楽しかった!
ドアを開けたらいきなり外とか、外かと思ったら中とか。
靴脱いだり履いたりが面倒くさかったけど・・・。
建築でここまで梯子を多用してるのも珍しい笑
お風呂が埋まっててちょっと入りたい。
一見住みにくそうやけど、慣れたら案外オチャノコサイサイかも。
インターフォンどこにつけんねんとか色んな問題もありそうやけど。
ただ、白ってのがやっぱ気になる。
立衛さんの森山邸ともかぶっちゃうしね。
それでもやっぱ藤本さんは今一番気になる建築家です。
INAX出版から出た本でハマったのだけど、キレキレです。
大分の住宅も見てみたいし、武蔵美の図書館も出来たら即行かなくちゃ。
あー、おもしろい人がたくさんいるのは本当嬉しい。
マーク・ロスコ 瞑想する絵画 @ 川村記念美術館
神聖な体験を求めるなら、それはここにある。
世俗的な体験を求めるなら、それもここにある。
私はどちらでも構わない
川村記念美術館で開催中のロスコ展に行ってきました。
リヒター展以来約3年ぶりの訪問。遠い。。。
今回のロスコ展は、先月までロンドンのテートモダンで行われていた展覧会の巡回展。川村記念館との共同企画となります。
テートに行った友達の感想では、どれも同じような絵で気が狂いそうだった、なんて感想もあったり、今回なぜか川村の目玉であるロスコルームも閉じられるってんで、行こうか悩んだんですが、気になるので行ってみたらそれが大正解でした。これは完全にマストな展覧会ですね。
もはや有名な話ですが、ロスコはNYにあるミース設計のシーグラムビルディング内のレストランから壁に飾る絵画を依頼されました。かつてから自分の作品だけで空間を埋めたいと考えていたロスコは、その依頼を快諾し、30点の連作を描いたのですが、レストランの雰囲気を見てドタキャンして、当時から信頼していたテートの館長ノーマン・リード氏に連絡し、30点すべてを寄贈するという話を持ち込みました。しかし当時のテートと言えば、今みたいに分館もなく、30点もの作品を常に展示しておける空間がなく、しかも当時のイギリスと言えば美術不毛の地とまで言われたほど現代美術が不人気。そんな状況もあって、テートは8点だけ貰い受けることにして、ロスコルームと言われる今やテートの目玉展示室を作り常設展示することになったのです。そして他の21点は世界中に散り散りバラバラになり、そのうちの何点かを川村美術館が購入、ロスコルームを作るに至ります。世界でロスコルームを有する美術館はテートとこの川村記念美術館の2つだけなのです。あとアメリカにロスコチャペルなんていうロスコの絵画で囲まれた教会もあります。是非行ってみたい。
ちなみにロスコはテートに作品が運び込まれたその時に、アトリエで手首を切って自殺してしまいます。彼は医者から1m以上の大作の制作を止められ絶望していた最中でした。
今回の展覧会ではこれらの経緯を物語る、テート館長との手紙のやり取りまで展示されていて、ロスコの肉筆から、ロスコルームをなんとしても完成させたいというまっすぐな想いが伝わってきました。
さて、今回の目玉となるのは、なんといってもシーグラムのための連作がテートの分と合わせて15点一同に会している展示です。
これはもう一生ない機会といっても過言ではないでしょう。
なんせ今テートのロスコルームに行っても空っぽってことですからね。
15点が少し上の方に掲げられてるあの大空間に入った瞬間、僕は思わず泣いてしまいました。いつの間にか涙がこぼれてたんですよね。
僕が展覧会に行って泣いたことなんて、3年前の水戸芸の展覧会以来人生2度目。
しかも前回はキュレーションによって泣かされた感があったんですが、今回は純粋に作品を見て泣いてしまったのです。あの迫力は圧巻です。
なんでただの絵の具なのにここまで心を揺さぶられることがあるんでしょうか。
展覧会の最初の一点だけ展示されてあるだけでもやばかったけど、あの15点はもう反則です。完全にキャンバスに神が宿ってます。
平日の朝一ってこともあり人がほとんどいなくて、あの展示室に1人になれることもあって、すごく贅沢な空間体験をさせていただきました。
最後の展示室には黒の作品もあって、これもやばいですね。素敵です。
冒頭の言葉はその最後の展示室前に書かれていたロスコの言葉。
とっても幸せな気分に満たされた展覧会でした。もう一度行きたい。
ちなみにここの美術館は昨年リニューアルして、展示室がいくつか変わってました。
特にバーネット・ニューマンの展示室!あれはすごい!
一点だけが贅沢に展示されていた自然光で溢れるあの展示室は素晴らし過ぎる。
絵がとっても幸せそうでした。
あー、早くも今年ナンバーワンの展覧会だったっぽい。
6月7日までなんで絶対観に行ってほしい。
これ逃すと一生見れませんよー。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html
ツェ・スーメイ@水戸芸術館
佐倉から水戸へ。遠過ぎる。。。
チケットもらったので行ったけどイマイチでした。
あまり一貫性が見られなくて、作家の意図が汲めませんでした。
猫の喉の音を聞ける作品は好きでしたが笑
最後、今回の広報のメイン写真になってる美しい景色を背景にチェロ弾いてる映像があるんですが、行ったら映像の前の椅子に5人のおばあさんが座ってて、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ映像に見向きもせずに談笑してらっしゃって、それがなんかおもろくてたまらんかった。ティノ・セーガルの作品かと思った笑
ARTIST FILE 2009 @国立新美術館
昨年から始まった国立新の企画展覧会。
学芸員が何人かの作家を選んでそれぞれ個展形式で見せるという企画。
昨年はさわひらきしか覚えてませんが、今年はどうなんでしょう。
今回は前回より増えて9人の作家を選出。
やはり宮永さんはダントツで素晴らしかった。
今回も意表をつく展示でした。
嫁入り道具の古箪笥に収められたナフタリンたち。
ナフタリンの正しい使い方っちゃ使い方ですね笑
そして、陶器の作品も古道具に挟まれるように展示されてて、不思議な空間を作り上げてました。次のミズマでの展示も楽しみです。
そしてこちらも関西から津上みゆきさんもよかった。
彼女の作品は大阪のギャラリーでしか見た事なかったけど、こうやって大きな空間にズラーっと並べられてるのはとても気持ちよくて素敵でした。
あとは石川直樹さんの昨年発表されて話題になった富士山の作品が見れたのがよかった。ちょっと津田直とかぶるのは僕だけでしょうか。
それから今回唯一の外国人作家、オランダ人のペーター・ボーゲルスの映像も変態チックでよかった。あの世界観は独特やなぁ。
あとは特に。村井進吾さんの石の彫刻もあの天井高の展示室で見ると気持ちよかったけど、なんだかスピーカーが並んでるようなハイブリット感はこの人の狙うところなのかな?とも。写真見ると野外で展示されてることが多くて、雨水が溜まる様がキレイだったので、今回室内で埃の浮いた水を張るよりやっぱ野外の方がこの人の作品には合ってるのではないかと。あとちょっともの派っぽくて同時代感が希薄なのも気になった。それは同じく同世代の大平さんにも言えること。
そんなこんなで、まあまあ楽しめる展覧会です。今後も期待。
ただし、図録を全員分セットで買わなあかんのはどうかと思う。前回もさわさんの分だけ欲しかったのにセット売りってことで断念して、今回も宮永さんのだけ欲しかったのに、9冊セットってことで悩んだけど、どうしても欲しかったので買いました。おかげで荷物重くなった・・・。次から別売りでお願いします。
世俗的な体験を求めるなら、それもここにある。
私はどちらでも構わない
川村記念美術館で開催中のロスコ展に行ってきました。
リヒター展以来約3年ぶりの訪問。遠い。。。
今回のロスコ展は、先月までロンドンのテートモダンで行われていた展覧会の巡回展。川村記念館との共同企画となります。
テートに行った友達の感想では、どれも同じような絵で気が狂いそうだった、なんて感想もあったり、今回なぜか川村の目玉であるロスコルームも閉じられるってんで、行こうか悩んだんですが、気になるので行ってみたらそれが大正解でした。これは完全にマストな展覧会ですね。
もはや有名な話ですが、ロスコはNYにあるミース設計のシーグラムビルディング内のレストランから壁に飾る絵画を依頼されました。かつてから自分の作品だけで空間を埋めたいと考えていたロスコは、その依頼を快諾し、30点の連作を描いたのですが、レストランの雰囲気を見てドタキャンして、当時から信頼していたテートの館長ノーマン・リード氏に連絡し、30点すべてを寄贈するという話を持ち込みました。しかし当時のテートと言えば、今みたいに分館もなく、30点もの作品を常に展示しておける空間がなく、しかも当時のイギリスと言えば美術不毛の地とまで言われたほど現代美術が不人気。そんな状況もあって、テートは8点だけ貰い受けることにして、ロスコルームと言われる今やテートの目玉展示室を作り常設展示することになったのです。そして他の21点は世界中に散り散りバラバラになり、そのうちの何点かを川村美術館が購入、ロスコルームを作るに至ります。世界でロスコルームを有する美術館はテートとこの川村記念美術館の2つだけなのです。あとアメリカにロスコチャペルなんていうロスコの絵画で囲まれた教会もあります。是非行ってみたい。
ちなみにロスコはテートに作品が運び込まれたその時に、アトリエで手首を切って自殺してしまいます。彼は医者から1m以上の大作の制作を止められ絶望していた最中でした。
今回の展覧会ではこれらの経緯を物語る、テート館長との手紙のやり取りまで展示されていて、ロスコの肉筆から、ロスコルームをなんとしても完成させたいというまっすぐな想いが伝わってきました。
さて、今回の目玉となるのは、なんといってもシーグラムのための連作がテートの分と合わせて15点一同に会している展示です。
これはもう一生ない機会といっても過言ではないでしょう。
なんせ今テートのロスコルームに行っても空っぽってことですからね。
15点が少し上の方に掲げられてるあの大空間に入った瞬間、僕は思わず泣いてしまいました。いつの間にか涙がこぼれてたんですよね。
僕が展覧会に行って泣いたことなんて、3年前の水戸芸の展覧会以来人生2度目。
しかも前回はキュレーションによって泣かされた感があったんですが、今回は純粋に作品を見て泣いてしまったのです。あの迫力は圧巻です。
なんでただの絵の具なのにここまで心を揺さぶられることがあるんでしょうか。
展覧会の最初の一点だけ展示されてあるだけでもやばかったけど、あの15点はもう反則です。完全にキャンバスに神が宿ってます。
平日の朝一ってこともあり人がほとんどいなくて、あの展示室に1人になれることもあって、すごく贅沢な空間体験をさせていただきました。
最後の展示室には黒の作品もあって、これもやばいですね。素敵です。
冒頭の言葉はその最後の展示室前に書かれていたロスコの言葉。
とっても幸せな気分に満たされた展覧会でした。もう一度行きたい。
ちなみにここの美術館は昨年リニューアルして、展示室がいくつか変わってました。
特にバーネット・ニューマンの展示室!あれはすごい!
一点だけが贅沢に展示されていた自然光で溢れるあの展示室は素晴らし過ぎる。
絵がとっても幸せそうでした。
あー、早くも今年ナンバーワンの展覧会だったっぽい。
6月7日までなんで絶対観に行ってほしい。
これ逃すと一生見れませんよー。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html
ツェ・スーメイ@水戸芸術館
佐倉から水戸へ。遠過ぎる。。。
チケットもらったので行ったけどイマイチでした。
あまり一貫性が見られなくて、作家の意図が汲めませんでした。
猫の喉の音を聞ける作品は好きでしたが笑
最後、今回の広報のメイン写真になってる美しい景色を背景にチェロ弾いてる映像があるんですが、行ったら映像の前の椅子に5人のおばあさんが座ってて、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ映像に見向きもせずに談笑してらっしゃって、それがなんかおもろくてたまらんかった。ティノ・セーガルの作品かと思った笑
ARTIST FILE 2009 @国立新美術館
昨年から始まった国立新の企画展覧会。
学芸員が何人かの作家を選んでそれぞれ個展形式で見せるという企画。
昨年はさわひらきしか覚えてませんが、今年はどうなんでしょう。
今回は前回より増えて9人の作家を選出。
やはり宮永さんはダントツで素晴らしかった。
今回も意表をつく展示でした。
嫁入り道具の古箪笥に収められたナフタリンたち。
ナフタリンの正しい使い方っちゃ使い方ですね笑
そして、陶器の作品も古道具に挟まれるように展示されてて、不思議な空間を作り上げてました。次のミズマでの展示も楽しみです。
そしてこちらも関西から津上みゆきさんもよかった。
彼女の作品は大阪のギャラリーでしか見た事なかったけど、こうやって大きな空間にズラーっと並べられてるのはとても気持ちよくて素敵でした。
あとは石川直樹さんの昨年発表されて話題になった富士山の作品が見れたのがよかった。ちょっと津田直とかぶるのは僕だけでしょうか。
それから今回唯一の外国人作家、オランダ人のペーター・ボーゲルスの映像も変態チックでよかった。あの世界観は独特やなぁ。
あとは特に。村井進吾さんの石の彫刻もあの天井高の展示室で見ると気持ちよかったけど、なんだかスピーカーが並んでるようなハイブリット感はこの人の狙うところなのかな?とも。写真見ると野外で展示されてることが多くて、雨水が溜まる様がキレイだったので、今回室内で埃の浮いた水を張るよりやっぱ野外の方がこの人の作品には合ってるのではないかと。あとちょっともの派っぽくて同時代感が希薄なのも気になった。それは同じく同世代の大平さんにも言えること。
そんなこんなで、まあまあ楽しめる展覧会です。今後も期待。
ただし、図録を全員分セットで買わなあかんのはどうかと思う。前回もさわさんの分だけ欲しかったのにセット売りってことで断念して、今回も宮永さんのだけ欲しかったのに、9冊セットってことで悩んだけど、どうしても欲しかったので買いました。おかげで荷物重くなった・・・。次から別売りでお願いします。
now here, nowhere@京都芸術センター
鑑賞から時間が経てば経つほど気になる展覧会。
今京都芸術センターでやってる「now here,nowhere」展。
'w'の位置を換えるだけで違う言葉になる言葉遊びなタイトル。
正直タイトルだけ見た時点では期待なんてとてもじゃないけどできなかった。
しかも「now here」っていうのはポストモダン以降にしきりに作家らの間で言われるようになった「いまここ」という考え。いつでもどこでも均質にしていったモダニズムに対する反発として、いわゆるサイトスペシフィックと言われる作品に見られるような、時間や空間に制限されるような制作方法。
正直もう聞き飽きたような考え。それが「いまここ」。
なんで今更?と思いつつ見に行ったら、実は「nowhere」の方が肝だったという。
まずギャラリー北に入ると前田明子さんの「顔のない女」シリーズと題された写真作品が入って左の壁から正面の壁に向かって並べられている。左の壁にはハイヒールを履いた女性の足元の写真。正面には後姿であったり、暗くて顔のわからない女性の写真が三点。
続いて右の壁には水木塁さんの「Ripe of color #Narcussus」という写真シリーズ。色鮮やかな写真なんだけど、それは何が写されてるのかわからない。説明を読むと、水仙を撮った写真プリントを、漂白剤につけ、色が印画紙を離れた瞬間を再び写真に収めているらしい。
そして、最後は馬場晋作さんのステンレスに油彩で細かく描かれた作品。実際何が描かれてるのかは具体的にわからないが、女性の下着のようにも見えてどこかエロティシズムを感じる。
続いて南に行くと、藤井俊治さんの色鮮やかな油彩の人物画。どうやらサーモグラフィで映った像を描いているようで、鮮やかな色彩と裏腹にどこか冷たい印象が漂う。
そして仲居真理さんのタイルに幾何学がプリントされた集合体の作品。実際幾何学の正体は、壁と床が織り成す角であって、日常生活の中のものでしかないのだけれど、これだけ集まって見せられると非現実のもののように見えるから不思議。
そして最後は刈谷昌江さんのペインティング。写真では何度か見たことがあったけれど、実際見たのは初めて。映画館や鳥、カーテン越しの木など、どこかシュールレアリズム的な絵画でとても不思議な雰囲気。
と、ここまで見てあることに気づく。
それは、これらの作品に共通するある種の違和感。
刈谷さんの作品にそれは顕著なんだけれど、どれも物語性をもっていそうに見えて、実はそれらの作品から伝えられる情報は限りなく少ないということ。
なんだか、いつまでたっても演目の始まらない劇場にずっと座ってるような。
それはかの有名なジョン・ケージの「4分33秒」のような、無言のセンセーション。
そして、これらの作品の放つ鮮やかな色彩が余計に胸をかき乱す。
どこまでも青い空を見上げた時の不安な感じというか。
そういう気味の悪さがこの展覧会に漂っていて、鑑賞終了後も長くこの胸のざわめきが収まらず今に至っている。こういう展覧会って中々珍しい。いい展覧会だと思う。
ただ、やはりタイトルで相当損をしているような気がする。3月22日まで。詳細。
森太三「Rain」@neutron
今までもギャラリーwks.や名古屋のアーツチャレンジ等で、何度か見させてもらってきた森さんの展覧会がneutronで行われるというので行ってきた。
いつも根気のいる作業を繰り返すことで作品にしていく森さんの作品。
以前は紙媒体を使ってらしたが、最近は紙粘土を使った作品が多い。
特に、床一面を手で捏ねた紙粘土で満たしたwks.の展示は忘れられない。
今回はアーツチャレンジのような、色とりどりの紙粘土を丸めたものを大量に使った作品を発表。
正直アーツチャレンジの時は規模が中途半端で満たされなかったのだけど、今回はギャラリー空間の8割ほどを覆い尽くす大量の粘土の粒。それらひとつひとつの色が大きなうねりを描いて、ものすごい迫力。また、カフェとギャラリーを隔てるガラス壁も有効で、それに映った像がまたこの作品を広げている。
森さんの作品への期待ど真ん中の展示で大満足でした。3月15日まで。
来月にはまたパンタロンでの展示が待ってるらしい。楽しみすぎる・・・。
パラモデル「パラモデリック・グラフィティ」@なにわ橋駅
昨年開通したばかりの京阪中ノ島線。
その駅のひとつ「なにわ橋」駅にアトリエB1というアート空間がオープンしました。
そこでのオープニングを飾るのがパラモデルの二人。
実際この電車自体まだ乗ったことないのだけど、ひとまずこのアート空間を堪能してきた。
おもちゃのプラレールを使って無限の空間を作り出すパラモデル。これまでも何度か彼らの作品見てきましたが、僕が見た中で最大級の広さの作品でした。
どこまでも有機的につながるプラレールの青い線路。
合間合間に動物のおもちゃや発泡スチロールでできた山などが現れ、それらが床、壁、天井と縦横無尽に広がるまさにパラモデルワールド炸裂。
いやー、とても気持ちよかった。
駅の中ってのも彼らの作品にマッチしすぎてて楽しかった。3月29日まで。

加賀城健「-Positive Taboo-」@YOD Gallery
最近こちらのオーナーさんとメールのやりとり等でお世話になってて、今回の展示がすごいものになった!とおっしゃってたので期待して行ってきました。
加賀城さんは染色の作家さんで、いわゆる「染色」というイメージを払拭するような、現代美術寄りの作品を手がけてこられた方だそう。何度か過去に見たことがあるはずなんだけど、記憶が曖昧で今回改めて記憶を更新させてもらいました。
展示室には脱色による作品と、染色による2タイプの作品が展示されていて、それらが折り重なるような動的な展示。ホワイトキューブの展示に見られるお行儀のよい静かな展示とは違って、上下に展示されてたり、非常に動的。さすがオーナーさんが太鼓判を押しただけある。
脱色の作品は、様々なプロセスが踏まれていて、ひび割れたようなパターンがかっこよかった。言われなければ版画と見紛ってたかもしれない。
染色のはデカルコマニーの要領で左右対称。といっても、染めの具合でまったくの対象になってないのが小憎い。
僕は個人的にこっちの染めの作品がお気に入り。
なんといっても色彩がすごい。
ここまで大胆に色彩を展開されるのはよほどのセンスがないと無理です。
ちょうど、以前ここでも書いた、作家の杉山さんもいらっしゃって、お話したのだけど、彼も色彩感覚が冴えててうらやましい限り。
にしても、もっと染色の知識があれば楽しかったんやろうなぁと思った。21日まで。
森末由美子「無重力で右回り」@ギャラリーほそかわ
前回の京芸卒展での作品がよかったので期待して行ったのだけど、作品が商品のような展示のされ方でがっかり。もっと風景を作るような展示を期待してたのだけど。
もちろん作品は相変わらずおもしろいな、と思うのだけど、この展示ではアートフェアで見るのとかわりない。展示と言うか陳列。
前述のYODとは違ってギャラリー自体が商売のことしか考えてないんじゃないか?と思わざるを得ない。HPもずさんやし、作家がかわいそう。
椿昇「GOLD WHITE BLACK」@京都国立近代美術館
なんか、改めて気持ち悪い人やな、って思った。
ビジュアルの強い作品に対して、コンセプトが難解、というよりもはや独りよがりで、観客と共有する気がないんちゃうか?と思わざるをえない。
近美にしてはかなり力の入った展覧会だと言えるけれどそれだけ。
学生が手伝ってることを「学徒動員」とかいう言葉選びのセンスもどうかと思う。
斉藤博展@アートライフみつはし
最後にすばらしい展覧会のお話。
先日40年という教授人生に幕を閉じた我が恩師斉藤先生の個展。
40年ですよ、40年。まだこんなに生きたことねぇ。
もうご高齢にもかかわらず、精力的に作品作りを続けてらっしゃる。
今回の個展は、アトリエで発表するとか何も考えずに無心に展開してた作品のお披露目会。その制作期間はなんと4年!す、すごい・・・。
最初アトリエからでないかもしれないとおっしゃってたけど、無事出て展示も出来ててなによりでした。なんせ外に出すことも計算外だったんで、直接パネルを壁に釘で打ちつけてたりしてたもんで、出すのが大変だったそうな。
その作品がホントにすごかった。真剣に泣きそうになった。
そこにこめられたエネルギーってのがやはりこちらにも伝わってくるんですね。
作品作ってると、たまに作ることと発表することがごっちゃになって、いつの間にか発表するために作品つくってるような時があるんですよね。
でもそれってやっぱ本末転倒で、作りたい!っていう意識が先にこなけりゃ、作品に魂はこもらないもんです。その点で今回の斉藤さんの作品は魂がとめどなく篭っていて、すごい迫力。
小品も数点出てて、これまたすごい力を発している。
あー、追いつけねぇ。でも追いつきたい。
本当に尊敬できる先生です。15日までなので、機会がある方は是非!
今京都芸術センターでやってる「now here,nowhere」展。
'w'の位置を換えるだけで違う言葉になる言葉遊びなタイトル。
正直タイトルだけ見た時点では期待なんてとてもじゃないけどできなかった。
しかも「now here」っていうのはポストモダン以降にしきりに作家らの間で言われるようになった「いまここ」という考え。いつでもどこでも均質にしていったモダニズムに対する反発として、いわゆるサイトスペシフィックと言われる作品に見られるような、時間や空間に制限されるような制作方法。
正直もう聞き飽きたような考え。それが「いまここ」。
なんで今更?と思いつつ見に行ったら、実は「nowhere」の方が肝だったという。
まずギャラリー北に入ると前田明子さんの「顔のない女」シリーズと題された写真作品が入って左の壁から正面の壁に向かって並べられている。左の壁にはハイヒールを履いた女性の足元の写真。正面には後姿であったり、暗くて顔のわからない女性の写真が三点。
続いて右の壁には水木塁さんの「Ripe of color #Narcussus」という写真シリーズ。色鮮やかな写真なんだけど、それは何が写されてるのかわからない。説明を読むと、水仙を撮った写真プリントを、漂白剤につけ、色が印画紙を離れた瞬間を再び写真に収めているらしい。
そして、最後は馬場晋作さんのステンレスに油彩で細かく描かれた作品。実際何が描かれてるのかは具体的にわからないが、女性の下着のようにも見えてどこかエロティシズムを感じる。
続いて南に行くと、藤井俊治さんの色鮮やかな油彩の人物画。どうやらサーモグラフィで映った像を描いているようで、鮮やかな色彩と裏腹にどこか冷たい印象が漂う。
そして仲居真理さんのタイルに幾何学がプリントされた集合体の作品。実際幾何学の正体は、壁と床が織り成す角であって、日常生活の中のものでしかないのだけれど、これだけ集まって見せられると非現実のもののように見えるから不思議。
そして最後は刈谷昌江さんのペインティング。写真では何度か見たことがあったけれど、実際見たのは初めて。映画館や鳥、カーテン越しの木など、どこかシュールレアリズム的な絵画でとても不思議な雰囲気。
と、ここまで見てあることに気づく。
それは、これらの作品に共通するある種の違和感。
刈谷さんの作品にそれは顕著なんだけれど、どれも物語性をもっていそうに見えて、実はそれらの作品から伝えられる情報は限りなく少ないということ。
なんだか、いつまでたっても演目の始まらない劇場にずっと座ってるような。
それはかの有名なジョン・ケージの「4分33秒」のような、無言のセンセーション。
そして、これらの作品の放つ鮮やかな色彩が余計に胸をかき乱す。
どこまでも青い空を見上げた時の不安な感じというか。
そういう気味の悪さがこの展覧会に漂っていて、鑑賞終了後も長くこの胸のざわめきが収まらず今に至っている。こういう展覧会って中々珍しい。いい展覧会だと思う。
ただ、やはりタイトルで相当損をしているような気がする。3月22日まで。詳細。
森太三「Rain」@neutron
今までもギャラリーwks.や名古屋のアーツチャレンジ等で、何度か見させてもらってきた森さんの展覧会がneutronで行われるというので行ってきた。
いつも根気のいる作業を繰り返すことで作品にしていく森さんの作品。
以前は紙媒体を使ってらしたが、最近は紙粘土を使った作品が多い。
特に、床一面を手で捏ねた紙粘土で満たしたwks.の展示は忘れられない。
今回はアーツチャレンジのような、色とりどりの紙粘土を丸めたものを大量に使った作品を発表。
正直アーツチャレンジの時は規模が中途半端で満たされなかったのだけど、今回はギャラリー空間の8割ほどを覆い尽くす大量の粘土の粒。それらひとつひとつの色が大きなうねりを描いて、ものすごい迫力。また、カフェとギャラリーを隔てるガラス壁も有効で、それに映った像がまたこの作品を広げている。
森さんの作品への期待ど真ん中の展示で大満足でした。3月15日まで。
来月にはまたパンタロンでの展示が待ってるらしい。楽しみすぎる・・・。
パラモデル「パラモデリック・グラフィティ」@なにわ橋駅
昨年開通したばかりの京阪中ノ島線。
その駅のひとつ「なにわ橋」駅にアトリエB1というアート空間がオープンしました。
そこでのオープニングを飾るのがパラモデルの二人。
実際この電車自体まだ乗ったことないのだけど、ひとまずこのアート空間を堪能してきた。
おもちゃのプラレールを使って無限の空間を作り出すパラモデル。これまでも何度か彼らの作品見てきましたが、僕が見た中で最大級の広さの作品でした。
どこまでも有機的につながるプラレールの青い線路。
合間合間に動物のおもちゃや発泡スチロールでできた山などが現れ、それらが床、壁、天井と縦横無尽に広がるまさにパラモデルワールド炸裂。
いやー、とても気持ちよかった。
駅の中ってのも彼らの作品にマッチしすぎてて楽しかった。3月29日まで。

加賀城健「-Positive Taboo-」@YOD Gallery
最近こちらのオーナーさんとメールのやりとり等でお世話になってて、今回の展示がすごいものになった!とおっしゃってたので期待して行ってきました。
加賀城さんは染色の作家さんで、いわゆる「染色」というイメージを払拭するような、現代美術寄りの作品を手がけてこられた方だそう。何度か過去に見たことがあるはずなんだけど、記憶が曖昧で今回改めて記憶を更新させてもらいました。
展示室には脱色による作品と、染色による2タイプの作品が展示されていて、それらが折り重なるような動的な展示。ホワイトキューブの展示に見られるお行儀のよい静かな展示とは違って、上下に展示されてたり、非常に動的。さすがオーナーさんが太鼓判を押しただけある。
脱色の作品は、様々なプロセスが踏まれていて、ひび割れたようなパターンがかっこよかった。言われなければ版画と見紛ってたかもしれない。
染色のはデカルコマニーの要領で左右対称。といっても、染めの具合でまったくの対象になってないのが小憎い。
僕は個人的にこっちの染めの作品がお気に入り。
なんといっても色彩がすごい。
ここまで大胆に色彩を展開されるのはよほどのセンスがないと無理です。
ちょうど、以前ここでも書いた、作家の杉山さんもいらっしゃって、お話したのだけど、彼も色彩感覚が冴えててうらやましい限り。
にしても、もっと染色の知識があれば楽しかったんやろうなぁと思った。21日まで。
森末由美子「無重力で右回り」@ギャラリーほそかわ
前回の京芸卒展での作品がよかったので期待して行ったのだけど、作品が商品のような展示のされ方でがっかり。もっと風景を作るような展示を期待してたのだけど。
もちろん作品は相変わらずおもしろいな、と思うのだけど、この展示ではアートフェアで見るのとかわりない。展示と言うか陳列。
前述のYODとは違ってギャラリー自体が商売のことしか考えてないんじゃないか?と思わざるを得ない。HPもずさんやし、作家がかわいそう。
椿昇「GOLD WHITE BLACK」@京都国立近代美術館
なんか、改めて気持ち悪い人やな、って思った。
ビジュアルの強い作品に対して、コンセプトが難解、というよりもはや独りよがりで、観客と共有する気がないんちゃうか?と思わざるをえない。
近美にしてはかなり力の入った展覧会だと言えるけれどそれだけ。
学生が手伝ってることを「学徒動員」とかいう言葉選びのセンスもどうかと思う。
斉藤博展@アートライフみつはし
最後にすばらしい展覧会のお話。
先日40年という教授人生に幕を閉じた我が恩師斉藤先生の個展。
40年ですよ、40年。まだこんなに生きたことねぇ。
もうご高齢にもかかわらず、精力的に作品作りを続けてらっしゃる。
今回の個展は、アトリエで発表するとか何も考えずに無心に展開してた作品のお披露目会。その制作期間はなんと4年!す、すごい・・・。
最初アトリエからでないかもしれないとおっしゃってたけど、無事出て展示も出来ててなによりでした。なんせ外に出すことも計算外だったんで、直接パネルを壁に釘で打ちつけてたりしてたもんで、出すのが大変だったそうな。
その作品がホントにすごかった。真剣に泣きそうになった。
そこにこめられたエネルギーってのがやはりこちらにも伝わってくるんですね。
作品作ってると、たまに作ることと発表することがごっちゃになって、いつの間にか発表するために作品つくってるような時があるんですよね。
でもそれってやっぱ本末転倒で、作りたい!っていう意識が先にこなけりゃ、作品に魂はこもらないもんです。その点で今回の斉藤さんの作品は魂がとめどなく篭っていて、すごい迫力。
小品も数点出てて、これまたすごい力を発している。
あー、追いつけねぇ。でも追いつきたい。
本当に尊敬できる先生です。15日までなので、機会がある方は是非!

川北ゆう「今日までを想う」#2
1月末より開催されましたstudio90二回目の展覧会、川北ゆう「今日までを想う」が昨日を持ちまして無事終了しました。
遠方にも関わらずお越しいただいた方々には感謝の言葉もありません。この場を借りて御礼申し上げます。
さて、今回も例によって土日平日関わらず、本日2日から8日までの1週間予約のみにて延長させて頂きます。
もし期間内にご覧になられなくて、是非観たいという方がおられましたら、yuchogoke@yahoo.co.jp(川北)までご連絡下さい。作家自ら開けさせて頂きます。
遠方にも関わらずお越しいただいた方々には感謝の言葉もありません。この場を借りて御礼申し上げます。
さて、今回も例によって土日平日関わらず、本日2日から8日までの1週間予約のみにて延長させて頂きます。
もし期間内にご覧になられなくて、是非観たいという方がおられましたら、yuchogoke@yahoo.co.jp(川北)までご連絡下さい。作家自ら開けさせて頂きます。