gadget @ 京都芸術センター
や、やばい。。。
色んなアートブログがまとめに入ってる中、まだ書かなあかん展覧会がいくつか・・・。
とりあえず大晦日には今年のベスト展覧会ランキングをやっちゃいたいと思ってます。
ってことで、ラストスパート。
京都芸術センターで先日終了した「gadget」展に関して。
出品者4人のうち3人は知ってる人なので行ってきました。
これは、芸術センター企画ではなく、外部から持ち込みという形の展覧会。
今回出品者4人と同年代の芸術研究者2人がキュレーションするという企画。
この2人が4人の出品者の作品から導きだした言葉がタイトルにもなってる「gadget」という言葉。
辞書で引くと(機会等の小さな)機械、仕掛け、小道具、とあります。
そういえば、身につけてるものを見ると、僕らはそれらを纏って現代を生きてる。
腕時計。携帯電話。iPod。
彼らは今の僕らを「ガジェット世代」と名付けています。
なるほど言い得て妙だな、と感心させられました。
そして今回出品してるその4人の作品を見ると、このガジェットという言葉がうまく噛み合うのです。
まずギャラリー北では芳木麻里絵と西園敦の作品。
真里絵ちゃんは、大学の同期で、彼女の作品は学生の時からすごかった。
彼女は版画を専攻していたのだけど、作られた作品ってのが、僕らの中にある「版画」のイメージを軽く超越してくれる。彼女の使っている技術はシルクスクリーンというインクを重ねて絵にしていく技法なんだけど、彼女はその技法を使って立体を作ってみせた。レースペーパーだったりコーヒーフィルターだったり、これホンマにシルクスクリーン?っていう。これらすべてがインクのみで出来てるのだからびっくり。
今回もそのシルクスクリーンを使った作品を展示してたけど、学制時代より厚みが増してた。今回虫眼鏡が用意されてて、その細部まで詳しく見れるんやけど、インクの層がすごいことになってる。ポロックのドリッピングの一部をくり抜いた作品を思い出した。地層のように何層も何層も重なるその様は圧巻。サイズ自体は小さくてもそこにはスペクタクルが存在する。
ちなみに最近大西伸明さんもシルクスクリーンを使ってレースの作品を発表されてるけど、彼の場合は網の上に模様を刷ってるので、純粋なるシルクスクリーンとは違うので、その点でも真里絵ちゃんの作品ってのは素材の純粋性でもすごい。
西園君はこの展覧会で唯一僕の知らない人。
アンパンマンのごっちゃになったパズルや、持ち帰り可能な本が展示されてた。
前者はちょっとありきたりかな、と思ったけど、本がおもしろかった。
Dollyと題されたその本は、クローン羊のドリーの英語の説明がまず冒頭に。
ページをめくると日本語、次のページには英語、と繰り返されて行く。
ほとんど同じ文なんやけど、なんだかどんどんおかしくなっていく。
種を明かすと、まず科学博物館からドリーの英語テキストをコピーし、エキサイトの翻訳サイトにそのままペースト。そして導きされた英文をまたコピーしペースト。そして導きだされた日本語を、、、とこのコピペを繰り返して行く。
この翻訳サイトを利用した人はわかると思うけど、実は結構でたらめで、僕も昔使おうとして、日本語を英語にして、その英語を読んだらちょっと変なので、ためしにそれをまた日本語に直してみたらめちゃくちゃな文章になってて焦った経験がある。
それをドリーというコピーされた存在を示すテキストでどんどんおかしくなっていく様を表現したのがこの本。種がわかった時はちょっと嬉しかったり。
ギャラリー北では中村裕太と今村遼佑。
中村君はこれまた同期で陶芸の人。
彼の作品今回初めて見たかも。。。
風景をモザイクのタイルで抽象化していったような作品。
ちょっとよくわかんなかった。上の説明が合ってるのかも微妙・・・。
今村さんは、この夏の僕の展覧会に来てくださった人。
この展覧会では彼の作品が一番よかったかも。
本に空けられた穴から小さな馬が回ってたり、レースのように編まれた線が実は1つの電気回路で始点には電池が、終点にはランプが光ってるという。
なんかとてもささやかな世界観。こういうの好きです。
今回のガジェットという言葉が一番しっくりくるのが彼の作品のような気がする。
今回80年代生まれの若手研究者2人、林田新さんと中西園子さんには拍手を送りたいです。
今日本のアートシーンの悲劇のひとつに、時代の語り部となりうる批評家の不在があります。
「もの派」にせよ「スーパーフラット」にせよ、これらは作家によって作られた概念です。
本来、アートムーブメントに対して名前や定義を与えるのは批評家の仕事。
なのに、この国ではそれが全くと言っていい程機能していない。
これからは、この批評家を育てられるかが日本美術の鍵を握っているといっても過言ではないでしょう。
今回の「ガジェット」という概念はかなりおもしろいと思えたし、少なくとも誰かさんのマイクロポップよりかは優れた概念だと思います。
こうした若い研究者がこれからも増えていくことを切に願うばかりです。
横山真由子 “Dream scape” @ shin-bi
こちらも僕の知り合い。後輩の展覧会です。
今回出品された作品の中でも、凄いな、と思ったのはガラスの作品たち。
ガラスの上に樹脂か何か、透明な素材で描かれたパターン。
実際ガラス上の像はよくわからないのだけど、その像が落とす影がすごい。
「影絵」というのこういうことなのか、と思わせるほど、はっきりとそのパターンが壁に影となって転写されてる。見ながら、もう画面を見てるのか壁を見てるのかよくわからなくなってきて、最初のうちは透明の画面に目を凝らしてたけど、途中からあほらしくなって開き直って壁の影を追いかけてました。この何を見てるかわからない感覚ってのが中々新鮮。
絵画の方もいいのだけど、「壁紙」と言われたらそれまでの気がする。
確かに壁紙とは違って絵画の絵の具のテクスチャーを様々に組み合わせた画面なのだけど、如何にも綺麗過ぎる。僕は彼女がどういう人物か知ってるから「らしいな」と思えるけど、こういう絵に嫌悪する人は嫌悪するんやろうなぁと思った。
何か「毒」のようなものが加わればもっと「強い」作品になる気がした。
卒展もがんばってください。この展覧会は来年4日まで。