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石内都「ひろしま Strings of Time」@広島市現代美術館


今年もあの日を迎えようとしている。
1945年8月6日8時15分。
全てを無にしたあの日から今年で63年が経つ。

先日の新日曜美術館を見て、いても立ってもいられず僕は広島に向かった。
観に行こうか迷っていた展覧会だったけれど、やはり観に行ってよかった。

石内都「ひろしま Strings of Time」。

石内さんの作品を初めて見たのは3年前のヴェネチアでだった。
当時のヴェネチア・ビエンナーレにおける日本館代表。
祝祭ムードのビエンナーレの中で、明らかに異質なムードを漂わせていた。
大理石の床が美しい日本館と、母親の遺品を撮り続けた「Mother's」というシリーズはあまりにも美しすぎたし、なんだか少し不気味でもあった。
その翌年には東京都写真美術館でも同シリーズの展覧会が開催された。
その時に出版社から、広島に関する写真集の話をもちかけられたそうな。
彼女自身広島は1度も訪れたことのない場所だったし、そんな自分が果たして広島を写し出せるのか相当不安だったと語っている。
原爆資料館を一通り見ていくうちに、実際当時の人が身につけていたものに注目した。
そして、ライトボックスを背景に資料として保管されている被爆した服を撮ることになった。
焼けただれ、原型を留めていないものもあれば、60年以上経った今でも鮮やかな色彩を讃え続けているものまで様々。
実際の写真から伝わってくるのは、原爆の悲惨さというよりは、服から滲み出る庶民の着飾るということの悦びだとか、作った人の愛情だとかいった、すごくポジティブな感情。
特に昔は手作りのものが多いので、ものを大切にしていた時代が伺える。
一点一点が言わばオートクチュールなわけである。
ファッションをやってる学生とかが見ても中々学ぶことが多いんじゃないだろうか。
もっと「着る」ということの原点がここにあるような気がする。
そして、その分それらの営みを一瞬で奪い去ったあの出来事の卑劣さが浮き上がる。
それらの服にまつわるエピソードはとても辛いものだ。
服だけが見つかって体は見つからなかったなど。
しかし、手作りだからこそ、ほとんどの持ち物は誰のものだかわかっているみたい。
もし今同じことが起こって、自分の衣服だけが残されたとして、それを自分のものだと誰か証言してくれるのだろうか。ほとんどのものがアノニマスな存在として資料として残されるだけなのだろうか。あまりに寂しいが、それが今の大量生産の時代を象徴しているのかもしれない。
作品自体はとても静かなものだけれど、とても雄弁に色々なことを語ってくれた。
写真というのは良くも悪くもどこで見せてもフラットに見せられるメディアである。
しかし今回の場合、やはり広島で見るということがかなり大きかったように思える。
これまで人々の傷などを通して、個人の記憶を表現してきた石内さんが今回、広島という人類史上最も悲惨な傷に挑んだことはとても大きかったのではないだろうか。
すべての作品を撮り終えた時に流した涙はとても印象的だった。

今回館内ではコレクション展も含め、すべて原爆に関するもの。
その1つが原爆ドームをテーマにした「Dome」という展覧会。
水戸で見た宮島達男や、こないだ大山崎で見た小沢剛など、中々見応えのある展覧会。
中でも土田ヒロミの原爆ドームを何年か定点観測した作品が気になった。
初めて原爆ドームを見た時に感じた違和感。
それは、変わりゆく街並に対して、60年以上変わらず佇むドームの姿。
そこだけまさに時が止まっている様なそんな違和感を忠実に表現していた。
また、企画展では、昨年のヴェネチア・ビエンナーレ日本代表に選ばれた岡部昌生の作品が印象的。
広島の街の地面を、紙と鉛筆でひたすらプロッタージュした作品。
その前のビエンナーレ日本館代表の石内都と、同じ広島を題材にして今回同じ場所で展示されているのが奇妙な偶然というか。
あとはイヴ・クラインの人体測定はやはり際立って美しかった。

新日曜美術館で、石内さんが、実際に当時被爆した生存者の方とのインタビューがあった。
島から船で学校に通っていたその方は、あの日、中々来ない船を待っていると、本島の方から大きなキノコ雲が上がるのを目撃したらしい。一瞬一瞬で、様々な色に変わる空を見て、止めどない恐怖心が溢れ、しばらく空を見上げるのが恐かったそうな。
インタビューの中で彼女は「申し訳ない」と言うのがとても印象的だった。
同級生が皆死んだ中で、自分だけが生き残ったのが申し訳ないというのだ。
こんなことを思いながら生きている人がいるなんてショックだった。
近い将来、あの戦争を体験した人の数が0になる日が来る。
僕らはあの戦争を忘れることすらできない。体験していないのだから忘れようがない。
過ちを過ちだと教えてくれる人がいなくなった時、僕らは過ちを繰り返さずにいられるのだろうか。
でも人間は語り継ぐことができる生き物だと思う。
今回の石内さんのように、現在を生きる人々が様々な形でバトンをつなぐことで、世界平和という途方もない夢が実現する日がもしかしたら来るのかも知れない。
原爆記念公園内にある石碑にある言葉。
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」

石内都「ひろしま Strings of Time」
2008年6月29日~8月10日
広島市現代美術館

石内都「ひろしま/ヨコスカ」
2008年11月15日~2009年1月11日
目黒区美術館

また、現在国立国際美術館(大阪)での塩田千春展と共にコレクション展として石内さんの作品も展示中。
傷や皺など、身体の記憶を生々しく写した作品たち。
どうせなら広島の展示終戦記念日までの15日までやったらいいのにと思いつつ。
にしても広島現美今年いいのやりすぎ。今年だけでもう3回も行ってしまっている・・・。スタンプカード貯まったので次回は無料!12月に蔡國強展行ってきます。
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ART OSAKA@堂島ホテル


最終日の今日、ART OSAKA行ってきました。
堂島ホテルの8Fから11Fを使ったアートフェア。
かつて大阪では東京アートフェアが始まるもっと前から南港のCASOを使ったArt in CASOなどのアートフェアを行ってましたが、やはり出展ギャラリーも少なくてあまり見応えはなかったけど、堂島ホテルを使ったこのイベントはさすがに規模も段違い。
通常のホワイトキューブではなく、ホテルの部屋ってのがおもしろいですよね。
ロンドンで見たbridge Art Fairを思い出しました。

にしても人多すぎました・・・。
あんなにたくさんの人が来てるとはちょっと予想外。
ホテルの部屋や廊下がごった返して不思議な光景でした。
もう1部屋1部屋入っていくのにいちいち気合いが要りました・・・。
おかげでほとんどちゃんと作品観れてません。
草間弥生がやたら多かったです。
あとイラストレーションみたいなのが多すぎてちょっとウンザリ気味。
ってことで数の割にあまりいいのはなかったような気がする。
基本的に売ることが目的なのだけど、も少し展示にこだわったものもあっても良かったのにと思う。
そんな中ではノマルのブースは強かった。
田中朝子と名和晃平の2人展のような感じで、名和さんの映像作品にはびっくりした。
あと動くドローイングなんかもあって、相変わらず守りに入らない攻めの姿勢には感心させられる。
ニュートロンブースでは大船さんが出てたけど、やはりこういうとこだと魅力は半減ですね。
他にも今まで知らない様なギャラリーがたくさんあった。
関西でもホントに知らない間にたくさんのギャラリーが出来てる。
また今度小山登美男やタカイシイが京都にも出てくるとの話もあるし。
そういう意味では、こういうアートフェアは日本のアートシーンの動向を伺う意味でも意義あるものかもしれない。まあ、もう人多すぎて疲れましたが・・・。

ちなみにやっぱり知り合いに会いまくりました。美術業界は狭過ぎる。

アートでかけ橋@アサヒビール大山崎山荘美術館など


今月10日から、京都の最南部にある大山崎町各所を使ったアートイベントが開催中です。
ここには、アサヒビールの運営する山荘美術館があり、面白い企画展を定期的に行ってます。
ちなみに新館の建築は安藤忠雄によるもの。
そんな美術館が外に出てきて町と積極的に関わっていくのはこれが初めて。

「アートでかけ橋」というタイトルは1000年前この世から姿を消した、大阪と京都を結んでいたと言われる「山崎橋」なるものへと思いを馳せるという意味でつけられたものらしい。
招待された作家は小沢剛、セリーナ・オウ、パラモデルの3組。
3組はそれぞれ、町内の各所で展示され、美術館では一同に彼らの作品が集う。

まずはJR山崎駅近くにある離宮八幡宮では小沢剛のベジタブル・ウェポンの写真作品を展示。
町内でモデルを探し、そのモデルと好きな料理に関して話し合い、その材料を町内で得、それを武器の形に組み上げ、写真撮影。その後料理にして楽しく食す。
というなんともピースフルな作品。写真がとても綺麗だった。
神社の中ってのがこれまたよかった。

セリーナ・オウは、人々の仕事風景を撮り続けているマレーシア生まれ、オーストラリア在住の作家。
今回は山崎町に1ヶ月生活し、その中から様々な職業人を撮り続けた。
区民開館内に展示されてあった作品からはとても愛が感じられてとてもよかった。
「働く」という人々の営みが、そのポートレートで輝かされてる感じ。
安藤設計の美術館を背景にして撮られている警備員さんかっこよすぎ。
あと消防士さんやっぱかっこええ。駅員さんもいい感じでした。

パラモデルは、プラレールなどのおもちゃを使ったインスタレーション。
今月末まで集会所で公開制作を行っており、行ったら普通にパソコンいじってはった。
来訪者とどういう距離を保ったら良いか戸惑い気味でしたが笑
集会所がすっかりパラモデルワールドになってていい感じでした。

メイン会場となる美術館では、元山荘という荘厳な建物の中に、パラモデルの絵画や、小沢剛の醤油画など、ちょっと緩い感じの作品が展示されててギャップがおもしろかった。
新館では、美術館所蔵のモネの睡蓮などと、3人の作品が一緒に展示されててこれまたいい感じ。
小沢さんの世界中で行っている「ベジタブル・ウェポン」シリーズが楽しかった。

そんなこんなで中々楽しい企画なので是非。
ちなみに土・日・祝日は各会場を回るジャンボタクシーが巡回中。
ってか、この暑さの中歩いてたら死んでしまいます。
絶対にこれらの日に行くべき。大体20分に1度は出てます。ただし12時から13時はお休み。9月7日まで開催中。

トリスタンとイゾルデ@兵庫県立芸術文化センター


ちょうど2年前の話。
ロンドン留学が始まり、早速ギャラリー巡りをスタートさせた頃。
最初に入ったギャラリーでもうロンドンはすごい!と思い知らされた。
何がやってるか知らずに入ったらビル・ヴィオラ展だったから。
その展覧会は別の場所にある大学を使った展示もされていて、そのどれもがすごい力を放っていた。
これらの作品はパリのオペラの為に製作されたものらしい。
そのことを知って観てみたいなーとずっと思っていた。
日本に帰ってきて、この公演が日本で行われると知った時はびっくらこいた。
運命。
またそんなことを考えてしまった。
もうこれが運の尽きで、気づいたらS席58000円のチケットを買ってしまっていた・・・。
いいんです。金なんて天下の周りものなんです。ははは。

前置きが長くなりましたが、昨日パリオペラを観て参りました!!
まさかこんな年でオペラを観に行くことになるとは・・・。
アートを通して実に色んな経験をしている。
逆にアートがなければ僕の人生はとてもそっけないものになってたのかも。
なんてことを考えながら会場へ。
さすがにおじちゃんおばちゃんがほとんど。やっべー。
場違いを無視してS席に乗り込む。真正面。すばらしい。

で、結果からいうと、やっぱオペラは僕には早すぎました汗
予めWOWOWでやってた映画版の「トリスタンとイゾルデ」見て予習してたんですが、あれ見てなかったら確実にストーリーわからなかった。。。ドイツ語やし。
あ、ストーリーとしては「ロミオとジュリエット」の元となったような話です。
にしても全員でかい・・・やっぱ体力要るからね。
それにしてもイゾルデがでかいのはちょっと・・・と思ってしまった。おばさんやし。
そんでもってトリスタンも年とり過ぎです・・・。
やっぱあの話は「若気の至り」的なものでもあるので、その辺はリアリティなかった。
まあ、あれだけの力量積むには若いのでは駄目なんだろうけど・・・。
公演時間は休憩時間含めて5時間・・・さすがに疲れた。
最初の方とか慣れるまで何度も眠りそうになった。

オペラ自体は苦い経験となりましたが、やはり映像はすばらしかったです。
僕にとっては映像がメインなので、オペラはとても贅沢なBGM。
そもそも、このオペラはとても実験的で、舞台セットは台座1つのみ。
あとは役者(歌手)とこの映像のみという演出。
第一幕では「浄化」をテーマにした、男女の禊のような映像。
相変わらずこの人の水の表現は超越している。
第ニ幕での移り変わる空と木のシルエットの映像もすばらしかった。
しかしなによりすばらしかったのは第三幕。
一幕、二幕では、ちょっと舞台の内容と噛み合ないところもあったのだけど、三幕はこの舞台の世界観とヴィオラの世界観が見事にマッチしてすごかったです。
蜃気楼から現れる黒装束の女性の映像と、イゾルデが船に乗って現れるシーンは絶妙だったし、なんといってもクライマックスの火の映像と水の映像。
最後はトリスタンが天に召されるのが、大量の水で表現されてそれはそれはすごかった。

やっぱり大金はたいた甲斐があったってもんです。
ロンドンで見た時もすごかったですけど、やっぱ元のコンテキスト上で見て改めてこれらの作品が生きてくるという感覚が気持ちよかった。
まあ、もう当分オペラなんて観ることないと思うしいい経験になりました。
こういうアートと舞台の結合ってこれからもいっぱい観てみたい。
タレルやカプーアも以前やったことあるし、日本でやったら是非!
ちなみにこの公演は7月27日と31日に渋谷のbukamuraでも上演されます。
まだ多分S席は残ってるんじゃなかろうかと思うんで余裕があればどうぞ。

関連記事
Bill Viola @ HAUNCH OF VENISON
Bill Viola @ St.Olave's College

テーマ : 観劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

studio90


去る今年の1月。
大学時代の友人2人とアトリエを借りました。
日本で腰を据えるという意味では大きな決断でした。
しかし、ただのアトリエなら1人でも十分。
どうせならもっと色んなことがしたい。
ということで自分たちの制作スペース以外にもギャラリーを設置。
そして、そのギャラリーのオープニングを小生が務めることになりました。
まあ、その個展のお知らせはまた後日することにして。
借り出してから早半月。
ようやくこのアトリエが動き出しました。
名前はstudio90。
名前の由来は秘密です。
そんなstudio90のウェブサイトも完成しました。
ここから色々発信できるよう、これからもがんばっていきます。
studio90 WEBSITE>>http://www.studio90.info/

また、不定期ではありますが、リーフレットの発行も始めました。
ご希望の方は住所、氏名を明記の上studio90@live.jpまで。

このブログ見てたら遊んでばっかと思われてそうですが、やることちゃんとやってるんですよ。ふふ。

Temenos by Anish Kapoor x Cecil Balmond


エプスフリートに続き、またイギリスの巨大アートプロジェクトが発表されました。
今回はコンペ形式ではなく、4年前から着々と育てられたプロジェクト。
アニッシュ・カプーアとセシル・バルモンド。
なんてアツい2人なんでしょうか、まったく。
この2人は2002年テートMのタービンホールで公開されたMarsyasという室内最大彫刻でも見事な共演を果たしています。
2人ともインド系なので合うのかもしれませんね。
にしても今回もまたデカイ。
幅110m。高さ50m。
しかも今回はこの10年以内に5つも点在させるとか・・・。
総工費£2.7m。約5億~6億円でございますよ。
ホント、桁違いとはこのことです。日本も見習ってほしいです。
とりあえず1つ目はこの秋に制作が開始され来年の夏には完成とのこと。
エスプフリートのも完成したら是非合わせて観に行きたいですね。
詳しくはコチラ

関連記事
Cecil Balmond+伊東豊雄@NHK大阪ホール
New Public Sculptures in the UK

塩田千春「精神の呼吸」@国立国際美術館


関西では、3年前の京都精華大学での展示以来、2度目の塩田千春の個展。
地元大阪での個展ということもあって、塩田さん自身感慨深いものがあるんじゃないでしょうか。
ドイツに10年以上住み、ヨーロッパを始め、中東、アフリカ、アジア、アメリカと、それこそ世界中を年に何本も展覧会を行ってきて、まるで旅芸人のようだと以前インタビューでも答えてらっしゃいました。

こんなエピソードがあります。
ドイツで初めて師事したパフォーマンス作家のアブラモヴィッチの授業で、お城に籠って断食のようなことを1週間続けるという過酷な体験があったそうです。
最終日の早朝、いきなりアブラモヴィッチが部屋に入ってきて
「千春!この紙に何か書いて!」
といきなり言われたそう。
断食の空腹と眠気で意識も朦朧とした中書いた言葉。

「日本」

海外で生活していると、どうしても故郷を忘れずにはいられないこともあります。
しかし、故郷というのは皮膚に染み付いて決してとれることのない記憶。
それから彼女は「Bathroom」という作品を制作します。
自宅の風呂で、泥をかぶる作者自身。
洗っても洗ってもぬぐいきれないもの。それが故郷の記憶なのではないでしょうか。
この後横浜でも発表した泥のドレスに発展していきます。
そんな故郷でのこの展覧会は、彼女自身今回の展覧会に寄せた文書にも書いているように、何かの転機になるような展覧会になるのではないでしょうか。(ちなみにこの文書にはこの展覧会が決まって3年以内に彼女の身に起こった壮絶な出来事がたくさん書かれています。詳しくは国立国際美術館ニュース166にて)

6月19日から27日までの間、この展覧会のお手伝いをさせていただきました。
一度で良いから是非手伝ってみたい!と思っていたので念願叶ってといった感じ。
この展覧会を知ったのは2年程前で、ずっと楽しみにしていたので、ボランティア募集がかかった瞬間から応募しました。
それまで塩田さんには5年前大学に講演しに来た時にお見かけしたくらいで、何の面識もなかったのですが、失礼ながら、改めて、ホントにこの人が作者なの?と思ってしまいました。
シャイで大人しくて穏やかな女性。
これだけ壮絶で強烈な作品を作る作家とは、多分誰も本人からは想像つかないんじゃないでしょうか。
しかし、やはり今回の展覧会に出品される作品はどれもすごい強烈。
そんな作品を10日間かけてお手伝いさせていただいて、ホントに光栄でした。

まずは今回のメインとなる日本初出品の靴の作品。
1年半かけて集められた靴の数はなんと2130足!!
初日に全てを箱から取り出して並べた時には呆然としました。
これはポーランドやベルリンで発表した時より遥かに多い数字。
それに1つ1つ赤い糸を結びつけていくんですが、靴にはそれぞれその靴にまつわる持ち主のエピソードが縫い付けられていて、読みながら結んでいくのは楽しかったです。
「孫に買ってやったけど履いてくれなかった」
といったものから、
「父が生前、戦後間もない頃から大事に履き続けていた形見です」
といったものまで。
2130人の記憶が分ち難く結ばれていく。
ちなみに僕も一足寄付しました。ロンドンで買ったプーマの96hours。
ちゃっかり先頭に置いてきたので注目です!
この作品は、ちょうどエスカレーターで展示室向かうまでにパッと現れるのでインパクトはかなりあります。その下のモディリアーニ展を目当ての客もびっくりするんじゃないでしょうか。

同じ空間には、「トラウマ/日常」と名付けられた立体作品。
鉄枠の中に糸で閉じ込められた服など。
この浮遊間が亡霊のような雰囲気。どうやって作られてるんやろ。

そしてもう1つの大作「眠っている間に」。
これはホントに大変でした。。。
空間の中にとにもかくにも糸を編んで編んで編みまくるッ!
その中に病院のベッドが20台ずらーっと並べられてます。
もちろんそれらのベッドにも編みまくるッ!
お手伝いの大半はこっちの作業に費やされました。
おかげで本当に異常な空間が出来上がりました。
オープニングでは、そこに20人のパフォーマーがひたすら眠り続けるというパフォーマンスも行われました。
会期中はベッドの中には誰もいないんですが、そこに誰かが眠っていたという確かな痕跡が残ってます。それは枕の凹みであったり、シーツの皺であったり。
不在の存在がはっきりと浮かび上がるのです。

そしてこれまた同じ空間に横浜で展示された13mのドレスが垂れ下がってます。
今回はさすがにシャワーまではないですが、これも圧巻。
天井から吊り下げられてもまだ下に垂れてる・・・でかすぎ。

次の部屋ではこれまでの写真と映像の展示。
といった感じです。
今年の最も注目されるべき展覧会の1つであることは間違いないので是非!!

ちなみに僕はなんとか頼み込んで内覧会に招待してもらいました。
ベッドのパフォーマンスもその時に行われたんです。
にしても美術館の内覧会ってすごいですね。
まず立食パーティーなんかあって、ワイン飲み放題ですよ。
そんでもってモディリアーニ展も無料で見れちゃうし。
モディリアーニは初期の方が断然いいね。
オーストリア系の影響バンバンにでちゃってるけれど。
後半のいわゆるモディリアーニ的な絵はほぼスルーでした。
今回塩田千春展の行われてるB2では、石内都と宮本隆司のコレクション展も開催されてます。
最初、塩田さんだけでええやん!と思ってたけど、実際見てみると、何の違和感もなく塩田さんの展覧会から流れられるのはさすがと思いました。
宮本さんのベルリンの廃墟を撮った作品や、石内さんの皺だらけの老人を撮った作品が醸し出す雰囲気は、塩田さんのそれととてもマッチして素敵でした。
石内さんの広島現美の展覧会観に行きたい。。。
帰りには塩田さんの図録もいただけて、内覧会最高!
国立国際の会員になっておこうかしら。。。

なにはともあれ、是非足をお運びくださいませ。
大人420円、学生130円で見れます!学生うらやましすぎ。
僕も会期中何度か訪れる予定。

塩田千春「精神の呼吸」
7月1日(火)~9月15日(月・祝)
国立国際美術館

Cecil Balmond+伊東豊雄@NHK大阪ホール


ご無沙汰しております。
無事、2つの搬入を終え帰って参りました。
本当は塩田さんの展覧会を先に書く予定でしたが、昨日聞いた講演会があまりに素晴らしかったため、感動冷めやらぬうちにこちらからアップすることにしました。

セシル・バルモンドと伊東豊雄。

この2人の講演会があると聞いたのは約一ヶ月前。
こんなにアツいな組み合わせが実現するなんて!
しかも大阪での講演もあり!!
逃すわけにはいかない。
ってことで申し込んで、抽選も見事当選!!
なんでも300人の人が抽選で漏れてしまったらしい。本当にラッキー。
実際NHKホールは満員で、この2人の注目度が伺えます。

さて、この2人。
伊東さんはこのブログで散々取り上げてるので言うまでもなく。
セシルは構造エンジニア。実際建物を建てる時の構造計算をする人。
世界屈指の構造家集団オーヴ・アラップの副会長も務めます。
アラップに頼んで建たない建築はないとまで言われ、シドニーのオペラハウスも彼らの仕事。
そんな構造家たちの中でもセシルがずば抜けているのは、構造計算だけでは終わらず、構造を通して建築の新しい領域にアグレッシブかつクリエイティブに邁進するところ。 実際セシルと組んで、新たな境地に達する建築家もたくさんいます。
伊東さんはその代表格と言って良いでしょう。
初めてセシルと伊東さんのコラボが実現したのが2002年のサーペンタインパビリオン。
正方形を回転させてできたフォルムと柱のない不思議な空間は、僕を建築に目覚めさせた最初の作品。
伊東さんは最初柱のない構造というのと、何かしらランダムなパターンで構造にするという提案をしたのに対し、セシルが言ったのは、
「ランダムというのは人の経験でしか生み出せない。
それは既視感を伴い決して新しいものなど生まれない。
むしろ、ある一定のルールに基づいて生成されたものの方が圧倒的に新しい」
そこからセシルは10枚ほどに及ぶスケッチを提案し、その中から伊東さんが選んだのがその正方形を回転させるというもの。
普通の構造家は建築家に対してここまで新しい意見を出せるものじゃありません。
そして結果的にセシルの提案がこの建築の核となるのですから。

最初のセシルの講演では、このサーペンタインパビリオンに始まり、アルバロ・シザ、ダニエル・リベスキンドといった大物とのコラボ作品を紹介。またアラップ自身が設計したポルトガルの橋や、バタシーパワーステーション開発などのプロジェクトなども紹介。そのどれもが、セシルの構造美を示す名作。
セシルはスリランカ生まれの人なので、英語もインド訛りで聞きやすくて、通訳なしでも聞けた。構造家の話なので数学的な単語が連発したら無理やなーと思ってたら、すごくわかりやすい言葉で話してくれてるのがわかってなんて素晴らしい人なんだと。
以前ロンドンで、同じく世界屈指の構造家佐々木睦朗さんの講演を聞かせていただいた際、彼は日本語にも関わらず、話してる内容があまりに難しくてついていけないところもあったのだけど。
にしても、ホントにどんな頭をしてるんだろう。
建築とか抜きにして、全く新しい哲学や思想を聞いてるような気がしてきた。
過去を踏襲しつつも未来へまっすぐ進むそのエネルギーが全身に伝わってきた。

続いて伊東さんの講演。
実作に関してまず最初に下諏訪の博物館からという意外なスタート。
下諏訪の作品を見てると確かに今の伊東建築とは全く違う。
続くスライドがサーペンタインだったので歴然と差に現れる。
そして、台湾の大学図書館や、アメリカのバークレ-美術館など、新作を多数紹介してくださったのはとても嬉しかった。
台湾の図書館は、木をイメージしたもので、これもある一定のルールに基づいたもの。
バークレーも模型は見ていたのだけど、ムービーや、伊東さんから放たれる言葉と一緒に体験したら全く違ったものに見えた。
そしてなんといってもやはり台湾のオペラハウスは圧巻。
こちらはセシルとのコラボで、第一設計はすでに終了して、この秋にも着工の見込みとか。
これができたら建築界は揺れに揺れると思う。楽しみすぎる!
また、今はまだ発表できないけど、伊東さん初の超高層建築の計画もあるらしい!
いやー、楽しみだ。

最後は2人の対談。テーマは「自然」。
東京ではまた違ったテーマでお話したとのこと。そっちも聞いてみたかった!
まず、伊東さんは木が生長していく過程をスライドで映し、この枝が二股に分かれるのを繰り返すという単純なルールの中に、実はたくさんの複雑な問題が秘められていると。
これまでの建築は完成形が既にあって、それを実現させるために構造を組んでいた。
しかし、それではあまりに均質化した空間だけが世界中に広がっていくのみ。
これからの建築はもっと周りの環境と呼応し、変化していくものを作っていくべき。
それはまるで、木が太陽の光を、風の向きを、隣の木との関係を通して枝を伸ばす方向を変えていくように。
伊東さんが再三仰ってる言葉があって、それは
「渦のような建築を作りたい」
ということ。
水の中に棒をたてて水を様々な速度で流す。
すると、棒で砕けた水が渦となり水流の変化によって様々な形を成す。
今までの建築はその棒であって、周りが変化しても変わらないもの。
しかし伊東さんが目指すのは周りの変化によって変化する建築。
そんなものが果たして存在しうるのかどうかは別にして、それは建築だけに留まらずものづくり全体に当てはまる理想なのかもしれない。
アートや建築というのは、100%人工物です。
これまで人類の文明において、決して相容れない自然と人工という問題に対して、闘ってきたクリエイターは数知れません。
伊東さんやセシルは、今の時点において、その先端を担ってる人かもしれない。
セシルも「自然は外から見ていると変わらないように見える。しかしそれは約7割程であって、残りの3割は周囲の環境によって変化し続けている。建築もその3割を追い求めなければならない」といったようなことを仰ってました。
2人の対話を聞いていると、本当に響き合ってる2人なんだな、と改めて思う。
お互いの話の間、常に相手の言動に対してうなずき合ってる姿がとても印象的でした。 建築家と構造家の枠を超えて、未来を作っていく2人はとても輝いてました。
最後、対話が熱しすぎて質疑応答の時間がなくなってしまったけれど、ステージまで質問にくる学生などに熱心に耳を傾けている2人の姿がとても感動的。
皆写真を撮ったりサインを頼んだり、握手をせがんだりしてたけど、僕には到底できそうにない。
いつかもっと彼らに追いつくことができたら。
そう思わせてくれる感動的な講演会でした。
早速セシルの著書「インフォーマル」注文しました。楽しみ。
新作「Element」も欲しいが金がねぇ。いつか是非。
また、来年か再来年にセシル・バルモンドの展覧会が日本に来るらしい!絶対行くど。

ところでこのアイカ現代建築セミナーというのはすごい。
今回で57回目を迎え、もう20年以上続いているセミナーシリーズ。
過去には故・丹下健三やジャック・ヘルツォーグ。
中でもびっくりなのが2001年のピーター・ズントー!!
行きたかった・・・。これからも注目ですね。


先日古本屋で、「伊東豊雄観察記」の著者である瀧口範子さんの「行動主義-レム・コールハースドキュメント」を古本屋で見つけて購入しました。
レムは建築界の中でも異質な存在で、何がその異質たらしめているのかが知りたくて、この本はその入門になりうると思って気になってました。
実際読んでみると、レムの凄さがピリピリ伝わってくるようでかなりおもしろかった!
そもそも彼のデビューは建築の実作ではなく、「錯乱のニューヨーク」という1冊の本。
この本も以前おもしろく読んだんだけど、レム本人というよりはニューヨークという街の成り立ちを語る語り部といった感じなので、結局レムってどんな人物なんだとますます謎は深まったのを覚えてます。
現在はオランダのロッテルダムに拠点を構えるレムですが、以前はニューヨークに棲んでいて、ウォーホールのファクトリーにも出入りしていたというのが本に載っていてびっくり。
今の建築家だけではなく様々な人々を巻き込んでいく彼のスタイルはもしかしたらウォーホールから学んだのかな、とも思わせます。なんだか意外。
世界中を飛び回るレムを必死に追いかける滝口さんの姿もおもしろい1冊。
レム入門にもってこいの本です。
セシルと伊東さんもレムに関するインタビューという形で載っています。
次は是非実作を見てみたい。2006年のサーペンタイン・パビリオンは見たけどよくわからなかったし。セシルとのコラボの北京のCCTVは見たいな。H&deMのスタジアムと合わせて。
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