お釈迦様の掌@ARTCOURT GALLERY

「すごいタイトルの展覧会に出す事になってん」
「どんなすごいんですか?」
「『お釈迦様の掌』』
「すごい・・・」
以前塩保朋子さんと交わした会話。
その「すごい」タイトルの展覧会があれから2年を経てようやく始まりました。
出品作家は前述の塩保さんに加え、宮永愛子さんと人長果月さん。
全員が関西を中心に活動する若手女性作家である。
展示プランは至ってシンプル。
まずガラス張りでこのギャラリーを訪れるとまず目にとびこんでくる通路を占めるのが宮永さんの作品。京都芸術センターで見せた塩の作品。(上写真)
「城(さかい)」と名付けられたこの作品は、通路の端から端まで長い塩の結晶で覆われた糸がゆるいテンションで張られている。
この付着した塩は、このギャラリーの前を流れる大川から採取したもの。
川から塩がとれるなんて不思議だけれど、いつかは海につながる大きな流れを感じる。
ここでこの展覧会タイトル。このタイトルのイメージは僕の中では「広く雄大なもの」。この作品からこの展覧会タイトルを引き出そうとするならば、その糸から大河や海のような、とても果てしない流れを感じさせてくれる。
ただ、個人的には芸術センターの網の作品の方が好きでした。あっちの方が海をより感じたし、照明の関係もあってか、塩がダイヤモンドのような輝きを発していてえも言えぬ美しさを放っていた。今回のも好きだけど。
ちなみに宮永さんはもう1つ出品していて、それが写真手前に写ってる作品。
中庭の石庭を撮影したものを箱にして中には糸で縫われたハロゲン紙。
ちょっと僕には理解できませんでした。。。
今回はこの宮永さんの作品が廊下を防いでるので、コの字型のこのギャラリーはさらに左右に分断されている。とりあえず右から入ってみる。
まず塩保さんのドローイング作品が展示されている小部屋。
これは正直名和さんの影響が出過ぎているような感じがしてあまり好きになれなかった。
んー、と思って先に進むと、奥の大部屋では人長さんのインタラクティブな映像作品。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を題材にしたもので、まず観客が入っていくと画面に手が現れ、さらに進むとその手が引っ込み、小さな何かが弾けていく。その何かをよく見ると人の手や足などで、ちょっと気持ち悪い。その弾け様はまさに「蜘蛛の子を散らす」よう。
でも正直あまり感動にまではいたりませんでした。
また外に出て今度は左側から入って見る。
奥のスペースに入るとそこにはこのギャラリーの高い天井から4、5mはありそうな、塩保さんの作品が5点吊り下げられていて、ちょっとこれは鳥肌もの。
塩保さんの作品は、紙をはさみやカッターでちょきちょきちょきちょき、本当に気の遠くなりそうな作業を繰り返しながら生まれる。
塩保さん曰く、作品に向かう前はなるべく人に会うようにしている。制作しだすと閉じこもって人に会えなくなるから、とのこと。それくらいの集中力を使って紡ぎだされる作品は1作に半年ほどかかったりする。
それを5点もこんな大作・・・一体どれくらいの時間をかけて作られたんだろう。
膨大な仕事量と時間の蓄積がこの作品の土台を支えているのである。
そこから放たれるエネルギーは半端なものじゃなく、僕はしばらく立ち尽くしてしまった。
しばらくして、その切り取られたイメージが浮かび上がってくる。
天井から舞い降りる様で滝を連想する人もいるだろうけど、僕は「業火」を連想した。
「業火」といっても、攻撃的なものではなく、悲しみや憎しみもすべて浄化する業火。
そこに僕は今回のタイトル「お釈迦様の掌」というコードを読み取った。
最初聞いた時はあまりのインパクトのあるタイトルに若干引いてしまったけれど、2年の歳月をかけて、各々がその言葉に対する回答を作品でもって示していた、とても良質な展覧会でした。
会期が延長され、6月7日まで開催中。大阪の人は是非!
泉洋平「視線の休譜」@neutron
友人泉洋平氏の個展が昨日より京都のneutronで開催されてます。
月曜日はその搬入を手伝ってきました。
彼はいつも「視線」をテーマに作品を作ってきて、いつもは作品自体が斜めから見ないと正像が得られない作品だったり、その作品自体に対して観客の視線誘導を働きかける作品を制作してきたのですが、今回は作品自体ではなく、ギャラリーという空間自体に視線を誘導させる作品を制作しました。
具体的にはギャラリーのシミやよごれなど、普段あまり気にもとめないような箇所を大小様々なパネルに描き出す事で、観客は改めてその空間の新たな面を認識できるという、言わば、絵画が装置のような役割を果たしているのです。
ランダムに壁にかけられたその空間に入った観客は、最初そこに何が描かれているのか疑問をもち、それがわかった瞬間に、その絵と同じ箇所をギャラリー内に探し始めることになるでしょう。
最初正直それなら写真でもいいんじゃないかとも、思ったのですが、やはり写真だとあまりにも冷たい感じがしたと思います。そこの判断は彼が正しかったようです。
彼はこの4月に某大手に就職して、忙しい日々を送りながらも日夜この展覧会のために制作してきました。同じアトリエで彼の制作を目の当たりにした分ちょっと贔屓目にみてしまいますが、とても暖かい空間になってますんで是非観に行ってやってください。
もう一点くらいあってもよかったかなー、なんて口には出しません。はい。
6月8日まで。搬出もがんばります。
