液晶絵画@国立国際美術館

5月18日は「国際美術館の日」というのをご存知ですか?
この日は国立の美術館などが無料になるというとってもお得な日。
常設が無料になるのは文化の日とかにもあるけれど、企画展まで無料になるってのがすごい!
その情報をめざとく見つけて行ってきました国立国際美術館。
ちょうど前から見たいと思ってた「液晶絵画」展が開催中なのです。
でもまあ皆さんよくご存知のようで、開館前から上の様な列・・・びっくりです。
めげる事なく列にならんでレッツゴー。
受付でチケットを買う事もないので、そのままの流れでスムーズに入館できるのが気持ちいい。
いつものように地下まで降りて行ってお目当ての展覧会へ。
今回の展覧会はタイトル通り、映像作品ばかりを集めた展覧会。
まず入ってすぐ登場するのがビル・ヴィオラの「プールの反映」。
この作品は僕が初めて見たヴィオラの作品で何回見てもいいですね。
映像作品って、メディア自体が今日日進月歩で進化していってるから、簡単に古くなりやすいんです。
この作品は70年代後半に作られた作品だけれど、まったく輝きを失っていない。
これが僕がヴィオラの作品にハマりだしたきっかけです。
初っ端からすごい。
続いては楊福東の作品。ドキュメンタリーフィルムのような映像で定評のある彼ですが、今回は6面のモニターで「雀村」という村の人間と犬の関係を描いた作品。毎回よくわからず5分も見れた事がなく今回も同様でした。
ブライアン・イーノのちょっとオシャレな作品もよくわからなかった。
サム・テイラー=ウッドの作品は、初めてロンドンに行った時に見た静物画のような配置でおかれた果物やウサギが朽ちいく作品。何回見ても最後まで目が離せません。それと、日本帰ってくる直前に教会で見た「Pieta`」も出品されてた。教会で見た時より良い感じ。
続いて森村泰昌のフェルメールのインスタレーションは楽しかった。
そして、一番この展覧会で好きだった点は、ジュリアン・オピーややなぎみわなどが展示されてた大きな空間。真ん中には長椅子が四角に置かれていて、観客は好きな作品の前に座ってゆっくりと鑑賞できる。これは中々いい感じの空間やった。
鷹野隆大の作品は3年程前青山にあったNadiffで個展が開かれていて、それ以来とても気になる作家。今回はその時の作品をもっと広げた感じの作品で、3つのモニターが縦に配置されてて、服を脱ぐ上半身と下半身が映し出されている。上半身と下半身がちぐはぐに構成されてて、顔は男で体は女みたいな、まるで遺伝子組み換え操作のようなことを単純なプログラムで組んでるのがおもしろい。また、女装してる男性なんかもいて、ジェンダーがばらばらになっていく感覚も気持ちいい。今回はカメラで観客を捉えて顔が観客になってしまうバージョンもあっておもしろかった。実際映されてると気づかないおじいちゃんとかいた。
イブ・サスマンの今回の作品は、ロンドンの176で見たものと同じ。ただし見せ方が全然違う。ロンドンの時は映画館のようなだだっぴろい空間に大きな映像で大迫力だったのに対し、今回は液晶画面の小さなもの。ふーんって感じで見てたんやけど、ひたすら画面が動かない。これは一時停止になっちゃってんじゃないかと、監視の人に注意したら実はよーーく見てると動いてるとの事。確かによーーく見てると動いている!!実際の作品をすごいスローにしちゃってたのだ。なんだかリミックスみたいな感じで不思議。
千住博の屏風に書かれた様な白黒の山水画のようなものが、実は液晶画面でうごく屏風絵的な作品。正直サイズが中途半端すぎだと思った。屏風ならもっと大きくないと意味がない気がする。
その部屋を後にするとドミニク・レイマンの映像。今にも斬首されそうな男が白い布を被されて後ろ手に座らされている。それを見下ろす傍観者・・・って自分や!って気づく。なんと隠しカメラで同じアングルから観客を撮っていて、それがうまいこと映像にフィットするという仕組み。次の部屋の作品は、教会のミサに参加する人々を上から撮った映像で、ミサが終わると一斉に動き出すのがおもしろかった。
邱黯雄のは、狂牛病やら羊のドリーなど、人間の愚かさを皮肉る様なアニメーション。手法はウィリアム・ケントリッジに似ているけど、ちょっとテーマが直接すぎてあまり好きじゃなかった。ケントリッジのような不思議な悲哀にはちょっと勝てそうにない。
ミロスワフ・バウガは白い壁に白い壁の映像を投影したものや、塩にガスコンロの火を投影した作品。にしてもなんで塩なんやろ。謎。
最後は小島千雪の砂漠を映した映像。全部がもやがかかったような感じ。
さて、ざっと出品作に関して触れましたが、実際とてもおもしろい展覧会だった。
正直、昨年末同美術館で開催された「現代美術の皮膚」展のようなことになるんじゃないかと危惧してたんやけど、今回はテーマを絞るのではなく、メディアを映像という分野にしぼることが功を奏したんやと思う。メディアをしぼることで、逆にそのメディアの多様性が見えてきて、作家によって映像の捉え方が各々なのが見えてとてもおもしろかった。
ただ、展示構成がよくない。
最初にちゃんと最後まで見せるビル・ヴィオラを持ってきたせいで、人の流れがいきなりストップしてしまう。実際、入った途端に人だかりができててうんざりやった。僕がキュレーターで、今回の出品作の中から最初に持ってくる作品を選ぶとしたら鷹野隆大を持ってきたと思う。彼の作品ならまずインパクトはあるし、エンターテイメント性もあり、観客の心を最初に掴んだ上で、観客が各々のリズムで見ていられる。
そして最後が尻切れとんぼのような感がしたのも否めない。ここは最後森村さんのインスタレーションを持ってきてもよかったんじゃなかろうか。小島さんの作品も悪くはないが、作品同様、最後もやっとした感じで終わってしまうのが残念。
とまあ、なにかと問題もありましたが、中々面白い展覧会でした。
6月15日まで開催中なのでまだの方は是非。
関東の方は、この次東京都写真美術館に巡回されるのでそれを待ちましょう。
ちなみに映像全部をちゃんと見ようと思ったら最低1時間半はかかるのでご覚悟を。