英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展@森美術館

アニッシュ・カプーア
ジェームス・タレル
ビル・ヴィオラ
クリスト&ジャンヌ・クロード
この4作家は僕の中で神の領域まで達してしまった人たち。
もうひとりそこに加えるなら確実にこの人の名前を挙げる。
レイチェル・ホワイトリード
そんな彼女が森美術館で講演するために、はるばるイギリスから来日するという情報を幸か不幸かキャッチしてしまい、今回の上京となったわけでござんす。
ターナー賞回顧展自体は、ロンドンで既に観覧済みだったので、見んでええわーとタカをくくってたらこのざま。ロンドンバージョンのレビューはコチラ。
公式HPにて、「アーティスト・トーク」なるものを見つけた時からいやな予感はしてました。
「カプーアかホワイトリードだとまずい・・・また東京に行かなければならなくなる」
そう思いつつクリックしたのが運の尽き。
きっちりホワイトリードさんでした。
でもまあ、展示自体も少し変わってたし、展覧会自体懐かしがりながら見れました。
まず最初にターナーの絵が飾ってあったのがよいですね。
最初の方の展示は細々しててなんかつらそうでした。ロングの作品なんか特に。
カプーアも3つのお椀が1つになって、さらに小さくなってた。
でもまあ、あの凹みが膨らんで見えたりフラットに見えたりする感覚は健在。
そしてなんといっても目玉はデミアンの牛でしょう。
多分彼のホルマリンの作品が来日するのは初めてなはず。
怪訝な顔をして立ち去るご婦人などもいらっしゃいましたが、皆興味津々に見てました。
残念なのが間を通り抜けできないこと。
ロンドンの時はできたので普通に通ったら監視の人に止められてしもた。
あとは、マーチン・クリードのライトの作品は、照明がテートと違ってしょぼかった。
んでもって、サイモン・スターリングの小屋はさすがに持って来れなかったみたいで別の作品が展示されてた。
ロンドンではまだ受賞の決まってなかったマーク・ウォリンジャーの作品も追加されてた。
ところで作品の邦題どうにかならんのか??センスのかけらもなかったです。
デミアンの「Mother & Child,Divided」はその昔「引き裂かれた母子」という素晴らしいタイトルがあったにも関わらず、今回「母と子、分断されて」なんてわけわからんタイトルになってた!このタイトルには別々に離された母子って意味と、実際体が真っ二つになってる意味がかけ合わされてる悲劇を連想させるタイトルでなければいかんのですよ。その点で「引き裂かれた母子」はまさになネーミングなのに、後者は何?
そしてマーチン・クリードの「The lights going on and off」に関しては「ライトが点いたり消えたり」って・・・。
にしてもすごい来場者数やった。金曜日から始まったところってのもあるけれど、1500円も出して、現代美術の展覧会にこれだけの人が集まるなんて。さすが森美。すごいです。最後の方は人でごった返して大変そうでした。
さて、今回メインのアーティストトーク。
念願のレイチェルと対面です。
先着100名ってことで、受付と同時になだれ込む。
おかげで通訳の真後ろというすばらしい席をゲットできましたy
颯爽と現れたホワイトリードさんはめちゃくちゃかっこよかったです。
YBAの中でも一際寡黙な作品を作り続け、他の作家とは一線を画する作家。
彼女自身がスライドを通して作品の説明をしてくれる贅沢な時間。
1993年のターナー賞をものにした「House」に関しては、プロセス画像もさることながら、尽きることのないエピソードでいっぱいでした。例えば作品に穴をあけて住む人が現れたり、などなど。
そして記憶にも新しいテートのタービンホールで見せた「EMBANKMENT」の話も。
あぁ、本当に来てよかった・・・。
それからもう1人2001年のターナー賞を受賞したマーチン・クリードも来日。噂には聞いてましたが、かなりぶっとんだ人で、こちらもかなり面白かった。
「体の中のmess(ごちゃごちゃしたもの)を外に出したいんだ」
といって作ったのが女の人がひたすら吐いてる映像。
このはきっぷりの凄まじさといったらマーライオンも凌ぐのではと。
質問で、どうして作家自身がやらなかったのか?と聞かれて
「僕はうまく吐けなかったんだ」
と正直に応えてるのがウケた。
またどうして女性なのかと聞かれ、ちゃっかり男性バージョンも披露。問題解決。
こっちはこっちで相当おもしろいアーティスト・トークとなりました。
ああ、これでホワイトリードにも会えたし、あと会ってないのはタレルのみ!
来日した際にはどこでも馳せ参じますよ。
展示は7月13日まで。英国現代美術を壮観できるチャンス!
アーティスト・ファイル2008@国立新美術館
国立新美術館が選ぶ8人の作家のグループ展。
同じ六本木なので寄ってみた。
今回初めて展示室に入ったけれど、良いですね。
天井が高くて、まるでテートモダンにいるような感覚。
でも実際は宝の持ち腐れです。日展なんかがやるようじゃぁねぇ。
で、肝心の内容ですが、悪くはないけれど、すごく淡い印象。
前述のターナー賞展がヴィヴィッドカラーなのに対し、こっちはパステルカラーといった感じ。ほとんどの作品が無難なラインを歩んでいる感じで、おもしろくないっちゃおもしろくない。
美術館が何人かの作家を選んで紹介する展覧会といえば、東京都現代美術館のMOTアニュアルもあるし、この館独自の方向性をもっと決めていかなければ後が続きそうにない企画ですね。
その中でもさわひらきのインスタレーション「hako」は何度見ても名作。
昨年のロンドンで初めて見たわけだけれど、いつまでもそこにいたいような居心地の良さ。今回色々急いでいたので、あまりゆっくりと見れなかったのが残念。
この展覧会はGW5月6日まで。
さわひらきの作品を体感するだけでも価値はあるかも。
30分でも1時間でも時間の許す限りその空間に身を委ねてみてください。
ロンドンでの体験はコチラ。