アーツチャレンジ2008@愛知芸術文化センター

日帰り名古屋アートツアーを強行してきました。
お金がないのでバスで移動。滞在時間より移動時間の方が長いという罠。
天むすも味噌カツも味噌煮込みうどんもひつまぶしもういろうも食べずに帰ってきた。
そこまでして行った旅の目的はただひとつ。笹倉洋平さんの「つたふ」を見るため。
前にも1度触れましたが、笹倉さんとは以前から何度か交流させていただき、作品を拝見していて、昨年から発表されてる「つたふ」というシリーズの作品が滅茶苦茶かっこよくて、その発表の機会をことごとく逃していたものですから、今回出品されていると聞き、名古屋まで飛んできたというわけです。
今回の企画は大阪カレイドスコープなどを手がけるインディペンデント・キュレーター加藤義夫氏による、新進作家を発掘するという意図のもと、美術部門からは15名、音楽部門から3名という構成で発表されます。笹倉さんも含む美術部門13名は愛知芸術文化センター、2名は愛知県陶芸資料館にて発表。後者は遠すぎたため断念。愛知芸術文化センターのみ来訪しました。
にしてもこの愛知芸術センターでかい!12階建ての建物で、しかも新しくてびっくりしました。もっと古い建物のイメージがあったのだけど。これを見てると大阪芸術センターって一体・・・と思ってしまいますね泣
そんなことはさておき気になった作品をいくつか。
森太三さんの作品は何度か見させてもらってて、とても好きな作家さん。特に一昨年に見たwksでの作品が忘れられません。「Rain Surface」と題された今回の作品は色とりどりの粘土を指で丸めたたくさんの小さな球を床に円にしきつめた作品。作品にあまり近づけなかったのと、もう少し大きなスケールでもよかったのではと思いつつも、森さんらしい作品でした。
B1Fに展示されてた上西エリカさんの「In(verses)Way」は、彼女の生まれ故郷であるブラジルと今住んでいる東京を結ぶ彼女の歴史を背景にしたコラージュ絵画作品。地図を張り合わせた8点からなるコンポジションが気持ちよかった。
他には、精華の建築出身の小笠原太一氏の遠近が強調された部屋「ガリバールーム」や藤井昌美さんのドレスがたくさん立ち現れているインスタレーション「内への丘」も気になったけど、わざとらしいというかあざといというか、気になるように見せてるのがわかる表現で、ちょっとな、と思った。
そんなこんなでこのでかい建物内に点在する作品たちを見歩きながら最上階。いよいよ「つたふ」へ。
12階の1室。照明も暗めに落とした中に現れる1.37m X 8.5mにも及ぶ大作。
「蔦」と聞くと壁に張り付くようなイメージだけど、笹倉さんの「つたふ」は宙に浮いた様な不思議な浮遊感があって、これは画像だけでは伝わらない感覚。来た甲斐があったというもの。やっぱり作品は生に限ると改めて思うのでありました。
この無数の線たちを一体どこから描き始めるんやろ、と始点を探してみようと思いましたが見つかるはずもなく。激しく絡みあう線から、儚くフェイドアウトするような線まで、今までの笹倉さんの積み上げてきた線たちが一気に放出されているよう。
「蔦」という具体的なイメージから出発しているものの、その蔦とはまた違った笹倉さんの線そのものになってるのが素晴らしかった。今回始めて生で拝見して、これまでの作品を逃したことを改めて悔しい思いでいっぱいになりました・・・泣
ところで、今回の展示に関して、笹倉さんのブログにて、激しく怒ってる様子が書かれていましたが、実際展示を見て、いくつかわかる部分もありました。
まず、作品の位置。こういう作品は、入って真正面にあるのが多分一番だと思うんですよ。入ってすぐ目に飛び込んでくる衝撃というのは大事ですからね。今回入り口から入って左横に展示されてるので、入った時に一瞬間があくんです。これがちょっと損をしているな、と。これはマドリッドにあるピカソの「ゲルニカ」も同様、実際見たことある人はわかると思いますが、あれ入って横の壁にあるんですよね。最初あまりに展示がそっけなさすぎて、下書きかと思いましたもん・・・。
そして、機能性しか重視していない展示室。まず作品の真横にドアがあるってどうよ!? おかげで笹倉さんの作品はまるで端に追いやられた形になって、ちょっとかわいそうでした。壁の真ん中に来るべきところなんですけどね、本来。このドアのせいで実現できてませんでした。
他にも色々あったそうですが、作品がいいだけに展示室の駄目さは勘弁していただきたいですね。
こういう県や市が運営している美術関係の施設ってホント美術に関して何もわかってないな、と思うことが多々あります。大体、なんなんですか、あの壁の汚さは。もう情けないとか通り過ぎて笑ってしまいました。どうして美術館の壁って一年に一回張り替えるか張り替えないかみたいな壁紙なんでしょう。それなら部分部分で補修できる壁の方がまだマシです。おかげで壁に釘もうたせない始末だし、呆れてものも言えませんよ。少なくともロンドンの美術館でこんな壁見たことなかったです。機能性ばかりを重視して、結局形だけの文化活動に収まっちゃってるんですよね。そんなことならもう何もしてくれるなと言いたくなります。
最初この建物見た時新しいし大きいし、地下の書店もすごい充実してて、凄いな、と思ってたんですけど上の展示室見てたらやっぱここもか、と落胆してしまいました。やっぱ根本から変えないと駄目ですね。でもまあ、こんな立派な建物がある分大阪よりマシか、とも思いました・・・トホホ。
バスでの帰路、高速を通ると壁には蔦が生い茂ってました。僕も蔦が好きで、蔦があると写真に収めたりするんですが、なんとなく蔦の生える場所って決まってるんです。それは駐車場や高速道路、または廃屋など、人が放ったらかしにしておく場所。要は奴らは隙さえあればどんどん増殖していくんです。そんな蔦たちを窓越しに眺めながら笹倉さんの作品を思い出しつつ帰路につきましたとさ。疲れたー。
この展覧会は今週日曜24日まで。名古屋に寄る機会がある方は是非!
明日土曜日には今回の出品作家を選出した選考委員によるシンポジウムもあるそう。
特に今年のヴェニス建築ビエンナーレのコミッショナー五十嵐太郎さんの話は興味深そうです。
番外。
せっかく来たので名古屋の建築をつぶしてきた。
ルイ・ヴィトン名古屋 by 青木淳

OPAQUE名古屋 by 妹島和世

共に銀座に同じ建築家の同じブランドの建物がありますね。
ヴィトンは相変わらずモアレファサード。ヴィトンのモアレファサードは色んな人がやってるけど、個人的にはそんな変わらんので誰がやったって同じじゃないのか、と暴力的なことを思いつつ、やっぱりハシリはこの青木淳なわけです。
オペークは夜がきれいだそうで、夜みたかった。でもなんかこのシンプルなファサードがどうだ!といわんばかりの男気たっぷりで道に面してるのがおもしろかった。
続いて坂茂のGC名古屋営業所。


歯医者さんの使う器具などを製造しているメーカーのビル。
正直上の丸い窓(?)とかかわいすぎやろ・・・と思ってしまいましたが、昨年できた銀座のスウォッチ同様坂さんお得意のガラスシャッターが魅力。実際開け閉めする現場をおさえました!っていうか、右の写真を撮ってる時に怪しまれて閉められたんやけどなッ!
しかし坂さんの建築を改めて見ていると、SANAAとはまた違った「透明性」に対する坂さんの哲学が読み取れます。SANAA建築は結構開けっぴろげに透明な印象があるんやけど、坂さんはガラスシャッターとかを作りながらも透明のイメージがあまりない。実際このビルなんか見てても中が見えるか見えないかのすれすれのライン。透明というものを一種の色として捉えているんじゃないかとも思える。まだまだ坂茂作品は見てみたいですね。
ところで、このGCですが、大阪にも営業所がありまして、こちらも坂さん建築です。
全然引きで撮れなかったのでわかりにくいですが写真を数点。
こちらはガラスファサードだけでなく隣につながる緑のファサードも印象的。
ってまあ行った時には枯れまくってましたけど・・・。


