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写真の美術×美術の写真@大阪市近代美術館(仮称)心斎橋展示室


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お詫びと訂正。
本記事におきまして、以下2点のご指摘を受けました。
・橋下府知事を橋本府知事と誤って表記している。
・大阪近美は「市立」なのでこの場合、府の問題というより市の問題ではないか。
まず、最初のご指摘は全くもって当方のミスですので、改めて訂正させていただきました。
2つ目に関して、僕は政治に疎いのでよくわからないのですが、だったら府はまったく関係ないんでしょうか?確かに市政によるところが大きいものの、やはり大阪市も大阪府の一部なわけで、って思ってしまうんですが・・・。なんにせよ、今裏金問題で湧く腐敗政治の大阪市ですので、この「近美問題」が決着するには時間がかかりそうです。平松さんにはがんばってほしいですが。
今回の記事は、大阪府知事選の翌日に書いたということもあり、時事性を優先して橋下さんに呼びかける形の記事となってます。上のご指摘はごもっともですが、記事の特色を優先してそのままでいきたいと思います。ですので以下の記事はその点も考慮して読んでいただければ幸いです。
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昨日最年少大阪府知事が誕生しました。
大阪は財政赤字が甚だしく、橋下さんはこれから地獄に立たされることになるでしょう。
そんな大阪の抱える数あまたある問題の1つとして大阪市近代美術館があります。
プロジェクト発足から10年以上。建物が建つ目処もつかぬままコレクションだけを確保し続けてます。今は心斎橋の東急ハンズの隣のビルの最上階に仮の展示室をもうけて、コレクションの展覧会を行っています。
そんな近代美術館が今写真美術に関するコレクション展を行ってます。
まあ、近く寄ったついでって感じで何の期待もせず観に行ってみました。
内容としては戦前からの写真表現から現代写真に至までを年代順に展示。
さすがにコレクションは確かにいいもの持ってます。
戦前の写真というのもおもしろかったし、80年代のもの派や植松奎二、90年代の石原友明、森村泰昌、やなぎみわなどもあり。杉本博司の海景シリーズの夜バージョンは闇に潜む水平線が何度見ても美しかった。
ただ、展覧会としては相変わらず凡庸。紹介って感じで見るのがちょうどいい感じ。僕みたいに色んな展覧会見てる人が見ても仕方のないです。キュレーションのかけらもない感じですから。
もう少しおもしろい展覧会できないんだろうか。せっかく心斎橋のビル、しかも最上階という美術館としては中々ありえない場所にあるんだから、そういった場所のコンテクストを活かすとか・・・まあ、そんなの期待するのは酷なんかな。
なんか、所詮展示室っていう主催者側の気持ちが伝わるんですよね。
もうこうなったら、開き直って現状に甘んじることなく妥協なき展覧会を行ってほしい。
しかし、果たしてこの美術館本当に必要なんでしょうか?
どうも僕には、府の抱える莫大な赤字を無視し、府民の血税を切り崩してまで建てる価値をこの美術館に見いだすのは中々困難なように思えてなりません。
一応中之島を予定地としてるんですが、もう既に中之島には国立国際美術館があるし、コレクションが相当かぶっている。もうこうなったら近代美術館のコレクションを国立国際に寄贈してしまえばいいのに、なんて思ってしまいます。もし、ゴッホ展やプーシキン美術館展などの、いわゆるおばちゃんが集まりそうな展覧会を近代美術館でやって、国立国際では現代美術のみをやってくれるならいいかな、とも思いますが、美術館としてはそういう美術展の方が動員数を稼げるのではずしたくはなさそうですしね。
この問題どう考えますか?橋下さん。

Serpentine Pavilion 2008

ロンドンのケンジントンパーク内にあるサーペンタインギャラリー。
毎夏ここでは3ヶ月程存在する仮設のカフェが世界の名だたる建築家によって建てられます。
ちなみに去年はオラファー・エリアソン。かつては伊東さんも手がけました。
そしてこの夏お目見えするパビリオンの建築家が先日発表されました。
フランク・ゲーリー。
いやはやどんなカフェがお目見えするのか。楽しみです。観に行けないけど。
下の写真は昨年訪れたビルバオ・グッゲンハイム

熊野古道なかへち美術館 by SANAA


18切符が1回分余っていたので、熊野古道へ。もちろん目的は世界遺産、ではなく建築。
安藤の木の殿堂や、イオ・ミン・ペイのMIHO MUSEUMも候補に挙ったけれど、前者は夏に行きたかったし、後者は冬閉まってるという体たらくぶりのため、同じく候補にあがったSANAAによる熊野古道なかへち美術館に決定しました。
それにしても長い道のりだった。電車を乗り継ぐこと4時間。そこからまたバスで1時間・・・。普通のバスなのにトイレ休憩があった笑 しかもそのバスが3時間に1本という脅威の事実。田舎ってすごいね。片道1350円もかかった。なんか18切符使って行った意味があんまなさそう。なんにせよバスのダイヤは行く際くれぐれも調べて行ってください。JR紀伊田辺駅から龍神バスで発心門王子行のバスに乗車。バスサイトはコチラ
そして着いても問題なのが駅に帰るバスも同様3時間に1本という現実・・・。
周りは本気で何もないです。僕はせっかくなので世界遺産の熊野古道歩いて時間潰しました。

さてそんな美術館。まずは外観。相変わらず彼ららしい透明感。
「NAKAHECHI ART SALON」という文字がガラスのファサードに転写されてます。


ざっと見渡しただけでは全体がどんな形かわからない。
中で美術館の模型写真が展示されてたので参考までに。手前がそう。


なんかこの形になるまで相当苦労した感じがしますね。
それもそのはず。依頼された際、美術館側から作品保護のため、展示室内に光を一切いれられないという条件を突きつけられたのです。SANAA建築に光は必須ですからね。そこでとったのが展示室を廊下でぐるっと囲むという方法でした。廊下には光が燦々と降り注ぎ、展示室には一切光が入らない。展示室は至って普通でしたね。
ちなみに今や世界中に美術館を建てまくってる彼らですが、この美術館が初の美術館建築ということもあり中々の戸惑いもあったようですね。
廊下にある休憩スペースみたいなのがかわいかった。


しかし残念だったのが、SANAA建築の宿命的なダメージが各所に点在してました。ちゃんとしたメンテナンスよろしくお願いします。。。






にしても冬によく合う建築だった。枯れた景色にこの透明感が美しい。こういうの好き。


世界遺産といえば、今年上野の西洋美術館も含む、世界7カ国、全23件のコルビュジエによる現存する建築全てを世界遺産登録しようという動きが本格化してますね。既に推薦決定もされて、今年の夏から秋にかけて現地調査が行われ、来年の7月に世界遺産の可否が決定されるという流れだそうです。昨年現代建築としては初めてシドニーのオペラハウスが世界遺産として登録されたばかりなので、可能性はかなり高そうです。そうなると僕は世界遺産に泊まったことになるのですね!すげー!詳しくはコチラ

Banksy @ ebay


なんとバンクシーの描いた壁画がebayに出品されてます!
出品者はこの壁のオーナー。只今20万ポンド(約500万円強)。
最終的には100万ポンド(2億円)ほどになると予想されてるそうです。。。
14日までの出品なので興味のある方はどうぞ。
ちなみに壁の撤去、移設代等は含まれていないのでご注意を。

昨年ロンドン市衛生局によって一カ所誤ってバンクシーの壁画が消されて、その壁のオーナーがかんかんになって怒ってましたが、ここまでの価値があるならうなずけますね。うちにも描いてほしい。。。

書院の美@金刀比羅宮


こんぴらさんで知られる金刀比羅宮に行って参りました!
目的はもちろん初詣、ではなく話題の展覧会「書院の美」でございます。
お寺として相当有名ですが、実は美の殿堂としてもとても名高い場所なのです。
今回普段は非公開の奥書院まで公開されるということで話題沸騰です。
「こんぴらさんに行くねん」と祖母に報告すると「それは大変やな。がんばりや」と励まされ、何のことかと思いきや、御本宮まで辿り着くのに785段もの階段が待っていたのです。いやー知らなんだ。しかも奥社まで行こうと思えば1368段も登るんだとか。。。大丈夫やろか。
そんな危惧もしつつも登り始めてみれば、会場は500段目にあるということが発覚し一安心。
あと285段で本宮やったけど、しんどいということでやめ。初詣ならず!
ってか初詣なんて365日毎日参ってる人こそ意味があるんであって、そんな正月だけ行ってちゃっかり願い事するなんて虫がよすぎますよ皆さん。それに初詣っていうのは願い事しちゃいけないんです。今年もよろしくお願いしますという挨拶に留めるもんなんです。これを意外にご存じない方が多い。僕は無宗教なので初詣なんてしません。生まれてこの方初詣なんて友達が行くからってんでついでに行ったくらい。あと合格祈願ぐらい。ってちゃっかり願ってんじゃねーか。
とまあ、話は本題「書院の美」に関して。

まずは高橋由一館
この展覧会に関係なく1度は訪れたかったのがこの館。
日本における油絵のパイオニア的存在。
今回見ていて、油絵を日本文化にしみ込ませようとした由一の苦心がうかがえ、なんだかじわっと感動しました。描かれてるモチーフも日本のものが多く、ふすま絵を油絵で描くなど様々な工夫が盛り込まれてました。油絵の道具がまだまだなかった時代にこの金刀比羅宮がサポートしたのです。そういったわけで、この金刀比羅宮には由一の作品のおよそ半分くらいが収められています。油絵をやってる方なら1度は訪れていただきたい場所です。有名な鮭の絵が見れなかったのは残念。

続いて表書院へ。
こちらには日本画界の巨匠円山応挙の作品が盛りだくさん。
通常はガラス張りにしか見れない空間が実際の畳に上がって鑑賞できるまたとない機会。
まずは「虎の間」。当時虎を実際に見たことがなかった応挙は、虎の毛皮と猫を観察して描いたといわれています。おかげで虎が勇ましいというより愛らしい猫っぽい。
山水の間では、描かれた滝からそのまま現実の庭の池につながっているという設定。そしてその池からまたふすま絵に回帰するという、現実と虚構が織り交ぜになった空間演出。日本では江戸時代にすでにシュールレアリズムが完成されていたのですね。
そして表書院最後を飾るのが邨田丹陵による「富士の間」。こちらは2部屋によって構成されており、まず「富士一の間」では富士山が薄い水墨画のように描かれていてとても美しい。裾野が180度部屋を取り囲んでいる。そして次の部屋「富士ニの間」では合戦の模様が描かれているんやけど、なんと、これはその裾野で起こっている実際の合戦の様子を描いているのだとか。時代も比較的新しいためか、色がとても綺麗。エメラルドグリーンのような色だとか、馬の描き方だとか。

そして普段非公開の奥書院
今回のメインでもある伊藤若冲による「花丸図」が公開されています。
これは200以上の花々がまるで図鑑のように部屋中に描かれているもの。
しかも中には枯れているものまであって、日本の美をうかがえます。
できれば、襖も閉めて中で堪能したかった。
今回一番感動したのが岸岱による「郡蝶図」。400種類以上の蝶が群れをなして飛んでいる様はとても美しい。
今回失われていた若冲の5羽の燕の絵も公開されてました。

さらに奥に進むと白書院
現在こちらでは田窪恭治さんが壁画制作に取り組んでいます。
田窪さんが選ばれたモチーフは椿。完成まであと3年ほどかかるそうですが、その頃にはこの書院に椿が満開に咲き乱れます。とちゅうで絵のタッチがかわってるのが気になったのですがあれはどうする予定なのでしょう。。。
また、神椿というカフェもオープンしていて、こちらの壁も田窪さんプロデュース。青で描かれた荒々しい群椿を有田焼で表現してこれも美しいです。ここでコーヒー飲んでたら普通に田窪さん現れてびっくりでした笑

今月末までの公開なのでまだの方は是非。詳細はこちら。
ちなみに以降三重県立美術館(4月26日~6月8日)、パリのフランス国立ギメ東洋美術館(10月15日~12月8日)へ巡回予定。本物に限りなく近い空間を再現して巡回されるとのことですが、やはり是非本物の空間で味わってほしいです。

さて、なんでこのお寺こんなにすごいものを持っているんでしょうか。
これは西洋でヴァチカンがサン・ピエトロ大聖堂にミケランジェロやラファエロに絵を描かせたのと同じように、日本でもお寺が画家に作品のコミッションをすることが珍しくなかったのです。そもそも美術館が日本に登場したのはせいぜい20世紀になってからのことですから、その役割をお寺が担っていたという事実もあります。
そしてこんぴらさんは江戸になってから建てられたものだったので、自由に色んなことをやれたのですね。当時のモダン画家応挙や若冲に頼んだのもこういう背景があってのこと。以降も由一をサポートしたり田窪さんに書院を頼んだり、とても柔軟な考えを持つお寺なのです。
今美術業界はマーケット熱で大盛り上がりです。作家はそれでお金が儲けられるという良い面もあるでしょうが、逆に表現に自由がきかなくなるという危険性もあります。どうしても顧客に合わせて制作してしまう作家も現れるでしょう。いわゆる「ウレ線」というやつです。しかしアートの魅力はやはり自由であることだと信じてやみません。20世紀になるまで、画家は個人のパトロンに支えられ、また縛られてきました。今有名なレンブラントやフェルメールだって、決して自由にやってきたわけではありません。顧客がいて、顧客の望むものを描き続けてきたのです。20世紀に入って、ようやくアーティストは本当の自由を獲得できたのです。しかし今、チャールズ・サーチやピノーのような大型コレクターが現れ、作家はまたパトロンとの関係を結ばなければ生きていけない時代に突入したかのようです。
個人パトロンというのはもちろん全部とは言いませんが、自分の力の象徴としてアートを買う場合もあります。税金対策なんてのもあるでしょう。こうしてアートが消費されていくのはアート好きにとって悲しくて仕方ありません。
「一緒にアートを作り上げていくんだ」という志をもったコレクターや、まさにこの寺のように文化作りに共に立ち向かっていけるパトロンが現れてくることを願ってやみません。

MONEY TALK @ 広島市現代美術館


気になっていた展覧会があった。
広島市現代美術館で行われている「マネートーク」展である。
今回別の件で広島に寄る機会があったので、いわばそのついでに見て来たのだけど、それが半端なくよかったって話。文句なしにはなまる展覧会の登場です。

ゲストキュレーターによる同館の収蔵品を使ったコレクション展。
過去にも同館は椹木野衣などの批評家にもゲストキュレーションを頼んでいる。
今回のキュレーターは窪田研二氏。
彼は特定の美術館に属さないインディペンデントキュレーターである。
彼の今まで企画した展覧会の中に僕が行きたくて行けなかった、2004年水戸芸術館で行われた「孤独な惑星-lonely planet-」展などがあり、実力派キュレーターをまた発見した感じで思わずにやっとしてしまった<キモイ
今までのどのコレクション展とも違うのがタイトル通り美術と金の問題を正面から扱っている点。
普通作品は時代別、コンセプト別、またはテーマ別なんてのもあるだろう。そういった順番で展示されている。しかし今回なんと、美術館が買い上げた値段順で展示されているのだ。
寄贈(0円)から始まり、最後は5千万以上のマンモス級に至るまで。
今まで美術とお金の問題はタブー視してほとんど扱われることがなかった。
どこか美術は崇高なもので、美術家は霞を食って生きてるなんて妄想も。
しかしお金なくして人間生きていけない。アーティストもまた然りである。
そのタブーに敢えて真っ向勝負を挑んだ窪田さんに拍手を送りたい。
そしてそれを受け入れたこの美術館も素晴らしい。
今回の企画は、館の外部の人間だからこそできたものだ。
しかしこうして具体的な値段や館の財政を示すことで、税金を払って間接的ながらもこの美術館を支えている市民の人々にも、活動内容を示すいい機会になったのではないだろうか。

さて具体的な展覧会内容。
まず、挨拶文の横に、館の作品購入に関する予算年表が示されている。
衝撃なのが、88年の開館時には7億円以上もあった購入予算が次の年には4分の1に激減。ついには2000年で0になっている。つまり21世紀に入ってから同館は作品を購入できていないという事実がここで浮かび上がる。現在の所蔵作品数が1400点なのに対し、開館前に集めた作品数は970展。つまり開館前の収集で、現在の収集作品数の約7割を収集しているという事実。またその前後から宝くじ収益金の助成を受けて受注制作という方法で作品を購入している。つまりギャラリーを通すのではなく、作家に直接制作を依頼して、少しでも安く購入するという試みである。工場に直接買い付けにいくみたいな感じ。しかしそれも2005年でストップしている。ここまで美術館が悲惨な状況になっているとは・・・。
たくさん予算を持っている私立美術館と違って、公立美術館は市の財政に大きく左右される。
この美術館だけではなく、全国の公立美術館はこれと似た様なものだろう。
バブルがはじけて以降、不景気の波は美術館をも襲っているのである。

次に目の前の壁にいくつかのテキストが書かれている。
今回の展覧会でもうひとつ特筆すべき点は、このテキストたちである。
様々な人々の芸術に関する言説がところどころに盛り込まれていて、「アートって何だろう?」ということもお金の問題と並行して考えられる仕組みになっている。
このテキスト群がすばらしくて、全部メモをとっておけばよかったと今更後悔している。
例えばボイスの作品の上に「芸術は理解される為に存在するのではない」というボイス自身の言葉や、村上隆の「お金をかせげなきゃ意味がない」的な発言の下に「妻や子、老いた母を苦労させても芸術を続けなければならない」的な言葉も。ドビュッシーの「芸術は美しい嘘である」というロマンチックなものから、「最大の敵は、彼の才能を褒め讃える友人である」といった深い言葉まで、もう名言の数々が作品の合間合間に絶妙なタイミングで入ってくる。あー、これテキスト集として売ってほしいです。

そして、このお金順というのがとてもおもしろい。
作品のキャプションに実際の購入金額が書かれているのがおかしくてたまらない。
寄贈のところにキース・ヘリングの遺作が展示されていた。学芸員さんのお話によると、これはオノヨーコが持っていたもので、ヘリングが生前、広島に壁画を描きたいと言い残していたことを受け、彼女の持っていたヘリングの遺作をこの美術館に寄贈していたのだとか。色んな裏話があるものです。
また、これはあくまで購入時の値段なので、今と全く違ってたりするのも妙。
例えば一番すごかったのが、杉本博司の劇場シリーズ。
5点で250万ほどで購入していたが、今や彼の作品は1枚数千万クラスである。
こないだのオークションではついに1億なんて金額も出た。良い買物しましたね。
あとウォーホールのマリリンモンローの作品。
10点組で1080万円。しかしこれも今や1枚1000万もするとか。
おもしろいのが、色によって人気不人気があって値段も違うとか。
ちなみに一番高かったのがステラの巨大ペインティングで7000万強。太っ腹です。
これらの値段表時が得た効果っていうのが、観客の真剣なまなざし。
値段を見て、また見方が変わるという下世話な感じがおもしろい。
美術がわからない人でも、お金の問題となると、いきなり身近に感じるよう。
前にテレビ関係者の方とお話する機会があって、その時ある番組で、普段美術を見ない様な人を美術館につれていって、まず普通に見てもらい、次にあるリクエストをしてもう一度見てもらったら、見る眼差しがより真剣になったとか。そのリクエストとは「あなたならどれを買いますか?」というもの。美術鑑賞ってどこか、自分の生活と関係ないって感じで離して見てしまうと思うんですよ。それがいきなり購入という現実を渡されて一気に身近になる感覚。美術も所詮商品ですからね。
海外では普通の人が花を買う様な感じでアート作品を買ったりする。学生の卒業展ではわりかし安価で購入できるので、ここぞとばかりにやってくる。日本にも早くこんな状況がくるといいなぁ。

こうした日本の公立美術館恐慌と裏腹に世界はアートバブルである。
昨年はデミアン・ハーストの作品が120億円で購入されたり、オークション史上最高額、アートフェアの総売上最高額更新など、お金のニュースが飛び交って、ちょっと食傷気味だったけど、この展覧会は本当におもしろかった。
予算はなくなったが、今持っている収蔵品でこれだけの展覧会ができる。
収蔵だけが美術館の役割ではないので、これからもいいもの見せ続けていってもらいたいです。
他の美術館でもこのような機会があれば是非やって欲しいものである。
今月29日まで。機会があれば是非!!

ちなみに同時にカバコフ展と西野達展が開催中。
カバコフは絵本展だし、西野さんのもイマイチやけど・・・。

ちなみに、同館は昨年の蔡國強のヒロシマ賞受賞を受け、今年末に彼の個展が開かれるという情報をキャッチしました。これは要チェックです

直島 再々訪

3度目の直島へ。
3度目ともなると、なんかコツみたいなのが掴めてさくさく回れるようになります。
今回の目的は2つ。
・内藤礼の家プロジェクトきんざの「このことを」。
・タレルのオープンスカイナイトプログラム。
どっちも予め予約も1ヶ月前からしていざ出陣。

まずは内藤礼のきんざ。
こちらは前回予約したにも関わらず大雨による損傷の補修とかで入れなかった。
今回3度目の正直という事でチャレンジ。
受付のおばあちゃんがとてもかわいい人だった。
こないだポールスさんが来たのよ!と言って、一緒に撮った写真がCasaに載ってるとかで見てみたら、ポールスさんではなく、ポール・スミスだった笑 おばあちゃんにとってはポール・スミスもポールス・ミスも同じなのだろう。
そして前回補修で入れなかったと言ったらその時の災害のお話もしてくださった。なんでも海の水が腰のところまで来て大変だったとか。おばあちゃんも生まれてからずっと直島に住んでるがそんなの初めてだったとか。たしかにきんざをよく見ると、柱の色は途中から変わっているし、随分な高さまで補修されている。幸い作品は無事だったそうだが。
そんな話も聞きつつ、時間が来て中へ。
内藤礼のインスタレーションはいつも1人しか同時に観る事ができない。
だから家プロジェクトの中でもこのきんざだけは予約がないと入れない。
1人15分までと決められていて、時間が来るとおばあちゃんが外から知らせてくれる。
僕はいつも観るのが人より早いので、15分もいらねぇやいと思ってたが15分過ごしてしまった。
とても神聖で、観れば観る程新しいことに気がつく。
それは床に置かれたビー玉だったり天井から吊り下がる糸だったり。
とてもささいなものが、彼女の絶妙な感覚で配置されている。
意外なのが、驚く程にシンメトリーに配されている点。
日本の文化っていうのは、ほとんどがアンシンメトリーである。
シンメトリーというのはあくまで西洋が築き上げて来た美の形なのだ。
今まで内藤礼の作品には日本的なものを感じていたのだけれど、大分見方が変わった。
日本家屋にシンメトリーに置かれたそれは一体何を表しているのかわからない。
しかし、もうそんなことどうでもええわ、って時間が経つ程思えてくる。
置かれた低い椅子に座って、彼女の作品を見ながら、静かな時間が流れる。
建物の下の部分が透明になっているので、通る人の足が見えたりする。
彼女の作品は多分、人々の感情を静かに呼び覚ます媒体のようなものなのかもしれない。
それ自体が作品というよりは、もっと鑑賞者に委ねられている部分が多い。
アートが宗教になりうる瞬間。僕はこういう宗教的な作品がとても好きだ。
与えられた15分はあっという間に過ぎ鑑賞終了。
また今度くる時是非体験したい。

色々回って時間が過ぎ、いよいよタレルの時間。
地中美術館閉館後、チケット売り場に集合し、再び中へ。
オープンスカイの中へ入るとブランケットが配られそれぞれ好きな場所に座る。
45分間、暮れなずむ空を見上げながら、光によって移り行く壁の色と楽しむプログラム。
実際最初空は明るいんやけど、終了時には真っ黒になっていた。
これがものすごくて、やはりタレルは神だと思った。
壁の色に合わせて空の色が変わる。
実際は変わってないのだけれど、目が勝手に色を変えているのだ。
ここからは完全に僕の仮説。間違ってたら激しくかっこわるい。
例えば、壁がピンク色に変色する時、空が緑がかって見える。
これは目が赤の補色である緑を勝手に見ようとする作用からきている。
そして壁が緑の時はその逆。空が紫がかって見える。
タレルの作品はまるで目の中まで操作されているような感覚に陥る。今回も然り。
家プロジェクトもオープンフィールドもここにあるすべての作品が神レベル。
今回ナイトプログラムを体験できて本当によかった。これは体験必須!
是非越後妻有にある光の家にも行ってみたい!

そんなこんなで3度目の直島体験終了。
本村アーカイブでは、新たに建つ西沢立衛による美術館の模型が展示されていた。
水滴をイメージした形の美術館。また直島の目玉が増えるようです。
そして、昨年発表されて話題になった、北川フラム氏による、瀬戸内国際芸術祭がこの直島を含め、瀬戸内海に浮かぶ8つの島で2010年開催されます!
まだまだこの島から目が離せません。

Marlene Dumas 'Broken White' @MIMOCA


四国は香川県にある丸亀市猪熊源一郎現代美術館に行ってきました。
目的は南アフリカ生まれのオランダ在住作家マルレーネ・デュマスの展覧会。
世界のペインティングブームの中でも、最も人気があると言っても過言ではない画家です。
今年はMoMAでの回顧展も決まっていて、ノリにのっている彼女。
その展覧会が、昨年東京都現代美術館で始まり、この丸亀まで巡回して来たのです。
会場に入ると、まず彼女の十八番の水彩による肖像画群が吹き抜けに展示されている。
さっそく彼女の作品が現れ期待も高まりながら3階の本会場へ。
正直思ってたより作品数が少なくてちょっと消化不良な感じやった。
最初のペインティングも彼女らしい人物画ではなかったのでスタートもなんかノリ切れず。
しかし順に追っていくにつれ、彼女の絵が醸し出す独特な不気味さがましてくる。
娼婦、骸骨、首吊り少女。
特に最後の部屋の死を醸し出していた部屋はとても異様な雰囲気だった。
モチーフも不気味だが、何故か彼女の絵画には物質感が感じられない。
会場全体を見渡すと彼女の絵がまるで重力を失い浮いているように感じる。
実際はもちろん壁にちゃんとかかっているんだけど、そういう風に感じてしまう。
美術館のチケット売り場近くで、彼女のドキュメント映像が流されているんだけど、その映像に映し出された彼女の制作行程にその浮遊感を解くヒントが隠されている気がした。彼女が作品を描く時、イーゼルに立てかけるのではなく、床に置いて描いている。大量の液体で絵の具を滲ますので、立てかければ色が垂れてしまうという理由からなのだが、その描き方は日本画に近い。彼女の絵が他の画家と違う雰囲気を持つのはこういった制作行程にもあるのかもしれない。そして僕が感じた浮遊感は、元々作品の出生が床に対して水平なのに、展示の段になって初めて垂直にかけられるからなのかもしれない。
作品数は少なかったものの、彼女の作品に亡霊のように囲まれる体験は貴重だった。
1月20日まで開催中。まだの方は是非。
ちなみにそのドキュメント映像結構長いです。

ショップで過去の図録2冊と今回の図録を買いあさった。
ここは良質な展覧会が頻繁にやってる。
この前もエルネスト・ネトだったし、昨年も須田悦弘の展覧会がやってて、観に行けず涙をのんだ。今回はその2つの図録を購入。年始福袋買えなかったので、ここで憂さ晴らし。散財散財。
この3冊を読んでいて、共通する名前が浮かんできました。
植松由佳。この美術館のキュレーターさんです。
今年はどんな展覧会を企画してくれるのか。楽しみでなりません。

岡山から丸亀に来る時、マリンライナーというのに乗るんですが、それが瀬戸内海を渡っていく時の眺めといったら美しい以外にありません。遠い場所ですが、その道のりも醍醐味のひとつです。
そしてこの美術館、思っきし駅前にあるのも特徴。駅前の美術館ってありそうでないのでその感覚も楽しいです。谷口吉生による建築も魅力。

ハイライト2008

あけましておめでとうございます。
昨年はたくさんの方々にこのブログを見ていただきありがとうございました。
今年もブログ名に恥じることなくばしばし観に行きたいと思っております。
ってことで、今の時点でわかっている注目美術イベントをご紹介。

2月9日-3月8日:名和晃平「TRSO」@nomart project space
2月9日-4月13日:川俣正「通路」@東京都現代美術館
2月16日-5月11日:宮島達男「Art in You」@水戸芸術館
4月26日-7月13日:英国美術の現在史 ターナー賞の歩み@森美術館
4月26日:十和田市現代美術館オープン
7月1日-9月15日:塩田千春「精神の呼吸」@国立国際美術館
7月20・27・31日:パリ国立オペラ「トリスタンとイゾルデ」@兵庫県立文化センター/Bunkamura
8月2日-10月26日:アネット・メサジェ@森美術館
9月13日-11月30日:横浜トリエンナーレ2008

今の所わかってるのはこれだけです。
美術展に関しては、多くの美術館が年間スケジュールを3月に発表するのでまだまだ出てくるはず。
森美術館の2つは私すでに見てますがどちらも素晴らしいのでおすすめです。
十和田市現代美術館は西沢立衛設計の建築に大物作家が常設で作品を設置するのも話題。
パリ国立オペラの舞台は、ビル・ヴィオラの映像がふんだんに使われてます。
そして、昨年は、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクト、ヴェニス・ビエンナーレとヨーロッパが世界のアートシーンをにぎわせましたが、今年はアジアの年です。日本でも横浜トリエンナーレや、まだ日程は発表されてませんが福岡アジアトリエンナーレが開幕。中国や韓国でも目玉ビエンナーレがスタート。シンガポールビエンナーレも今年です。
まあ、今年は国内にずっと留まる予定なので、日本のアートシーンをくまなく見ていきたいです。
ではでは本年もよろしくお願いします。

追伸:昨年の国立新でのスキン+ボーンズ展がロンドンのサマーセットハウスに巡回する事が発覚・・・遅せぇよ!!坂さんの移動美術館がロンドンに行かない事を祈る(ぉ
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生誕120年 安井仲治 @ 愛知県美術館

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大巻伸嗣―真空のゆらぎ @ 国立新美術館

・2023.11.03-2024.01.28
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倉俣史朗のデザイン――記憶のなかの小宇宙 @ 世田谷美術館

・2023.12.02-2024.02.04
「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸茂雄 @ 渋谷区立松濤美術館

・2023.11.09-2024.03.31
第14回上海ビエンナーレ @ 上海当代芸術博物館

・2024.01.11-03.10
フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築 @ パナソニック汐留美術館

・2024.02.06-04.07
中平卓馬展 @ 東京国立近代美術館

・2024.02.14-05.27
「マティス 自由なフォルム」@ 国立新美術館

・2024.03.15-06.09
横浜トリエンナーレ2023 @ 横浜美術館ほか

・2024.03.30-07.07
ブランクーシ 本質を象る @ アーティゾン美術館

・2024.04.24-09.01
シアスター・ゲイツ展 @ 森美術館

・2024.04.27-08.29
デ・キリコ展 @ 東京都美術館

・2024.09.25-2025.01.19
ルイーズ・ブルジョワ展 @ 森美術館

・2024.11.02-2025.02.09
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ―ピュシスについて @ アーティゾン美術館

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