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大垣美穂子「immortal moment」@ KEN NAKAHASHI / 手塚愛子「Dear Oblivion 親愛なる忘却へ」@ スパイラルガーデン

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昨年東京に出てきてすぐに初めて行ったKEN NAKAHASHI。
真っ暗な中にプラネタリウムのように光る空間。
光源は床に転がった人型の中から発せられてて、それが大垣美穂子の彫刻でした。
そこからこのギャラリーは展示が変わる度にほぼ通わせてもらってるお気に入りのギャラリー。
そんな大垣美穂子の個展がまた開催中です。
正直前述の彫刻にはあまり感心しませんでした。
その光の演出に心打たれることがなかったんですよね。
今回はどうだろうと思いつつ行ったのですが、今回は彫刻ではなくペインティング。
これがものすごく良かった。泣きそうになった。

去る3月、大垣さんのパートナーで、当時KEN NAKAHASHIで個展を開催中だった佐藤雅晴さんがこの世を去りました。
ずっと闘病生活を共にした大垣さん。
その個展の為に佐藤さんが絵を描き始める同じタイミングで大垣さんも絵を描き始めたそうです。
アクリル絵具で打たれた無数の点。
前回の彫刻と通づる部分はあるのですが、この点の一つ一つが物凄い覚悟を持って打たれてるように感じられて、心が動きました。
まるであらゆる感情をその点に込めてるような。
祈りのようでもあり、写経のようでもあり、瞑想のようでもあり、とても神聖なものを感じました。
あまり作家の背景と作品をごっちゃにしてしまうのは良くないと思いつつも、こうした繰り返しの作業を続けることで、大垣さんは自分を保っていたのではないかな、と想像してしまいました。
これまでも生と死をテーマに作品を作ってきた大垣さんだからこそ、この作業は本当に重い。
しかし出来上がった作品が悲しいほど美しいんですよ。
特に上の写真の馬の作品。崇高でした。
他にも手を描いた2点もものすごく感動させるものがありました。
線ではなく点で描かれたそれらのモチーフは、まるで生と死のあわいを描いているようでもあります。
そのまま点が解けて輪郭を失ってしまいそうな危ういモチーフたち。
それでも踏ん張って輪郭を保っている。
途方もないエネルギーを持った作品群です。ぜひ。9/21まで。詳しくはこちら



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続いてベルリン在住の手塚愛子さんの展覧会。
現在東京2箇所とドイツで同時開催中。
そのうちスパイラルの個展とMA2ギャラリーの個展に行ってきました。
スパイラルは2007年の展示以来で、当時の作品は実際には観てないのですが、吹き抜け空間をフルに使った大きな作品で、写真で見てとても印象的でした。
またあの大空間をどう使うのか楽しみにしていました。
行ったらちょうどアーティストトーク中で手塚さんが今回の展覧会の解説をされてました。
今回の展覧会は二つ大きなテーマがあって、一つはレンブラントの「夜警」をテーマにしたものと、もう一つは日本の近代化に着目したもの。
説明はこちらを読んでください。
正直これらの新作で僕はほとんど感動できませんでした。
あまりに背景を重視しすぎているというか、これまでの手塚さんの仕事が孕んでいた普遍性が失われている気がしてとても残念でした。
今回他にもこれまでのように織を解体したものがいくつか展示されてましたが、これがとてもいい。
無名の織物が解体されることで新たな生命を吹き込まれる様はとても美しく、今回のように改めて布を一から製作して解体するのとはコンテキストが全く違ってくると思います。
MA2の方もほとんどスパイラルと変わりないですが、オーガンジーの作品は良かったです。
とはいえ日本で手塚さんのこれほど大きな展示があるのは稀なので、ぜひ足を運んでみてください。
スパイラルは9/18まで。MA2は9/27までです。


この日はさらにスパイラルの近所の渋谷ストリームとワタリウムへ。
店のお客様でジュエリー作家のお二人がそれぞれ展示販売をされていました。
一人は「ててて」という展示会にて、itiitiというブランドを展開している田中典子さん。
下の写真のジュエリーなのですが、なんとい草でできてます!
熊本で製作されていて、熊本ならではのジュエリー。
もう一人はMalaNocheというブランドを展開している中田チサさん。
ワタリウムのon sundaysにて販売中です。
お二方ともそれぞれずっと憧れていた場所での展示だったそうです。
こういう瞬間に立ち会えるのは本当に嬉しい。
お二人ともおめでとうございました。今後のご活躍も楽しみにしております!

itiiti https://www.itiitiitiiti.com
MalaNoche http://malanoche.g.dgdg.jp

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あとついでに、ワタリウム裏にあるpejite青山さんで展示台を購入してしまいました。
以前買った地球儀を置く台をずっと探していたのですが巡り合ってしまった。。。
少し値は張りましたが、こういうのはご縁なので一度逃すと中々出会えないのです。
実際地球儀置いてみると、マジでぴったりサイズでびっくり。
脚の造形が面白いんです。ぜひお店で見てみてください。

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「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」/ クリスチャン・ボルタンスキー展 - Lifetime @ 国立新美術館

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2つの展覧会を観に国立新美術館へ。
1つは「話しているのは誰?」という、文学とアートを手掛かりにしたグループ展。
超絶ハイコンテクストな展示です。

最初の田村友一郎から飛ばしてます。
まず壁にはニューハンプシャー州のナンバープレートが展示されています。
ナンバープレートには州のスローガンである「LIVE FREE OR DIE」というメッセージが書かれていて、山の絵もプリントされています。
この山は地元で「オールド・マン・オブ・ザ・マウンテン」と呼ばれていて、岩の形がおじいさんに見えるとのこと。
更に進むとガラス越しに部屋が見えて、机の上にはファストフード店の模型が置かれている。
また進むと、今度はまたガラス越しに、今回の展示を作るために使った廃材やらダンボールやら、でこぼこのナンバープレートやらが置かれていて、まるで美術館のバックヤードのよう。
またまた進むと天井から吊るされた4台のテレビ画面にCとOが知恵の輪のようにつながったマークがぐるぐる回っていて(このマークは最後まで謎)、その下にはオールがたくさん並び、壁にはコーヒーとミルクとマドラーが写った写真が2枚展示され、それぞれミルクを入れる前と入れてかき混ぜた後の様子。
と、ここまで書き出してみたはいいけれど、全く伝わらないですよね笑
それぞれ「空目」や「聞き間違い」を表してるんだけど、かなり難解。
インスタレーションとしてはとても優れています。

続いてミヤギフトシの作品。
複数の写真と映像、音声で構成されたインスタレーション。
音声は、多分ミヤギさん本人と友人の会話。とても聞き取りづらいので、3つの画面に出てくる英語字幕を手掛かりに聞いてました。
これ、ミヤギさんが今年出した小説「ディスタント」を読んでいった方が理解が深まると思います。
今回の展覧会が文学xアートだったので、まさに自身の文学作品と絡めての展示だったんだろうけど、読んでないと正直なんのこっちゃかもしれません。展示室で読むのはきついけど、「ディスタント」を展示してても良かったんじゃないかな。。。
本の内容にも触れると、沖縄の離島に住んでいた主人公(ミヤギさん?)が、子供時代に双子と仲良くなり、その後本島に渡った主人公はその二人と疎遠になるんだけど、大人になって兄のジョシュに大阪のクラブで再会し一緒に飲んだ後、ジョシュはアメリカへ。主人公もアメリカに留学することになるんだけど結局ジョシュとは会わずじまい。
今回の展示は、当時大阪でジョシュに会った時に使っていたカメラと同じソヴィエト製のレンズで撮影した沖縄の写真と、ジョシュの弟との会話。
大阪でミヤギに会ったジョシュはアメリカに渡る前に沖縄に寄り、公園で弟に自身のセクシャリティをカミングアウトし、それを受けた弟の心情が語られます。
またミヤギは小説を出したことで両親にカミングアウトするべく帰ってきたが、結局原稿を母親に渡すだけで自身の口から言えなかったことを語る。
会話の中でも小説の中でも出てくる、ミヤギと双子3人の思い出の曲、ヴェートーベンの「ピアノソナタ第32番」のレコードが映像から流れ、また別の画面では弟がたどたどしくもその曲を演奏する。
今回は徹底して、自身の物語を紡いでいました。

そして続く小林エリカの展示が圧巻でした。
現在のチェコにあった聖ヨハヒムの谷から展示(物語)は始まります。
ここは銀の採掘で有名で、ここの銀で作られた貨幣は「ヨハヒムスターラー」と呼ばれ、これは現在のアメリカの貨幣ドル(ダラー)の語源だと言われています。
後に採掘場で黒光りする鉱石が採掘されるようになり、採掘場では坑夫達が原因不明の病にかかり、この石は「不幸の石(ビッチブレンド)」と呼ばれることになるが、実はこれはその後ウランと名付けられる物質だった。
このウランを気化させガラスに混ぜると紫外線で緑の蛍光色に発光することから、ヨーロッパ中でこのガラスが大流行するのだけれど、展示室にはそのガラスで作られたドルの形をしたオブジェが展示されています。
更に、ここから周知の通りウランは核爆弾へと使用されていくのだけれど、それとナチス政権下に開催されたベルリンオリンピックと、幻に終わった1940年の東京オリンピックの聖火をたどる物語へとつながっていきます。
聖火リレーは1936年のベルリン大会から採用されていて、この火はプロメテウスの炎の神話から発生しています。
展示では聖火リレーの炎と、プロメテウスの炎、そして人間が手に入れてしまった最大の炎をテーマに物語が丁寧に紡がれていて、展示も本当に美しい素晴らしいインスタレーションとなっています。
惜しむらくは、聖火を待ち望む女たちのイメージをイラストレーションで表現してしまったこと。
このイラストの癖が結構強くて、せっかくの物語のノイズになってしまってました。。。
イラスト、描きたかったのかな。。。
それはともかく今回の展覧会で白眉の展示でした。

その後、豊嶋康子、山城知佳子、北島敬三と続くのですが、最初の3方で繋いできたリレーが完全に断ち切れます。残念極まりない。
多分キュレーターが、このままでは観客が疲れてしまうと危惧したのかと邪推しちゃうほど。
豊嶋さんと北島さんは物語を観客に投げ出しちゃってるし、山城さんに関しては物語を意識しすぎて、超絶中途半端な映画みたいなものを作ってて、あまりに酷いので途中退場しました。無理。
最初の3方のような方向性で最後まで突っ走って欲しかった。他にもいくらでもいい作家いただろうに。
そもそももう田村さんから展示始まってる時点で観客は腹くくりますから。
観客をもっと信じてほしいな、と思いました。
ちなみに自分がキュレーターなら豊嶋さんの代わりに牛島光太郎、山城さんの代わりに荒木悠、北島さんの代わりに木村友紀を、と想像したりして。
とはいえ3方の展示見るだけでも価値はあるのでぜひ。11月11日まで。こちら


さて、ボルタンスキー。
周囲の評判があまりによくなくて、行きたくねー!と思いつつ、まあ観とくべきだろうとのことで、これを観るためだけに国立新美術館まで行くのも嫌なので、上の「話しているのは誰?」展と会期がかぶる8/28-9/2の5日間のうちに行きたかったのです。
で、感想は「そこまで悪くなかった」です。
前回庭園美術館で見た展示があまりにも酷くてもはやブログにも書いてないほどだったので、かなーりハードル低くしてたのが良かったのかも。
とはいえ初っ端の最初期に作られていた映像がとても良かったのです。
ポール・マッカーシーを思わせる超絶気持ち悪い映像で、そのうちの一つ「咳をする男」は咳どころか、口からなんか茶色い液体吐き散らかしてる映像で、驚きなのが1970年に大阪でテレビ放映されたと解説に書いてて、どういう経緯で!?とめっちゃ気になるんですが笑
「なめる男」もキモくて良かった。
とにかく最初期の小作品たちが中々いいのです。
「罠1970/71」という作品の解説が秀逸。

「1968年から72年にかけて、作家はとても孤独な生活を送り、こうした偏執的な作業をやり遂げたのだった。」


何があってんw
とツッコミどころ満載なのですが、こうした無自覚にガムシャラに作ってた時期の作品がとてもいいんです。
その後、大展示室で展開されてる、この作家を一気にスターダムに伸し上げた、写真に照明を当てた祭壇のような作品群「モニュメント」シリーズまでは本当に良かった。
特に配線の処理が本当に上手くて、唸りました。
新聞記事からランダムで死亡写真を選んでるのもすごい。
しかしこの展示室以降の作品はもはや惰性です。
「孤独な生活」からの跳ね返りなのか、もう自意識半端ない。
解説に一切触れられてないんだけど、「アニミタス(白)」の映像の前にある紙丸めたやつ何なの?
友達と自慰行為の産物かな?とか言ってたんだけどそれだったらすごい。キモいけど。
他は一切特筆すべき作品がないです。
作家の高田冬彦氏が呟いてたツイートがまさに言い当ててる気がします。



こないだの塩田千春展もそうなんだけど、空間が大きいとどうしてもスペクタクルを要求されますよね。
作家自身が作っているのか空間に作らされてるのか。
難しいけど、そこをブレずに作るのは確かに至難の業かもしれません。
まあでも見たことなかった初期作品を見られたので良かったです。


ちなみに順序としては、ボルタンスキーを先に見てたんだけど、この二つの展覧会の差がすごくて、改めて現代美術の奥深さを思い知りましたw

「美学校クロニクル1969-2019 51年目の現在」 @ 美学校

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みなさん、美学校って知ってますか?
僕もぼんやり名前を知ってるぐらいだったのですが、最近美学校出身者(講師は会田誠!)と知り合って、なんとなく興味が湧いてきて、そしたらちょうどが出てるってんで買ってみたわけです。

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僕の認識だと、Bゼミに並んで日本近現代美術史に出て来る歴史上の学校だったのですが、なんとまだ現役!今年で創立50周年という恐ろしい事実が!
本もその50周年を記念しての発行で、なんとその美学校で50周年記念展示をやってるとのこと。
こんな機会でもないとそんなとこ行けないので、行ってきました神保町。
そこは令和とは思えない昭和空間www

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やー、すごかった!ものすごく興奮しました!
なんてったって50年ですよ。歴史の厚みがすごい!
美学校のロゴは赤瀬川原平。
創立時の案内に書いてある講師陣の豪華さが異常。
中西夏之、赤瀬川原平、松沢宥、中村宏、菊畑茂久馬、小杉武久、澁澤龍彦、唐十郎、瀧口修造、土方巽、、、
嘘みたいな本当の話。
赤瀬川さんも捨てがたいけど、松沢宥の授業は受けてみたかったなぁ。。。
本にはこれらの講師陣の貴重な授業の様子などが書かれています。

「澁澤龍彦さんはすごい人気でした。当時はマイクを使わない上、ほとんど聞き取れない蚊の泣くような小さな声でしゃべるので、一生懸命耳を澄まさないと何を言っているのかわからないというような授業でした。それと、どの先生の時もそうですが、横にサントリーレッドとかのウイスキーとちっちゃいグラスが置いてあるんです。先生もだいたい緊張しているので、それを飲みながら話していました。特に澁澤先生は緊張しているように見えました。」

「(土方巽先生の授業は)1回か2回あったと思います。すごく面白い授業で、着流しみたいな格好で座って、わけがわからんことをおっしゃっていました。いまでも覚えているのは藁半紙を七輪でさっさと炙って醤油をつけて食べるんだって言っていて、ああそうですか、と思いました。そんな感じの授業でした。1回休講になったことがありましたけど、「今日は脳の調子が悪いので休講します。」というお知らせがあって、本人がその通りおっしゃったんでしょうけれど、ちょっと不思議な人でした。」

「美学校1969-2019 自由と実験のアカデメイア」 P122より


なんの脚色もなくこんな感じだったんだろうなぁと想像します笑
この美学校は、こうした現役の作家たちが教えてることが何と言っても特徴的。
そして、「美術学校」ではなく「美学校」であることも。
もちろん技術も教えるけれど、ここではもっと精神的な部分を教えて来る場なんだろうな、と想像します。
本当に豊かな空気が流れていました。
会期は8/25とこの記事上げてる当日までですが、間に合う人はぜひ!
歴史の空間に居られるだけで幸せでした。いけてよかった!
ちなみに廊下にあった美術手帖の蔵書はうちの店が勝ってましたw


ところで神保町。
学校のある場所もいいよなーと思う。
何と言っても古書店がひしめき合い、レコード屋もたくさん。
ディスクユニオンに行ったらずっと欲しかったMax Richterの「SLEEP」が売ってた!
しかもやすい!即買い!
これはトータル8時間に及ぶ壮大な音楽で、タイトルの通り、睡眠時に聞く音楽。
買ってから本当にこれかけながら寝てます。幸せ。
古本の収穫はなしでした。

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大山エンリコイサム個展「VIRAL」 @ 中村キース・へリング美術館

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山の日に山梨へ初訪。
久々の18きっぷ。
下諏訪ー上諏訪ー小渕沢ー甲府の旅。

下諏訪と甲府では建築を。
山梨文化会館 by 丹下健三 / 下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館 by 伊東豊雄
昔から見たかった丹下健三の山梨文化会館はやはり神でした。上まで登りたかった。。。
伊東豊雄の中期の作品はふーんって感じ。。。せんだい以前の公共建築はいまいちですね。

さて、今回の旅のメインはキース・ヘリング美術館。
前から存在は知ってましたが、キース・ヘリングに特に興味はないので行く機会もなく。
今回は特別展で大山エンリコイサム展がやってるのでいい機会だと思い行くことにしました。

大山さんは僕と同い年の1983年生まれ。
日本人とイタリア人のハーフで現在NY在住とのこと。
先月までポーラ美術館で個展やってたり、現在NYのビルでも巨大作品展示していたり大活躍中。
コムデギャルソンとのコラボも記憶に新しいし、今とてもキてる作家です。
ストリートアートのような作品ですが、一目見て大山の作品とわかるインパクトがあります。
ずっと気になってたけど生で見る機会がなかったので行こうと思い立ちました。

それにしても遠い。
小渕沢からさらにタクシー。
18キップで行ってるのにタクシー往復だけで4000円近いんですけど。
駅前からバス出して欲しい。。。

たどり着いた先は木々の生い茂る高級リゾート地感満載のポッシュエリア。
美術館の近くには同じ建築家によるホテルが。
中にも作品が展示されてるようだったので、宿泊客でもないけど見せていただきました。
しかしそれより何よりロビー奥にあったバーがヤバすぎた!
プレミアウイスキーの数々が並んだ壁。神々しすぎる。
勧められたけど車で来てるんでと嘘ついて逃れました笑
ちなみに一室4万ぐらいだそうです。

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それよかいい加減展覧会について。
前半はもちろんキース・ヘリングの展示。
僕、本当にこの作家に興味ないんです。ほとんどスルー。。。
そして後半が大山エンリコイサム展。

まずキースの写真のコラージュと大山のストロークのコラボレーションがエモすぎて泣きそう。
この展覧会の目玉って何と言っても二人の関係性だと思うんです。
僕はポーラではなくこっちに来た理由もそれにあって、ストリートとアートを難なく結んじゃってる時代を超えたこの二人の親和性は見事で、その二人が織りなす空気感が本当に素晴らしかった。
ストロークの点でもエッジは違いますが、完全に精神を引き継いでる。

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そして大画面の作品も本当に素晴らしいけど、僕は小品に目が釘付けになりました。
目の力がとても試される絵ですが、これはすごく欲しい。。。

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展覧会は11月17日まで。遠いですが行く価値はあると思います。こちら

ちなみにカタログ欲しかったけど4500円は流石に高い。。。
まだまだこれから大活躍するであろう作家なので、将来包括的な作品集が出たら欲しいな。
画集より先に彼の評論集が出てるみたいなので読んでみたいですね。こちら

サイモン・フジワラ「The Antoinette Effect」@ TARO NASU

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2ヶ月ぶりのアートの記事です。。。
観てはいるんですが書く気力が。。。昔はなんであんなに書けてたんだろう。

さて、そんな中で最も良かったのがタイトルのサイモン・フジワラ展です。
というか新しいタロウナスがめっちゃ良かった。
馬喰町から六本木のギャラリーが集まるピラミデビルの4階に移動。
前の地下ギャラリーはあまり好きじゃなくて、今回のは外光も入って気持ちいい空間。
同階にはコルビュジエやペリアンなどのモダニズム家具を扱うGALLERY SIGNも新たに入居。
広島を本拠地にしていて、ここが企画する家具展に足を運んでたので東京にギャラリーができたの嬉しい。
しかもタロウナスとゲストルームをシェアしてるのか、ペリアンらの椅子が並び、壁にリアム・ギリックの作品が掛かった部屋があってめちゃくちゃ気になりました。
それはそうと展覧会。

前回タロウナスでやった時は確か自分の母親と父親の馴れ初めであった帝国ホテルをテーマにしてたと思うんだけど、今回はタイトルが「アントワネット現象」で、これまでの個人史を扱った作品とはまた違った趣。
入ってすぐに気がつくのは香りです。
これは部屋の奥でラデュレの「マリー・アントワネット」という名前のアロマを焚いているせい。
嗅覚が導入になるってすごく素敵だなと思いました。
そして視覚に入ってくるのはヴェルサイユ宮殿の門のミニチュア模型。
奥には金の水滴モチーフがいくつも壁に貼り付けられて、手紙、金の大きなオブジェ、そしてマリー・アントワネットと思われる頭の頭部の模型。
さてはて何のこっちゃですが、ここはテキストを読まねば始まらない。
なのにテキストがどこにも置いてない。。。スタッフの方に尋ねるとテキスト出てきました。
なぜテキストを自由に取れるようにしてないんでしょう。。。テキスト必須の作品なのに。
気になりつつ、読んでると、これは2017年にブレゲンツ美術館で開催された個展「HOPE HOUSE」の続編ともいうべき展覧会で、その「HOPE HOUSE」とは、アンネ・フランクの家の模型がお土産として大ヒットしているという事実から端を発し、美術館の中に、その模型を大きくした家を建てた凄まじい展示。



今回はマリー・アントワネットの死がエンターテイメント化していく人々の欲望に焦点を当てていて、なんといってもアントワネットの頭部の模型は、実際マダム・タッソーで当時彼女のデスマスクとしてとても人気があったとか、金色の大きなオブジェは、当時彼女の首を刎ねたギロチンをモチーフにしたイヤリングが発売されてたとか、彼女の死がいかに民衆を熱狂させてたかがわかります。
が、それは今でも変わらないどころか、ネットやSNSの発達によってさらに強化されています。
フジワラの面白いのは、アンネの作品をオランダではなくオーストリアで、アントワネットの展示をフランスではなく日本で発表している点にもあると思います。
これまでの地域性の概念を全く無視していて、これこそ現代のどこにいても世界中の情報が入ってくる感覚をそのまま享受しているようでとても自然な態度だと思います。
にしても何で今回アントワネットなのか。
僕の勘ですが、アントワネットの享年37歳というのに関係しているかと思います。
というのも、それはサイモンの今の年齢でもあるからです。
テキストにはそういうことは書いてませんが、なんとなく。
サイモンの作品はとても難しいとは思いますが、読み込んでいく楽しさがあって、わずか10点とはいえ豊穣な世界が広がっていてとても満足できました。
明日(8/10)までですが、お時間あればぜひ。こちら
近くのcomplex665のタカ・イシイでは木村友紀展がやっており、同じく読み込み系なんですが、ちょっとネタ切れ?感がすごい。。。全く広がりのない世界でとても残念でした。


さて、六本木といえば今最も話題なのが森美術館でやってる塩田千春展でしょう。
下の森アーツセンターでやってるPIXAR展の影響もあり子供づれがたくさん。
平日でもチケット売り場めっちゃ混んでて、10分ほどは並びました。つら。
そして入ったら入ったですっかりインスタスポット。。。
写真撮影をかいくぐる様にして観なきゃいけないのでとても不快です。
とはいえ、もはや僕の中で塩田さんはほとんど響かない作家さんになってしまった。。。
どれ観ても魂ふるえないよ。。。
やっぱ読み解く楽しさがこの人の作品にはあまりないんですよね。
見た目のインパクトがすごいので、ビジュアルだけでお腹いっぱいになっちゃう。
多分彼女は今後まだまだ活躍するし、いずれは草間彌生を継ぐ女性作家になるとは思うけど、僕みたいなアートクラスタはあまり満足できないかもしれません。
とはいえインスタでもアートの裾野が広がるのはいいことなので、こういう作家さんがいるのは大事だと思います。
ところで、彼女の作品、写真映えしすぎる問題。実際より絶対写真の方がいい。
入り口の舟とかも実際見ると小さい印象だし。
唯一驚いたのが、枠の中にドレスが2体収まってる「時空の反射」という作品で、中に鏡が仕込んであるんだけど、何周しても構造がわからなかった。。。鏡は確実にあるのにどういう風に収まってるのか全くわからない。
鏡で2対に見えるのと実際に2対あるってのも面白かった。

それよか、ミュージアムショップ抜けた先でやってる高田冬彦展に魂がふるえた!
トータル1時間弱ありますが、全部観るのをお勧めします。
笑えるんだけど、ものすごく深い哀愁が漂う映像作品郡。
まだ若いのに、どうしてこんなことに笑 必見!
どちらも10/27まで。
どうせだったら9/21からバスキア展も森アーツセンターで始まるので、両方みれる時に行けばいいかと。

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他ここ最近観た展示リスト。
川北ゆう Be still @ 日本橋高島屋
本多康司写真展 @ poubelle
佐藤雅晴 I touch Dream @ KEN NAKAHASHI
今村文展 @ SHISEIDO GALLERY
“Robert Morris − Jiro Takamatsu & Robert Morris from the 1970’s” @ Yumiko Chiba Associates
ジュリアン・オピー @ 東京オペラシティアートギャラリー
松延総司 "See the Shades" @ HAGIWARA PROJECTS
塩田千春 @ KENJI TAKI GALLERY
小泉明郎展「Dreamscapegoatfuck」 @ 無人島プロダクション
伊庭靖子展 まなざしのあわい @ 東京都美術館


ユミコチバのモリスと高松次郎のドローイングは驚異的だった。
特に高松次郎。
世界的にはモリスの方が断然有名だけど、今回のドローイングは完全に高松次郎の凄さに驚く。
世界はもっと高松を知るべき!!
どちらも手を使ったドローイングなんだけど、本当にかっこいい
前期で高松次郎のドローイングはなかったけど、8/31までやってます。(8/11-19休み)
近くで塩田千春、松延総司、ジュリアン・オピーもやってるのでぜひ。オピーは3分で観終わっちゃった。。。


無人島は清澄白河から錦糸町に移転第一弾。
倉庫みたいな巨大空間で初のVR体験。
小泉さんが今までやってきたことと、VRの親和性がすごい。
彼の作品のキーワードの一つに「憑依」ってのがあると思うんだけど、その憑依をまさか観客が味わえるなんて。
VRの中の人物と同じ動きをする場面があって、本当に感覚が重なる体感があった。
すごく不思議な体験でした。
10月のあいちトリエンナーレ企画の新作も予約済み!
ちなみにこの無人島の作品も要予約です。ぜひ。8/31まで。予約ページはこちら


そして伊庭さん。
ずっと絵画を超えて触感にまで触れそうな作品を描いてきた伊庭さんですが、新作ではついに触感を超えて、触れられそうで触れられないという、まさに「あわい」を描いていて、ここまできたかと思わず唸りました。
最後の版画と映像は正直よくわかりませんでしたが、新作絵画郡がとにかく驚異的。
10/9までやってるのでぜひ。インタビューはこちら

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ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ @ DIC川村記念美術館

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平成が終わる前に観覧記事。
4月に観に行ったやつ羅列。

展覧会
ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ @ DIC川村記念美術館
志賀理江子「ヒューマン・スプリング」@ 東京都写真美術館
荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ @ 資生堂ギャラリー

映画
「マックイーン モードの反逆児」
「ROMA」
「新宿タイガー」
「ハイ・ライフ」
「ザ・バニシング 消失」

舞台
「毛皮のマリー」

なんか映画をやたら観てますね。
今月からお店が始まったけど案外支障もなく色々見れてます。
まずは展覧会。

何と言ってもコーネル。
川村記念美術館は遠いのであまり行きたくないのだけど笑
内容は行った甲斐があって素晴らしかった。
タイトルにもあるようにコラージュとモンタージュがメインなのだけど、それでも箱の作品も50点と充実の内容。
冒頭のコラージュは面白かった。
箱に至る前にコラージュで力を鍛えていたんだなぁと思わせる内容。
本当にセンスの塊。
箱50点がずらりと並ぶ様は圧巻。
どれも素晴らしい。。。欲しい。。。
あとはデュシャンとの手紙なんかも超貴重!
最後の映像はよくわからなかった。。。
久々のロスコルームも泣きました。
ニューマンルームがトゥオンブリールームになってたけど中途半端感。。。
敷地内はツツジや八重桜が咲いててGWでもお花見が出来ました^^
コーネル展は6月16日まで。

志賀理江子展は中身言っちゃうとネタバレになっちゃうから言えないけど、もっと広い空間で見たかった。
写真がボロボロになるだろうけど、野外のだだっ広い草原とか海岸とかでも良さそう。
写真美術館だとちょっとやっぱ狭かった。
上の階でやってる「写真の起源 英国」も中々面白かった。5月6日まで。
次の宮本隆司展も楽しみ。

荒木悠は期待はずれ。個展よりグループ展で生きる珍しいタイプかも。


今月見た映画は全体的に当たり多し。
マックイーンは期待してたけど期待を上回る内容。
最後は号泣してしまった。。。
マックイーンの貴重な映像や家族や周囲の証言などはもちろん、映像も美しく、ナイマンの音楽も最高。サントラ買っちゃった。
伝説となった1999SSのショーの舞台袖で頭抱えて感動してる無邪気なマックイーンが泣ける。


「ROMA」はNetflixで話題になったアルフォンソ・キュアロン監督作。
冒頭のオープニングシーンで心鷲掴みにされました。
映画が始まらない始まり。
ソフィア・コッポラの「Somewher」もそんな始まりかたで好き。
白黒の映像が本当に美しいし、緻密に計算されたカメラワークも素晴らしい。
惜しむらくは上映時間が長すぎること。
自分がここだろ!ってとこで終わることは稀だけど、今回は3回も肩透かし。
こういう映画は90分ぐらいにまとめてほしい。
にしてもなんでタイトル「ROMA」なん?

「新宿タイガー」は観に行こうか迷った末に観に行って大正解。
ミスター新宿と言っても過言ではない「タイガー」さん。
新宿で見たことない人の方が少ないんじゃないかな。
それほど見た目のインパクトがすごい。真ピンクの出立にタイガーマスク。。。
上映15分ほどであっさりマスク脱いだの笑ったw
見た目とは裏腹にめっちゃ明るいおっちゃん。御齢69歳。
もう50年ぐらいこの格好で新宿をうろついてる。
彼を追うと自ずと新宿の歴史に繋がって、新宿好きとしては見逃せないシーンがいくつか。
特に彼がよく通ってるゴールデン街の元青線の現場を見られたのは嬉しかった。
映画館出て歩いたら即効タイガーさん目撃したw

「ハイ・ライフ」はオラファーがアート監修してるってので観に行ったけどイマイチ。
「2001年宇宙の旅」の劣化版みたいでした。。。

「ザ・バニシング」は1988年のオランダ映画でなぜか今更日本初公開。
キューブリックも震撼したというサイコサスペンス。
脚本もカメラワークもめっちゃうまい。最後は確かに震撼した。
犯人役の人の存在感がめっちゃいい。
最後、地面を舐めるようなカメラワークは本当に怖かった。。。
なんで今まで公開されてなかったんだろう。。。素晴らしかったです。


最後に舞台。
近年樹木希林に市原悦子に訃報が多いので、美輪様がお元気なうちに。。。と思って。不謹慎ごめんなさい。
とは言え実際見るとあと20年ぐらい出来んじゃね?ってぐらい元気w
寺山修司の舞台だけど、前半は完全に美輪さんの趣味。食傷。。。
後半不安になりながら観てたけど、しっかり寺山ワールドになっててよかった。
今まで見た寺山の舞台で一番よかったかも。
美輪様、これからも元気に舞台にお立ちくださいませ!


来月は怒涛の舞台三昧!
令和も宜しくお願い致します!

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「ソフィ カル ─ 限局性激痛」 @ 原美術館

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気づけば1月半ほど更新せず野放しになってました。。。月日が早い。
この間も色々見てました。
中でも2月はソフィ・カル月間かというほどにソフィ・カルが東京を席巻。
原美術館に小柳、ペロタン、そして渋谷の街頭ビジョン。
まずは原美術館。

1999年の展示の再現ってことで、どうなんかな、と思いつつ行ってきました。
当時の展示は観てないので、まあ僕にとっては新作。
これがまた素晴らしかった。
彼女が1984年に奨学金を得て初来日した時の日々と、その後の失恋という彼女お得意の私的ドキュメントなんだけど、まあ見せ方がうまい。うますぎる。
1階では日本に来ることになった経緯からスタート。
なんでも当時「最も行きたくなかった国」だそうで笑
詳しくはインタビューに載ってます。こちら
行きたくないのでなんとか遠回りして飛行機ではなくシベリア鉄道で日本へ。
この電車の中の出来事も1日1日綴られます。
壁には写真とテキストが入った額が交互に並べられていて、額の大きさはバラバラなんだけど、底辺が揃えられているので展示としてものすごく美しい。
全部で90日以上あるんだけど、どれも見逃せないぐらいの説得力。
写真には「--DAYS TO UNHAPPINESS(不幸まであと--日)というスタンプが押されていて、その後に起きる悲劇を予感させつつ、順に見ていくとその日々が迫ってくる感じもすごい。
最後は0日になり、それは恋人との別れで幕を閉じるのだけれど、ここからどう展開していくのだろうと思いつつ2階へ。
最初の小部屋では、その悲劇の元となった電話を受け取るホテルの部屋が再現されてて、次の部屋へ行くと、彼女の悲劇と他人の悲劇が交互に展示されている。
どうやら「自分が悲劇を語ること」と「他人の悲劇を聞くこと」によって、傷がどんどん癒されていく様が現れているようで、これって本当に人間の本質だな、と思う。
他人の悲劇で自分を癒すなんてとても卑しいとは思うけれど、そういうことってある。
24時間テレビが「感動ポルノ」なんて言われるのに似てる。
中にはうわぁ、っていう辛いのもあったりする。
面白いのが、自分の悲劇も他人に話すことによってどんどん変化していって、最後は「語るまでもない瑣末なこと」になってるので笑った。
これまたうまいなぁ、と思うのが、テキストが全部刺繍で書かれていて、後半にいくにつれて、カルのテキストが最初黒地に白(銀?)糸だったのが、黒地に黒になって読むのも困難になっていくやり方。うまい。
こうして悲劇は瑣末な出来事になりました、ちゃんちゃんで本当に見事だった。
ところで原美術館、今年で閉館と思い込んでる人が多いみたいだけど、来年末だからね。
この展示も読む展示なので、混みすぎるとかなり辛いものになる。。。
行った時は最初のところで渋滞は起こってたけど、そこまでじゃなかった。3/28まで。会期終了間際はまた混みそうなのでご注意を。こちら

続いてペロタンの展示。これがまたうまかった。びっくり。
母親、父親、猫の死についてのドキュメントで、いつもの写真とテキストなんだけど、最初の「C ki」から度肝抜かれました。。。
額の中にはWifiのマークと父親の写真、そして吹出しに「C ki」の文字。
これはショートメッセージの画面を表してて、父親が送った謎のメッセージ(誤送信?)みたい。
額の中であのスマホ画面をこれほど美しく表すなんて。。。すごい。
奥の部屋の猫の死を悼んだ作品も素晴らしかった。
彼女の十八番でもあるコラボレーションで音楽家たちに猫のための曲を作ってもらってレコードにしてるのは流石にやり過ぎかとは思いましたが笑
この展示の中で最もすごいと思ったのが柱に展示されてる2点。
この柱の使い方が絶妙で、特にガラスの壁面側の方は素晴らしい。
この2点に関してはライトボックスになってて、テキストしかないのかと思いきや、一瞬だけボックスが光って中の写真が浮かび上がるんだけど、それ以外は黒地が鏡面になって、鑑賞者がテキスト上に映ることになる。さらにバックがガラスの壁面なので外の風景とかも写り込んでとても複雑な表情になってしまう。これはうまかった。
小柳の方はちょっとどうかな、っていう展示だった。
写真に全部布がかけられてて、鑑賞者が自分でめくるという、やり方は面白いのだけど、その先の写真とテキストに対してそのやり方が合ってるのかは大分疑問でした。

最後に本当に素晴らしかったのが渋谷での街頭ビジョン。
2/3から9までの一週間の深夜0時から1時までソフィ・カルの代表作でもある「海を見る」がジャックしました。
こんなクソ寒い時期の深夜って嫌がらせかよ、と思いつつ見に行っちゃいました。こんなことが出来るのも東京に住んでるおかげ。ありがたや。
「海を見る」は海に囲まれながら海をまだ見たことのないトルコの人を海に連れていって生まれて初めて海を見た瞬間を捉えるという映像。
4つの街頭ビジョンに1人ずつ映し出されていて、深夜の渋谷の喧騒の中に潮騒が響き渡る様はもう言葉にならないぐらい美しかった。。。寒かったけどひたすら見てられました。
ソフィ・カルなんて知らない人が大半だったとは思うけど、明らかにいつもと違う映像にたくさんの人が見入っていて、もうその光景も美しかった。
美術館とか目的持って観に来てる人たちじゃなくて、たまたまそこに居合わせた人たちが同じ映像を観てるってのがなんだかものすごいいい体験でした。行ってよかった。。。

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街灯ビジジョンと言えば、昔池田亮司がNYのタイムズスクエアでやってたやつが凄すぎました。観てみたい!




インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」@ 埼玉県立近代美術館
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埼玉かぁ、と思いつつ調べたらそこまで遠くなかったので行ってきました。
五十嵐太郎監修の建築展なので、まあハズレではないだろうとの見立て。
結果的には建築展としてはかなりいい展覧会だったと思います。
当時「アンビルト」という一つのジャンルにすらなった建築がありました。
磯崎新(プリツカーおめでとう!)が昔「建築の解体」という本で紹介していたアーキグラムやハンス・ホライン、セドリック・プライス、そしてその後のザハやリベスキンドなど、建てられない建築。
そんなものにどんな価値があるのかと問われそうですが、これらの建築は明らかに建築の可能性を広げてきたと思います。彼らの夢想がなければ建築はここまで面白くなっただろうか、と。
実際展覧会冒頭のタトリンが掲げた理想の建物「第三インターナショナル」は、もう冒頭にふさわしすぎるアンビルトの極北。これが最初に目に入った時点でいい展覧会だと確信しました。
その後もマレーヴィッチの建築や、アーキグラム、メタボリズムなど、戦前戦後のスター建築ムーブメントのオンパレードで楽しすぎました。
しかし今や建築技術は飛躍的に進歩し、もはやほとんどのものが建ってしまう時代。
ザハなんかはむしろ建てられなかった時代の方が面白かったんじゃないかという気がしてきます。
最後に五十嵐さんの熱が伝わるほどにザハの廃案になった国立競技場の展示がありましたが、僕はあれが廃案になってとことんホッとしてる人です。あんなの恥ずかしくて後世に残せないですよ。とは言え隈研吾のやつもどうかと思いますが。。。SANAAで通って欲しかった。。。
ザハは個人的には最初の方のヴィトラの消防ステーションあたりが極地であとは下り坂でしかなかったように思います。
リベスキンドやコープ・ヒンメルブラウなんかも実際に見てもほとんど感動がないです。
そんな「可能な世界」で、どんな建築が「可能」なのか。
そこで登場するのがOMAでありSANAAであり石上純也なのかもしれません。
彼らの建築は、形だけでなく、しっかりの人の本能に向き合って作ってる人たち。
建築ってアートとかと違って衣食住に入ってるし、服につぐ第三の皮膚と言われるぐらいだから、もっと人にコミットしていかないといけないんだと思います。
これからの建築も楽しみにさせてくれる展覧会でした。
最後の方の会田誠と山口晃による都庁と日本橋の案も面白かった。埼玉は3/24までで、その後新潟、広島、大阪と回ります。

ところでここの美術館、謎に名作椅子が多くて楽しかった。
常設展も独特で、特に瑛九愛が強すぎて、一部屋明かりを観客が調光できる謎の部屋とかあって笑った。
「可能」だった黒川紀章の建築がゴミすぎて展覧会のアイロニーになってたのは偶然か。
そういや巡回先の広島も黒川紀章だし、国立国際もシーザー・ペリのゴミ建築。。。

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アルヴァ・アアルト もうひとつの自然 @ 東京ステーションギャラリー
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ダメな建築展の典型みたいだった。。。
もうほとんど覚えてないけど、やはり実物が見られる家具の展示は素晴らしかった。
アンティークになったstool60が9つスタッキングされてるのとかめっちゃ欲しかった。4/14まで。


六本木クロッシング2019展:つないでみる @ 森美術館
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六本木クロッシングは2010年の「芸術は可能か?」が素晴らしすぎて、あとはキュレーションと言えるのか曖昧だし、日本人しか出ないし、なんだかなぁと思いつつ観に行きました。
ここ数年足が遠のき気味なのもあるけど、本当に知らない作家がいっぱいいるんだなぁと思いました。
とはいえ、知らない作家でわ!ってなる展示ってやっぱりほとんどなくて、わ!ってなるのは知ってる作家ばかり。。。保守的になってきているのか。。。
以下わ!ってなった作品たち。

青野文昭:前から知ってるけど、何度見てもすごい。
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花岡伸宏:マーク・マンダースっぽくなってきた。昔はもっとぶっ飛んでたけど今の方が好き。
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川久保ジョイ:為替のグラフはともかく、壁を削る行為が面白い。
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佐藤雅晴:先日KEN NAKAHASHIで見たばかり。彼の作品はどこか「怖さ」がある。
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土屋信子・ヒスロム:安定感。
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5/26まで。次の塩田千春展が楽しみ!

起点としての80年代 @ 静岡市美術館

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関西への帰省途中で静岡に途中下車。新幹線で途中下車は初めてで新鮮でした。
目的は静岡市美術館で開催中の「起点としての80年代」。
金沢、高松と巡回して最後の静岡展です。
県立美術館は行ったことあったんですが市美は初訪問でした。
こんなに駅前にあるなんて。。。丸亀と東京ステーションギャラリーに次ぐ近さでは。
奇しくも今ちょうど80年代美術を再考する展覧会が3つ開催中です。
一つはこの展覧会で、もう一つは後述する国立国際美術館の「ニュー・ウェイブ」展、そして熊本市現代美術館で村上隆がキュレーションしてる「バブルラップ」展。
最後の「バブルラップ」は80年代と銘打ってるわけではないけど、まあバブル期に焦点を当ててるので80年代と言っちゃっても過言ではないでしょう。こちらに詳しいレポートが載ってます。
話は逸れますが、去年あたりから熊本現美が面白いです。
巡回のない独自企画がほとんどで、チェルフィッチュや上海アートシーンなんかは純粋に観たかったなぁと。逆に金沢が巡回展がほとんどでめっきり面白くなくなってしまいました。。。
閑話休題。
80年代って、前衛の70年代とサブカルの90年代に挟まれて、世間はバブルで浮かれて文化はないがしろにされてたイメージがあって、実際70年代90年代と比べると言説も少ないように思えます。
自分は80年代生まれなので、80年代もっと知りたい欲もありつつ、でも実際面白くなさそうってのが現実で、この機会なので観ておこうと思い静岡までやってきた次第。
ちなみにこの展覧会は80年代生まれは割引で観られます!
でまあ、内容なんですが、作品は正直とても面白いものではないんだけど、展示構成があまりに素晴らしくて感動しました。
やっぱ展示構成大事。作品が面白くなくても展示でかなりポイントは持っていけます。
今回の展示は、展示室の特徴もあるんだろうけど、シームレスに繋がってるんですよ。
作家でかっちり区切られてる感じがしなくて、流れるように観ていけるし、その流れがとっても気持ちよかった。
最初の金沢なんかは部屋がくっきり分かれてるからまた同じ展覧会でも大分印象が変わると思う。
作品面白くないってバッサリ斬っちゃってますけど、岡崎乾次郎、諏訪直樹、辰野登恵子、今村源、舟越桂、日比野克彦、川俣正、藤本由紀夫、宮島達男、松井智恵、石原友明、大竹伸朗、森村泰昌。。。と限りなく豪華。まさに80年代ベストアルバム。
でもやっぱり80年代のノリってとっても苦手。
なんだかあまりにも具体的というか、抽象性が薄いというか、まあその反動みたいなものもあるんだろうけど、今見たらダサいものが多かったりして。。。
展示があまりによかったので、カタログも買おうかと思いましたが、作品個別で見るとやっぱり苦手なのでやめました。。。でもとにかく展示を見るだけでも価値があります。3月24日まで。こちら
同時に「Shizubi Project 7 アーカイヴ/1980年代-静岡」というのもやってます。
展覧会に合わせて、80年代に静岡で開催された3つのプロジェクトに焦点を当てていて、小さな部屋の展示ながら、資料もたくさんでとっても見応えがあります。初訪問の美術館でしたが、とてもしっかり企画が組まれていて好感の持てる美術館でした。

対照的なのが国立国際美術館。
会期ギリギリ最終日に滑り込んだ「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」展でしたが、まあひどかった。。。
何がひどいって、80年から89年までに発表された作品をただただ発表年順に並べただけという、キュレーションもクソもなく、カタログみたいな展覧会。
「起点としての80年代」の展示があまりに素晴らしかっただけに失笑ものでした。
案の定酷評されてるみたいで、福永信さんの記事が辛辣ですが一番当たってます。
この展示見たら80年代って。。。ってなります。辛たん。
この展覧会は巡回がなかったので、頑張って観に行ったんですが、どうした国立国際!って感じで我が故郷大阪を代表する美術館としてショックの念を禁じえません。。。


ちなみに静岡ですが、もし「起点としての80年代」を観に行かれる予定のある方は是非2月10日以降で。
というのも、その日から静岡県立美術館「1968年」展が巡回してくるからです。
あと、芹沢銈介美術館で開催中の「世界の仮面と衣装」展もおすすめ。
途中登呂遺跡を通りながらのアプローチもなかなか楽しいです。
ランチは静岡駅前の清水港でマグロ丼をぜひ!絶品です!

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小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家vol.15 @ 東京都写真美術館

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写美へ。(TOP MUSEUMなんて死んでも言わない)
いつも写美は並行して2つ3つ展示をやってますが、今回は珍しくどれも気になる展示。

まずは3Fの「建築x写真 ここのみに在る光」
ダゲレオタイプに始まり、アジェ、石元泰博の「桂」、宮本隆司の「九龍城砦」、細江英公の「ガウディの宇宙」、柴田敏雄、 二川幸夫、奈良原一高、、、と、これでもかという著名建築写真のオンパレード。これはすごい。ベストアルバム的な内容で酔いしれました。そうそうベッヒャー夫妻まであったんだった。これに杉本博司があれば完璧だったけどそこまで言うまいという素晴らしい内容でした。

お目当ては2Fの「小さいながらもたしかなこと」
この企画は2002年から毎年日本の新進作家を紹介する企画。
今回の担当学芸員の伊藤貴弘さんは1986年生まれとお若い方。
選ばれた5人に共通して言えるのは、写真の物質感だと思います。
特に前述の3Fの展示を見た後だとその差異が特に際立ちます。
ただプリントした写真を展示するのではなくて、今やこれだけインスタだので画像が氾濫してる中で、敢えて作品として提示する意味を意識して作られてるな、という印象。
ファインアートとして写真を撮る現在の作家は特にそのことを意識していないと本当にまずいと思う。
今回この5人は見事にそれを意識されていて見ていてとても気持ちが良かった。
少し脱線ですが、最近ティルマンスがオペラの美術を担当しました。こちら
こういう舞台美術って大体がインスタレーション作家や彫刻家など、もともと空間を扱う作家が手がけることが多いですが、彼は写真というメディアを使ってこれまでも空間を作ってきたからこそ成せる技なんでしょうね。
さらに脱線というかこの流れで地下のマイケル・ケンナの写真は本当に悪例だと思う。
見ていて全然時代についていってないというか、これならインスタでよくない?ってなりました。
ひたすら並べられるただただ美しい白黒写真に辟易してしまった。。。絵葉書でした。
というわけで戻って2F。
もう一つ面白いのは、5人の中にヘテロ男性がいないこと。
別にジェンダーで気にしてみる必要はないんだけれど、特に出品してる男性2人はゲイで、あとは女性。
これって笠原美智子さんの影響なのかな、と勘ぐってみたりしそうになるんだけど、その笠原さんが1968年展やアジアに目覚めたら展に女性の出品があまりにも少ないと仰ってたこととは真逆の事態が起こっていて、これも時代なのかな、と思うとちょっと面白かったり。
で、内容ですが、全体を通して素晴らしかったと思います。
特に森栄喜さんとミヤギフトシさんにはやられました。
森さんは血のつながりや家族をテーマに作品を作られていますが、今ちょうど新宿3丁目にあるKEN NAKAHASHIでも展示をされていて、その「Letter to My Son」という新作が素晴らしいんですよ。
美術館では寒冷紗みたいな布に投影されてますが、写真の本質をついてる気がする。
というのも、一人の青年を撮ってる映像なんですが、一つのシーンにつき長くとも5秒も満たないようなシークエンスが続くんだけど、その眼差しみたいなものがぐんぐん流れ込んできて泣きそうになる。
写真って基本的に近しい人を撮るものだと思うんだけど、写真に撮る対象に向ける眼差しって基本的に愛おしさみたいなものが含まれていて、写真は瞬間を切り取るものではなくて、その愛おしさの時間みたいなものが詰め込まれてるものだと思う。
撮るよ撮るよー、もうちょっと右、ハイ、チーズっていう流れも写真に入ってると思うんです。
その感覚が見事に映像になってて、会ったこともない青年が愛おしくなってしまう。
家族を演じた「Family Regained」シリーズも愛おしいんだけど、「Letter to My Son」はさらに愛おしさの濃度が濃い。それはタイトルにもあるようにまるで自分の息子に宛てた手紙のように、本当に大事な出来事なんだな、と思います。
そしてミヤギさん。
展示がかっこよすぎる。なんなんですかあれ。
暗闇の中に浮かぶ薄暗い男たちの肖像写真。
さらに奥へ行くと写真と同じ配置で浮かぶ写真を撮ってる時の映像。
この作品は、対象となる男性の部屋に行って、夜、暗い中で窓から入る光だけで撮るというもの。
暗い中で撮るので、シャッター時間を長めに取らないと撮れなくて、その間対象は動いてはいけない。
その沈黙が鑑賞空間に染み込んでいて、物凄く心地がいい。
沈黙を共有するってすごい親密な時間だと思う。
ミヤギさんの作品は前から好きですが、改めてすごい作家だと思いました。
写美の展示は3つとも来年の1月27日まで。


今月見た他の展示一覧。

松江泰治「gazetteer」@ TARO NASU
絵と、  vol.4 千葉正也 @ gallery αM
細江英公「芸術家たちの肖像」@ Galerie LIBRAIRIE6
民藝 MINGEI -Another Kind of Art @ 21_21 DESIGN SIGHT
桑山忠明 @ Taka Ishii Gallery
小野祐次 Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌 @ Shugo Arts
冨井大裕「線を借りる」@ void+
終わりのむこうへ : 廃墟の美術史 @ 松濤美術館

なんとなく写真多め。
松江さんの細密な写真にも驚愕したけど、何と言っても細江英公。
大変失礼なんだけど、まだご存命だって知らなかった。。。
オールスターの肖像がこれでもかってぐらい写ってて笑った。
恵比寿にあるギャラリーで、写美ついでに寄ったんだけど、こちらもまた知らなくて、シュルレアリズムを中心に結構マニアックな本も売ってたり中々面白いので恵比寿来たらまた寄りたい。
冨井さんの作品もまた面白くて、服のパターンを使って彫刻を作るという方法の可視化も面白いし、展示方法も展示代にアンバランスに載ってて、多分アンソニー・カロを意識してるんだろうなぁと読めるのもいい。
廃墟展は期待ハズレ。。。廃墟っていうか遺跡。。。

ギャラリーじゃないけど、六本木のギャラリー群を見る前に立ち寄った、青山ブックセンター六本木の跡地にできた「文喫」が面白かった。
「本と出会うための本屋。」を謳っていて、入場料が1500円かかるんだけど、コーヒーとお茶は飲み放題で、滞在制限時間もなくて、売ってる本を自由に閲覧できることができる本屋、というか施設。
本屋で本が売れなくなった時代の新たな形だと思いました。
つまり、買ってもらったらラッキーだけど、その前に手堅く入場料で稼ごうと。
そこにカレーやらケーキなんかもあるのでついでに飲食でもお金落としてもらおうと。
客としても、ここで実際に本をとって中身を見られるので、正直ここで見てネットでポチるのもあり。
特に洋書はネットだと半額近い値段で買えるのでそうならざるを得ないと思う。
ネットだと実際には見られないので、相互補完的な利用ができるなら1500円は高くないかと。
キャッチフレーズに全く嘘がないのが気持ちいいと思います。
僕もブックカフェ的なものをやろうとしてるので、中々参考になりました。
すでに人気で入場規制までかかってるみたいなので、その辺のオペレーションをうまくしないと問題だろうけど、六本木に用事があるなら寄ってみて損はない場所だと思います。

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1968年 激動の時代の芸術 @ 千葉市美術館

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千葉・・・馴れない京成線に乗ったら乗り過ごしたりして行き帰り右往左往しつつ到着。
そこまでして観に来たのが「1968年激動の時代の芸術」展。
いっそこの後の巡回先の静岡で観ようかとも思いましたが、やはり観れる時に観ておこうと。

1968年。
パリの五月革命、プラハの春、ベトナム戦争。。。
この年は枚挙に遑がないほど世界中で事件が勃発していました。
戦後、皆が復興し理想郷に向けて走り出したはいいものの、理想郷のメッキが剥がれ始めたのがこの辺りなのでしょう。いわばパラダイムシフトの時期がこの1968年に当たります。
日本では全共闘が大学をバリ封したり、新宿騒乱もこの年にあったり荒れ狂った時代なのです。
この「熱狂」を知らない僕にとって、少し憧れの年でもあります。
もちろん当時にいたらいたで辟易した可能性大だけど、それでも少しは味わってみたかった。
そんな時代の「味見」をさせてもらえるのがこの展覧会です。
実際想像以上にボリューミーで大満足の展覧会でした!!
ちなみに内容的には1968年のみならず、1966年から1970年までの芸術の流れを示しています。

まず初っ端の東松照明や森山大道の白黒写真からやられた。
これは1968年10月21日に勃発した新宿騒乱を捉えた粒子の荒い写真たち。
この時代の新宿は本当に熱かった。
西口には西口広場があり、東口にはグリーンハウス。
花園神社では唐十郎の状況劇場、風月堂は文化人の坩堝。
あぁ、新宿。
今ではすっかり変わってしまったけれど、そんな地霊の息づく新宿が大好きだし、お店をこの地に出したいと思ったのもこれが理由。
歌舞伎町、ゴールデン街、新宿二丁目、紀伊国屋書店。
今だって十分カオスなんだけどね。
ちなみにこの展覧会にはなぜか出てませんでしたが、当時の新宿を知る資料として大島渚の「新宿泥棒日記」(1969) があります。映画としてはどうなのって感じですが、冒頭から唐十郎が出てきたり、主演が横尾忠則だったり(!)、状況劇場や新宿騒乱の様子、当時の紀伊国屋などかつての新宿がたくさん登場します。



それから1969年に公開された松本俊夫の「薔薇の葬列」。
ピーターのデビュー作でも知られますが、何気にゼロ次元や粟津潔も出てきます。




あと脱線だけど、最近三橋順子さんが出した「新宿 「性なる街」の歴史地理」が最高に面白かった!
江戸時代の内藤新宿の様子から新宿遊郭、赤線、新宿二丁目へと移り変わる流れが緻密な調査により浮かび上がってくる名著。新宿好きにはたまらない一冊です!
ちなみに前述の「薔薇の葬列」に出てくるバーの名前が「ジュネ」で、三橋先生が昔働いておられたお店もジュネなんだけどたまたまかな?

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閑話休題。

それにしてもこの時代の日本のカルチャーは凄まじい。
美術にはハイレッドセンターがいたし、デザインには粟津潔に横尾忠則、演劇には唐十郎に寺山修司、文学には三島由紀夫に安部公房がいて、建築は磯崎新らメタボリズム運動真っ只中。
美術批評も瀧口修造もいれば御三家(中原佑介、針生一郎、東野芳明)がいて、石子順造や宮川淳まで。
さらにこれらの人たちがジャンルを横断しながらコラボしまくっていた時代。
椹木野衣は各ジャンルの未熟さ(悪い場所)故というけれど、とは言えこの交配は刺激的。
「空間から環境へ」(1966)、「トリックス・アンド・ヴィジョン」(1968)、「人間と物質」(1970)等伝説的展覧会も開催。
他にも読売アンデパンダン、千円札裁判に美共闘など、国家(社会)と美術が繋がっていた時代。(好む好まざる関わらず)
本当にこの時代に生まれてなかったのが悔やまれる。
とは言え、こうして後から客観的に見ることでまとまってるけど実際はもっとカオスだったんだろうなぁ。
このカオスは1970年の万博で終わってしまいます。
前衛を葬り去った万博。
しかしこの万博さえも、やはりこの「熱狂」の頂点として今から見れば美しいのです。
実際この万博は言わずもがな国家総動員で練り上げた壮大な祭であり、そこには岡本太郎に丹下健三、実験工房に具体他一流の芸術家までも動員され、この時代の極点として相応しい祭典となりました。行きたかったなぁ。。。
そんな中、前衛外に現れたのが「もの派」。
1968年の10月、神戸須磨離宮公園現代彫刻展で、関根伸夫が「位相ー大地」を発表したことをきっかけに、ものそのもの、手の否定を主軸にした作品が増殖します。
これらが万博後も隆盛を極めたのは、皮肉なことに美術というジャンル内に留まったことが大きいのかもしれません。
「前衛」は、その言葉通り、社会や国家に対してのカウンターたる使命を帯びているのに対して、もの派にはそういう十字架がないのです。
ここから美術は、他ジャンルとあまり交わることなく独立化していくのですが、やっぱり刺激が足りない。。。
こうして展覧会を一望していて思うのが二人の人物の絶大なる存在感。
赤瀬川原平と高松次郎です。
最初から最後まで必ず登場する二人はやっぱり他の作家とは一線を画しているように思います。
赤瀬川さんは一人インターメディアやっちゃってるのでまさに「前衛」を体現するような人ですが、高松さんはずーーっと美術をやってるのがすごい。ハイレッドセンターは確かに赤瀬川色が強いけれど、読売アンデパンダンから影の絵画まで、ひたすら「虚」と向かい合って制作してる姿がかっこよすぎる。長生きしてたらどうなってんたんだろうと想像せずにはいられません。展覧会途中に出てくる自身が壁画を担当した新宿二丁目にあった「サパークラブ・カッサドール」でグラス片手にソファーに腰掛ける高松さんがイケメンすぎます!

そんなこんなで本当に素晴らしい展覧会でした。
千葉市美術館での展示は終わってしまいましたが、今後北九州市美術館(2018.12.01-2019.01.27)と静岡県立美術館(2019.02.10-03.24)に巡回するのでまだの方は是非!
ちなみに静岡では来年1月5日から「起点としての80年代」展も静岡市美術館でやるのでセットで観るのがいいかと。僕は年明けにこっちだけでも観に行けたらなという感じ。
カタログも2000円で凄まじいボリューム。資料的価値はもちろん冒頭の水沼啓和氏の文章や、ゼロ次元やハイレッドセンターの記録写真でも知られる羽永光利氏のご子息羽永太郎さんの文章もグッときます。
惜しむらくは英語訳がないこと。。。英語はやっぱり必要です。

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ところで、この展示でもキーパーソンになってた赤瀬川原平の未発表作品が国分寺にある丘の上APT/兒嶋画廊というところで12月9日まで開催中です。
ここ、よく知らなかったんですが、元々洋画家の児島善三郎氏のアトリエ跡地に建てられたそうで、建築家は赤瀬川さんとも所縁の深い藤森照信氏。
住宅地の中に突然現れる様子のおかしい建物笑
展覧会の内容は、1971年に限定200部だけ出版した本「あいまいな海」の原画が展示されてます。
赤瀬川さんってすごく不思議で、彼の作るものってどこかオリジナリティを避けてる感があって、実際作品見てもピンとこないんですよね。
そもそも「千円札」の頃からも、「模型作り」と言っていたように、トマソンにせよカメラのデッサンにせよ、ひたすら何かを模してる印象。
今回の原画も、1968年展に出てた漫画もどこかで見たことあるようなタッチ。
内容としては確かに赤瀬川原平なんだけど、パッと見て赤瀬川さんと言えるタッチって中々ない気がする。
とはいえ場所としてもとても気持ちいいしオススメです。こちら

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その他の展示。
「田根剛 未来の記憶」@ オペラシティギャラリー
今最も注目されてる建築家といっても過言ではないけれど、どうも好きになれない建築家…前半にあるエストニア博物館の藤井光による映像見てたらわかるけど、内部が綺麗すぎる。考古学といいながら、それが反映されてるのはせいぜい外部のみで内部に及んでいない。

主観主義写真における後藤敬一郎 @ スタジオ35分
この写真ギャラリーは隣にバーも併設されててとっても好きな場所。特に主観主義写真の再発見に力を入れてて、今回もその一環。主観主義写真は主に50年代に起こった写真の動きなんだけど、あまり顧みられることもなくきてしまっていて、実際当時のフィルムがなくなってたりして、再評価されるのは急務。今後美術館での展示やまとまった写真集の出版など動きが気になるところです。

川辺ナホ『Save for the Noon / 昼のために』 @ WAITINGROOM
元々川辺さんの作品って政治的だったっけ?って思うほど今回は政治的。
ベルリンの壁の崩壊以前の東西ドイツの話が背景にあるみたい。
とはいえ見た目がポップなので見ただけではわからないかも。その背景必要なのかな?

加納俊輔「ピンク・シャドウ」@ Maki Fine Arts
単調な展示。それを目指してるとは思うけどもう数シリーズ欲しかった。

齋木克裕|朝食の前に夢を語るように @ Sprout Curation
すいません、何のこっちゃわからず感想すら出ません。。。

安喜万佐子展 暁の石/沈黙の水鏡 @ アートコンプレックスセンター東京・B1ホール

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昨日(11/1)より四ツ谷にあるアートコンプレックスセンターで安喜万佐子展が始まりました。
この施設、住宅街の中に突然現れるお城みたいな建物でビビります笑
その地下に巨大空間(約100坪!) があります。
そんじょそこらの作家じゃ埋められない空間。。。
安喜さんは4年ほど前にも展示されてて、その時も広いな、と思いましたが、今回は搬入のお手伝いをさせていただいたので、まだ何も展示されてない空間を見た時の絶望感たるや笑
最終的には二日でなんと60点近い作品を展示しました!

安喜さんは僕の大学の先輩にあたりますが、卒業後に展覧会をご一緒させていただいたりして、語りつくせぬ程お世話になっており、今回展示のお手伝いさせて頂けるのはとてもありがたかったです。
展示に関していえば、今回照明がすごいです。
美術館でもたくさんお仕事されてる竹下誠司さんが担当されていて、プロってすごい!と改めて。。。
とっても勉強になりました。
今後美術館でも照明もっと気にして見てみたいなと思います。

さて、展覧会。
本当に盛りだくさんで、語りつくせないんですが。。。
まず入ってすぐの映像作家前田真二郎さんとのプロジェクションマッピングコラボがものすごいです。
金箔の松林図に波や雪が投射されてるんですが、無限の奥行きを感じる。
椅子が置いてあって、本当にいつまででも眺められます。
寒い日に窓から雪が降ってる冬の海を見ているような。
この「風景」や「窓」の関係は、安喜さんが数年来取り組んでらっしゃる主題です。
彼女の描く絵画はそのほとんどが所謂「風景画」です。
テンペラや岩絵具といった和洋の古典技法を用いながら、あらゆる「風景」を画面に落とし込みます。
しかしそれは果たして一言で「風景」と言えるような代物ではなく、むしろ「光景」といった方がしっくりくるのかもしれません。
彼女の作品はしっかり画面と対峙しないと見えてきません。
まるで明るいところから暗いところに入った時の暗順応に近いものがあります。
それは、彼女が対象そのものを描いていないからだと思います。
対象を光として細分化して、一つ一つ丁寧に色彩を置いていくのです。
金箔の絵画に関しても、描かれる対象は「空」(void)として残されます。
図と地の関係が反転していて、例えば松林図だと本来画題にもなってる松林はキャンバス地のまま残され、背景が金箔で覆われていることで松林が「白い影」として顕れるのですが、さらに先のプロジェクションマッピングの松林図に関しては、途中で急に描かれた松もあったり、金箔ではなく銀箔が貼られていたりして、何がなんやらわからなくなってしまうのです。
奥の部屋の大画面もすごい「光景」群。
本当に光に覆われるような感覚に襲われます。
そんな彼女が最近になって発表し始めた作品に「影の絵」というシリーズがあります。
刺繍枠に絹本を貼って、そこに描画して、最終的にそこに光を当てることで壁に絵画の影が投影されます。
僕はこれまで安喜さんの作品を見てきて、ついにここまで来たのか!と驚愕しました。
一人の作家をずっと追って見てるとたまにこういうことが起こります。
人生を懸けてものごとを突き詰めていくと辿り着ける境地みたいなのが垣間見えるんです。
物故作家だとカタログを時系列に見ながらなるほどなるほど、とその進化をたどれますが、今を生きてる作家さんはその途上をリアルタイムで見られるんです。これほどエキサイティングなことはありません。
ゴームリーが霧の作品を作った時や、石内都がフリーダ・カーロを撮った時もそうでした。
それが今回体験できました。
もちろんこの「影の絵」は発展途上だと思います。
まだまだできることがたくさんありそう。
もうそのことを勝手に想像するだけでワクワクします。
展覧会は11月18日まで。ぜひ!こちら
明日11月3日にはオープニングパーティーもあるみたいなので興味ある方は行ってみてください。僕も行きます!


さて、そんな安喜さん。
本日より僕のカフェで始まる「空間孝」で彼女の作品を展示させていただきます!
前田真二郎さんとのコラボレーションの映像作品です。合わせてどうぞ!
2011年に開催された僕も参加した「風景の逆照射」展の冊子もお配りします。

A'holic pop up cAfe
東京都新宿区新宿5-10-5 プログレス新宿5階
http://aholic.tokyo
13:00-18:00(l.o.17:30)

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内海聖史「あらゆる時間」@ GALLERIE ANDO

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内海聖史さん。ずっと追いかけてる作家さんですが、個展は久々に拝見しました。
そしてその久々の鑑賞はすごい体験だった。。。
なんせ、作品が見えないんだもの!
内海さん、何度かこのギャラリーで展示されてますが、毎度度肝抜くことしますね。
スペースの小ささを逆に利用して実験場にしている感じ。
今回の展示、具体的には、全部の作品がアクリルのボックスに入って展示されてるんです。
これがまた曲者で、アクリルのほとんどが色付きで、中には不透明なものもあり、そんなのに作品が入ってると言われてもなんだか化かされてるみたいな気分。。。
中にどういう作品が入ってるかみたいなファイルが見られるんだけど、本当に??みたいな不思議な感覚になりましたとも。
見えてる作品も、カラーアクリルのおかげで実際の作品の色味と全く違うし。。。
作品を鑑賞するとは何ぞやっていう根源的な問や、これを購入したら箱を開けるんだろうか等々なんだか物凄く色んなことを考えてしまいました。
それはそうと、ファイルを見ていたら表に出てない作品があって、「三千世界」と言われる5cm角の小さな作品を見せていただけることに。
これに関しては値段が手に届く範囲。。。買いました。
ついにギャラリーで作品を買ってしまった!!!
今お店の展示にと友人から作品買ったりしてたけど、ギャラリーでは初。
初の作品が内海さんというのはとても嬉しい。
というか内海作品が家にあるだなんてとっても贅沢!
5cm角でも凄まじい密度なので作品としての強度もあります。大満足。大事にします。

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さらに上野駅でも展示されてると聞いたので観にいってきました。
相変わらず絵画の可能性をズンズン拡張している。
内海さんの絵画自体ももちろん好きだけど、その向き合い方がなんといっても好き。
今回の展示のインタビューでのこの答えがすごい好きです。

「僕は表現の中で自分を発信するのではなくて、絵の中で自分をどれだけ消せるかということでやっています。僕のタッチというより人のタッチ、人間の総体の感覚みたいな感じで制作したい。僕には自分が素晴らしいセンスを持って生まれたという思いがなく、凡庸な自分を消していった方がいいものが出来ると何となく考えています。僕だからこの表現が出来たというより、ガラスだからこうなった、絵の具だからこうなったという形にしたい。何なら僕のこと忘れちゃっていいよ、と。僕ではなく絵だけ見てくれればいい、と。」

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前述の村上さんも内海さんも網膜では追いつけない程の「超網膜的絵画」だと思います。
絵画って基本的静的なメディアだけど、こんなにも動的になれるんだという可能性を教えてくれます。


最近見た展覧会ギャラリー編。

薬師川千晴展 @ 画廊くにまつ青山
カフェにも展示させてもらった後輩の薬師川さんの東京初個展。展示としては大人し過ぎたかな。

名和晃平「Biomatrix」@ SCAI THE BATHHOUSE
久々にこれぞ名和晃平!という展示。シリコンオイルの作品はさすがですね。人のオブジェはよくわかんないけど、ベルベットの抽象的半立体の作品は面白かった。案の定ベルベット作品二つとも売れてました。

井原信次 「MEYOU」@ KEN NAKAHASHI
笑えるぐらい超写実。現実というより写真寄り。でもリヒターのようなフォトペインティングとも違ってその先の内容が気になってしまう絵画(実際いろんな背景がある)それにしても現代のSNS時代に写真を元に描かれた写実絵画を改めて画像になって見るっていう体験はメタが過ぎて何が何やらわからなくなりますね。

村上友晴展― ひかり、降りそそぐ @ 目黒区美術館

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久々に作品の前で涙が出た。
この感覚、本当に久しぶり。。。
村上友晴展、想像の遥か上をいく凄まじい展覧会。
今年の2月に京都で見て以来ですが、美術館で、これほどの作品数が揃うのは奇跡。
いつも美術館の常設などで1点とかで凄まじい存在感放ってますが、これだけ揃うと威力がすごい。
ロスコやニューマンの系譜を見事に継承する「崇高な」絵画たち。
こういう感覚、今のソーシャルエンゲージドアートだのリレーショナルアートだの「先端」から見ると古臭いかもしれんけど、僕はこの「崇高」が大好物。
2階の階段上がってすぐの部屋は、そういった「崇高」なペインティングが並ぶ。
ボコボコした表面も好きですが、僕はむしろマットなんだけど何層にも塗り重ねられた作品が好き。
黒の上の赤とか本当に美しすぎてこの部屋だけで何周もしてしまった。
さらに次の部屋では「イコン」という黒い小さな絵画とそこに集う使徒のように「十字架の道」の白い14枚の作品の織りなす空気は異常。
もう展示がうますぎ。
入り口からその横一列に並んだ様が少しずつ見えていくのが本当に鳥肌もの。
「十字架の道」は版画の技術で真ん中に正方形の窪みを作って、そこをニードルで削るというもはや絵画ではないし、むしろ絵の具を足す作業とは真逆の紙を物理的に削ることでイメージを作り上げていく。
14枚とも表情が少しずつ違う。
網膜をフル活動させないと見えないこれらの画面。
写真では中々再現が難しいんだろうけど、網膜だと一瞬しか切り取れない歯がゆさ。
もう本当に目の奥に焼き付けたいと熱心に見つめるんだけど、中々難しい。
ちょっと監視の人たちが羨ましかった。ずっとずっと作品の前に対峙したかった。
できることなら作品の前に椅子置いて欲しかったなぁ。
椅子あったら何時間でも見ていられたと思う。
今年一番素晴らしい展覧会でした。12/6まで。こちら
ちなみにカタログは今月末納品だそうです。僕は予約注文してきました。


さて、芸術の秋だからか展覧会が目白押し過ぎて都内中駆け巡りました。
とはいえ、都内に住んでるってやっぱり素晴らしい。。。噛み締めております。
ということで今月観た展示は以下ざっくり。(美術館のみ)

ピエール・ボナール展 @ 国立新美術館
オルセーからの貸し出しなんだけど、正直あんまいいの持ってねぇなぁというのが感想。ロシアで観たボナールは格段に素晴らしかったので、結構良作はフランス国外にありそう。

カタストロフと美術のちから展 @ 森美術館
テーマとしては中々見甲斐があったけれど、なんでこれが?ってのがいくつかあった。(トレスとかルースとか)。逆にチラシにもなってる加藤翼の作品は、構造わかってない人が見たらなんのこっちゃわかんない感じで残念でした。でもわかってたら中々感動しちゃいます。

アジアにめざめたら アートが変わる、世界が変わる 1960-1990 年代 @ 東京国立近代美術館
前述のPara Siteの記事でも触れてますが、全体としては特に面白みはないです。ただ、日本の作品も普段「もの派」だの「具体」だのレッテルでくくられる作品たちが一個の作品として扱われてるのが面白かった。

マルセル・デュシャンと日本美術 @ 東京国立博物館
想像以上に日本のコーナーが蛇足過ぎましたね。。。あとデュシャンって見ても見ても見足りない感じがするんですよね。今回なんてフィラデルフィア美術館から結構いいものほとんど来ちゃってるぐらいのレベルなんだけど、なんだろうこの欠落感は。不思議な作家です。

リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」 @ 原美術館

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現在ポップアップカフェで開催中の「良いニュースというのは多くの場合小さな声で語られるのです。」に関連する二つの展覧会をご紹介。

まずは原美術館で始まったリー・キット展。
今年マッタ=クラークに次いで楽しみだった展示です。
リー・キットは香港で生まれ育ち現在は台湾在住の作家。
一昨年行った香港では彼が主催しているスペースthings that can happenも面白かった。(既に閉廊)
またART ITのこの記事を読むととてもクレバーな作家なのがわかります。
リー・キット「ザ・グレート・プリテンダー」

彼が最も注目を浴びたのが2013年のヴェネツィア・ビエンナーレの香港パヴィリオンの個展。
僕もこの展示見ましたが、何が展示されてあったかはほとんど覚えていなくて、覚えているのはその空気でした。
なんというか、留守中の他人の家に勝手に上がり込んだ感じと言うんでしょうか。
僕の好きなキム・ギドク監督の「うつせみ」の主人公になったような感覚。
うしろめたいんだけど、なんだかワクワクする。
周囲の風の音とかそういう何気無いもの全ての感覚が鋭敏になる。
あの感覚はちょっと忘れがたい経験の一つです。
そして今回もまさに同じ感覚に陥りました。
はっきり言って、展示といえるものはこれといってありません。
驚くほど物質感がなく、あるのは光。
窓から差し込む光をプロジェクションで表現しているのか、この元邸宅の窓がことごとく開け放たれた感じ。
見る時間帯によっても見え方が色々変わりそうな展示でした。
これは中々万人がわかるにはあまりにも「繊細」。
そう、タイトルの通りその繊細さを感じ取れないと中々難しい展示だと思います。
万人にはオススメできないけれど、とても爽やかな気持ちになれる展覧会でした。12/24まで。
カタログは11月上旬に完成予定とのこと。間に合えばポップアップカフェにも置きたかったんだけど。こちら


内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える @ 水戸芸術館
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水戸へ。遠い。。。
出来るだけ外したいんだけど内藤礼は外せない。
ということで内藤礼の個展としては最大規模の展覧会です。
結果から言うと、可もなく不可もなくといった感じでした。
展示室を自然光のみにしたのはさすがですね。
あそこの展示室は天窓があるので電気がなくてもかなり明るい。
電気がないと、展示室というか、ただの「場所」になっちゃう感覚が気持ちいい。
しかしあの展示室構成はやっぱり使いづらい。
展示室と展示室のつながりがいちいち断章しちゃうんですよね。
今回の展示とかシームレスに繋がって一つの作品みたいになってたら本当によかったと思う。
あと、やたら監視員が多いのが気になりました。繊細な作品多いし仕方ないのだけど。
タイトルの「あなた」は監視員のことなのかとすら思いました笑
あと、展示構成的には「鏡」を意識してるのかな、とも思いました。
実際の鏡はもちろん、展示室の対面でおなじモチーフが置かれていたり対になっていたり。
元々内藤さんの作品はシンメトリーの強いものですが、今回は特にそれを感じました。
個々の作品の説明は省きますが、なんだか取り止めがなくてちょっと残念でした。
もっと大胆に、何もない展示室とか作ったりしても面白かったと思うんだけどなぁ。
展示は10月8日までで、カタログは9月末だそうです。こちら


本日9月25日でこのブログ開設から丸13年になりました。僕は3○歳になりました笑
今後ともよろしくお願いします。

ゴードン・マッタ=クラーク展 @ 東京国立近代美術館

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先月から始まったゴードン・マッタ=クラーク展に行ってきました。
今年度一二を争う期待度の展覧会でしたが、それを遥かに凌駕する素晴らしい展覧会でした。

まず何が素晴らしいかというとその会場構成。
彼の展覧会をする上で最も難しいのが、作品そのものがほとんど現存していないこと。
ほとんどが一過性の出来事なので、展示となるとその大半が記録になります。
建築の展覧会とかもそうだけど、それそのものが持ち込めない展覧会ってしばしば退屈になりがち。
しかし今回はそこを飽きさせない為に会場構成で観客のテンションを高めていました。
会場構成を担当した元OMAの小林恵吾さんがカタログ内でもおっしゃったように、展示会場というより「広場」という印象の様々な建築的マテリアルで織り成す会場風景は爽快。
青木淳の「原っぱと遊園地」を思い出させる、伸び伸びとした原っぱに観客が各々好きなように過ごしているのが印象的。
小林さんの「現代の日本では都市の方が窮屈」という話も印象的。

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そして展示構成もわかりやすい。
「Museum」「Dwellings」「Streets」「Port」「Market」の5つにテーマがわかれています。
今回全体通して、改めて自分がいかに彼の活動を知らなかったかを思い知りました。
(彼の名付け親がデュシャンだったなんてことも!)
ここまで広範に展開していたとは本当に驚き。しかも彼の作家活動期間はたった10年なのです!
やはりゴードン・マッタ=クラークといえば「ビルディング・カット」。
中でも1974年の最初のカット「Splitting」は単純に建物を半分に割るという衝撃的な作品。
以降いくつか建築を切ってますが、やはりこのシンプルさには敵いません。
そしてここでも知らなかったのが、実は真ん中を切るだけじゃなくて、屋根の四隅も切っていたこと。
その四隅がなんと今回展示されているのです。これはアツい。

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あと、他の活動も本当に興味深いし、改めて彼の先駆者性を発見しました。
例えばその屋根の横に展示してあった、壁をプリントした紙。その名も「壁=紙」。
どこかのアノニマスな壁のプリントが壁に貼っているという二重性の時点で面白いのに、なんと1972年当時に観客に配っていたというのがさらに驚き。
これってフェリックス・ゴンザレス=トレスの先の先をいってますよね。
今回も持って帰れるので僕もちゃっかりお持ち帰りしました。

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それと、初期の食物を使って行っていたプロジェクト、特に「FOOD」という名のレストランをしてたのはなんとなく知っていたのだけど、それが地元アーティストの臨時の職場になっていたりしていて、今のソーシャルアートやリレーショナルアートのこれまた先の先をいっちゃってます。

カタログの中で沢山遼さんも指摘していますが、これまた初期の仲間内でやってた「アナーキテクチャー」の活動も、都市を「観察」する赤瀬川原平の活動にリンクします。
ただし赤瀬川さんはゴードンたちと全く同じ時期にやってるのがまたすごいんだけど。

他にもいらない土地を買っちゃってアートプロジェクト用に使うとか、木の上で生活するとか、ゴミで作品作って最後またゴミにしちゃうとか、本当に面白いことを短い期間に散々やっちゃってます。
彼の10年の活動の中に、近現代美術の歴史がかなり内包されちゃってます。
彼の多様でありながらも一貫した姿勢って、やっぱりコンセプト云々よりも、純粋に面白いと思ったことにまっすぐ突っ走った結果なんだと思う。
色々読んでると、どれもコンセプトは後付けな感じがしてそれがまた面白い。
彼が活動の中心に置いていたグリーン通り112番地のジェフリー・ルウの言葉が全てを物語っています。


アートはコミュニティだよ。でもそんなことを、考えてさえいなかったんだ。みんなその真っ只中にいたんだ。コンセプトのことを考えてる暇なんてなかった。生み出すのに忙しくてね。コンセプトというのはそうやって出来上がるものだと私は信じている。知的な思考じゃなく、実践によってだ。だからグリーン通り112番地は・・・グリーン通り112番地は、経験そのものだったんだ。



展覧会は9月7日まで。僕は最低もう一回は行こうと思います。超おすすめ。こちら

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今村遼佑「雪は積もるか、消えるか」 @ アートラボあいち

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最終日ギリギリ、東京帰りに無理やりねじ込みました。今村くんの展示です。
ポーランドの滞在を経て、どんな作品を作るのかとても楽しみにしていました。
昨年末アートスペース虹での展示も見ましたが、やはり小さなスペースなので物足りなさが残ったというか。
今回はとても広いスペース。
アートラボあいちは長者町にあった時代は知ってましたが、今はとても立派な歴史建築物の中にあります。
行ったら最終日だったため、今村くんがちょうど撮影していて色々話も聞けました。

にしてもこの人はブレない。
ポーランドでの滞在での影響はどこかしらかにあるんだろうけど、昔から変わらずそれでいて新鮮。
その場所を慈しむように、さりげなくさりげなくそこに潜む作品たち。
作品はあるんだけど、それそのものを見るというより、それを触媒にしてその場所を楽しめてしまう。
今村くんの説明を聞いていても、ここにどんな光が入ってきて、どんな音があってという説明ばかり笑
実際この空間は大きな窓がたくさんあって、光がすごい勢いで変化して空間の質がどんどん変化するのです。
僕が行ったのは夕方前ぐらいだったので、驚くほどの変化を楽しめました。
これが夜とかだとまた面白いんだろうなぁと。
彼の作品は冬がよく似合う。
夏のギラギラした太陽の光ではなくて、ぼーっとした淡い光。
(実際以前「冬の日」ってタイトルの展覧会もあったな)
って、今村くんの作品の説明がほとんどないけど、実際そういう作品なんです。
具体的にはバケツの中に映像があったり、廃盤になったクレヨンで書かれたドローイングがあったり、ついたり消えたりする電球があったり、壁を叩く小さな音があったり、ポーランドで撮った映像なんかもあるとか色々言えちゃうんだろうけど、個々の作品をあげつらうのは彼の作品にふさわしくないように思います。
どうしようか迷ったけど、行って本当に良かった。
改めて僕はこの人の作品が心底好きなんだなぁと思えました。
終わっちゃったのでなんの宣伝にもなってませんが、今後も追い続けたい作家さんです。

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今村遼佑展「畔を廻る」@PANTALOON



東京では他に恵比寿映像祭関連のALの展示とワタリウムのマイク・ケリーを見ました。
ALは秋山さやか、荒木悠、荒井美波の三人展。(全員Aから始まるのは偶然?)
中でも過去作ですが荒木さんの作品はよかった。オリーブを巡る誤認の話。
彼の作品は個展だとくどさがありますが、グループ展だといいスパイスになりますね。
マイク・ケリーは相変わらず意味不明笑
配られたチラシに映像に出てくる登場人物紹介が載ってるのが斬新でした笑

江之浦測候所/草間彌生美術館/長島有里枝

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杉本博司の夢の舞台が小田原に完成しました。
その名も「江之浦測候所」。
根府川駅からシャトルバスで10分弱。遠い。遠いよ!
で、いきなり感想としては

「一体何を見てきたんだろう?」

です。
正直感想と言える感想はないです。
予約とって入館料3000円と交通費かけてわざわざ行ったんだけどね。
まあ、行く前からなんとなくそんな感じなんやろうなとは思ってたけど。
この人って自己完結の人だなぁと改めて思いました。
ここには批評はないです。いいも悪いもないのです。
だから行って後悔ってのもないです。
とまあ、のっけからネガティブですがとりあえず写真バンバンのっけちゃいます。

まず全体図。広いです。
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待合棟。ここで受付。
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100mギャラリー。
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先からの海景。
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隣の小庭。
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下へ。
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100mギャラリーの下を斜めに突き抜ける道。このアプローチは直島の護王神社みたい。
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外から。
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上も登れます。
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隣は能舞台。
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大庭園?から門。
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茶室への道程。
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茶室。
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以上こんな感じ。
一体何の施設なのか謎・・・。人に話す時に困ります。
ご興味ある方は公式サイトからご予約くださいませ。こちら
帰りはシャトルバスを待ちきれずタクシーで小田原へ。絶品の鯵がいい思い出。


あと東京では開館したばかりの草間彌生美術館にも行って来ました。
なんか年内はもうチケット予約完売らしいですね。すごい人気。。。年明け以降の予約はこちら
こちらも写真でぱぱっと。外観はすごく地味。中は階段で上がらないといけない。
こちらも感想らしい感想はないです笑

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他には東京都写真美術館で開催中の長島有里枝展。
これまでの彼女の写真シリーズが一気に見られるベスト盤みたいな展示。
僕は彼女の写真といえば、彼女のパートナーを撮った「not six」が忘れられません。
学生の時に本屋で見て、赤裸々にパートナーとの私生活を覗き見してるようでドキドキしました。
表紙も赤裸々に「テント張ってる」写真笑
僕が持ってる唯一の彼女の写真集です。
それから10年以上が経って、今回の展示で彼女がその彼と離婚してることを知りました。
めっちゃ不思議なんだけど、なんかショックでした。
あの写真集にはそれだけ彼女と彼に感情移入させちゃう力があったんですよね。
どんな言葉よりもあれらの写真って単純に時間や関係性がビジュアルに詰まっちゃってる。
写真の持ってる力を改めて思い知らされたような気がします。
あと、その写真集にも写ってた赤ちゃんだった息子が大きくなってる写真もあって、まるで親戚の子のように「大きなったなぁ」と感慨深く見ちゃいました。
それと、僕の友人がモデルになっててびっくり。
長島さんが神戸にレジデンス来た時に撮ったみたい。
他にも家族じゃない人たちが家族みたいに一緒に写真に写ってる初期のシリーズとか、彼女のデビュー作でもある家族で裸で写ってる写真とか、僕はてっきり彼女の写真は「関係性」が重要なんだと思ってたんだけど、カタログとか彼女の発言とか見てるとかなりフェミニズムの人なんだなぁとわかって正直がっかり。
なんかもっと大きな広がりを彼女の写真に見てたのです。
とはいえ、やっぱり彼女の写真は面白い。11月26日まで。こちら

あと土屋信子が駒込倉庫でワーク・イン・プログレスみたいなのやってたから見に行ったけど、会期終了間際だったのにプログレスすぎてなんのこっちゃでした笑
scaiからカタログが出るらしいのでとりあえずそれをたのしみにしてます。

川俣正 -「 工事中 」再開 @ アートフロントギャラリー

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急遽東京へ。
まさかあの伝説の作品が「再開」されるなんて。。。
1984年に川俣正の名をアートシーンに確かに刻んだ「工事中」。
北川フラム氏からヒルサイドテラスの改修に合わせて何かやらない?と誘われて作った作品。
建物を囲むように木材で組まれたそれは、テナントからのクレームで中止に追い込まれますが今や伝説。
これ以降の活躍は周知の通り。ここから「work in progress」というスタイルを築いていくのです。
その作品が30年以上の時を超えて「再開」とな。これは逃すわけにはいかない。
とはいえ当時のように建物を囲むことはなかったものの、建物の屋根を這うように組まれた木材たち。
数年前に「TOKYO IN PROGRESS」というプロジェクトの木材を使ったそうです。
さらにこの作品は、今後取り壊される予定の歩道橋から見られることを前提とされてます。
とはいえフラム氏から、やっぱ構造の中に入って観られた方がいいでしょ、ということで土日のみ予約制で観覧可。
当日は雨予報でしたが、そんな予報もどこ吹く風。夕方の涼しい風と青い空とのコントラストが気持ち良かった。
9/24まで。こちら

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アピチャッポン・ウィーラセタクン「亡霊たち」@ 東京都写真美術館

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写美(TOP MUSEUMとは言いたくない)と、イメージフォーラムでやってるアピチャッポン特集に行ってきました。
後者の「トロピカル・マラディ」がメインでしたが、まずは写美へ。

美術館でのアピチャッポンの展示はグループ展でも@kcuaの個展でも観てるけど、正直ピンときたことはなくて、それはきっと彼の映像はある程度長い時間観ないと沁みてこないからだと思うのです。
展覧会だとどうしても散漫になるし、映像を一個一個丁寧に観られる環境じゃない。
その点映画館は、映像を観るのに特化した場所だから彼の作品は生きてくる。
なので、今回の展覧会もさほど期待はしていなかったのだけど、驚くほどによかったです。

まずタイトルがいい。
英題の"Ghosts in the Darkness"は彼が以前に書いた論考のタイトルらしい。
この「Ghosts」というワードは、彼の作品を表すのにとても適した単語だと思います。
彼の映像にはしばしばこの世のものとあの世のものが曖昧に描かれます。
「プンミおじさんの森」なんかは顕著ですが、新作の「光りの墓」なんかもまさにです。
近年特にあの世とこの世が地続きになってる感覚があります。
さらに以下この展覧会の冒頭で書かれていたテキスト

Ghostには二つの意味が潜んでいます。ひとつは写真や映像などのメディアを媒介することで作用する映像自体が持つ特性です。もうひとつは、現実社会で作用する目に見えない力、すなわち政治屋歴史の中に潜むモンスターのような見えざる力のことです。

ひとつ目の映像の持つGhostというのはすごくわかります。
よく昔の映画なんかを観てると、そこに出てる俳優も監督もこの世にはいないんだよなぁとしみじみ思うことがあります。
しかし作品だけはしっかりとそこに生き続けている。
以前TEDで河瀬直美監督も仰ってましたが、映像にすることで過ぎた時間を立ち返らすことができます。
The value of movies: Naomi Kawase at TEDxTokyo

この展覧会では、アピチャッポンの日常の愛おしさが伝わってくる映像がたくさん出ています。
家族との時間。恋人との時間。ペットとの時間。俳優たちとの時間。
これらの時間たちが、そのまま会場に持ち込まれていました。
特に「灰」という作品には、彼を取り巻く環境が散りばめられていて、20分を越す映像ですが、最後まで目が離せませんでした。

また「花火」という映像では、ガラスにプロジェクションされていて、暗闇の中で光る閃光がとても印象的。
映像的な美しさとともに、そこに孕む第二のGhost、見えざる力の存在もうかがわせます。
爆音と暗闇は、とても不穏な空気を纏っていて、これもまた目が離せない光景でした。

そして、この後アピチャッポン特集に行ったのは正解で、彼の映画制作の元となる映像もいくつか展覧会に出ていて、映画を見ながら場面と展示を行き来できたのはよかったです。

アピチャッポン特集では「ブリスフリー・ユアーズ」と「トロピカル・マラディ」を観ました。
「ブリスフリー・ユアーズ」は、彼がカンヌで「ある視点」賞をとり、彼の名を世界に知らしめた最初の作品です。(名前長すぎですが・・・)
何と言っても開始1時間ほどしてからオープニングが流れるという構造が印象的で、前半と後半で話がガラッと変わります。
特に後半の森をさまよう男女の様は美しかったのですが、最後が個人的にいただけなかった。
僕が思ういい映画って、「あ、終わる」ってとこでカチッと終わる映画なんです。
その点で、この映画は、最後がダラダラとしてしまって、あーあってなった。
観客の忍耐を試すかのような映像で、正直イラっとしてしまって後味悪かった。
その点「トロピカル・マラディ」がほとんど完璧と言っていい映画でした。
以前から観てみたいなと思っていた作品ですが、日本だと東京以外の上映がなくて、なかなか観られず念願叶っての映画鑑賞。
そして期待を遥かに超える作品で、もっといろんなところで上映してほしいしDVDも出してほしい。
この映画も前半と後半でガラッと印象が変化します。
「ブリスフリー・ユアーズ」よりも激変するので、本当に同じ話なのかと疑うほどでした。
何と言っても後半の森の中で虎を追う場面は、息を飲むし、目は冴えっぱなしになりました。
ほとんど暗闇の薄明かりの中で撮影された映像で、観客の想像力がフルに回転します。
最近の彼の作品は、とても直接的な表現が多いので、こういう気配を描いた作品をまた撮ってほしいですね。
「トロピカル・マラディ」は僕の中で彼の最高傑作となりました。

展覧会は来年1月29日まで(こちら)。アピチャッポン特集は1月13日まで(こちら)。
できれば両方セットで行くのがオススメ。
イメフォの特集は上映作品が毎日変わるのでご注意を。
2月のアピチャッポンの舞台「FEVER ROOM」も行こうかすんごく悩んでます・・・。
ちょっと落ち着いてたのにほぼ毎月東京行っちゃってる病再発の気配。


それではよいお年を。

トーマス・ルフ展@東京国立近代美術館

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最近は色々スルー気味ですがこれは見逃すわけにはいくまい、ってことでお江戸へ。
目的は近美で開催中の「トーマス・ルフ」展。
このところデマンド、グルスキー、ティルマンスとドイツ写真の巨人たちの展覧会が相次いでますが、ついにルフです。
ドイツ写真家の中だったら個人的に一番好きかも。
そして実際大満足な展覧会でした。

まずは初期の巨大なポートレート作品からスタート。
その後建築シリーズやインテリアシリーズなどが続きますが、初期の作品ってびっくりするぐらい見るところがない。
いや、これ悪口とかじゃなくて、この「見るべきものは何もない」感じがすごいというか、ものは写ってるのに何も写ってないように感じるこの無の感覚が不気味でついつい気になってしまう。
ストレートフォトとコンセプトフォトの中間に絶妙な感覚で立っちゃってる感じ。
ベッヒャーとか見ると、明らかにコンセプトがあるなってのがわかるんだけど、ルフはそこがわからない。

そしてルフのすごいのは、結構初期の方になって、カメラを放棄しちゃうところ。
1989年の「Sterne」は、ヨーロッパ南天天文台が天体望遠鏡で撮影して天体の写真のイメージを使用していて、この作品から自分が撮ったイメージではなく、すでにどこかにあるイメージを使って写真作品にしてしまっている。
写真のアプロプリエーションを最もラディカルにやってる「写真家」。
特に僕が好きなのは「jpeg」という作品で、タイトル通りインターネット上にあるjpegの画像をでっかく引き伸ばした写真なんだけど、実際物理的に自分がその写真の前に立って、近寄ったり遠ざかったりすることで揺らぐ目の解像度と写真の解像度の往来がとても面白い。そして単純にjpegの荒れが美しい。
さらに今回いいなと思ったのが「ma.r.s」の3Dバージョン。
会場に3Dメガネが用意されてて、観客がそれかけながら見るという、なんともチープな内容なんだけど、実際メガネをかけて3Dになった像を見ると普通にオォ!ってなる。これは火星の表面を撮影したイメージなんだけど、その凹凸の感じが腑に落ちるというか、このイメージじゃないと3Dにした意味ないよなっていう説得力があった。他の作品でこれやられても寒いだけになるけど、誰も行ったことのない火星の表面をイメージを通して簡単に触れた気になれるっていう写真の魔力みたいなのを改めて感じられる作品でした。
ちなみにカタログにも3Dメガネついてますw
あと、「zycles」っていう作品は、三次元ドローイングで説明読んでもちょっと何言ってるかわかんないって感じやったんやけど、これに関しては写真ですらないってのが笑った。元のメディアがキャンバスですからね。

こんな感じで、中には?ってのもあるけど、いかにカメラを使わずに写真の可能性を広げられるかっていう追求が、こうやって一気に見せられると本当に面白い。
無理やり行って本当に良かった。11月13日まで。その後金沢に巡回します。こちら
後は来年か再来年あたりトーマス・シュトゥルート展でしょうか。


後、観たいのが他になかったので、リニューアルして新しくなった写真美術館(TOP MUSEUM!)へ。
杉本博司展がやってましたが、この人どんどん趣味悪くなっていくな。。。
とりあえず上の階の「世界の終わり」的な展示はほぼ流し見。
下の階の新しい廃墟劇場シリーズは見応えがありました。もう普通に写真やってほしい。
写美(TOP MUSUMなんて恥ずかしくて言えない)は次回アピチャッポン・ウィーラセタクン展てことで気になる。
普通に「トロピカル・マラディ」が観たいんですが。


追伸
ブログ12年目突入しました。

あいちトリエンナーレ2016

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3回目となるあいちトリエンナーレ。
前回も行ってないし、今回もパス予定だったのだけど、友達に誘われて行ってきました。
昨今「地域アート」の問題で散々議論されてるけど、もはや国内の芸術祭には食傷気味。
ましてや、地域復興の目的のある地方の芸術祭と違って、すでに満たされてる都市でやる芸術祭にどういう意味があるのか。
もう3回目になるトリエンナーレだけど、名古屋の街に根付いてるようには全く見えない。
確かに告知は街中で多く見るけど、それが何なのか市民の人たちに伝わってるのかしら。
テーマも「虹のキャラヴァンサライ」って一体・・・。
実際全体通して見ても特にまとまりも感じられずって感じでした。
とはいえ、名古屋、豊橋、岡崎と3都市とも回ったので良かったのだけ抜粋。

まずは名古屋。
名古屋はいくつか会場ありますが、僕が好きだったのは愛知県美術館の後半と街中のいくつかだけ。
名古屋市美術館の作品群は一つもピンとこなかったです。
愛知県美術館の作品の中でも飛び抜けて良かったのが三田村光土里のインスタレーション。
ランダムなオブジェが、絶妙なバランスで配置されていて、さらにハッとさせられるような言葉が散りばめられている。
いくら見ても見飽きることのない、いつまでもそこにいたいと感じさせてくれる空間でした。

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三田村さんまで、本当にピンとくるのがなかったんだけど、この最後の最後らへんから立て続けにマーク・マンダース、大巻伸嗣、松原慈と好きな作品が続く。
マーク・マンダースは今までで一番良かった。
大巻さんのは踏まれてからも見てみたい。彼は栄の損保ビルや岡崎でも展示してて、このトリエンナーレで最も活躍してる作家かも。
松井さんのはとてもポエティックで繊細な空間。閉館間際だったのでゆっくり見れず残念。

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栄会場の旧明治屋栄ビルでは寺田就子の元バレェ教室を使ったインスタレーション。さすがでした。

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場所は移動して豊橋。
ここでメインになってたのは開発ビルっていう会場。
10階から数フロアあって、なかなか体力消耗するけど、動線がかなりわかりやすくて良かった。
この中では久門剛史のインスタレーションが気持ち良かった。
窓のようなフレームに薄いカーテン。これにランダムに光や風が当たる。
ビルの窓からの自然光も手伝って、とても爽快な作品でした。

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しかし、この豊橋エリアではもう全部持ってっちゃったんじゃないのってぐらい度肝抜かれたのがラウラ・リマ。
なんと4階建てのビルまるごと鳥小屋に変えちゃいました。
中には100匹もいたらしい。これはすごかった。。。

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最後に岡崎会場。ここが一番過酷だった。。。
駅でレンタサイクルをトリエンナーレのチケットがあれば無料で貸してくれるので借りましょう。歩くのは無理。
結構な範囲を行くんだけど、良かったのは岡崎シビコの野村在ぐらいかなぁ。
会場の退廃的な空間とものすごくマッチしててかっこ良かった。

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以上こんな感じ。行く人の参考になれば。
後半も色々イベントがあるみたいなのでHP等でチェックしましょう。映像プログラムもあるし。10/23まで。こちら

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田中功起 「共にいることの可能性、その試み」 @水戸芸術館

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もう半月以上前になっちゃいましたが東京に行ってきました。
いくつか観てきたのですが、特に「関係性の美学」以降の作家の展示を3つ立て続けに観ました。

まずは水戸芸術館で開催されてる田中功起展。
2013年のヴェニスビエンナーレ日本館の個展で特別表彰を受けて以来初の日本の美術館での大型個展。
それだけにある程度の期待はしていましたが、正直モヤモヤの残る内容でした。
展示空間を、ただの場にしていたインスタレーションとしてみれば相当クオリティが高かったと思います。
しかし内容は、6日間のワークショップの記録を並べたもので、そこで「共同体は可能か」と言った内容が吟味されるのだけれど、あまりに欺瞞的というか、最終的にこの結果は明らかにエラーを起こすことを予期して作られてるように見えて、とても居心地が悪かったです。
あの日本館での美しい調和は完全に失われていました。
今回のテーマは深く震災に根付いています。
これまで裏方だった作家本人も積極的に映像に参加しているしインタビューまで受けてる。
こういう直接的な態度を展覧会で見せることにどういった意味があるんだろうと思ってしまいました。
日本館では、直接関係ないけど、震災にゆるく結びついているという、その関係がとても心に染み渡るようだったんだけど、今回は押し付けがましさすら感じてしまいました。
これから田中さんはこういう方向に作品をシフトしてしまうんだとしたら非常に残念です。
それとも今回直接2011年に被災した水戸芸術館での展示ということでそうしたのでしょうか。
ちょっと腑に落ちない展示でした。
とはいえ貴重な機会なので水戸は遠いけど足を伸ばしてあの場を体験してみるのはいいことだと思います。5月15日まで。こちら


あと、東京都現代美術館でのArtists' Guildを迎えたMOTアニュアル「キセイノセイキ」もまた腑に落ちない展覧会でした。
これも前述の田中さんも出してた2012年のMOTアニュアルが良すぎただけに、どうしても比べてしまう展示ですね。
美術館批判とも取れる内容を美術館でやってるだけに、説得力がないしあまりにドメスティック。
風桶の時は、各作家の作品同士がうまく手を結び合ってる印象があったんだけど、今回のは全然その感覚がなかった。
すんごい大まかな傾向のものを同じフォルダーにとりあえず詰めちゃった感じ。
同時にピクサー展やってたけど、そっちから流れてきたお客さん相当引くんだろうなぁと。。。5月29日まで。


もひとつオペラシティでやってたサイモン・フジワラ展もひどかった。。。
田中さん同様空間の使い方は抜群にうまくて、ひとつの展示空間に様々な物質が置かれてる様は爽快。
ただ、作品として、過去の作品のダイジェストみたいな感じで、ウェブサイトの作品紹介をマウスでクリックしながらスラスラ見ていくような感じで、現実の展覧会としてのダイナミックさは皆無。
彼のルーツの断片でもある日本での初の大きな個展なのに、なんでこうなったのか残念。。。
今度はがっつり新作で大きな個展を観てみたいです。こちらは既に終了済み。


これらの展示があんまりだったのは、僕の興味がここ数年でまた変異したせいもあると思います。
震災以降特に作家自ら、作家であること、作品を作ることという、根源的な問いを改めて突き詰めて、これまで自明と思われてきた制度に改めて真っ向勝負を挑んていくような、田中さんを始めとする作家の姿に心動かされた時期もありましたが、あれから5年が経過して、揺り戻しで純粋に美しいと思えるものを観てみたいという欲求が出てきたように思います。
あの日本館の展示をピークにして、作家たちの自意識的な展示を観ても感想が出てこない自分がいます。
最近発売になった「地域アート」の本も読んでみましたが、これまたドメスティックすぎて、全然内容が入らず。というか、この本の主題である「地域アート」の源流を築いたとも言える北川フラムさんが参加してない時点でこれを本にまでする価値があるのかっていう内容。ただただファミレスかどっかで作家たちが内輪であーだこーだ言ってるだけに思えて辟易しました。


その点で今回最も良かったのは自分でも意外な横浜美術館での村上隆コレクション展
森美での自身の展覧会がひどかったのでどうだろうと思いつつ友人に勧められて横浜へ。
結果的に、この美術館で観た展示の中で一番良かったと言えるぐらい良かった。
やはり作家だけあって展示の仕方が本当にうまくて唸りました。
あのどうしようもない入り口の大空間も、キーファーや李禹煥等のインスタレーションでビシッと決まってたし、何よりあの膨大な作品たちをほとんどストレスもなく観られたのは本当に奇跡。
普段より壁にかかってる平面も多いし、作品と作品の隙間だって本当に狭いのに不思議と干渉していない。
やはり村上さんはディレクション力がすごいんだと改めて思いました。
そしてコレクションの内容も凄すぎた。。。
でも、なんかすごいコレクションに愛情を感じたし、見せびらかされてる感じが全然なかった。
これは杉本博司とは全く違うところですね。
杉本さんのコレクションは、あくまで自分の趣味の良さと、それらを自身の作品の正当化に結びつける口実に見えてしまう部分があるんだけど、村上コレクション展では、自身の作品が一切展示されてないし、え、こんなんも持ってるの?っていう村上隆のイメージとは全く違うものが幾つかあって面白かったですね。
小泉明朗さんやミカ・ロッテンバーグの作品を持ってるのは意外だったなー。キーファーもね。
帰りのショップで思わず展覧会に出ていた尾形アツシさんの飯茶碗を買ってしまった。
とても気持ち良い展覧会でした。こちらも既に終了済み。


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ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡 @ 名古屋市美術館

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2013年も残すところあと少しとなりました。
以前お伝えした通り、このブログは今年いっぱいを持ちまして一旦休止とさせていただく予定です。
来年からは私個人の活動に関しては何かあり次第ここでもお知らせする予定ですが、これまでのように観てきた展覧会を逐一レポートすることはないと思います。よっぽど何か書きたいことがあれば書きます。
ってことでこの記事が多分今年ラストの鑑賞記事かも。

久々に18きっぷで名古屋へ。
思えば今年の最初も名古屋に行ってましたね。
そしてその時も奥村さんの作品観てる。
名古屋は、あいちトリエンナーレが終わってアートラボあいちも閉鎖。
長者町も寄りましたがなんだかすごく寂しかったです。
今後トリエンナーレは継続されるんでしょうか?
まあ、今年のトリエンナーレ行ってないけど。

今回の目的は名古屋市美術館で開催中のハイレッド・センター展
彼らの活動から半世紀。なんと初の回顧展(?)です!
今まで開かれてなかったのが不思議でなりませんが、メンバーがやりたがらなかったってのも大きいのかな。
それだけに、今回の展覧会は知った瞬間からアドレナリンでまくりました。
やはりハイレッド・センターと言えば日本近代美術史の「伝説」ですからね。
彼らの活動に関しては、赤瀬川原平氏の書いた「東京ミキサー計画」に詳しいですが、やはりこうして「現物」が登場する展覧会は同じ知識でも情報量が全然違います。
展覧会初っ端から赤瀬川さんの「ヴァギナ」の作品で、図像は何度も見たことあったけど、生で見るのは初めてで早速興奮しました。
他にも「千円札」や「洗濯バサミ」、「紐」という3人の代名詞と言える作品が続々と登場して、しかも読売アンデパンダンと同じような展示のされ方で、学芸員の方々の熱意を感じました。
そして、作品も去ることながら写真や、招待状などの資料が所狭しと並べられていて、彼らの「直接行動」の証拠物品が溢れていました。
特に「敗戦記念晩餐会」の整理券とか、内科画廊で開催された「大パノラマ展」の「閉鎖」シールとかよくもこんなの残してたなってのがいっぱいあって面白かったです。
トリエンナーレの時に使っていた仮設の階段とか再利用されてて、この動線も楽しかったですね。彼らの「撹拌」が展覧会に応用されてる感じでした。松濤美術館へ巡回する時はどうなるのかな?
日本の近現代美術史において、未だに語り続けられるこの「直接行動」。
たった2年弱の間にこんな「伝説」作り上げて、しかもその後も3人自身まで「伝説」になってるんだから、凄過ぎますね。
去年のMoMAでの東京展では、ハイライトとなっていたようですが、彼ら単独の展覧会をもっと海外に知らしめて欲しいですね。具体やもの派よりもっと先を行ってる世界にも類を見ないこの活動。日本から生まれたことに誇りに思うし、僕ら今の世代も彼らを超えなければと強く思いました。
素晴らしい展覧会。名古屋での展示は今月23日まで。その後来年2月より東京の松濤美術館で開催。
カタログも2000円で相当貴重な資料。買いです。
ところで、英語にするとHi-Red Centerってなってるけど、「高」ならHighじゃないのか?
それにしても最近ベーコン展といい大阪に巡回しない展覧会多いなー。。。


反重力 浮遊|時空旅行|パラレル・ワールド@豊田市美術館

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こちらも楽しみにしていた展覧会。
反重力。Antigravity。聞くだけでわくわくするタイトルですね。
この言葉から普通に重力からの解放を想像していて、そうなってくると、やっぱ色んな作家が思い浮かんじゃうわけで、真っ先に浮かんだのはTomas Salceno。それから八谷和彦。でもこの展覧会にはその二人は出てないわけで、作家リスト見る限りちょっと残念だったんですが、実際展覧会見てみると、僕の想像してた以上にスケールの大きな展覧会でいい意味で裏切られました。
まず最初に1階で出迎えてくれるのがジルヴィナス・ケンピナスのビデオテープが扇風機の風で舞ってる作品。これのもっと大きな囲まれるバージョンを昔初めてNYに行った時に見て感動したのを思い出しました。(というか当時何も知らず夏に行ったらほとんどのギャラリーが夏休みで閉まってて、開いてる貴重なギャラリーでやってたのが彼の展覧会だったんですよね)
彼の作品は非常に単純な仕掛けで「浮遊」がヴィジュアル化されてて気持ちいいですね。
展覧会の導入としてもキャッチーでした。
そして中原浩大+井上明彦の無重力状態を体験する作品。文字通り「無重力」。
次のカールステン・ヘラーの作品はやられたーって感じでした。ネオン管が平行に並んでて、上から下へ点滅してる空間なんですが、タイトルが「ネオン・エレベーター」。?ってなって中に入ると、確かにエレベーターで昇ってるような錯覚が。。。これも一種の「浮遊」ですね。
次のやくしまるえつこの作品はよくわからなかったけど、相対性理論のボーカルなんですね。
レアンドロ・エルリッヒの作品、年々酷くなってません?女木島の作品も酷かったけどこれも相当酷い。
中村竜二の作品もなぁ、、、ノーコメント。
奥村さんの作品は、映像最後まで見ましたがやっぱ印象に残りますね。
特に多元宇宙的な話は、この展覧会の奥行きをかなり広げていて、2階の河原温の作品に自分の中でつながって鳥肌が立ちました。
というのも、河原さんはいつものデートペインティングが出ていて、これだけだとイマイチ「反重力」にピンと来ないんだけど、なんと全く同じ日付の作品が2枚も出てて、世界が真っ二つに裂けた感覚がぐわーってやってきて、奥村さんの「多元宇宙」とつながったんですよね。
この展覧会は「反重力」という大きなフォルダの中にタイトルの副題にあるような「浮遊」や「時空」「パラレルワールド」「真空」のような小さなフォルダが入ってる印象なんだけど、その小フォルダ内に入ってるファイル(作品)同士のつながりがイマイチ希薄で、ちょっと分けすぎたんじゃないかな、って思いました。そんな中で奥村さんの作品と河原さんの作品が自分の中で同期した瞬間があったのは貴重でしたね。
前述のハイレッド・センター展に出てた「宇宙の缶詰」ともつながってるのは確信犯?
特に2階は、僕の中で全然ピンとこなくって、うーんってなってたところに河原さんだったので安心しました。
それにしてもあの大きな吹き抜け空間に内藤礼を持ってきたのは英断ですね。
あそこは明らかに磁場が変わっていて、すごかった。
あそこにTomas Salcenoの作品来てもよかったと思うけど、やっぱ内藤さんのスケールはでかい。
12月1日のトークも行きたかったなー。
中谷芙二子さんの霧の作品、もっと全体覆ってほしかったけどよかったです。

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ARK NOVA by Anish Kapoor x 磯崎新

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ずっと楽しみにしてたカプーアの移動コンサートホール。
2011年のパリのモニュメンタで発表された「Leviathan」の改変版。
このモニュメンタは行けず悔しかったので、このARK NOVAはなんとしてでも行きたかった。
そして無理してでも行った甲斐がありすぎました。もう神です。美しすぎる怪物。
ポリエステルでできた赤い表面は、周囲の景色を反映して、特に夕景がすごかった。
中は撮影禁止だったけど、テートのユニリバーシリーズのようにラッパ型の幕が真ん中を貫いてて崇高さが凄まじかった。。。
中はここで見れます。
ここで僕は歌舞伎を観たのだけれど、笛や鼓、三味線がこの幕の中で鳴り響いた時はもう鳥肌が立ちました。。。メインは10月12日に行われるルツェルンフィルのオーケストラなんだけど、カプーアの空間の中で日本芸能なんてそうそうない、っていうか一生ないかもしれないので、歌舞伎を選びました。そして大正解でしたね。まるで捧げられているかのように繰り広げられる舞台。すばらしかったです。特に前半の勧進帳の舞は見事すぎた。後半の坂田藤十郎の舞はよくわからなかったなぁ。本当はこっちがメインのはずなんだけど。
この後どこかに巡回するのかはわからないので、機会があれば是非。
坂本龍一やあまちゃんで一躍有名になった大友良英さんのライブもあります。
またこのチケットの売り上げは復興支援にもつながるので、チケット余ってるなら買いです。
http://ark-nova.com/ja/matsushima

この場所も松島の景色が見渡せるすばらしいところでした。

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<関連記事>
Anish Kapoor @ Leeum
Anish Kapoor @ Royal Academy of Arts
Anish Kapoor @ Lisson Gallery



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アンドレアス・グルスキー展@国立新美術館

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東京に行ってきました。
今回は展覧会目的ではなかったですが、ちゃっかりいくつか観てきました。
まずはグルスキー。
と、その前に皆さんに覚えておいていただきたいことがあります。

国立新美術館は火曜休館です。

まんまとやられました。。。着いたら休館の文字。あれ、早く着きすぎたかな?と思ったら違った。
普通月曜休館ですよね。なんなんでしょうか。
ちなみに横浜美術館は木曜休館です。

それはさておきグルスキー展。
大阪にも巡回してくるからいいかとも思ったんですが、観れなかったので余計観たくなって次の日リベンジ。
これが予想を遥かに超えてよかった!
まず、この展覧会の何がすごいって出品作品数が尋常じゃない。
海外作家の名前を掲げながら、ここまでの作品数を集めた展覧会って意外にないんですよね。
結構観た後に次の展示室へ続くってなってて、あと数点かと思ったら、数十点待ち構えててビビった。

そして、僕はグルスキーが正直そこまで好きじゃありませんでした。
あんなのただのイメージでしょ、と鷹をくくってました。
その「ただのイメージ」であることの凄さが、今回これだけ一気に見せられると恐ろしい程の説得力で持ってせまってきます。(僕は今まで最大でも5点ぐらいしか一度に観たことはありませんでした)
よく彼の写真は、絵画に例えられるけれど、僕は彼の作品を絵画的とは全く思いません。
実際、カタログに収録されてる3名のテキストすべてに、グルスキー作品の絵画性が取り上げられててげんなりでした。
じゃあ、なぜ彼の作品は絵画的ではないのか。
それは単純に、彼の作品のものとしての物質性のなさです。
グルスキーの作品は、徹底して平面です。
その平面性のラディカルさが、「ただのイメージ」であることを強化している。
例えば絵画はどれだけ平面性を謳っても、絵の具という物質を表面に載せている限り平面になり得ない。
でも、グルスキーの写真は、アクリルによって、出て来るものを押し込めているような印象すらある。
彼のポロックの作品を撮った作品(「無題VI」1997)は、絵画に対する彼なりの挑戦状にすら見えました。
ある意味ポロックは、絵画に置ける平面の嘘を暴いた人と言えるかもしれません。
彼の作品を実際に観ると、表面に絵の具という素材がそのまま張り付き凹凸がすごいです。
そんな絵画ですら、写真にしたら、ちゃんと平面になる。
そうグルスキーは問いかけているような印象すら受けました。
そして、その平面性を徹底することで、イメージから重力も奪い取る。
特に地面を俯瞰するような作品群(「メットマン、高速道路」1993、「マドンナI」2001、「ニャチャン」2004、「福山」2004、「ベーリッツ」2007等々)は、まるで今にも画面から下に滑り落ちそうな気にすらなるんですが、それを表面のアクリルが押し付けてるような見え方ができておもしろかった。
最新作の「バンコク」シリーズもまさにそうですね。川の水面が垂直に立てられているわけですから。
(これをカタログ論考ではニューマンのイメージと重ねてましたが、そういう見方は個人的にあまりおもしろくないです)

あと、グルスキーがベーコンよろしく、作品作りに新聞やテレビからイメージをもらってきてるっていう話は非常におもしろいですね。
1990年の「東京証券取引所」は、日本の新聞の写真を見て思いついたそうです。
ベーコンと違って、彼の場合、写真から写真と同メディアを行き来しているわけですからね。
同じように、飛行機に乗っている際に見る上空映像から着想を得た2010年のシリーズもそうなんですが、この作品に関しては、これまでの平面性から相当逸脱しているように見えて非常に興味深かったです。
特に「南極」は、浮き上がってすら見えるんですよ。
これまでの平面さからは全く違う感じでびっくりしました。
このシリーズからはグルスキーの変化を感じられて、今後も楽しみになりました。

展覧会としては、作品数多くてよかったんですが、やっぱり新作を混ぜこぜにするというやり方はいまいち効果がよくわかりませんでした。
その点カタログは年代順に並んでるのでわかりやすくおすすめです。ちょっと高いですが。
あと、会場でちょっとでも近づくとブザーが鳴るのあれ完全にアウトでしょ。。。
ただでも近づいて見たくなる作品なので、あちこちでブザーなりまくってましたw
それはともかく、本当にいい展覧会なので、是非ご覧下さい。
東京は9月16日まで、大阪は来年の2月14日からです。
http://gursky.jp/

去年のデマンドからドイツ写真家が続くので、今度はThomas Ruffが観たいです。


秘密の湖 @ ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
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人に勧められて行ってきました。都現美やアートコンプレックスのある清澄白河の次の駅、水天宮前駅の出口からすぐ。
ここは普段版画家浜口陽三の版画コレクションがメインらしいです。
今回の企画展は、詩人のたかはしむつお氏が企画し、浜口陽三のコレクションに加え、池内晶子、福田尚代、三宅沙織の3名の女性作家を集めて企画されました。
タイトル「秘密の湖」は彼の詩の中からの抜粋みたいです。
個人的には、池内晶子さんの作品が観たくて行きましたが、どれも作品としてのクオリティが高く、規模としては大きくない展覧会でしたがとても見応えがありました。
一人一人の作品が単純によかったですね。
三宅さんのフォトグラムの作品は、技法が気になってしまって、ちゃんと彼女の物語には入れ込めなかったです。でも美しい世界観でしたね。
福田さんの作品は、恐るべき手仕事に圧倒されました。。。
そして池内さんの作品。版画とインスタレーションですが、地下の暗がりに浮かぶ赤い絹糸の様は凄まじく美しかったです。
ただ、ひとつの展覧会というより、そこまで4人の作家が一緒にやってる必然性は見受けられなかったかな。
8月11日まで。作品はどれもすごくいいです。


あとは、都現美のフランシス・アリス展 ジブラルタル海峡編
2008年に行われた「川を渡る前に橋を渡るな」という作品のプロジェクトをひたすら見せるという感じで、メキシコ編と比べるとそこまでおもしろくなかったですね。2階の、キューバとアメリカを船で結ぶプロジェクトのドキュメント映像の方がおもしろかったな。
それよか、コレクションの泉さんの作品反則です。笑い転げそうになった。。。

それから、ミヅマでやってた宮永愛子展にも行ってきました。
いつの間にかミヅマギャラリー場所移って立派な感じになってた!
展示自体は昨年の国立国際で展示した椅子がメイン。
あとは靴や時計など、おなじみの日常品をナフタリンで作り、それを樹脂で閉じ込めた作品。穴が開いてて、そこにはシールでふたがされてます。購入者のみが開けることができ、開けるとそこからナフタリンが気化し、いずれナフタリンがなくなって樹脂には日常品の抜け殻だけが残るというもの。開けたい!


アートじゃないけどワタリウムでやってる寺山修司展もよかった。
行ったら前回のJR展の名残でボッタの建築がJR仕様だった。あれはいいのか?
それよか寺山修司ですが、最初に彼が小学校時代に作った学級新聞や通知表など、ちょっとやめてあげて!ってなるようなプライベートが晒されてるんですが、彼子供時代から尋常じゃないです。中学校のテストの答案とか、応え方がいちいち文学的w
19歳で病気を患い入院生活を余儀なくするも、その時に作家としてデビューしてるってどういうこと。
ラジオドラマ等を経て、30歳ぐらいで天井桟敷を結成。同い年とは思えない。。。
それから46歳で死ぬまでの間、様々なメディアを駆使して表現を研ぎすませていく。
映画は今でも観れますが、演劇は観れないので、今回の展示はかなり貴重。
特に、展覧会タイトルになってる「ノック」は、街に飛び出して行った超実験演劇で、これは実際体験してみたかったな。。。実際にパフォーマンスを行った場所の地図もらえます。10月27日まで。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

寺田就子「雨滴のレンズ」@ GALLERY CAPTION

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寺田さんの個展に行ってきました。
キャプションでの個展は2011年の「曇りの日の影」、2012年の「blue moment」と毎年コンスタントにやられてて、3月のグループ展にも参加されてますが、彼女のすごいのは、毎回同じ会場なのに、作品を通して毎回毎回全く違う体験をさせてくれるところ。作品をこれだけコンスタントに作るだけでも大変なのに、マンネリ化するとかパターンに陥ることなく、毎度新鮮な気持ちを与えられるのは驚異的です。
さらに、毎回何かしら前進してるのがわかって、本当にすごい作家だと思います。
今回のテーマは雨。
まず入ってすぐの枯れた植物を使った作品からやられました。
今までタンポポの綿毛や蜘蛛の糸など、有機的な素材を使っていたことはありましたが、これだけ植物単体の形が現れた作品を僕は初めて見ました。しかしそれがトレーシングペーパーや銅線などと共に、寺田さんの作品の中にしっくりと収まってるのがすごいです。
そして最初の小さな部屋では、水というこれまた有機的な素材が積極的に使われていて、特に奥のビーズの粒を伝って上から水が滴り落ちてくる作品には動的な要素も加わり、寺田さんのこれまでの作品とはまた違った要素が出てきたのはおもしろかったです。波紋の光やしたたる水がまるで光の粒が落ちてきてるように見えるのは本当に美しかったです。
廊下の真ん中には水が少し張られたアクリルの盆があり、そこには上のスポットの光が水の中に玉となって浮いているように見えたり、床に波紋が映り込んだり、寺田さんの作品は、オブジェの枠をどんどん越えていって周りの空間にまで影響を積極的に及ぼしていきます。
奥の部屋のドローイングもすばらしかった。水彩色鉛筆で描いた絵を実際の雨でにじませるいうもの。
折りよく僕が行った日は雨で、外の雨音を聞きながら、この寺田ワールドに浸るのは本当に気持ちよかった。
キャプションの空間は、ホワイトキューブには珍しく大きな窓がたくさんあって、そこから外部の光や音がどんどん入ってきて作品に影響を及ぼします。
空間を完全にコントロールしたがる作家もいますが、寺田さんはその変化を作品に積極的に取り込んでいて、特にここ最近の作品はその感覚が顕著に現れています。
多分この空間との相性がすごくいいんでしょうね。お互いに刺激しあってる感じがして、この空間があるが故に寺田さんの作品も一緒に前進してる感じがします。
この日はトークがあって、寺田さんのルーツや作品作りのお話を色々聞くことができました。
改めて芯の通った強い人だなぁという印象です。
いつも展覧会を見る度に僕が考えてることを見透かされてるような気がして時々怖いときがあります。
前回blue momentの時もそうでしたが、今回も雨という現象は僕がここ数年気になって作品に取り込んでるものなので、ドキドキしながら見てました。僕も負けないようにがんばります!
寺田就子展は7月13日まで。詳しくはこちら。終了間際ですがおすすめです。
<関連記事>
寺田就子「blue moment」@ GALLERY CAPTION
寺田就子展ー影の隙きまに眩うー@galerie16
寺田就子「曇りの日の影」@GALLERY CAPTION


フランシス・ベーコン展 @ 豊田市美術館
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東近美に続き、まさかのベーコン展2回目!おっかけです。
作品自体は前回舐め回すように観たし、保坂さんのお話も聞いていたので、今回は谷口吉生の建築空間の中で、ベーコンの作品はどう呼吸しているか、というマニアックな観点から観たくて行ってきました。
でも、この点に関して、ほとんど空間と噛み合ってる感はなく、ただ巡回してきましたって感じの箱扱いで非常に残念でした。
あの天窓は是非開けて欲しかったなぁ。。。自然光でベーコンを観たらさぞ美しかろう。(ということをTwitterでつぶやいたら担当の方から反応があり、やはりあの天窓開けたかったけど保存の問題で叶わなかったそうです。)
それと、会場が東近美より広い分、正直すかすかな印象。
あれ、こんだけしかなかったっけ?と思ってしまいました。。。
まあ、その分一点一点と対峙できる感はあるんですが、なんかベーコンの場合集中してみるというより、隣の作品と干渉しあう感じが結構大きいんですよね。それはトリプティック観たらわかることですが。なのでこの点に関してもマイナス。。。
最後のフォーサイスのダンスはこっちの方がよかったですが。
そんな感じで、ちょっと残念でした。もちろんベーコン自体は素晴らしいですが。9月1日まで。
それにしても豊田市美めっちゃ久々。石上純也展以来か。あのボランティアの日々が懐かしい。。。
次回の反重力展もおもしろそうなので、また年末あたり名古屋市美のハイレッドセンター展と併せて行くことになりそうです。あいトリは微妙。
今回小吹さんもつぶやいてましたが、名古屋駅からバスを使ってみました。めっちゃ快適!おすすめです。
http://www.meitetsu-bus.co.jp/express/toyota/


ハルトシュラ mental sketch modified -Jimin Chun /川村元紀展-@ CAS
Twitterを通して知り合った長谷川新さんキュレーションの展覧会に行ってきました。
長谷川さんはお若いのにアートクラスタぶりが半端なくて、毎度勉強させてもらってます。
川村さんの話は長谷川さんを通して知っていたものの、作品を観たことはなく、正直あまり僕の得意な作品ではない感じを受けていたので、観に行くのが怖かったんですが(笑)、意外にといったら完全に失礼ですが、楽しんで観られました。
もっとわけわかんないものを想像してたんだけど、造形的に腑に落ちるというか、単純にきれいな形がいくつか発見できました。これは彼の意図ではないかもしれないし、まちがった見方なのかもしれませんが僕はそう見ました。
Twitterとかで流れてくる発言や長谷川さんの見解から、作品から意味を拒むというキーワードが出て来るんだけれど、確かに意味はわからなかったです。でも造形物的に「わかる」という。でもその先に一体何があるの?って単純に思いました。
例えば前述のベーコンも意味(或は物語)から逃れようとしてきた作家の一人だとも言えるけれど、彼はその逃げ方が潔いというか、逃げてる感じがしないんですよね。
川村さんの作品は、そこから逃げてる感じを受けたんですが、じゃあその先に?ってのが見えなかった。
まあ、もっと突っ込んでいくとその先もあるんでしょうけど、作品からは少なくとも見えなかったですね。
多分その辺は最終日のトークであったのかもしれません。
あと、もう一方ジミンさんという韓国の作家さんの作品も一緒に展示していて、川村さん同様素材に日常品が使われてるという共通点はあるものの、川村さんとジミンさんの壁の間に驚く程ビビッドな違いがありました。壁の面でまったく色が違うというか。その辺りのキュレーティングポイントも聞いてみたかったです。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

フランシス・ベーコン展@東京国立近代美術館

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「待ちに待った」という形容詞がこれほど相応しい展覧会も久々な気がします。
日本では実に30年ぶりのフランシス・ベーコン展です。
近年のベーコン絵画の価格高騰の中、国内でこの規模の展覧会は奇跡と言えるかも。
実際本展を企画された保坂健二郎さんも2009年テート、プラド、メトロポリタンでベーコン展が開催された折にもartscapeの記事で「ベーコン作品の価格が高騰してしまった今日では、そうしたリーディング・ミュージアムでないとその回顧展を開催できなくなってしまったのだろうかと、美術館人としては不安になってしまうのである。」と述べられていて、その数年後に実現させるなんてすごいです。
僕自身もテートでの展覧会見れなくて悔しい思いをしたので今回本当に嬉しい。
「2008年に注目する作家/展覧会とその理由」

さて、そんな奇跡の展覧会ですが、内容は33点、そのうちトリプティックが6点と、一見少ないようにも感じられますが、実際見てみるとこれでも相当お腹いっぱいになれます。
これまで何度も図録で見てきましたが、やはりあの大きさで見ると図版と全然違う!
ベーコンの絵画は大体等身で描かれているので、迫ってくる感じがすごい。
色の鮮やかさや、キャンバスの裏地がそのまま出てるやつとか生々しい。
そしてなんといってもトリプティックがずらっと並んだ部屋は言葉も出ませんでした。
特に晩年、死の数年前に描かれた1987年のトリプティックにはやられました。
あそこまで物語の読めない絵画は見たことがありません。
絵画はやはりどうしてもそこに何かを読み取ろうとしてしまうのですが、ベーコンの絵画はそこをすごいパワーでねじ伏せます。抽象画ならまだしも、歪んでいるとはいえ、こうしてはっきり人物を描いているにもかかわらず、圧倒的な沈黙で目の前に現れているのは本当に奇跡。
この展覧会は身体をひとつのテーマに挙げていて、このトリプティックが展示されてる部屋のタイトルはまさに「物語らない身体」。
ベーコンはトリプティックという本来宗教画など伝統絵画に使われるやり方を敢えて使い、絵画の「物語る」という役割を改めて剥ぎ取っています。
そこには何段階もの否定が繰り返され、大きなポリフォニーとなって、「ベーコンの絵画」としか言い様のないものまで昇華させています。すごすぎる。
また、彼は積極的に金色の額を使っていて、これもまた伝統絵画の因習を利用しています。
近年の画家は額に入れずに、キャンバスむき出しで展示することが多いですが、ベーコンは必ず額装します。それも決まって金色の額。これが不思議とどの絵画にもフィットしているんですよね。これもまた現物見ないとわからない効果ですね。図録には額縁まで載せませんし。そしてまたその額のアクリルの反射が暗い絵だと強くて絵が見にくかったりするんですが、これもベーコンの意図。これをベーコンは「距離」と言ってますが、この体験も生で見てなんぼです。
あと展覧会には土方巽やフォーサイスのまさに身体を使ったベーコン的ダンスも映像で見れます。

今回、この展覧会では何度かレクチャーもあって、なんと「初級者編」「中級者編」「上級者編」と分かれていて、男なら「上級者編」でしょ!ってことでこれに合わせて聞きに行きました。
以後後学の為ほぼメモです。登壇者は担当学芸員の保坂健二郎さん。
のっけからTwitterの画面が出てきて面食らいました。
元学芸員の小松崎拓男さんの本展に対する辛辣なコメント。これです。
その中の「ベーコンってもっと暴力的なのでは?」という言葉に保坂さんは引っかかった模様。
しかし、こうしたパブリックな場で応答するとは保坂さん凄いですw
実際ベーコンも自分の絵を「an attempt to bring the figurative thing up on to the nervous system more violently and more poignantly (人物像を神経組織に対してより暴力的にそしてより痛烈にもたらす試み」と評しているところからも「暴力」はベーコンを語る上で必須単語みたいなものです。
この「暴力」という言葉1つとって見ても色々解釈があって、まず哲学者のジョルジュ・ソレルは、暴力をforceとviolenceに分け、前者が物理的暴力、後者が意志的/創造的力に分類。
またベンヤミンは神話的暴力と神的暴力に分け、前者を隷属を強要する力、後者はその隷属を打破する力と分類。
どちらにしろ、ベーコン絵画に現れる暴力はviolenceであり、神的暴力であるということはわかると思います。
つまりリテラルな暴力じゃないということ。
一方彼が選ぶモチーフにはリテラルな暴力(force/神話的暴力)の含まれるものが多いのも確かです。
と、その前に彼は自分の絵を描くのに写真を使っていたというのは彼の絵画を読み解くのに重要だと思います。なんせ肖像画すら写真家に撮らせてその人を前にして描くということをほとんどしなかったそうですからね。(しかもその撮影現場にすら立ち会ってなかったという。。。)一旦ものごとを写真にしてしまってからじゃないと描けなかったんでしょうね。そういう意味では、ベーコンという画家は極端な「20世紀画家」なのかもしれません。彼は1909年に生まれ、1992年に死んでいますが、見事に20世紀を走り抜けています。20世紀しか知らない画家という言い方もできますが、これだけ画像に溢れている21世紀に生きていたらどうなってたんでしょうか。
それはさておき、彼の死後、あのカオスなアトリエから様々な図像が発見されました。
マイブリッジやヴェラスケス、エイゼンシュタイン等の画像を利用しているのは生前のインタビュー等で明らかにされていましたが、今回のレクチャーではナチスのイメージがたくさん見つかったことを知りました。最近の出版されたイギリスの美術史家マーティン・ハマーが書いた「Francis Bacon and Nazi Propaganda」という本で、多くのベーコン絵画がナチスの写真を元に描かれていると主張されています。なるほど!ってやつと?ってやつがありましたが(笑)、確かに「暴力」を表すのにナチス程優れたイメージもないでしょうね。
「暴力」に近いもので「権力」の問題もあります。これは彼を一躍有名にした教皇を描いたシリーズに顕著にあらわているのかもしれません。彼は1965年を機に教皇の絵を描くのをやめます。それは、彼がそれまで絶対権力の象徴として鎮座していたことがベーコンにとって優れたモチーフであったのに、1962年から65年まで行われたバチカン公会議で、そのヒエラルキーが崩れ、ベーコンにとっては一気に興味の対象ではなくなったのかもしれません。その辺りは展覧会中にも触れられていますが、一見ランダムに選べている図像でも、そこにはある種の必然性が潜んでいることを教えられます。
また、写真を引用するということで言えば、イギリスの画家、ウォルター・シッカートの影響も欠かせないと保坂さんは言います。確かにシッカートの絵のポーズとまったく同じような絵もあります。(今回出品されてる1959年の「横たわる身体」なんかはまさにそうですね)
また、今回なるほど!と思ったのが、ベーコン絵画に良く出てくる矢印の謎。これは、彼のアトリエから出てきた柔道や空手、忍術(!)のようなマーシャルアーツ系の本にヒントがあって、よく組み手なんかを解説してる図で、→が描かれてて、それもそのまま引用しちゃってるんですね。目から鱗でした。。。
彼は徹底して客観的な目を持ち合わせていたんですね。
だからこそ、写真を見て描くというプロセスはより客観的に描くのに重要だったのでしょう。
時代もちょうど世界が冷戦へと移り、まさに「見える暴力」から「見えない暴力」へと移行していき、ベーコンの絵画を追って行くと時代の空気みたいなものが反映されてる気がします。
一方で、彼の古典に対する憧れというのもおもしろくて、これだけ20世紀を反映しながら、彼が言及するのはヴェラスケスやレンブラントのような画家達が大半です。
そして、ボードレールやオスカー・ワイルドの影響も大きく、特にボードレールの提唱したモデルニテの概念は、彼の人生に置いて大きな指針となっていたようです。
ちなみにその概念とは、non fini(未完)、fragmentaire(断片的)、insignifiance(無意味)、autonomie(自己言及的)で、そのうち断片的や無意味というのは、彼の「物語らない」絵画を見ているとよくわかります。
ここでおもしろかったのはnon finiに関しての保坂さんの考え。
近代以前の絵画には、「完成」というゴールがあった。
つまり絵画の上からニスを塗ることでこれ以上手が加えられないようにすること。
近代以降の絵画は絵の具そのものの物質感を残して、決してニスなんて塗りません。
タッチをそのまま残したマネが近代絵画の父と呼ばれるのはその為です。
しかし、ベーコンは近代の画家である以上それに従うのは当然ながら、やはり古典の憧れは捨てきれない。
そこで登場したのがあの額縁だったのではないかというのが保坂さんの推測です。
ベーコンはニスの代わりにアクリルで絵画を被うことで、昔の絵画のような反射を再現しているのではと。
これはインタビュー等でも発言されてないので実際どうかはわかりませんが、おもしろいですね。
そんなこんなで、相当内容の詰まったレクチャーで大変勉強になりました。
にしても前に並んでたおばちゃん4人組は果たして本当に上級者だったのかな。。。

この展覧会は東近美で5月26日まで開催された後、6月8日より豊田市美術館へ巡回します。
谷口吉生建築とベーコン。。。これはこれで別に見てみたいですね。。。
フランシス・ベーコン展公式ウェブサイト http://bacon.exhn.jp/


東近美では、「ゆがむ人」と題して、ベーコンにちなんだコレクション展も開催中。
ナウマンの映像など、意外ながらベーコン絵画を連想させるものや、ベーコンも持っていたと言われるミショーの絵画なんかもあって、小さいスペースながら見応えがありました。
あと、ベーコン関係ないけど、村上春樹の新作小説の表紙になったのとは別のバージョンのモーリス・ルイスの絵画も展示されてます。偶然かな?



テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

フランシス・アリス展 メキシコ編@東京都現代美術館

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今年初上京物語です。
まずは都現美へ。
とりあえず前回のMOTアニュアル2012のカタログがどうしても欲しかったので、入館してショップに直行してなんとかゲットしました。これでこの上京の目的半分は達成。
平日ってこともあってかがら空きで、客自分しかいませんでしたw
で、現在都現美ではフランシス・アリス展がやってます。
しかも「メキシコ編」と「ジブラルタル海峡編」という2期に分けての開催ってことでかなり力入ってます。広島現美にも巡回するみたいやけど、あっちは一気に1回でやっちゃうみたいやから全作品出るとは思えないのでこっちで。ただ6月末から始まるジブラルタル海峡篇行けるか微妙なんですが。。。
とにかく今回はメキシコ編。
彼はベルギー人でメキシコに在住。しかも建築出身という中々歪んだ経歴。
それを端的に表してるのが、最初の壁の大きな写真、「Turista(1994)」。
地元(メキシコ)の配管工とかに混じって、「Turista(観光客)」という看板を掲げて立ってます。
最初アリスの顔とか知らなかったので一瞬どの人かわからず焦りましたが、最後の最後、会場を一巡したところでまたここに辿り着くので、その頃にはアリスの顔が自分の頭の中で馴染んでて、改めて味わうことができました笑
全部挙げていくとキリがないんで、いくつか好きな作品を。
アリスは実際ペインティングとアニメーションの作品しか見たことがなくて、イマイチ自分の中で作家像がわからないまま見て回って思ったのが、凄く美的感覚の鋭い人なんだな、と思いました。
結構政治的な背景がフィーチャーされがちなんだけれど、それ以前にどの作品も詩的で、行為として美しくてとても好感が持てました。
特に氷を溶けきるまで街中引いて回る「Sometimes Doing Something Leads to Nothing (1997)」や、広場の塔の周りを羊を引き連れて歩く「Patriotic Tales (1997)」や、今回の目玉でもある、ドンキホーテよろしく竜巻に突っ込んでいく「Tornado (2000-2010)」なんかは、見ていてうっとりしました。
また出品作ではないけれど、会場で流されてたドキュメンタリー内の800人の人々と砂漠の砂を掃きながら巨大な砂山を超えていく「When Faith Moves Mountains (2002)」なんかはヴィジュアルとしても行為としても本当に美しいですよね。
この「行為として美しい」というのが彼の真骨頂かもしれませんね。
彼はドキュメンタリーの中でこう言ってました。
「時に詩的なことをすれば政治的になり、政治的なことをすれば詩的になる」
ジブラルタル海峡編も楽しみです。メキシコ編は6月9日まで。こちら


都現美では現在同時開催で桂ゆき展もやってます。
結構好きなペインティングなんですが、キャラっぽいのが出てくる辺りは萎えます。
アメリカに渡って抽象絵画になっていく辺りが一番好きですね。ロスコっぽいのもあった。
晩年はオブジェ思考が強いのか、こっちもあまり好きじゃなかったです。
また、コレクション展は相変わらずのクオリティ。本当コレクション見るだけで価値がある。
今回は「イメージ」を焦点に当てて、1923年の関東大震災から、2013年の現在を結ぶ100年の物語。
最近戦前から万博ぐらいまでの日本美術系の本を読み漁ってるので、前半はかなり勉強になりました。
最後の最後に去年都現美で個展を開催したトーマス・デマンドの東日本大震災直後の福島第一原子力発電所内部を再現した写真で終わってるのにはゾクッと来ました。一室あの作品だけってのもいい。
なので、ピピロッティ・リストをいつまで置き続けるんだっていう思いもありましたw
せっかくデマンドでビシッと終わってるのに、おまけみたいにリストがある。。。悪い作品じゃないけどこれだけはずっと置いてますよね。なんでやろ。片付けるの面倒なのか(ぉ
2階は杉本博司から始まり、「指差し作業員」こと竹内公太の作品があったのにはびっくりしました。所蔵してたんですね。あとジョルジュ・ルースも所蔵してたのは知らなかった。
これだけで立派すぎる企画展ですよね。都現美はいつもお腹いっぱいになります。御馳走様です。

「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」@原美術館
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アリスのドキュメンタリーの中で「この国(メキシコ)で現代アートをやるということは搾取になるのかもしれない」といったようなことを言ってましたが、今回のソフィ・カルの作品にはその「搾取」をすごく感じました。
まずのっけからテーマが海ということで、杉本博司の「海景」があってビビった。豪華。
そして大きな部屋では、海をバックにカメラを見つめる老人の映像と、カメラに背を向け、海を見つめている(ように見える)人々の映像群。
二階では、盲者の人々の写真と、彼らがその視力を失った時のエピソード、そして最後に見たものの写真。
彼らを見世物とすることで、この展示は成立している。
彼らの人生を彼女の作品にすることによって、搾取しているとも言えるのかもしれない。
ただ、ソフィ・カルの見せ方があまりに美しく、そういった搾取も美の前には良しとせんばかりの気概があって、やはり彼女はすごい作家だなと思い知らされた展示でもありました。6月30日まで。

武蔵美優秀展@武蔵野美術大学
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武蔵美の優秀展そのものというより、僕のTwitterで話題だった、百瀬文さんの「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」を見に行きました。
この作品は、聾者である木下知威という方とのインタビュー映像みたいなもので、彼は手話を使わず、百瀬さんの唇の動きを見て会話するんですが、その会話は意図的に歪められ、次第に百瀬さんは方言を交えたり、でたらめな音を当てはめたり、最後には無音で口だけ動かして木下さんと「会話」している。
木下さんは唇の動きしか見ていないので、そんなことおかまいなしにその「会話」は成立している。
最初百瀬さんが話し言葉を歪め始めた時に、なんだかすごく背徳感情のようなものが湧いて気分が悪くなりました。ここにもカル同様の搾取を感じる。
以前木下さんにお会いしたことがあって、筆談等を通して会話させてもらって、最も印象的だったのが、僕が今はTwitterとかがあって、文字だけでやり取りできるので便利ですね、と言ったら、確かに日本語の出来る聾者にとっては便利だけどね、という言葉が返ってきて唖然とした。自分は、目が見えるんだから文字を読み書きできるのは当たり前と決め込んでいて、実は多くの聾者の人は読めても書けない人が多いそうです。なぜなら手話には助詞がないので、助詞の使い分けが本当に難しいんだそう。やはり言葉は耳で覚えて行く要素が大きいので限界があって、それをある一定の年齢までに習得しないと一生できないままらしい。
その人の立場に実際に立ってみないとわからないことってたくさんあって、多分百瀬さんの作品見ながら、自分達はわかりあえない中、綱渡りみたいな状態でなんとかコミュニケーションをとっているといったことを思いました。
ところで、五美大展の時はヘッドフォンで展示されてたそうだけど、個人的にはその方がよかったんじゃないかな、と思いました。その状態でなら音無しバージョンでも見れて、より木下さんと近い立場でその「会話」を聞くことも出来たんじゃないかと。映像には字幕もついてるので、音無しで見たらやはり普通に喋ってるようにしか見えませんし。
あと優秀展一応ぐるっと回ったけど、特に印象に残ったのはなかったな。。。
博士課程の発表展も同時にやってて、以前アートコートフロンティアで拝見した野村在さんの展示がやってた。
以前は破裂する液体や砂などが展示台の上に無形の彫刻のような写真作品を制作されてたけれど、今回は具体的な物が風景の中で重力を失い浮遊しているような写真作品だった。
また、真ん中の機械が段々光りはじめるんだけれどあれは何だったかよくわからなかった。。。

Chim↑Pom「PAVILION」@岡本太郎記念館
「背徳感」といえばこの人たちの真骨頂かもしれません。
ただ、今回は岡本太郎との共演ということもあり、すごく優等生な感じの展示でした。
でも僕はこっちの方が好きです。太郎への敬意をすごく感じました。
というか、今回の展示はなるべくしてなった必然性を感じる展覧会で、納まりがすごく良かったです。
目玉は多分「岡本太郎の骨」でしょうね。
月の石よろしく恭しく展示されております。
行ったらエリィ女史がアイドル写真のようにして記念撮影してたw

他には
田中功起 「Beholding Performer, Performing Beholder」@ CNAC LAB
Simon Fujiwara「Aphrodisiac Foundations」@ TARO NASU
楽園創造(パラダイス)―芸術と日常の新地平― vol.1 平川ヒロ @ gallery αM
「椿会展2013 -初心―」@ SHISEIDO GALLERY
なんかも見ました。
田中さんのやってたCNAC LABって会場が中々見つからず、なぜかゲストルームみたいなところに出てしまって完全迷子になりつつ辿り着きました。
今回はマリンバ奏者2人がお互い演奏者と観者になり、観者は演奏者を鏡で映し出す。
そのそれぞれの映像を左右の壁にマルチプロジェクション。
会場内にもいくつか鏡が吊るされて、映像がそこにも映る。
どうしても両方一度に見ることはできないけれど、鏡の角度によっては見ることが出来る。
そんな中、いつの間にか両方とも同一人物になってたりしてドキッとしました。
サイモンの展示は、父と母が初めて出会った帝国ホテルを舞台に繰り広げられる物語を地図と文章で表してて、ここまで個人史を利用して作品を作れるサイモンはやはりすごいです。
最後は帝国ホテルのバーを再現したものまで登場しました。
αMでやってた展示はよくわかりませんでした。リアルジャパネスクみたい(悪い意味で)
椿会も毎回ですが、イマイチ統一性もなくよくわからない展示ですね。
そして相変わらず内藤さんの作品はやっぱりすごい。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

ス・ドホ「パーフェクト・ホーム」@金沢21世紀美術館

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12月の悲劇のリベンジで再び金沢を訪れました。。。
そこまで好きな作家じゃないけどここまで来たら引き下がれない質でして。
といことで、スー・ドーホーの展覧会です。
なぜか金沢でも広島でも表記がス・ドホと全くのばさなくなってしまいましたが、僕の中ではのばす方が自然なので今後もスー・ドーホーでいきたいと思います。

今回の展覧会は、昨年広島市現代美術館でやってた展覧会の巡回かと思ってたら違いました。
広島のは「in between」というタイトルで、今回のは「PERFECT HOME」。
家をテーマに絞った展覧会で、展覧会として非常にまとまっていたと思います。
のっけから新作で、おなじみの布で出来た門に今回は映像が投影されてました。
この展開は初めてですね。
映像自体はオリエンタルな感じが強過ぎてあれでしたが、門が投影用の布になって機能してる様は気持ちよかったですね。烏が群れるシーンは圧巻でした。
次の部屋ではベルリン滞在時に発表した布でできた廊下。これぞ真骨頂って作品です。
布でできたドアノブ等が標本のように展示されてるのがおもしろかったです。
他にもトラックで移動する家や、敷地と敷地の間に存在する家、西洋の家の中に存在する東洋の家、西洋の家にパラシュートでやってきて激突する東洋の家等、家ネタ満載w
天井高を利用して3階まである布の家とか、空間とかなりマッチしていて気持ちよかったです。
個人的に彼の人形を使った作品より、家の作品が圧倒的に好きなので大満足でした。
まあ、ここまでまとめて家ネタ連発されると少し疲れましたが。。。
展覧会としては非常によくできたものだと思いましたね。

同時開催で、「ソンエリュミエール、そして叡智」という壮大なタイトルの展覧会も。
こちらはChim↑Pomや梅田哲也等の若手から、ゴヤまで幅広い展示です。
のっけから「SUPER RAT」は強烈でしたね。先日NHKでちょうどこのネズミの特集してました。
梅田さんの作品はインタラクティブでかなり楽しまれてました。
他にもフィッシュリ&ヴァイスの映像や奈良美智のセラミック彫刻なんかもありました。
中でもチャップマン兄弟のヒットラーの絵の上から直接上描きした作品は、その日にtwitterで流れてきた作品だったのでめっちゃタイムリーでした。
でもこの展覧会での収穫は村上隆の「シーブリーズ」(1991)が見れたことですね。
彼の初期作品は、結構好きですが、中々生で見られないので。
特にこの作品は気になってて、矩形の構造体のシャッターが決まった時間に開いて、中には裏表8灯ずつ設置された水銀灯がものすごい光を放っていて観客の目を眩ます作品。あの配置は曼荼羅をイメージしているんだろうか。実際眩しさと共に来る熱もすごかったです。
マイケル・リンの壁は、今回のために村上隆の壁紙に変わってました。
こっちは相変わらずのスーパーフラットでしたが。

あとは、津村耕佑率いるファッションブランドFINAL HOMEの展示もやってました。
スー・ドーホーの「PERFECT HOME」に合わせたんでしょうか?笑
好きなブランドなので展示があると聞いてうれしかったですが、狭いのとプレゼン方法がシンプル過ぎてあまり魅力を伝えきれてなかった感がありました。
3.11以降の世界により響くコンセプトなだけに勿体なかったですね。

スー・ドーホー展とソンエリミュエール展は3月17日まで。
来月16,17日にはピピロッティ・リストの映画上映があるらしい。。。他にどこかでやらないかな。
FINAL HOME展は6月30日まで。
連休だけあって凄まじい人でした。来る度にすごい美術館だなと思います。
そして久々にここのランチビュッフェも堪能できた。いつもいっぱいで入れない。
そんでもってこんだけ金沢来といて初めて前の兼六園にも行きました。迷路みたいだった。
そんなこんなで金沢リベンジ達成。自分お疲れ。

テーマ : アート・デザイン
ジャンル : 学問・文化・芸術

APMoA Project, ARCH vol.4 奥村雄樹「善兵衛の目玉(宇宙編)」@愛知県美術館

名古屋に行ってきました。
主な目的はうつせみ展のカタログをアートラボあいちの皆さんにお届けすること。
皆さん元気そうでなにより。新年の挨拶もできてよかった。
ラボでは販売もしていただけることになったので、気になる方はラボにて直接お声かけください。サンプルも見せてもらえると思います。
http://www.artlabaichi.net/

そのラボでやってた日韓交流展が中々見応えがありました。
展示がすごくかっこよかった。
中でも笹岡敬さんの作品がよかったです。
カメラに照明を直接当てるとあんなことになるとは。

それと話題の「であ・しゅとぅるむ」展にも行ってきました。
インディペンデント・キュレーターの筒井宏樹氏による企画。
様々な作家がごった煮で展示されてて圧巻です。
敢えてちゃんと見れないようになってるんでしょうか。気散じ。
泉太郎さんが出展されてて、もしかしたらまだ作業してるかもと思って行ったら本当に作業中やった笑
作品は一応見られる状態になってて、どこが完成してないんですか?って聞いたらわからないって言われた!「でもほら、なんかしっくりいってないでしょ?」って笑
がんばってください!
あと、その下では「のこりもの」という様々な分野の学者が集まって作った展示があって、興味深かったけどもう少し大きな規模で見たかったと思いましたね。

今回観た中で一番印象深いのは愛知県美でやってる奥村雄樹展
奥村さんの作品は前から気になってて、ちゃんと観る機会が中々なくて、実際初めて観たのがこないだのMOTアニュアル。あれもでも変化球な感じやしね。
今回のは以前にも発表されてる「善兵衛の目玉(宇宙編)」。
日本昔ばなしに出てきた話を元に落語家の笑福亭里光とコラボして作った創作話。
話自体は、善兵衛という人物がある日物見の集団の中で目玉を取り出して持ってた傘につけて高いところからものを見てたらカラスに持ってかれて宇宙まで行って、やがてカラスがたまたま善兵衛の家の庭に落っことして、またはめたら今度は逆にはめてしまい、体の中をのぞくことになる。で、善兵衛はその技を使って医者になる決心をして、、、っていうお話。
この辺は奥村さんの「くうそうかいぼうがく」につながるテーマですね。
あとイームスの有名な映像作品も思い起こしました。(この映像改めて見るとめっちゃGoogleマップですね。。。)




その落語の様子を映像にしたもの。
わざわざ「映像にしたもの」と書いたのは、この「映像化する」という行為そのものが意識的に作品に取り入れられてるのを強く感じたからです。
この落語自体は、貝塚市にある岩崎善兵衛ランドというところで上演されました。
この岩崎善兵衛という人物は日本に望遠鏡を普及させた人物で、その当時の望遠鏡も今回の展示室の前に展示されてます。
元の日本昔ばなしの「善兵衛」と岩崎善兵衛は特に同一人物というわけでもないんですが、目玉の話と望遠鏡とが合致して、この善兵衛ランドに企画を持ち込んだそうです。
大阪でやってるんだったら観に行きたかったな、と思う反面、この作品は映像になってから見ないとやっぱり奥村さんの作品にならないと思いました。落語自体はあくまで里光さんの作品。
最初は純粋にその落語を楽しんでたんですが、最期の最期、落語が終わってからお客さんがはけていく中で、撮ってたカメラも映り込むんですが、その瞬間やられた!と思いました。
というのは、この「目玉」の話を通して、映像を見ることのレイヤーをすごく意識させられたからです。
まず落語を見るお客さんの目があり、その次にカメラという目があり、さらにその映像を見ている自分の目があるという3段階のレイヤー構造です。
また、この話自体が、デカルト以降の近代的視野、つまり一点透視図法のような固定された目玉から完全に自由なのも面白いですよね。宇宙まで行ったり体内に入ったり。
22分の映像でしたがすごく楽しめました。2月11日まで。
クリムト展のお客さんがすごい勢いで通り過ぎて行くのも楽しかったですw

名古屋滞在たった2時間半でしたが、ここまで観れるとは我ながらすごい。
本当はこの後京都も回る予定でしたが体調不良により持ち越し。。。


追記
ちょうどこの記事に出てくる泉さんと奥村さんの作品について言及してる作家の水野亮さんのツイート群がおもしろいのでリンク貼っておきます。>http://twilog.org/drawinghell/date-120318

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