「想田和弘と世界」 @ イメージフォーラム

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東京に住んで最も大きな恩恵は映画と舞台だと思います。
展覧会と違って映画や舞台は日時がしっかり決まってるのでそんなピンポイントで足を運ぶのは地方に住んでると困難。
ということで、今回は引っ越してきていきなり映画三昧な日々の話。

映画なんてどこでも観れるやんって思う人もいるかと思いますが、僕が観たいマニアックな映画は東京でしかやってないことが多いのです。あと封切りも日本一早いし。
以前のアピチャッポン特集なんかもそうで、映画観るために高い交通費と時間かけるなんて、と思いつつ観に行ったもんです。。。泣
実際その時に観た「トロピカル・マラデー」は日本でDVD化もしていなければ、いまだに東京以外での上映はされてないと思います。
特に渋谷には今回のイメージフォーラムをはじめ、アップリンクやユーロスペースなど、マニアックな映画館が多いのです。
で、今回は想田和弘特集
合計6本、3日間イメージフォーラムに通いました。。。

想田さんの映画を初めて観たのは2015年の「牡蠣工場」という映画。
それまでも作品はなんとなく聞いてたけど実際観たのはその映画が初。
そもそも彼の名前を強く意識したのはTwitterの彼の発言がとても興味深かったから。
当時スイスでTwitterをしていた頃にフォローし始めて、右傾化していく日本を冷静に見つめてらっしゃって、とても参考になる意見が多く、ぜひ作品を観てみたいと思ったものです。
帰国後「牡蠣工場」という映画が封切りされるということで舞台挨拶に合わせて十三の第七藝術劇場まで観に行きました。
彼自身が「観察映画」と称する通り、そこにはナレーションもなければ、特定の人物を追うわけでもない、淡々と尾道の牡蠣工場の日常を「観察」するフィルムでした。
しかしそこにはいろんな問題が孕んでいるのがあぶり出しのように見えてきて、とても興味深かったのです。
それまで僕の中でドキュメンタリー映画というのは、何かしら強い主義主張があって、多少一方的であってもそれを実証するために映像をつなげていくものだという意識がありました。マイケル・ムーアなんかが顕著。
その方が観客も観やすいし、メッセージが明確なのでなるほど、と腑に落ちる。
逆にメッセージが曖昧なドキュメンタリーほど観ていてつまらないものはないのです。
しかし想田作品の場合、それが全く苦にならない。
多分想田さん自身、撮りながらその場その場で事実を発見して驚いたりしながら撮ってるのではと思うんだけど、観客とその時点を撮ってる想田さんの感情が一致してる感じがあって、とても新鮮。
その時のトークで印象的だったのが、彼がそういう映画を撮り始めたきっかけの話。
想田さんは元々テレビ局のドキュメンタリーを撮っていた人なのですが、9.11が起こった時に実際WTCで観た光景ってのが、あのツインタワーの模型がばか売れしてるって場面だったそうで、でもそういう場面は「怒りと悲しみ」というテーマの元製作されてるテレビのドキュメンタリーでは使えないもの。でもそれも現実だよなぁと、フツフツと思い始めて今の「観察映画」というものを作ろうと思われたのだとか。
(なんで「牡蠣工場」の記事を書いてなかったのか自分で謎。。。)

そして2007年、初の「観察映画」が「選挙」。
大学時代の同級生山内和彦さんが小泉政権の自民党推薦で地方議員選挙に出るというのでその模様を映し出した一本。
これがまあ、世界にはとてもお見せしたくないほど幼稚な日本の、というか自民党の選挙活動が残酷なほど露わに映し出されています。
そこに翻弄される山内さんが不憫で不憫でなりません。
その後山内さんは自民党を辞め(辞めさせられ?)、再び無所属で選挙に出ることになります。
それを改めて追ったのが2013年の「選挙2」。
これはぜひセットで観るべきものだと思いました。
1でただただ不憫だった山内さんが2で豹変してます。
というより、元々2の奔放なのが山内さん自身で、いかに1で歪められてたかがはっきりわかる構造。
政局から離れていた山内さんが、再び無所属で選挙に帰ってきたのは東日本大震災後の原発問題がきっかけ。
それを推し進めてきた自民党に一時期でも所属していた自分の責任に立ち上がったのです。
結果としては残念ながら通りませんでしたが、この映画に2があるのはとても素晴らしいと思いました。
2では1で応援していた自民党員がそこを離れた途端に態度を翻してる姿も映し出されます。
いやぁ、マジで自民党。。。
これが日本の政治かと思うと憂鬱になりますが、これが現実。
その後に想田監督と山内さん自身のトークもめっちゃ面白かった。

他に面白かったのは「演劇」と「演劇2」。どちらも2012年の作品でそれぞれ3時間近くある。。。
最後のトークも合わせたらイメフォに7時間近くいた気がする。。。
それでもやっぱり見飽きることなく面白いんだよなぁ。
これは平田オリザを追ったドキュメンタリーなんだけど、改めて平田オリザの怪物性が浮き彫りになる。
僕は彼の演劇自体は全然好きじゃないんだけど、彼自身は本当に興味深い人間だと思う。
発言もまともで理路整然としていて誰でも理解できるし、冷静に物事を見ている。
一度映画の中で俳優を怒鳴ってるシーンがあるけど、そこ以外はどんな場面でも冷静沈着。
びっくりするのが稽古中でも15分休憩の間に熟睡する技。
2の最後はそのいびきで終わるのも秀逸。
ただただ平田オリザという人間の巨大さを思い知る映画だけど、そこにしっかり想田さんの観察眼が生きてる。
本当にどこまで映すねんってぐらい執拗にカメラが入って行くんだけど、まるで透明人間みたいに全然気にしない人々。
普通カメラがあると、人って意識しちゃうもんだろうけど、それが全くない。どうやってるのか謎。
多分想田さんが空気になるのが上手い人間なんだろう。
その透明性が、平田オリザを何のノイズもなく6時間近く見ても飽きさせないマジックなんだと思う。

後の2本、「精神」と「Peace」はちょっとイマイチだったので割愛。
なんか普通にインタビューとかしちゃったりしてて、「観察」から離れる場面が多かったので。
上の「選挙」と「演劇」はほとんど想田さん自身が話しかける場面ってないんですよね。
特に「演劇」は、インタビューしてる姿をとったりして、インタビュアーやりにくいだろうな、って笑


で、さらに2本立て続けに新作が上映されました。
一本は「港町」。
「牡蠣工場」を撮ってる時に「たまたま」撮れたおこぼれみたいな映画なんだけど、僕は想田監督作品の中で、これが一番すごい映画だと思います。
というのも、これまでの映画は「観察」と言いながら、まずターゲットを絞らないと撮れない映画。
しかしこれは本当にたまたま撮れちゃったギフトのような奇跡。
はじめ、どこにでもある港町で、その辺のおじいちゃんやおばあちゃんを撮ってるだけかと思って、何を見せられてるんだろう感がすごいんだけど、おばあちゃんがいきなり話し始めた内容がすごすぎて、いきなり時空が歪んじゃう。
どこにでもある風景なんて実はないし、ありふれた人生なんてのもどこにもない。
何の作為もなく撮り始めて結果的にここまで大きなものを撮れたのは、これまで監督が「観察」を続けてきたご褒美なのかもしれない。
こんな作品これから一生撮れないかもしれないけど、積み重ねるって大事だなと思いました。
あと白黒ってのもいい。この現実をしっかり撮ってるのに非現実感のある感じが素晴らしい。

もう一本、「THE BIG HOUSE」は「港町」と真逆の大スペクタクル作品。
アメリカンのミシガン大学にある超巨大スタジアムを「観察」したもので、想田作品初の海外舞台。
とはいえ彼はもうずっとNYに住んでるし、ようやく本場で撮り始めたなっていう感覚。
しかしこれはちょっと非現実すぎて中々気持ちが入っていけなかった。
確かにその舞台裏に色んなレイヤーが見え隠れするんだけど、話が大きすぎた。
次回作はアメリカの冤罪で釈放された人々を追うドキュメンタリーらしいけど、そっちに期待。


とまあ、私の東京映画ライフは想田監督特集で始まりました。
他にも見事パルムドールをとった是枝監督の「万引き家族」や河瀬監督の「Vision」も観ました。
まさか是枝監督が河瀬さんより先にパルムドールとはと思いましたね。
なんか苦手なんですよね、彼の映画。今回もいいんだけど深部にまで刺さらないというか。
むしろ賞は取れなかったけど、同じくカンヌにノミネートしてた濱口監督の「寝ても覚めても」を早く観たい!
河瀬さんの新作は、正直ひどかった。。。ついにファンタジーになってしまったか、という残念感。。。

という感じです。しばらく映画はいいや笑
次回は舞台三昧な日々をお送りします。(予定)


Bye Osaka. Hello Tokyo.

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私事ですが去る5月25日に東京へ引っ越しました。
この歳でまさか東京に住むことがあるなんて人生は面白いですね。
東京でやりたいことが見つかりました。
去年からそれに向けて色々準備していて、今も準備真っ只中です。
まだご報告できる段ではないのでいずれ。
ということで僕を30年以上育ててくれた大阪に感謝。
最後に太陽の塔の中に入れてよかった。本当は当時のままの姿で見たかったけど。
東京の皆さま、改めてよろしくお願いします。
ブログは相変わらず細々と続けていきますのでこちらもよろしくお願いします。


森川穣

ピエール・ユイグ「ソトタマシイ」@太宰府天満宮

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ビガイルド by ソフィア・コッポラ



この時期はカンヌ系の映画の日本上映が続々と始まるので足繁く映画館に通うことになります。

そんな中でも監督賞を受賞したソフィア・コッポラの「ビガイルド」はさすがといった感じでした。
元々好きな監督ですが、前作の「ブリングリング」は正直つまらなかった。
ミュージックビデオの長い版といった感じで映画の醍醐味はほとんど感じられなかったのです。
そこから一転今作にはほとんど音楽が出てきません。
ソフィアといったら音楽が映画の中で要になることが多い印象があります。
出世作の「ロスト・イン・トランスレーション」も「サムウェア」も音楽が常に鳴ってる印象。
今作の音楽と言えば実際に映画の中で少女が口ずさむ鼻歌と、音楽室で奏でられる演奏。
BGMではなく、演者が奏でる音たち。でもこの音がやはり映画に大きな印象を残してるのは確か。
冒頭から鼻歌で始まり、森の美しい映像でスタートし、エンディングも鼻歌から。
この冒頭のシーンはなんとなく頭に焼き付いてしまいます。
そこから負傷兵のコリン・ファレルが登場するのですが、女学校の女たちを魅惑するだけのセクシーさ。
さらに学園長のニコール・キッドマンに「サムウェア」で大人と少女の間を見事に演じたエル・ファニングがファレルを誘惑するという成長を遂げるシーンも。
キャストだけでも見どころ満載なわけだけど、そこに飲まれないソフィアワールド。
これまで煌びやかな映像を撮ってきた彼女だけに、こういうダークトーンのミステリーとの相性はどうかと案じていたけど、ソフィアの柔らかな映像美はそのままに、いや、むしろその爽やかさが余計にダークさを演出していました。
ストーリー展開はネタバレになるので書きませんが、新たなソフィアの魅力が引き出された映画だったと思います。
それにしても邦題の副タイトル「欲望の目覚め」ってなんとかならんのか。。。AVかよ






お次は脚本賞を受賞した「聖なる鹿殺し」。
こちらもなんとニコール・キッドマンとコリン・ファレルの共演。
同じ映画祭で共演したものが二本もノミネートされるのはすごい。
こちらは正直内容は大したことないです。(きっぱり)
でも、見せる力がすごい。
音楽と演出と演者の演技。特にファレルの早口の感じは不気味だった。
そして要となるバリー・コーガンの不気味さがすごい。
もう顔立ちから不気味なんだけど、他の役できるのかってぐらい印象的。
同監督の前作「ロブスター」は最高だった。
独身者は動物になるという謎すぎる設定だけど、そんなの気にならないぐらい展開がうまい。
設定が突飛すぎていちいちなんで?ってならなくて済むのもいいです。
「鹿殺し」は設定が現実的なのに青年の呪いが突飛すぎてなんで?ってなっちゃうのが辛い。
「ロブスター」はその設定だけでなく、「人が人を好きになること」と「人が人を好きじゃなくなっていくこと」の普遍的なテーマもじわじわと沁みてきて飽きさせません。
前半と後半でルールが逆転するのも面白かった。
森の中にひっそりと独身者たちが住んでるのは「華氏451」を彷彿とさせました。
こちらもファレルなんだけど、役作りのためかめっちゃ太っててびっくり。でもセクシーです。
次回作に期待ですね。




あとベルリン映画祭で銀熊賞を受賞したカウリスマキの「希望のかなた」もよかった。
カウリスマキ映画の独特なゆるさをそのままに、難民問題を取り扱った意欲作。
難民問題の映画は近年何本も見てるけど、感動の押し付けみたいなのが多いんですよね。
泣ける映画=いい映画ってのは絶対違う。
その点この映画にはそういう押し付けがましさみたいなのはありません。
ただただ目の前に起きてる寛容と不寛容を目撃する。
え、なんで?ってくらい不自然に寛容なんだけど、そこに理由を詮索するのは野暮。
さらに笑えるところもたくさんだし、音楽もなんだかノスタルジック、映像もシュール。映画として素晴らしい。
皆言ってるけど、主人公が山田孝之に見えて仕方ないのはご愛嬌。
正直「ル・アーブルの靴磨き」の焼き直し感もあるけどいい映画はそれでもやっぱりいい。


あと「デイヴィッド・リンチのアートライフ」も観たけどこれはかなりの期待はずれ。
リンチのドキュメンタリーなんだけど、あくまで彼の「アートライフ」に絞ったもの。
タイトルはまんまなんだけど、やっぱり監督としてのリンチが観たかった。
最後に「イレイザー・ヘッド」の撮影秘話に移る直前で終わるっていう・・・。
「フィルムライフ」を是非観たいです。

今月はいよいよパルムドールを取った「スクエア」も始まるので期待してます。

地点「正面に気をつけろ」@ アンダースロー

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とにかくよかった。とにかく最高だった。言葉にならない。
これまで散々観てきた地点でしたが、最高傑作だったかも。

と、思わせてくれたのがアンダースローでは初となる新作「正面に気をつけろ」です。
本作はこのアンダースローで開花した才能、松原俊太郎によるもの。
松原さんは地点のレパートリーを見続けて感想文を提出するというカルチベートプログラムに参加して、その後三浦さんも審査員として参加する愛知県芸術劇場でのコンペ初めて書いた戯曲が優秀作品に選ばれそれを地点が演ずるというできすぎたシンデレラストーリーがあるのです。
その後地点は毎年神奈川芸術劇場(KAAT)との共同作品の新作に松原さんを指名。
そこで発表された「忘れる日本人」は個人的にはイマイチでした。
なので、今回はどうかなぁと不安だったのですが、素晴らしいの一言。あー最高。

今回の「正面に気をつけろ」は、ブレヒトの「ファッツァー」が元にあります。
「ファッツァー」の舞台をドイツから日本に移し、日本の戦争から3.11の事にも言及が及びます。
「ファッツァー」は地点のレパートリーとしてもかなり重要な作品で、「ファッツァー」同様空間現代とのコラボ。
前回の「どん底」は音源のみでしたが、今回は生演奏。
そしてこの空間現代の音楽が最高によかった。最高すぎた。
これまで何度も地点とコラボしてる空間現代ですが、今回が一番空間現代のまま参加していたというか、やはりこれまでは地点の演目に合わせていた部分ってのが多少あった気もするのですが、今回に関しては、空間現代の音楽がそのまま劇中に流れていて、それが全くノイズにならず、美しく一つの演目として成立していたのです。
思わず帰りにCD2枚買ってしまった。これからどんどん聞いていこう。
そこに被せるように叫び続ける演者さんたちのエネルギーは相変わらず。
音楽でかき消されてるのにセリフを発し続けるんです。並大抵じゃない。
特に「支配」について語る場面は物凄かった。
最後にランダムに番号を言うんだけど、それがめっちゃかっこいいんです。
演出も相変わらずかっこいい。
「ファッツァー」同様、この世とあの世を分けるように、真ん中に川のような鏡面の溝があり、基本は演者さんたちは溝の「彼岸」で演じてるんだけど、たまに観客席側の「此岸」に移ってくるんだけど、その時にコンビニに入る時の音が鳴るんですよね。「彼岸」に戻ると鳴り止む。最初それがコミカルなんだけど、段々とシリアスに響いてくる。その音が空間現代の音楽と合わさった日にゃ、もう痺れます。
今回の決め台詞「参ったな」もよかった。
「汝、気にすることなかれ」の「まいっか」ぐらいの力があった。
「忘れる日本人」の「わっしょい」はないなぁと思ってたので、ここ繊細に決めて欲しいなぁ。
なんせ「決め」台詞なので、決まると決まらないとで作品全体の印象がガラリと変わってしまう。
中に「ファッツァー」の決め台詞「こんちくしょー」も混じったりしてて楽しかった。
難点としては、最近の地点は、特に小林さんの独壇の場で言葉の後にタイトルつけるのが恒例になってるんだけど、前回の「どん底」にせよ、今回の「気をつけろ」にせよやはり無理やり感しかない。「ファッツァー」は語尾につけると不思議な響きがあってよかったんだけど、日本語は無茶かも。
それと、これは仕方ないんだけど、やはり新人さんの麻上さんの空気がまだ馴染んでなかった。
これが河野さんだったらなぁと思う場面がいくつもありました。頑張って馴染んで欲しい。

今回は動きもなんとなくダンスっぽくて、空間現代もメロディアスだったので、初めて見る人にも入りやすいかも。
3月11日までやってるので、まだの人は是々非々!!


次回はKAATでまたまた松原さんと共作の「山山」!楽しみにしてます!

<関連記事>
地点「汝、気にすることなかれ」@アンダースロー
地点「ロミオとジュリエット」@ 早稲田大学大隈講堂
地点「みちゆき」 @愛知県芸術劇場
地点「スポーツ劇」@ロームシアター京都
地点「光のない。」
地点「悪霊」@ KAAT
地点「CHITENの近未来語」@アンダースロー
地点「かもめ」@ Cafe Montage
地点「コリオレイナス」@京都府立府民ホールアルティ
地点「――ところでアルトーさん、」@京都芸術センター

川上未映子×マームとジプシー「みえるわ」 @ 味園ユニバース

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マームとジプシー、段々とハマり始めています。。。
昨秋二作連続で見てからというもの、あの感覚が頭から離れません。こちら
そこから十周年企画の続きとしてコラボもの2作を発表しています。
マームは以前から「マームとだれかさん」という企画で何作かコラボ作品があるみたい。
にしても地点もそうだが発表のペースがすごい。。。
ということで時系列ではないけどまずは先日大阪の味園ユニバースで観た「みえるわ」から。

味園ユニバース、初潜入でめっちゃ興奮。
前から千日前にやたらバブリーな建物があるなとは思ってたけど中はお初。
もうね、めちゃくちゃバブリー!
元キャバレーをそのままライブ会場にしたところで、ソファー席とかあってすごく豪華。
天井や装飾もやたら派手でテンションが上がる上がる。
で、演目は川上未映子のテキストを使ったもの。
川上さんって読んだことないけど、芥川賞とって話題になって、タイトルが独特やなという印象。
「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」とか「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」とか。「わたくし率 イン 歯ー、または世界」もすごい。
そんな独特なテキストをどう料理するのかと思ってました。
そしたら青柳いづみの独壇場でほぼほぼライブ状態。
滝のようにテキストが吐き出される様はまるでアジテーション。
味園ユニバースのド派手な演出も加わり狂気そのもの。(背景の蛍光灯すごかった)
これ他の会場だとどんな感じやったんやろ。。。
正直味園ユニバースという場の力がすごすぎて、内容自体はほとんど入ってこなかった。
音楽との融合も楽しかったんやけど、何を見させられているんだろう感が結構あったのです。
次々とテキストを吐き出す青柳さんのパワーはすごいけど、マームのあの独特な繊細さはなかったなぁ。
ということでマームというより味園ユニバースに酔いしれた夜となりました。
あと会場も豪華だったけど、衣装もANREALAGEやsuzuki takayukiで、フライヤーもヒグチユウコと超豪華でした。


そしてもう一つ、歌人の穂村弘とブックデザイナーの名久井直子とのコラボ「ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜」。
去年の12月に原宿VACANTにて。
これがものすごくよかったです。
VACANTという会場が服屋の上にあるんだけど、屋根裏部屋みたいな雰囲気でとてもよかった。
内容は穂村弘さんの個人史みたいな感じなんだけど、またも青柳いづみの独壇場。
穂村さん自身は出てこないのに、青柳さんが穂村さんの歴史を生まれる前から辿っていく。
あー、俳優って何にでもなれるんやなぁとしみじみ思えた。
中には穂村さんのお父さんも出てくるんだけど、この人の歴史が興味深い。
北海道で生まれ育ってから炭鉱の仕事でドイツに渡り、帰国後結婚し穂村弘を生むんだけど、実はその前にドイツで帰国の際に離れ離れになってしまったドイツ人の恋人の話とかリアルロマンス。穂村さん自身は父親のロマンス聞かされてもって感じかもしれないけど笑
その後仕事の関係で転々と引越しが続くんだけど、実はそれは仕事のせいではなく、お母さんが風水にハマって気のいい方角にどんどん引っ越していたという話はすごかった。
そして、穂村さんがそれまで住んできた家の間取りを記憶を辿りながら書いていくのも面白い。
こういうホーム感覚はマームの根幹をなすものだと思う。
彼らの名前「マームとジプシー」は、マーム=故郷でそれを求めて彷徨う流浪の旅人のよう。
中島みゆきの「時代」の歌詞を思い出します。

旅を続ける人々は いつか故郷に出会う日を
たとえ今夜は倒れても きっと信じてドアを出る


この「故郷に出会う」という表現が彼女独特なんだけど、マームにも通じる気がします。
故郷は、すでにあるものではなくて、自分で見つけ出すものなんですよね。
そのためには動き続けなくてはならない。
(そういえばマームの藤田さんも中島みゆきも北海道出身だったなぁ)
なんだか話はそれそうですが、なんしかこの穂村さんの物語にマームの故郷感が表れていて新鮮でした。
名久井さんの仕上げた今回の本も素晴らしいです。


地点に続き、また追いかけていきたい人たちに出会えました。

今村遼佑「雪は積もるか、消えるか」 @ アートラボあいち

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最終日ギリギリ、東京帰りに無理やりねじ込みました。今村くんの展示です。
ポーランドの滞在を経て、どんな作品を作るのかとても楽しみにしていました。
昨年末アートスペース虹での展示も見ましたが、やはり小さなスペースなので物足りなさが残ったというか。
今回はとても広いスペース。
アートラボあいちは長者町にあった時代は知ってましたが、今はとても立派な歴史建築物の中にあります。
行ったら最終日だったため、今村くんがちょうど撮影していて色々話も聞けました。

にしてもこの人はブレない。
ポーランドでの滞在での影響はどこかしらかにあるんだろうけど、昔から変わらずそれでいて新鮮。
その場所を慈しむように、さりげなくさりげなくそこに潜む作品たち。
作品はあるんだけど、それそのものを見るというより、それを触媒にしてその場所を楽しめてしまう。
今村くんの説明を聞いていても、ここにどんな光が入ってきて、どんな音があってという説明ばかり笑
実際この空間は大きな窓がたくさんあって、光がすごい勢いで変化して空間の質がどんどん変化するのです。
僕が行ったのは夕方前ぐらいだったので、驚くほどの変化を楽しめました。
これが夜とかだとまた面白いんだろうなぁと。
彼の作品は冬がよく似合う。
夏のギラギラした太陽の光ではなくて、ぼーっとした淡い光。
(実際以前「冬の日」ってタイトルの展覧会もあったな)
って、今村くんの作品の説明がほとんどないけど、実際そういう作品なんです。
具体的にはバケツの中に映像があったり、廃盤になったクレヨンで書かれたドローイングがあったり、ついたり消えたりする電球があったり、壁を叩く小さな音があったり、ポーランドで撮った映像なんかもあるとか色々言えちゃうんだろうけど、個々の作品をあげつらうのは彼の作品にふさわしくないように思います。
どうしようか迷ったけど、行って本当に良かった。
改めて僕はこの人の作品が心底好きなんだなぁと思えました。
終わっちゃったのでなんの宣伝にもなってませんが、今後も追い続けたい作家さんです。

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今村遼佑「ながめるとみつめるのあいだ」@studio90
今村遼佑 第5回shiseido art egg 「ひるのまをながめる」@資生堂ギャラリー
今村遼佑「ノックする」@site
今村遼佑「白色と雑音」@GALLERY301
今村遼佑展「畔を廻る」@PANTALOON



東京では他に恵比寿映像祭関連のALの展示とワタリウムのマイク・ケリーを見ました。
ALは秋山さやか、荒木悠、荒井美波の三人展。(全員Aから始まるのは偶然?)
中でも過去作ですが荒木さんの作品はよかった。オリーブを巡る誤認の話。
彼の作品は個展だとくどさがありますが、グループ展だといいスパイスになりますね。
マイク・ケリーは相変わらず意味不明笑
配られたチラシに映像に出てくる登場人物紹介が載ってるのが斬新でした笑

細川俊夫&サシャ・ヴァルツ「松風」@新国立劇場



塩田千春が美術を担当したオペラ「松風」を観てきました。
2011年の初演以来各国で上演の後にいよいよ初来日です。

ちなみに僕のオペラ経験はビル・ヴィオラが美術を担当した「トリスタンとイゾルデ」ピーター・ブルックの「魔笛」のみです。
前者は今でもトラウマ。。。後者はまだいい思い出。
今回は最安Z席のチケットが手に入ったので行くことにしました。S席なら辞めてた。
案の定4階の最後尾でしたがそこまでストレスはなく観られましたね。

さて、内容はオペラといえども元は能の演目。
旅の僧が須磨の浦を訪ねると、松に詩が吊るされているのを見る。
これは以前そこに住んでいた松風と村雨の姉妹に当てて在原行平が詠んだ詩。
行平を想いながらあの世に旅立った姉妹が僧の夢に出てきて魂の浄化を乞うというもの。

正直ビル・ヴィオラの時のようにちんぷんかんぷんになるのではないかとかなり案じていたのだけど、サシャ・ヴァルツの演出が素晴らしくて1時間半飽きることなく観られました。
オペラはオペラなんだけど、かなりダンス要素の強い作品で、ピナとか好きなら楽しめます。
彼女のことは知りませんでしたが、同じドイツ出身でポスト・ピナとも言われてるみたいですね。
以前映画館ですが、ウェイン・マクレガー演出のローヤル・バレエ「WOOLF WORKS」を観ましたが、それと似た感覚。ともに伝統の技を用いながらも全く新しい演出。(マクレガー演出・オラファー美術の「TREE OF CODES」日本でやらないかな。。。)
そこに塩田千春とピア・マイヤ=シリーヴァーの美術が加わります。
最初から舞台上は塩田さんの糸で張り巡らされてるの思いきや幕が開くと何もないのでびっくりしました。
え、どうやってあの蜘蛛の巣が登場するのかと思いきや、途中で一人の演者が大きな空間を紐を引っ張って持ってきます。
言葉ではうまく表現できないんだけど、めちゃくちゃ巨大な躯体に糸が巻きついたやつが登場したわけです。
彼女の彫刻知ってたらわかると思うんだけど、それが巨大化したみたいな。
それが見事に空間になってて、空間をモバイルしてる感じが新鮮でした。
にしても演者さん、糸にもたれたりよじ登ったり伸びないんだろうか?
いつもの毛糸ではないのかな?
以前一度お手伝いしただけに、普通の毛糸だとあんな重かけちゃうと巣が崩れちゃうと思います。
なんしかものすごくダークで幻想的。
その後その空間が上に消えて、今度は躯体だけのセットが降りてくる。(シリーヴァーの美術)
最後は松の枝を表す木の細い棒が落ちてくる様は圧巻。
どうかなと思ったけど観れてよかったです。
あと能をバックにしてるけど、変に日本的な演出がなかったのもよかった。
むしろたまに入る雅楽っぽい音もすごく自然でオーケストラに馴染んでたし、風鈴や水の音もよかった。
なかなか楽しい体験となりました。
サシャ・ヴァルツ演出の作品が来日したらまた観に行きたいです。

ところで近くのケンジタキギャラリーでは塩田さんの個展がやってます。
毛のない櫛というモチーフは面白かった。
京都でやってた白い糸のベッドの作品はイマイチだっただけに。。。
個展は3月10日まで。


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村上友晴@ART OFFICE OZASA

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気づけば3ヶ月ぶりの更新。。。生きてます。

以前から気になってた京都のギャラリー、ART OFFICE OZASAさん。
いつも渋い展覧会をやってらっしゃいます。
如何せんアクセスが良くないので中々行けなかったけど、村上友晴展がやると聞きついに来訪。
が、痛恨の休廊日に訪ねてしまった。。。
迷子になりつつたどり着いただけに、ドアノブを握って鍵がかかってた瞬間呆然としました。。。
立ち直れずしばらく立ちすくんでると中から鍵が開く。
幸運にもその日客人があったのでたまたまオーナーのオザサさんがいらっしゃった模様。
特別に開けていただけました。本当に感謝です。

で、村上友晴展。
関西で彼の名前を知ってる人はあまりいないかもしれません。
今年で80歳になられて、今も制作を続けてらっしゃる大御所。
団体には所属せず、以前は西の村岡三郎、東の村上友晴と言われたとか。
そんな村岡さんも2013年に亡くなられ、この年代の作家で現役な稀有な存在。
美術館ではコレクションで数点見られたことのある人もいると思います。
実際先日の国立国際美術館のコレクション展にも一点出ていました。
しかし、彼の個展となると中々ないんですよね。
展覧会年表見ても、関西だと2011年の精華大学での展示以来。
美術館規模の個展となると1999年の名古屋市美術館での展示以来。
もっと取り上げられる作家だと切に思います。こんな若造が言うまでもないだろうけど。
と言うことで、彼の個展を見られるのはかなり貴重なのです。

僕が初めて見たのは学生の頃広島現美のコレクションだったと思います。
遠くから見るとただの黒い画面にしか見えないんだけど、近づいて見るとそれが黒い絵の具の集積だとわかります。
聞く話によれば一点にかける時間はなんと2年。
もはや「業」とも言える作業。
それからギャラリエアンドウの個展なども観に行きました。
今回久々にまとめて観て改めてすごい作品だなと思いました。

何がすごいって、まず今回の展示では、最新作と30年前の過去作が並んで展示されてるんだけど、全く違いがわからない笑
違いといえばキャンバスの張り方ぐらい。
画面は本当に違いがわからないのです。
一本の太い軸の通った作品に震えました。
そして何と言っても、画面の強さです。
いつまでも視線を外せない強さ。
それは画面の大きさなんかも全然関係がなくて、小作品も展示されてましたが、とにかく強い。
そして、今回初めて観ましたが、版画(?)の作品も同じ。
版画って言っちゃダメなんだけど、技法がオリジナルすぎてオザサさんも説明に困ってました笑
6点組の赤黒い作品で、画面は本当に小さい。
でもその極小の面積に込められた強さ。
作品数としては多くはなかったものの完全に打ちのめされてしまいました。
久々に作品を見て魂が震えた。
なんかこう言う強さって最近の作品にないなぁと。
リレーショナルアートとかネオコンセプチュアリズムとかリサーチ系とか、思考ゲームとしては楽しいんだけど、作品の強さはあまりないんですよね。。。
本当に行けてよかった。オザサさんありがとうございました。


更新してなかった間も色々見てたんですが。。。
せっかくなのでその間に観てきた展示を徒然に。(関西のみ)

キュレトリアル・スタディズ12: 泉/Fountain 1917-2017 @ 京都国立近代美術館
『見立てと想像力 ━ 千利休とマルセ ル・デュシャンへのオマージュ』展 @ 元淳風小学校
福岡道雄 つくらない彫刻家 @ 国立国際美術館
態度が形になるとき ―安齊重男による日本の70年代美術― @ 国立国際美術館
開館 40 周年記念展 「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」 @ 国立国際美術館
ヤマガミユキヒロ:air scape / location hunting 2017 @ GALLERY PARC
今村遼佑「くちなしとジャスミンのあいだに」 @ ART SPACE NIJI
小枝繁昭‘Rika Syounen no Yume 2' @ アートゾーン神楽岡
BACK AND FORTH 柏原えつとむ展・想図「Sの迷宮」 @ galerie16
荻野夕奈+田中加織+チェ・ユンジョン FLOATING @ HRD FINE ART
tamaken / Emiko Tamai / odo 『星が運ぶ舟』 @ stardust



まず「泉」誕生100年記念の京都近美のシリーズと「見立てと想像力」
前者は5回に分かれててなんとか全部見ました。
それぞれ中々面白かったけど、コレクション展示の隅っこでやってるような小規模展示だったので、これまとめて一つの大きな展覧会にすれば面白かったのになぁと。
何部屋かに分かれて企画者がそれぞれ違うとか。
レディメイドが吊られてて影を見せるデュシャンのアトリエを再現した3回目が個人的によかった。
第2回の藤本さんの展示も、彼自身の展覧会みたくなってたけど贅沢でよかった。
第4回のべサン・ヒューズのリサーチノートはとても見切れないけど興味深い作品。
最後の毛利悠子の展示が一番わからなかったかな。。。
同じく泉記念で開催された「見立てと想像力」も中々よかった。
元小学校という背景に、日本人作家とフランス人作家が参加してたけど、見事に明暗分かれてた。
やっぱり日本の小学校の背景を体でわかってる日本人作家の作品が抜群に面白かった。
フランス人作家は無理やり場所に合わせようとしてる感じで無理があったなぁ。

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国立国際美術館の三つの展示。
特に福岡道雄展は、10年来の知人である福元さんがキュレーションしたので個人的に感慨深い展示。
縁あって彼が学生インターンの時から知ってて、それからお世話になりっぱなし。
だったらブログで宣伝しろよと自分でも思ったけど、なんせ福岡さんの作品が個人的にあんまり。。。
彼の「作らない」という態度は同じ作家の端くれとして痛いほど共感できる。
でもそこから発生してくるものに対して全然共感できなかったのです。
奇しくも同時開催の安斎展のタイトル「態度が形になるとき」は1969年のハロルド・ゼーマンの展覧会タイトルからなんだけど、その言葉はむしろ福岡展に付せられるべきだったんじゃないのかなぁと。
安斎展は「行動が形になるとき」だったと思う。
安斎展の面白かったのは、写真が当時の作品や制作をリアルタイムに捉えてるだけに、二次物である写真こそが本物で、その前に並んでいたコレクションであるもの派の作品たちが偽物に見えてしまったこと。
確かに作品としては本物なんだけど、当時の空気を纏っている安斎さんの写真は二次的な要素を超えてた。
あと現在開催中のトラベラーはパフォーマンス作品をいくつか取り入れてるのがおもしろかった。
パフォーマンスはその時間に居合わせないと見られないものなので全体は捉えられないのだけど、なんかその「見逃す」っていう体験も面白いなぁと。
個人的にジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダの新作とテリーサ・ハバード/アレクサンダー・ビルヒラーのジャコメッティの元愛人を巡る映像作品がよかった。
あとカーディフ・ミラーの作品はすごかった。一瞬見逃しかけるのでご注意を。5/6まで。
にしても最近の国立国際、キャプションが配布スタイルになって見難すぎる。
一々作品タイトル・作家と作品を紙見ながら確認するのは鑑賞のノイズでしかない。。。

あとは知り合いの展覧会をいくつか。
Gallery PARCは移転して一発目のヤマガミ展。
ビルの3フロアがギャラリーになっててびっくり。
個展でやるには作品数が半端ないので大変そう。。。
とはいえ贅沢な展示空間。さすが。
今村くんは名古屋の個展行ったら書きます。(行けるだろうか。。。)
小枝さんと柏原さんは僕の恩師。
小枝さんの作品ちゃんと生で見たの久々で感動しました。
柏原さんは過去のSの作品だけど、ほぼインスタレーションなので過去作と一概にいえない見応えのある展示。
久々にお会いできてよかった。柏原さんも今年で77歳。お元気です。
そして田中さんとtamakenさんは過去に一緒に海外で展示した仲。こちらも久々。
tamakenさんの舟たちはstardustという銀河で美しく航海していました。。。

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地点「汝、気にすることなかれ」@アンダースロー

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相変わらず地点を追いかけております。
とはいえ、正直最近の新作は僕の中でイマイチ腑に落ちないものばかりでした。
素直に面白かったのは去年の夏の「みちゆき」ぐらい。
それ以降「ブレヒト売り」、「ヘッダ・ガブラー」、「ロミオとジュリエット」、「忘れる日本人」と、怒涛の新作ラッシュだったのですが、どれも自分の中でヒットに至らず。
最近の新作は特にあの独特の「地点語」とも呼ばれる発語が抑えられていたせいもあるかも。

しかし、この夏に発表された「汝、気にすることなかれ」は最高に面白かった!
これぞ地点!という感じ。
面白すぎて2回も観に行ってしまいました。。。
やっぱり地点とイェリネクの相性は抜群ですね。
「光のない。」「スポーツ劇」に続くイェリネク3作目ですが、前2作が大劇場で大掛かりな舞台セットなのに対して、今回は小劇場。しかも河野早紀さんのいない5人の少人数。
劇場に入ると舞台には鏡が敷き詰められて、真ん中には蓄音機。手前は人工芝とお花畑と謎だらけ。
舞台が始まると、白い全身タイツみたいな衣装に包まれた演者登場!謎すぎ!笑
今回も前2作同様衣装はコレット・ウシャール。
そして音楽も同じく三輪眞弘。
前2作は合唱団を結成していたのに対し、今回は舞台中央に置かれた蓄音機が音楽担当。
これが素晴らしかった!
元々この作品には「シューベルトの歌曲にちなむ死の小三部作」という副題がつけられいて、章ごとにシューベルトの「魔王」「死と乙女」「さすらい人」が音楽として指定されてる。
にも関わらず三輪さんに改めて音楽を依頼するあたり三浦さんはひねくれ者笑
そして改めて三輪さんが導き出したのが、シューベルトの音楽を破壊すること。
舞台中、蓄音機は音楽を奏でては止まり奏でては止まるを繰り返します。
実際蓄音機は機械で動かしているだけで音楽は別でなってるそうですが、レコード盤に今回のDMのイラストが描かれているので、音楽がレコード盤の回転として視覚化されているのはうまいなぁと唸りました。
この音楽が容赦なく演者のセリフを遮断します。
そして演者のセリフで印象的だったのが、全力で発話した後に捨て台詞のように吐かれる「ま、いっか」という言葉。
これ、実際「汝、気にすることなかれ」と仰々しい邦題になってるものの、実際のタイトルはドイツ語で「Macht nichts」。英語で「Don't mind」。そう、「ま、いっか」なのです。
この言葉が、これまでの台詞を全て無効化するぐらいの破壊力。
このセンスはやはり地点の真骨頂。
にしても、どうして日本語タイトルがこんなに仰々しいのか。
それは、「Macht nichts」というドイツ語にあります。
実は「Macht」には権力という名詞でもあり、「nicht」が否定。
つまり「権力を否定する」という仰々しい裏テーマがあるのです。
実際演劇の至る所にナチスを思わせる台詞もあり、その辺はやはりイェリネク。
あと、西洋演劇にはどうしてもキリスト教がつきまといます。
ブレヒトもベゲットもどこかにキリスト教を忍ばせる。イェリネクも同様。
アートもそうですが、そこらへんがどうしても日本に素直に輸入困難な代物。
でも地点にかかればそこを笑い飛ばすかのように、陳腐な演出のオンパレード。
この演目では「死」が大きなテーマですが、それを敢えてチープにするために客側の人工芝とお花畑。これは葬儀場の「セレマ」をイメージしたそうです笑
そもそも全身白タイツもふざけてるとしか思えない笑
そんなこんなであっという間に繰り広げられる3章の物語。
最後の最後、蓄音機のノイズだけがなり続けてレコードが終わって暗転は完璧なエンディング。
素晴らしかった。。。
2回目の終演後に、Contact Gonzoの塚原さんとのトークがあったのだけど、そこでどうしてこんな謎の舞台セットなのかという説明に、イェリネクは抽象的に表現しないと大怪我するという話が面白かった。
確かに前2作の舞台セットも抽象的なセットでした。
中身はあまりに社会的で具体的なんだけど、難解なテキストで煙に巻くイェリネクと対峙するには正攻法ではやってられないという話。
あと、今回の舞台は所々笑うしかない場面が多いのだけど、「笑い」はどこまで重要なのかと質問したら、「全てです」と即答する三浦さん笑
確かに地点の作品でよかったなぁと思えるのは笑える舞台。「ワーニャ伯父さん」とかも最高に笑える。
チェーホフが「人と人がわかりあえないのは喜劇だ」と言ってますが、地点はまさにそれを体現している。
発音が変だったり、ストーリーもバラバラにされたり、わからないんだけど妙に笑える。
それが地点の大きな魅力だと思う。
この「汝、気にすることなかれ」はそれが見事に結実していました。


しかし、その次の新作「どん底」は微妙だったなぁ。。。
黒澤明も映画化したゴーリキーの「どん底」で、ある程度ストーリーも理解してるし、音楽も空間現代だし、演者も客演も含めて8人と多いし(なぜかまた河野さんがいない・・・)、もう期待するしかない!って感じだったのですが。。。
何と言っても台詞の途中で挟まれる「どん」「ぞこ」がダサかった。。。
「汝」の「まいっか」と違って、あまりにまんますぎた。
「忘れる日本人」の「わっしょい」もダサかったけど、「どんぞこ」はないよなぁ。。。
あと、客演の何人かは完全に地点のカラーではなかった。
田中祐気さんはさすがでしたが。。。てかなんで河野さんいないの?
そして空間現代がまさかの録音。。。
イマイチピンとこない作品で残念でした。
ちなみに「どん底」は元旦から再演がスタートらしい。元旦から「どん底」って笑


ところでやっと空間現代のライブハウス「外」、に行きました。
アンダースローのすぐ近くという、どんだけ仲ええねん笑
にしても、こんなアングラなバンドが自身のライブハウス持てるってすごいことですよね。
自前でライブハウス持ってるバンドってそんなにいるんだろうか?
そしてそこで聞いた彼らの「オルガン」は最高だった。
1曲1時間というすごい曲なんだけど、全然飽きない。
それがギターとベースとドラムというシンプルな楽器のみで奏でられてるのがすごい。
「オルガン」ってタイトルだけどオルガンは登場しません。
こないだ名村造船所跡地で演奏された「擦過」も聴きたかった。。。
にしてもDMの感じといい地点の影響受けすぎ!
舞台装置が変なLEDってのはもう少し学んだ方がいい。というか演出なんてなくてもいいのに。。。
「どん底」でもLED使われてますがセンスが全然違う!

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